心の病の謎に挑む
 
  1. 精神病性障害を持つ人の認知機能の長期変化:サフォーク州精神健康プロジェクトの所見
  2. ケタミンは飲酒記憶の薬理学的書き換えによって有害な飲酒を低下させる
  3. フィンランド(1996~2014年)における所得と初回精神科入院率の関連
  4. 灰白質および人格の発達と青年期における飲酒頻度増加の関連
  5. うつ病のスクリーニングとモニタリングのための9項目患者健康質問票(PHQ-9)の使用
  6. 様々な文化にわたるうつ病の疫学
  7. 医療外のオピオイド使用者における全ての原因と特定の原因による死亡:系統的レビューとメタ解析
  8. 内在性の脳構造と発達期における注意・気分システムの変化との関連
  9. 降圧薬と偶発認知症およびアルツハイマー病のリスク:前向きコホート研究からの個々の参加者データのメタ解析
  10. うつ病におけるプラセボに対する抗うつ薬治療反応の皮質結合性による媒介:ランダム化臨床試験の二次解析
  11. 統合失調症の治療を目的としたlumateperoneの有効性と安全性:ランダム化臨床試験
  12. 体格指数(BMI)と主要な精神疾患に共有される遺伝座位:全ゲノム関連解析
  13. 統合失調症と関連するヒト脳結合性の進化的修飾
  14. 英国女性100万人の体格指数(BMI)、食習慣、運動不足、および認知症の罹患率
  15. 運動不足、心血管疾患、および認知症のリスク:個々の参加者のメタ解析
  16. 展望-因果推論法の精神医学の疫学への適用
  17. 併存する双極性障害と強迫症/強迫性障害の治療におけるアリピプラゾールの増強療法:系統的レビュー
  18. 併存する双極性障害と強迫症/強迫性障害の治療の改訂:系統的レビュー
  19. 再現可能な不安の遺伝的リスク座位:ミロン退役軍人プログラムにおける最多20万人の参加者からの結果
  20. 双極性障害の高リスクにある有症状の若者のための家族に焦点を当てた治療と強化された従来の治療の効果比較:ランダム化臨床試験
  21. スウェーデンの精神疾患を持つ人における暴力を受けるリスクと暴力を犯すリスク
  22. 統合失調症を持つ62,250人の全国的コホートにおける抗精神病治療と関連する身体疾患および死亡率の20年間にわたる経過観察研究
  23. アルツハイマー病を持つ人における抗精神病薬の使用と関連する頭部外傷のリスク
  24. 妊婦における不眠症状治療のためのデジタル認知行動療法の効果:ランダム化臨床試験
  25. うつ病を持つ成人患者の脳波記録からエスシタロプラムの治療アウトカムを予測するための機械学習の利用
  26. 我々の現代的うつ病概念の起源―メランコリアの歴史(1780-1880):レビュー
  27. 英国バイオバンク住民研究における成人のうつ病、動脈硬化、およびメタボリック症候群の関連:媒介分析*
  28. うつ病のスクリーニングのための9項目患者健康質問票(PHQ-9)の正確度:個別の参加者データのメタ解析
  29. 未治療のうつ病に対する第1および第2選択治療戦略の最適化―SUN☺D研究:実際的多施設共同評価者盲検ランダム化比較試験
  30. 統合失調症はEBウイルスに対する異常免疫反応と関連する
  31. 抗うつ薬とヨガで治療されたうつ病を持つ患者における神経認知機能と血清脳由来神経栄養因子レベルの改善
  32. 治療抵抗性うつ病を持つ服薬中の患者において経頭蓋磁気刺激は左背外側前頭皮質と辺縁領域間の安静時脳波・機能的結合性を調節する
  33. 小児虐待およびネグレクトの破壊的な臨床的帰結:気分障害における易罹患性の増加と不良な治療反応
  34. 食物フラボノールとアルツハイマー型認知症のリスク
  35. 統合失調症と診断された人の原因別損失生存年数:改善しているのか、それとも悪化しているのか
  36. 統合失調症の生涯にわたる過剰な身体的併存症と死亡率:デンマークの全国民登録研究
  37. 統合失調症の再現可能なエピジェネティックリスク特性と脳のメチル化および機能の関連
  38. 予後予測的妥当性を持つ精神病サブグループの探究と遺伝的基礎の探索
  39. アルコール使用障害に対する動機付け強化療法を併用したケタミンの単回注射:ランダム化ミダゾラム比較試験
 


精神病性障害を持つ人の認知機能の長期変化:サフォーク州精神健康プロジェクトの所見
    Anne-Kathrin J. Fett et al. JAMA Psychiatry. Published online December 11, 2019.
    Long-term Changes in Cognitive Functioning in Individuals With Psychotic Disorders: Findings From the Suffolk County Mental Health Project.

    キーポイント:
    <疑問>
     精神病性障害を持つ人の初回入院後の認知機能の長期経過はいかなるものか。
    <結果>
     この445名の精神病性障害を持つ人の研究において、認知能力は大部分の領域において低下し、これらの変化のいくつかは正常老化による期待値より大きかった。その低下は精神病性障害を通して一貫していて、より不良な機能と陰性症状と関連し、また精神病性障害を持つ人はすべての認知検査について対照者(n = 260)より成績が不良で、特に50歳以降で顕著であった。より具体的には以下の通り。
     全部で705人の参加者が分析に含められ(20年時の平均 [標準偏差] 年齢, 49.4 [10.1] 歳): 445人 (63.1%) の精神病性障害 (211人が統合失調症スペクトラム [138人(65%) が男性]; 164人の感情病性精神病 [76人 (46%) が男性]; 70人の他の精神病 [43人 (61%) が男性]); および260人 (36.9%) の対照者 (50.5 [9.0] 歳, 134人 [51.5%] が男性)、精神病性障害を持つ人の認知は2つの検査を除くすべての検査で低下した(平均的低下: d = 0.31; 範囲, 0.17-0.54; すべてP < .001)。認知低下は職業機能の悪化(Visual Reproduction test II: r = 0.20; Symbol Digit Modalities Test–written: r = 0.25; Stroop: r = 0.24; P < .009)および陰性症状の悪化(avolition: Symbol Digit Modalities Test–written: r = −0.24; TMT-A: r = −0.21; Stroop: r = −0.21; all P < .009; inexpressivity: Stroop: r = −0.22; P < .009)と関連した。
     対照者と比較して精神病性障害を持つ人は言語性知識、流暢性、および抽象化-遂行機能の年齢依存的低下を示し(vocabulary: β = −0.32; Controlled Oral Word Association Test: β = −0.32; TMT-B: β = 0.23; all P < .05)、50歳以上の参加者でその格差が最大であった。
    <意義>
     いくつかの認知領域について、認知的加齢が一般人口より精神病性障害を持つ人において速い可能性がある。

    訳注:サフォーク(Suffolk)はイングランド東部に位置する英国の行政州。

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ケタミンは飲酒記憶の薬理学的書き換えによって有害な飲酒を低下させる
    Das RK et al. Nat Commun 2019; 10(1): 5187.
    Ketamine can reduce harmful drinking by pharmacologically rewriting drinking memories.

    論文要旨:
     不適応的な報酬記憶(maladaptive reward memory、MRM)は有害なアルコールや薬物の使用といった獲得性の過剰摂取障害の発症と維持に関係する。記憶の固定化の過程(貯蔵された記憶は想起時に短時間不安定となる)はMRMを阻害して再発を予防する方法を提供する可能性がある。しかし、ヒトにおいて薬理学的にMRMを弱める信頼できる方法は定かではない。ここで我々は、危険な飲酒者においてN-methyl D-aspartate (NMDA)のアンタゴニストであるケタミンをMRMの想起直後に投与した場合、それを阻害することができることを示す。
     MRM想起単独またはケタミン単独と比較して想起とケタミンの併用は、アルコールの強化効果と長期間の飲酒レベルを効果的に低下させた。臨界の固定枠('reconsolidation window')におけるケタミンとその代謝物の血中濃度は、MRMの再活性化に続く有益な変化だけを予測した。再固定化の薬理学的妨害は、不適応的な記憶を急速に書き換える方法を提供する可能性があり、アルコール・薬物使用障害においてさらに探究すべきである。

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フィンランド(1996~2014年)における所得と初回精神科入院率の関連
    Kimmo Suokas et al. JAMA Psychiatry. Published online December 18, 2019.
    Association of Income With the Incidence Rates of First Psychiatric Hospital Admissions in Finland, 1996-2014.

    キーポイント:
    <疑問>
     家計所得は精神疾患のための初回入院率と関連するか。
    <結果>
     この620万人以上の全国非盲検コホート研究において、成人のあらゆる所得水準で明確な所得勾配が観察され、最高十分位と比較した調整済発生率比は2.94から、最低十分位の4.46に及んだ。この関連は時間と共に変化し、年間発生率の連続的に低下が高所得群だけに現れた。
    <意義>
     家計所得は、あらゆる所得水準において精神疾患の初回入院治療の重要なリスク因子と考えられる。所得と精神健康を結ぶ機序の一部は、医療制度そのものにある。

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灰白質および人格の発達と青年期における飲酒頻度増加の関連
    Gabriel H. Robert et al. JAMA Psychiatry. Published online December 18, 2019.
    Association of Gray Matter and Personality Development With Increased Drunkenness Frequency During Adolescence.

    キーポイント:
    <疑問>
     青年期における飲酒頻度増加と灰白質形成の関連の方向性は如何なるものか。
    <結果>
     このIMAGEN欧州コホートに登録された726人の青年のコホート研究において、使用された3つの相補的アプローチ(因果ベイジアンネットワーク、時間分析、暴露-反応曲線の外挿)は、前頭および後側頭皮質における加速された灰白質の萎縮が飲酒リスクの増加と関連することを示した。
    <意義>
     この研究結果は、飲酒による灰白質萎縮の加速という神経毒性の解釈は注意して適用すべきであることを示唆する。

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うつ病のスクリーニングとモニタリングのための9項目患者健康質問票(PHQ-9)の使用
    Mark Zimmerman. JAMA 2019; 322(21): 2125-2126.
    Using the 9-Item Patient Health Questionnaire to Screen for and Monitor Depression.

     臨床的に意味のあるうつ病は、プライマリーケアで遭遇する最もよくある障害の一つである。それは様々な医学的疾患を持つ患者にしばしば併存する状態である。うつ病は主な役割機能の障害と早期死亡に関連し、(米国における)12ヶ月有病率は8%、生涯有病率は19%と多い(訳注:WHM調査による、日本のそれは順に2%と7%)1。その比較的高い有病率と関連する心理社会的悪影響から、うつ病はあらゆる医学的疾患の中で最も能力低下を引き起こすものの一つである。医療、特にプライマリーケアにおけるうつ病の過少認識についての懸念が、うつ病同定の改善を求める理由であった。議論がないわけではないが、うつ病をスクリーニングする自己評価式の質問紙の使用が複数の医学会および医療組織により推奨されてきた。多くの尺度がうつ病を評価するために開発されてきた。その実施について専門的関与の要求がより少ないために、臨床実践においては臨床医評価の尺度より自己評価の質問紙の方が好まれるかもしれない。うつ病の測定は3つの主要な目的:スクリーニング、アウトカムの監視、および重症度レベルの確認のために用いられる。
     9項目患者健康質問票(The 9-item Patient Health Questionnaire、PHQ-9)2は、最も多く研究されたプライマリーケアにおけるうつ病のスクリーニング測定であり、臨床アウトカムと遂行度測定の両方についてNational Quality Forumにより推奨されている(PHQ-9はスペイン語、日本語、ロシア語を含むいくつかの言語に翻訳され、無料でダウンロード可能である)。PHQ-9は大うつ病の9つの診断基準を表す9つの質問から構成され、各項目は過去2週間おいて症状がどのくらいの頻度であったかを示す4ポイントの順序尺度で評点される(考えられる回答:全くない、数日、半分以上、ほとんど毎日。)。症状についての9つの質問の後に、機能障害のレベルについての質問が1つ続く。2週間の時間枠は、大うつ病性障害を診断するために使われる時間枠に合わせるために選ばれたものである。PHQ-9の総スコアは9つの症状項目の評点の合計(範囲:0~27)によって計算され、推奨される重症度スコアの範囲は次の通りである:0~4、うつ病はない;5~9、軽度のうつ病;10~14、中等度のうつ病;15~19、中等度~重度のうつ病;20~27、重度のうつ病。

    スクリーニング
     連続的な得点分布を持つ症状質問紙におけるケースを同定するための閾値の選定は、尺度の使用目的による。PHQ-9はスクリーニング尺度として使用されることを目的としていて、うつ病の診断を行うためのものではない。スクリーニング測定であるためには広い網を投げる必要があり、その閾値は測定感度を増すために低い3。PHQ-9のスクリーニング能力のメタ解析によれば、大抵の研究は検査と診断基準の一致を最適化するような感度と特異度のバランスを提供するカットオフ・スコアを推奨している4。診断精度を最適化するカットオフ・スコアを選択するこの方法に本質的な間違いはないが、感度が特異度に優先するスクリーニング法としての公式な尺度使用目的とは一致しない。さらに、スクリーニング陽性ケースを同定する最適カットオフが研究によって異なるのは問題である。しかしながら、最も頻繁に推奨されるPHQ-9スクリーニング陽性のカットオフは10点である。

    アウトカムの監視
     一般的に精神疾患の治療の有効性評価は、非定量的な進捗判断を生む非構造的な交互作用に基づく。つまり、治療有効性の判断は「調子はどうですか」とか「うまくやれていますか」といった広範囲にわたる全体的質問に基づく。測定に基づく診療(measurement-based care)という用語は、精神医学的治療のアウトカムを測定するために標準的尺度を使用することに関して作成された。うつ病の測定は他の医学的疾患と同様に、治療の成功の程度と完全性に関する情報を臨床医に提供する。糖尿病、高血圧、高コレステロール血症、または感染の次善の治療アウトカムは、より集中的な介入を促すであろう。例えば、165/105 mm Hg から 145/95 mm Hgの血圧の改善は「反応したが不完全」であり、治療の調節を必要とする。同じことがうつ病の治療についても当てはまる。治療に部分的に反応するも抑うつ症状が残遺したうつ病患者は再発リスクが高いことを、研究は一貫して示してきた。PHQ-9は妥当性のある症状変化の測定である。臨床実践で治療アウトカムを測定する場合、PHQ-9に関する抑うつ症状の変化の大きさは臨床医に基づく評価尺度のそれと同程度である。プライマリーケアの臨床試験において、PHQ-9を用いてうつ病を治療する「測定に基づく診療」の使用は、従来の治療と比較して有意に高いうつ病の反応率(67.0% vs 59.7%)および寛解率(46.7% vs 42.8%)を示した5

    重症度分類
     うつ病の治療ガイドラインは、治療選択の際に重症度を考慮すべきであるとしている。うつ病治療についての米国精神医学会ガイドラインは、軽度および中等度のうつ病については単剤治療として心理療法または薬物療法を、重度のうつ病を持つ患者については最適な治療として薬物療法を推奨した6。対照的にうつ病の治療と管理についての欧州国立医療技術評価機構ガイドラインは、軽度のうつ病に対する初期治療選択肢として抗うつ薬の使用を推奨せず、中等度および重度のうつ病については心理療法と薬物療法の併用を推奨した7。PHQ-9開発当初の記述において、Kroenkeら2はうつ病の軽度、中等度、中等度から重度、重度レベルに対応する5ポイント間隔のカットオフ・スコアを推奨した。重症度カットオフ・スコアは、臨床医が想起しやすいようにより簡単にするという現実的な理由で選ばれた。これらカットオフの妥当性は、隣接する重症度分類間の健康関連QOLの違いを示すことで支持された。しかし、それらは重症度スコアの範囲がどのくらい治療選択に影響するかを考慮しなかった。重症度スコア分類がどのくらい広く、あるいは狭く定義されるは重要な臨床的意味を持つ。その想起の容易さに基づいて重症度分類を定義するスコア・カットオフの使用は次善の選択肢である。むしろ、それらはあるレベルのうつ病の臨床的重要性、およびどのようにうつ病が治療されるかに基づいて定義されるべきである。プライマリーケア患者のいくつかの研究が、他の自己報告尺度および臨床医評価のうつ病重症度測定と比較して、PHQ-9は患者を重症度カテゴリーに分類する際にうつ病重症度を過大評価することを見出した8。PHQ-9は重度のうつ病を持つ患者を過剰診断して、軽度のうつ病を持つ患者を過少評価するので、その使用は第1段階の治療選択肢としての心理療法の照会を少なくして、薬剤の依存を高める結果となり得る。

    結 論
     PHQ-9の結果がうつ病の存在を示唆した場合に、患者が本当にうつ病を持っているか否かを確かめる臨床面接を引き続き行うのであれば、PHQ-9はうつ病のスクリーニングに役立つ妥当性のある自己評価尺度である。うつ病治療を受けている患者についてその治療反応を定量的に測定するために、PHQ-9は受診ごとに施行されるべきである。うつ病の治療法は臨床医によってもっぱら決定されるべきであってPHQ-9ではない。なぜなら、それはうつ病の重症度を過大分類するからである。

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様々な文化にわたるうつ病の疫学
    Kessler RC and Bromet EJ. Annu Rev Public Health 2013; 34: 119-38.
    The epidemiology of depression across cultures.

    論文要旨:
     うつ病の有病率、経過、社会人口学的相関物、および社会的コストについて、世界中の疫学データが展望される。うつ病はこれら調査において普通に存在する障害*であると推定される。本質的過程と方法論の両方がおそらく関係して生涯有病率と経過は国によって相当異なるものの、幅広く分布する発症年齢と慢性化-再発して生涯続く高いリスクを持つ意味深い生涯有病率を記述している点において、各国のデータは明確である。複数のうつ病の社会人口学的相関物が各国にわたり一貫して見出され、各国のデータはまた、役割移行の困難(例:低い教育、10代後半での出産、結婚の破綻、不安定な雇用)、役割機能の低下(例:低い質の結婚、低い職業能力、低い収入)、幅広い二次障害の発症、持続、重症化リスクの上昇、および身体疾患と自殺による早期死亡リスクの増加を含む多くの有害アウトカムとの関連を記述している。

    *世界精神健康(WMH)調査の参加国におけるDSM-IV/CIDIうつ病有病率(Bromet et al. Cross-national epidemiology of DSM-IV major depressive episode. BMC Med 2011):12ヶ月と生涯の有病率;順に米国8% 19%、日本2% 7%、高収入10か国の平均6% 15%、低・中収入8か国の平均6% 11%

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医療外のオピオイド使用者における全ての原因と特定の原因による死亡:系統的レビューとメタ解析
    Sarah Larney et al. JAMA Psychiatry. Published online December 26, 2019.
    All-Cause and Cause-Specific Mortality Among People Using Extramedical Opioids: Systematic Review and Meta-analysis.

    キーポイント:
    <疑問>
     医療外のオピオイド使用者における死亡率、および過剰な死亡の主な原因は何か。
    <結果>
     この124研究の系統的レビューとメタ解析において、医療外のオピオイド使用者の死亡率は、一般人口における同じ年齢と性別の人のそれより高かった。過剰な死亡は外傷が原因の死亡、感染性疾患、および非伝染性疾患を持つ人にわたって起きていた。
    <意義>
     医療外のオピオイド使用者において上昇した死亡率への対応には、過剰摂取予防と感染性疾患と非伝染性疾患を予防して治療する同時介入が含められるべきことを結果は示す。

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内在性の脳構造と発達期における注意・気分システムの変化との関連
    Whitfield-Gabrieli S et al. JAMA Psychiatry. Published online December 26, 2019.
    Association of Intrinsic Brain Architecture With Changes in Attentional and Mood Symptoms During Development.

    キーポイント:
    <疑問>
     脳イメージングは子供において将来の精神医学的症状を予測するか。
    <結果>
     この4年間の縦断的コホート研究において、健康な子供における安静時機能的結合性の明確なパターンは精神医学的症状の変化を予測した。背外側前頭前皮質と内側前頭前皮質のより弱い正の結合性は、注意システムのより良い発達軌跡を、背外側前頭前皮質と前帯状皮質膝下部のより弱い正の結合性は、内在化症状(例:不安、抑うつ)のより悪い軌跡を予測した。
    <意義>
     脳イメージング測定は、よくある精神疾患のリスクを持つ子供の早期発見と、結果として予防的治療が必要な子供の特定に貢献できる。

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降圧薬と偶発認知症およびアルツハイマー病のリスク:前向きコホート研究からの個々の参加者データのメタ解析
    Ding J et al. Lancet Neurol 2020 Jan; 19(1): 61-70.
    Antihypertensive medications and risk for incident dementia and Alzheimer's disease: a meta-analysis of individual participant data from prospective cohort studies.

    論文要旨:
    <背景>
     認知症は予防および治療戦略がいまだ未確定の重大な健康問題であるが、特定の降圧薬で高血圧を下げると、その疾病負担を減らすことができるかもしれない。我々は特定の降圧薬クラスが認知症リスクを低下させるか否かを調べた。
    <方法>
     我々は1980年1月1日から2019年1月1日の間に公表された適格な観察研究からの個々の参加者データのメタ解析を行った。コホートは次の場合に含めるのに適格とされた:前向きに募集された地域に住む成人;2,000人以上の参加者を含む;少なくとも5年にわたり認知症事象のデータを収集;血圧を測定して降圧薬の使用を確認;認知症事象を把握するために直接面会して調べ追加データで補完;死亡について症例を追跡。
     我々は偶発認知症および臨床的アルツハイマー病と5つの降圧薬クラスの使用との関連を、ベースライン高血圧層(収縮期血圧 [SBP] ≥140 mm Hg または 拡張期血圧[DBP] ≥90 mm Hg)とベースライン正常血圧層(SBP <140 mm Hg および DBP <90 mm Hg)において評価した。降圧薬治療を受ける可能性と関係する交絡因子を統制するために、傾向スコア(propensity score)を用いた。ランダム効果メタ解析を用いて、各々研究の効果推定量が統合された。
    <結果>
     分析に適格とされた6つの前向き地域ベース研究(十分な情報がある55歳以上で認知症がない31,090名の成人)の中央追跡期間は7~22年であった。3,728の偶発認知症診断ケースと、1,741の偶発アルツハイマー病診断ケースが見出された。高血圧層(n=15,537)では、降圧薬を用いた人は降圧薬を用いなかった人と比べて、認知症(ハザード比 [HR] 0·88, 95% CI 0·79-0·98; p=0·019)およびアルツハイマー病(HR 0·84, 0·73-0·97; p=0·021)を発症するリスクが低かった。一つの薬剤クラスとその他すべての間に、認知症リスクに関していかなる有意差も見出さなかった。正常血圧層(n=15,553)では、降圧薬使用と偶発認知症またはアルツハイマー病の間に関連を認めなかった。
    <解釈>
     長期の観察期間を通して、認知症リスクを下げるという点で特定の降圧薬クラスが他より効果的であるエビデンスを認めなかった。血圧が高血圧レベルにある人では、血圧を下げる効果を有するどの降圧薬を使用しても認知症リスクは低下するかもしれない。これらの結果は、今後の高血圧管理の臨床ガイドラインは認知症リスクに対する降圧薬の有益な効果も検討すべきであることを示唆する。
    <資金>
     The Alzheimer's Drug Discovery Foundation and the National Institute on Aging Intramural Research Program.

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うつ病におけるプラセボに対する抗うつ薬治療反応の皮質結合性による媒介:ランダム化臨床試験の二次解析
    Camarin E. Rolle et al. JAMA Psychiatry. Published online January 2, 2020.
    Cortical Connectivity Moderators of Antidepressant vs Placebo Treatment Response in Major Depressive Disorder: Secondary Analysis of a Randomized Clinical Trial.

    キーポイント:
    <疑問>
     脳波の結合性特性は抗うつ薬治療反応の神経媒介因子であるか。
    <結果>
     このランダム化臨床試験の二次解析において、より強いアルファ帯域結合性とより低いガンマ帯域結合性(頭頂領域において最も顕著)は、より良いプラセボ治療反応とより悪い抗うつ薬治療反応を予測した。これら媒介結合のより低い結合性レベルは、より高レベルの快感消失(アンヘドニア)と関連した。
    <意義>
     抗うつ薬反応からプラセボ反応を区別する極めて重要な皮質特性が同定され、それは臨床試験におけるプラセボ特徴の確立に向けたもう一つの方向性を提供する。

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統合失調症の治療を目的としたlumateperoneの有効性と安全性:ランダム化臨床試験
    Christoph U. Correll et al. JAMA Psychiatry. Published online January 8, 2020.
    Efficacy and Safety of Lumateperone for Treatment of Schizophrenia: A Randomized Clinical Trial.

    キーポイント:
    <疑問>
     60 mgのlumateperone tosylate(42 mgのlumateperone)は、関連する運動、心臓代謝、または内分泌有害作用を引き起こすことなく、プラセボと比較して有意に統合失調症の症状を軽減させるか。
    <結果>
     この統合失調症を急性増悪させた450人の患者のランダム化臨床試験において、42 mgのlumateperone(訳注:新規機序を持つ統合失調症治験薬で、その作用機序は重度精神疾患に関係する非常に重要な神経伝達物質であるセロトニン、ドーパミン、グルタミン酸の神経伝達を同時に調節する点で他に類を見ない)は、治療による運動、心臓代謝、または内分泌有害作用を引き起こすことなく統合失調症の症状を軽減させる点において、プラセボとの比較において統計的有意差を示した。
    <意義>
     Lumateperoneは見込みのある統合失調症の治療であり、望ましい安全性プロフィールを持つ。

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体格指数(BMI)と主要な精神疾患に共有される遺伝座位:全ゲノム関連解析
    Shahram Bahrami et al. JAMA Psychiatry. Published online January 8, 2020.
    Shared Genetic Loci Between Body Mass Index and Major Psychiatric Disorders: A Genome-wide Association Study.

    キーポイント:
    <疑問>
     BMI (body mass index) と主要な精神疾患の両方の背景にある全ゲノム上の遺伝要因はあるか。
    <結果>
     この1,380,284人からの結合された全ゲノム関連データにおいて、BMIと主要な精神疾患(統合失調症、双極性障害、およびうつ病)に遺伝的重複が見出された。全体として、BMIと統合失調症、双極性障害、うつ病の間で共有されたそれぞれ63、17、32座位が、結合FDR(conjunctional false discovery rate)<0.01で分析され、共有座位のうち統合失調症では34%(213のうち73)、双極性障害では52%(69のうち36)、うつ病では57%(99のうち56)がより高いBMIと関連するリスクアレルを持ち、残りは反対の関連方向を有していた。
    <意義>
     この結果は、BMIと主要な精神疾患に共有される遺伝坐位を特定し、混合した(主として統合失調症とBMIにおける反対の)関連方向を示す。

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統合失調症と関連するヒト脳結合性の進化的修飾
    van den Heuvel MP et al. Brain 2019; 142(12): 3991-4002.
    Evolutionary modifications in human brain connectivity associated with schizophrenia.

    論文要旨:
     統合失調症の遺伝的基盤とヒト固有の性質は、ヒト脳の進化が統合失調症の発現に役割を果たすかもしれないという仮説を導いた。ヒトおよびチンパンジー(我々と最も近い現存の進化上の近縁の一つで、非常に近い共通祖先をもつ種)からの生体神経画像データを比較することで、我々はヒト脳配線の進化的変化という観点で統合失調症に関係する脳結合性の変化を調べた。チンパンジー脳とヒト脳のコネクトーム配置を対比させ、患者で観察された統合失調症に関連する脳結合性の変化パターンの相違を比較した。
     統合失調症関連の結合不全の皮質パターンと有意に重複するヒト脳結合性の進化的修飾のエビデンスが示され(P < 0.001, 並べかえ検定)、これらの効果を更なる独立した3つの統合失調症データベースにおいて確認した。加えて、その効果の特異性を7つの他の精神神経学的疾患(ヒトへの特異性がより少ない行動症状で特徴付けられると思われるうつ病/大うつ病性障害、強迫症/強迫性障害、その他)における脳の結合不全パターンを調べて評価したが、そのようなヒト脳結合性の修飾との関連は見出せなかった。さらに、脳結合性のヒト、チンパンジー、およびマカク(macaques)間の比較は、「ヒト属で進化した結合性の特徴が統合失調症と強く関係した、脳回路が潜在的にヒトの進化的分化と関連した」こと示唆する。
     まとめると、我々の結果はコネクトーム組織化のヒト固有の特徴が統合失調症に関係する脳結合性の変化に濃縮されている可能性を示す。高次脳機能を支えるヒト脳結合性の修飾はまた、脳機能不全に対する脳脆弱性をもたらす可能性がある。

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英国女性100万人の体格指数(BMI)、食習慣、運動不足、および認知症の罹患率
    Floud S et al. Neurology. Published online December 18, 2019.
    Body mass index, diet, physical inactivity, and the incidence of dementia in 1 million UK women.

    論文要旨:
    <目的>
     中年期の肥満が認知症の原因であるか否か、低い体格指数(body mass index、BMI)、低カロリー摂取、および運動不足は原因なのか、あるいは認知症の緩徐な発症の単なる結果であるかを、大規模な20年間の前向き研究においてこれら要因を早期から記録して、それを5年未満、5~9年、10~14年、および15年以上の経過観察期間において個別に認知症発見率と関連させることで確定すること。
    <方法>
     全部で113万6,846人の英国人女性(平均年齢56歳、標準偏差5歳)が1996年から2001年に募集され、身長、体重、カロリー摂取、および運動不足について質問された。彼女たちは国民健康保険(National Health Service、NHS)の記録によって2017年まで追跡され、認知症の病名での病院入院が特定された。Cox回帰を用いて特定の経過観察期間について最初の認知症の調整済罹患率比(adjusted rate ratios、RRs)を求めた。
    <結果>
     ベースライン調査から15年後、たった1%が経過観察から失われ89%が認知症なしに生存していたが、平均77歳(標準偏差4歳)の時点でそのうちの18,695人に認知症が後に発見された。15年以降の認知症発見はベースラインの肥満と関連したが(BMI 30+ vs 20-24 kg/m2: RR 1.21, 95% 信頼区間 1.16-1.26, p < 0.0001)、ベースライン時点の低いBMI、低カロリー摂取、または運動不足とは明確な関連を認めなかった。後者の3要因は最初の10年の認知症罹患率の上昇と関連したが、これらの関連は時間と共にかなり弱くなって15年以降はゼロに近づいた。
    <結論>
     中年期の肥満は認知症の一つの原因と思われる。対照的に低いBMI、低カロリー摂取、および運動不足と、最初の10年の経過観察期間における認知症発見の関連の大部分または全部は、前臨床的疾患が原因の行動変化で説明し得る。

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運動不足、心血管疾患、および認知症のリスク:個々の参加者のメタ解析
    Kivimäki M et al. BMJ 2019 Apr 17; 365: l1495.
    Physical inactivity, cardiometabolic disease, and risk of dementia: an individual-participant meta-analysis.

    論文要旨:
    <目的>
     運動不足が認知症のリスク因子であるか否かを、この関連における心臓代謝疾患の役割と、認知症の前臨床的(前駆)段階における身体活動の変化から生じる逆の因果バイアスに注意して調べること。
    <デザイン>
     19の前向き観察的コホート研究のメタ解析。
    <データソース>
     Working Populations Consortium、the Inter-University Consortium for Political and Social Research、およびthe UK Data Serviceにおける個々の参加者のメタ解析で、9,741の潜在的研究から全部で19の研究を含めた。
    <レビュー方法>
     検索方略は前向きコホート研究から個々の参加者データを収集するように計画された。暴露は運動不足、主要アウトカムはあらゆる原因による偶発認知症とアルツハイマー病、副次アウトカムは偶発心臓代謝疾患(つまり、糖尿病、冠動脈心疾患、および脳卒中)であった。変量効果メタ解析を用いて要約推定値を得た。
    <結果>
     当初は認知症を認めず、研究登録時に運動不足を測定して、電子的健康記録と連結された404,840人(平均年齢:45.5歳、女性:57.7%)が研究母集団に含まれた。リスクのある600万人年において、我々は2,044のあらゆる原因による認知症罹患ケースを記録した。認知症サブタイプに関する研究では、アルツハイマー病の罹患ケースが520万人年中1,602であった。
     認知症診断の10年前までで測定した場合(つまり認知症の前臨床的段階)、運動不足はあらゆる原因による認知症(ハザード比 1.40, 95% 信頼区間 1.23 to 1.71)とアルツハイマー病(1.36, 1.12 to 1.65)の罹患率上昇と関連した。認知症発症の10年以上前で身体活動を評価することで逆の因果を最小化した場合、身体的に活発な参加者と不活発な参加者の間で認知症リスクに違いはなかった(2つのアウトカムについてのハザード比:1.01 [0.89 to 1.14]、0.96 [0.85 to 1.08])。運動不足は偶発糖尿病(ハザード比 1.42, 1.25 to 1.61)、冠動脈心疾患(1.24, 1.13 to 1.36)、および脳卒中(1.16, 1.05 to 1.27)のリスク上昇と一貫して関連した。心臓代謝疾患が認知症に先行した人では、運動不足は認知症と有意に関係しなかった(認知症発症の10年以上前で評価された身体活動についてのハザード比 1.30, 0.79 to 2.14)。
    <結論>
     逆の因果バイアスに対処した分析において、心臓代謝疾患を発症した運動不足の人のサブグループで過剰な認知症リスクへの示唆が観察されたものの、運動不足はあらゆる原因による認知症またはアルツハイマー病とは関連しなかった。

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展望-因果推論法の精神医学の疫学への適用
    Ohlsson H and Kendler KS. JAMA Psychiatry. Published online December 11, 2019.
    Applying Causal Inference Methods in Psychiatric Epidemiology: A Review.

    論文要旨:
    <重要性>
     推定されたリスク因子と精神疾患および物質使用障害の関連が広く文献に認められるが、そのような結果に基づく予防努力は危険である。因果推論法(causal inference methods)の適用は困難ではあるが挑戦に値するものであり、精神病理の現実的で実行可能な病因論開発の中核をなす。
    <見解>
     因果推論法はランダム化臨床試験(RCT)、自然実験、統計モデルに分けることができる。最初の2つのアプローチは、既知または未知の交絡因子の両方を潜在的に統制し得るが、統計的手法は既知または測定された交絡因子のみを統制する。標準であるRCTには、特に一般化可能性に関して重要な制約がある。さらに、倫理的根拠についてRCTは精神医学の疫学における多くの重大な争点に対処できていない。
     我々は例を挙げつつ、準ランダム化の前提を満たす方法、操作変数(instrumental variable)を用いる方法(操作変数法)、あるいは前後比較(pre-post)デザイン、不連続回帰(regression discontinuity)デザイン、または相関(co-relative)デザインを用いる方法を展望する。どの方法も、特に準ランダム化と一般化可能性のもっともらしさについて長所と欠点を持つ。因果推論法のための統計的手法の主要な群のうち、傾向スコア(propensity scoring)と周辺モデルを調べるが、それはリスク因子暴露の強い予測因子を持つサンプルに最もよく適合する。
    <結論と関連性>
     因果推論法は、因果モデルと予防努力についての情報を提供するため重要である。「因果関係はもっぱらRCTによって確実に解決することができ、有用な推論を潜在的に提供できる他の方法はない」とする見方はあまりにも単純である。むしろ、各々の方法は異なる長所と欠点を持つのであって、過激すぎる因果関係の主張やRCTが実行不可能である場合は潜在する因果情報に到達できないとする極端を、我々は避けることが必要である。三角測量(triangulation)、つまり因果推論を説明する別々の方法を同一の設問への取り組みに適用することが、結果として生じる因果関係の主張の信頼性を増すであろう。

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併存する双極性障害と強迫症/強迫性障害の治療におけるアリピプラゾールの増強療法:系統的レビュー
    Amerio A et al. J Affect Disord 2019; 249: 15-19.
    Aripiprazole augmentation in treating comorbid bipolar disorder and obsessive-compulsive disorder: A systematic review.

    論文要旨:
    <背景>
     双極性障害と強迫症/強迫性障害の明らかな併存は精神医学ではよくある状態であるが、双極性-強迫性障害の治療は未解決の臨床的課題である。セロトニン再取り込み阻害薬が強迫症の1次治療であるが、双極性障害の気分不安定性を誘発することがある。最適な治療法はいまだ不明確である。
    <方法>
     双極性-強迫性障害併存患者の治療におけるアリピプラゾール増強療法について系統的レビューが実施された。MEDLINE、Embase、PsycINFO、およびCochrane Libraryの電子データベースを検索することで、2018年8月31日までに公表された関連論文が同定された。
    <結果>
     気分安定薬(炭酸リチウム、バルプロ酸)のアリピプラゾール増強療法は、たとえ低用量(10-15 mg/日)であったとしても、感情症状および強迫症状の有意な寛解を達成するのに有用であった。アリピプラゾールは全般的に安全で良好な忍容性を示した。
    <限界>
     大抵の研究は症例報告であった。主に専門外来部門からの患者参加が選択バイアスを招いて、地域全体への一般化を制限したかもしれない。
    <結論>
     利用可能な文献の不足および異質性に留意した利用可能なエビデンスの最良の解釈は、「気分安定薬のアリピプラゾール増強療法は、たとえ低用量であったとしても、双極性-強迫性障害患者に有効」と考えられる。

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併存する双極性障害と強迫症/強迫性障害の治療の改訂:系統的レビュー
    Amerio A et al. J Affect Disord 2019; 256: 433-440.
    Updates in treating comorbid bipolar disorder and obsessive-compulsive disorder: A systematic review.

    論文要旨:
    <背景>
     最近の5年間に、双極性障害と強迫症/強迫性障害の併存をめぐる議論が国際的精神医学会において活発化しており、治療戦略に関していくつかの研究が発表された。
    <方法>
     我々の以前の系統的レビューの改訂が、双極性障害-強迫性障害併存患者の臨床管理について実施された。MEDLINE、Embase、PsycINFO、およびCochrane Libraryの電子データベースを検索することで、2013年7月1日から2018年8月30日までに公表された関連論文が同定された。
    <結果>
     15の研究が含められた。選択された全ての研究において、双極性-強迫性障害患者は単独または第2世代抗精神病薬との併用で気分安定薬を受けていた。アリピプラゾール増強療法は維持療法としても、躁病エピソード中の強迫症状の治療についても有効性を示した(研究の40%、15研究中の6つ)。唯一の症例報告において、気分安定薬に抗うつ薬を追加すると両方の状態が臨床的寛解に至った。
    <限界>
     選択された研究のおよそ50%が症例報告であった。主に専門外来部門からの患者参加が選択バイアスを招いて、地域全体への一般化を制限したかもしれない。
    <結論>
     双極性-強迫性障害患者の治療では、気分の安定が第一目標となるべきである。炭酸リチウムへのアリピプラゾール増強療法が、治療抵抗性の併存患者において最良の選択肢と思われる。セロトニン再取り込み阻害薬の追加は、難治性の強迫症を持つ少数の双極性障害患者に限って必要かもしれない。

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再現可能な不安の遺伝的リスク座位:ミロン退役軍人プログラムにおける最多20万人の参加者からの結果
    Levey DF et al. Am J Psychiatry. Published Online:7 Jan 2020.
    Reproducible Genetic Risk Loci for Anxiety: Results From ∼200,000 Participants in the Million Veteran Program.

    論文要旨:
    <目的>
     不安症/不安障害はよくある疾患で、しばしば能力障害を引き起こす。この研究の目的は、うつ病/大うつ病性障害といった他の精神疾患としばしば併存する不安症および不安症状の遺伝的構造を調べることであった。
    <方法>
     遺伝、環境、および医療情報を含む世界で最も大きなバイオバンクの一つであるミロン退役軍人プログラム(the Million Veteran Program)を用いて、著者らは一次解析として不安の連続形質(全般性不安症2項目尺度のスコア[Generalized Anxiety Disorder 2-item scale、GAD-2]に基づく、N=199,611)、二次解析として不安症の医師による診断の自己報告(N=224,330)の全ゲノム関連研究(genome-wide association study、GWAS)を行った。
    <結果>
     GAD-2スコアについて、著者らはヨーロッパ系アメリカ人から5つ、アフリカ系アメリカ人から1つの全ゲノム有意シグナルを特定した。最も強い関連を、遺伝子発現の全体的な制御因子であるSATB1近傍の第3染色体上(rs4603973)、およびエストロゲン受容体をコードするESR1近傍の第6染色体上(rs6557168)に認めた。MAD1L1近傍の第7染色体上に特定された座位(rs56226325, MAF=0.17)は、かつて双極性障害と統合失調症のGWASで特定されたものであった。著者らはこれら結果を、不安についての2つの主要な公表済GWASの要約統計量において再現し、またGAD-2スコアの結果と不安(rg=0.75)、抑うつ(rg=0.81)、神経症傾向(rg=0.75)についてのかつてのGWASとの間に有意な遺伝相関のエビデンスを見出した。
    <結論>
     これは不安形質に関する現在のところ最大のGWASである。著者らは、遺伝子発現の全体的な制御(SATB1)、およびエストロゲン受容体α(ESR1)に関係する遺伝子近傍との新しい全ゲノム有意関連を特定した。加えて、著者らはいくつかの精神疾患にわたる遺伝的脆弱性と関連するかもしれない座位(MAD1L1)を特定した。この仕事は、不安および関連精神疾患の背後にある遺伝リスク機構に新たな知見を提供する。

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双極性障害の高リスクにある有症状の若者のための家族に焦点を当てた治療と強化された従来の治療の効果比較:ランダム化臨床試験
    David J. Miklowitz et al. JAMA Psychiatry. Published online January 15, 2020.
    Effects of Family-Focused Therapy vs Enhanced Usual Care for Symptomatic Youths at High Risk for Bipolar Disorder: A Randomized Clinical Trial.

    キーポイント:
    <疑問>
     双極性障害の高リスクにある若者のための家族に焦点を当てた治療は、気分障害エピソードを遅延させる点において有効か。
    <結果>
     このランダム化臨床試験には、有症状の気分障害と双極性障害の家族歴を持つ127人の若者(9~17歳)が含まれた。平均2年間において、12セッションの家族に焦点を当てた治療(心理教育、コミュニケーション、および問題解決技能トレーニング)を受けた双極性障害の高リスクにある若者は、集中的でない家族および個人心理教育を受けた若者より気分エピソードの間隔がずっと長かった。
    <意義>
     結果は、家族に焦点を当てた治療は双極性障害の高リスクにある若者においてより長い気分エピソード間隔と関連することを示唆する。

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スウェーデンの精神疾患を持つ人における暴力を受けるリスクと暴力を犯すリスク
    Amir Sariaslan et al. JAMA Psychiatry. Published online January 15, 2020.
    Risk of Subjection to Violence and Perpetration of Violence in Persons With Psychiatric Disorders in Sweden

    キーポイント:
    <疑問>
     精神疾患を持つ人における暴力を受けるリスクと暴力を犯すリスクは如何ほどか。
    <結果>
     このスウェーデンの精神疾患を持つ250,419人の国民コホート研究において、その疾患の発症後10年において、患者の7%未満が専門家による医学的治療を受ける必要があるほど重大な暴力を受けるか、暴力を犯した。
    <意義>
     精神疾患を持つ人は精神疾患を持たないその同胞よりも、およそ3から4倍暴力を受ける、または犯す傾向にある。

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統合失調症を持つ62,250人の全国的コホートにおける抗精神病治療と関連する身体疾患および死亡率の20年間にわたる経過観察研究
    Taipale H et al. World Psychiatry 2020; 19(1): 61-68.
    20-year follow-up study of physical morbidity and mortality in relationship to antipsychotic treatment in a nationwide cohort of 62,250 patients with schizophrenia (FIN20).

    論文要旨:
     抗精神病薬は統合失調症の再発予防に有効であるが、その長期使用は患者の身体的健康に対して有害であると一般的に信じられている。しかし、この見解を確認した長期的研究はない。この最長20年(中央値:14.1歳)の経過観察を行った全国登録に基づくコホート研究は、フィンランドで1972年から2014年に入院して統合失調症の治療を受けたすべての患者(N=62,250)において、重度身体疾患のマーカーとしての身体的健康問題のための入院のリスクと、抗精神病薬の使用に関連するあらゆる原因による死亡、心血管疾患、および自殺による死亡のリスクの評価を目的とした。抗精神病薬の使用(抗精神病薬の未使用と比較した抗精神病薬のどれかを使用)と特定の抗精神病薬の使用が調査され、アウトカムは身体疾患による入院と心血管疾患による入院、あらゆる原因による死亡、心血管疾患による死亡、および自殺による死亡であった。入院に基づくアウトカムは、層別Coxモデルで同一個人の使用期間と未使用期間を比較することで選択バイアスを除く個人内デザインを用いて分析された。死亡率のアウトカムは、従来の個人間Cox多変量モデルを用いて評価された。
     同一個人内の非曝露期間と比較した抗精神病薬の使用中の、あらゆる身体疾患による入院と心血管疾患による入院についての調整済ハザード比(adjusted hazard ratio、aHR)は、それぞれ1.00 (95% CI: 0.98-1.03) と 1.00 (95% CI: 0.92-1.07)であった。抗精神病薬の未使用中と比較した使用中の、あらゆる原因による死亡率のaHRは0.48 (95% CI: 0.46-0.51)、心血管疾患による死亡率のaHRは0.62 (95% CI: 0.57-0.67)、自殺による死亡率のaHRは0.52 (95% CI: 0.43-0.62)であった。あらゆる原因による(aHR=0.39, 95% CI: 0.36-0.43)、心血管疾患による(aHR=0.55, 95% CI: 0.47-0.64)、そして自殺による死亡率(aHR=0.21, 95% CI: 0.15-0.29)に関して、最も有益な死亡率のアウトカムはクロザピンの使用と関連した。最長20年間の観察中の累積死亡率は、抗精神病薬の未使用については46.2%、抗精神病薬の使用については25.7%、クロザピンの使用については15.6%であった。これらのデータは、長期の抗精神病薬使用は「入院につながる重度な身体疾患を増加させない」、「特にクロザピンで治療された患者において死亡率の相当な低下と関連する」ことを示す。

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アルツハイマー病を持つ人における抗精神病薬の使用と関連する頭部外傷のリスク
    Tapiainen V et al. J Am Geriatr Soc. Published online January 7, 2020.
    The Risk of Head Injuries Associated With Antipsychotic Use Among Persons With Alzheimer's disease.

    論文要旨:
    <背景・目的>
     抗精神病薬の使用は高齢者の転倒リスクと関連するが、頭部外傷のリスクを調べた先行研究はない。我々はアルツハイマー病を持つ地域住民において、抗精神病薬使用と頭部外傷リスクの関連を研究した。
    <デザイン>
     全国登録に基づくコホート研究。
    <設定>
     薬剤使用とアルツハイマー病(Medication Use and Alzheimer's Disease、MEDALZ)コホート、フィンランド。
    <参加者>
     MEDALZコホートには臨床的に確定されたアルツハイマー病診断を2005年から2011年に受けたフィンランド地域住民が含まれる。偶発抗精神病薬使用者が処方登録から特定され、年齢、性別、アルツハイマー病診断からの時間について未使用者とマッチされた(21,795組のマッチド・ペア)。頭部外傷の既往、または統合失調症の病歴を持つ人は除外された。
    <測定>
     アウトカムは病院への入院、または死亡に至った偶発頭部外傷(ICD-10コード S00-S09)と外傷性脳損傷(ICD-10コード S06.0-S06.9)であった。IPTW(訳注:傾向スコアの逆数を用いてその患者の予後に与える影響度に重み付けを行うもので、周辺構造モデルとも呼ばれる)Cox比例ハザードモデルが、相対リスクを評価するために使用された。
    <結果>
     抗精神病薬の使用は頭部外傷(100人年あたり事象率 = 1.65 [95% CI = 1.50-1.81](使用者)および 1.26 [95% CI = 1.16-1.37](未使用者); IPTWハザード比 [HR] = 1.29 [95% CI = 1.14-1.47])および外傷性脳損傷(100人年あたり事象率 = 0.90 [95% CI = 0.79-1.02](使用者)および 0.72 [95% CI = 0.65-0.81](未使用者); IPTW HR = 1.22 [95% CI = 1.03-1.45])のリスク上昇と関連した。リスペリドン使用者と比べてクエチアピン使用者により高い外傷性脳損傷リスクを認めた(IPTW HR = 1.60 [95% CI = 1.15-2.22])。
    <結論>
     これらの結果は、かつて報告された有害事象・作用に加えて、抗精神病薬の使用がアルツハイマー病を持つ人の頭部外傷および外傷性脳損傷のリスクを増す可能性を示す。したがって、その使用はAGS Beers Criteria®によって推奨されるものより重度の神経精神症状に限定されるべきである。加えて、リスペリドン使用者と比べてクエチアピン使用者により高い外傷性脳損傷の相対リスクは、今後の研究で確認されるべきである。

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妊婦における不眠症状治療のためのデジタル認知行動療法の効果:ランダム化臨床試験
    Jennifer N. Felder et al. JAMA Psychiatry. Published online January 22, 2020.
    Efficacy of Digital Cognitive Behavioral Therapy for the Treatment of Insomnia Symptoms Among Pregnant Women: A Randomized Clinical Trial.

    キーポイント:
    <疑問>
     不眠症状を持つ妊婦において、標準治療と比較したデジタル認知行動療法の効果はどのくらいか。
    <結果>
     この208人の不眠症状を持つ妊婦のランダム化臨床試験において、標準治療と比較して不眠症治療のためのデジタル認知行動療法は、不眠症状の重症度、睡眠効率、全般的な睡眠の質、不眠症事例性、抑うつ症状、および不安症状のより大きな改善と統計的に有意に関連した。
    <意義>
     デジタル認知行動療法は、妊娠中の不眠症状を改善するための効果的で拡張性があり、安全かつ許容できる介入である。

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うつ病を持つ成人患者の脳波記録からエスシタロプラムの治療アウトカムを予測するための機械学習の利用
    Andrey Zhdanov et al. JAMA Netw Open 2020; 3(1): e1918377.
    Use of Machine Learning for Predicting Escitalopram Treatment Outcome From Electroencephalography Recordings in Adult Patients With Depression.

    キーポイント:
    <疑問>
     安静状態(resting-state)脳波記録シグナルの解析から、うつ病を持つ患者の状態がエスシタロプラム(escitalopram)による治療で改善するか否かを予測することは可能か。
    <結果>
     このうつ病と診断された患者122人からのデータの予後予測研究において、サポートベクターマシン(support vector machine [SVM]、訳注:パターン認識手法の一つ)分類器は、エスシタロプラムの治療アウトカムの予測について82.4%の正確度を示した。
    <意義>
     適切な解析方法で補完された場合、安静状態脳波記録はうつ病を持つ患者の治療を改善する手段となり得る。

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我々の現代的うつ病概念の起源―メランコリアの歴史(1780-1880):レビュー
    Kenneth S. Kendler. JAMA Psychiatry. Published online January 29, 2020.
    The Origin of Our Modern Concept of Depression—The History of Melancholia From 1780-1880: A Review.

    論文要旨:
     うつ病の現代的概念は、1780年代から1880年代の100年間におけるメランコリア(melancholia)についての初期の診断的定式化から生まれた。この歴史的概観では、この進展を能力心理学(faculty psychology、訳注:人間についていくつかの能力を想定し、それら能力の活動ないし相互作用により心的現象を説明しようとする学説)と了解可能性(understandability)の概念の中心的役割について概要を述べた12人の著者の記述からたどる。
     Cullen、Pinel、およびEsquirolを含む5人の著者の1780年から1830年代の著作は、メランコリアを知能または判断の障害の一つ、“partial insanity”(しばしば狂気と関連するが常にではない)と定義した。1850年代のGuislainおよびBucknillとTukeによる2つのテキストはパラダイム間の移行期であった。両テキストとも無視されてきた障害―妄想を伴わないメランコリアを強調し、それは(知能ではなく)気分の一次的障害を示すと論じた。
     1860年代から1880年代の最終段階において、5人の著者(Griesinger、Sankey、 Maudsley、Krafft-Ebing、およびKraepelin)の全員が妄想性メランコリア(delusional melancholia)の原因についての問題に直面した。各々の著者がメランコリアは一次的な気分障害であると結論したが、妄想は異常な気分から理解可能な様式で現れると論じた。この100年間で、能力心理学における妄想性メランコリアという用語の説明が、メランコリアの「知能から気分」モデルを「気分から知能」モデルに逆転させた。
     19世紀の偉大な疾病分類学者(nosologists)は単純な帰納的過程、すなわち患者の症状、徴候、後には経過をまとめることで精神疾患を創り出しているように見える。この歴史がこの物語の2つの複雑性を暗示する。第1に、ボトムアップの臨床研究に加えてこれら疾患分類学者は、18世紀の哲学者によって提案された能力心理学理論からのトップダウンで仕事をしていた。第2に、複数の能力障害を持つ患者群について疾患分類学者は、一次的な因果的役割を割り当てるために了解可能性についての判断を用いた。
     この歴史的モデルは、患者の観察から疾患分類カテゴリーに至る道筋―我々の診断カテゴリーの概念的誕生は、大方の理解よりも複雑であったことを示唆する。

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英国バイオバンク住民研究における成人のうつ病、動脈硬化、およびメタボリック症候群の関連:媒介分析*
    Alex Dregan et al. JAMA Psychiatry. Published online January 29, 2020.
    Associations Between Depression, Arterial Stiffness, and Metabolic Syndrome Among Adults in the UK Biobank Population Study: A Mediation Analysis.

    キーポイント:
    <疑問>
     うつ病と末梢で評価された動脈硬化の関連は、メタボリック症候群によってどの程度媒介されるか。
    <結果>
     この40~69歳の成人124,445名の住民ベースの大規模コホート研究において、うつ病と動脈硬化の関連の最大3分の1がメタボリック症候群で媒介された。メタボリック症候群に炎症が加わることで、うつ病と動脈硬化の関連の媒介割合が増加した。
    <意義>
     メタボリック症候群と炎症の結合データは、うつ病を持つ成人患者における将来の心血管リスクの早期発見を改善するかもしれない。
     *注目している因果関係(本研究では「うつ病と末梢の動脈硬化の関連」)が、ある因子(本研究では「メタボリック症候群」)によってどの程度媒介されるかを検討する手法。

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うつ病のスクリーニングのための9項目患者健康質問票(PHQ-9)の正確度:個別の参加者データのメタ解析
    Levis B et al. BMJ 2019; 365: l1476.
    Accuracy of Patient Health Questionnaire-9 (PHQ-9) for screening to detect major depression: individual participant data meta-analysis.

    論文要旨:
    <目的>
     うつ病のスクリーニングのための9項目患者健康質問票(PHQ-9)の正確度を確定する。
    <デザイン>
    個別の参加者データのメタ解析。
    <データ源>
    Medline、Medline In-Process and Other Non-Indexed Citations、PsycINFO、および Web of Science(2000年1月~2015年2月)。
    <選択基準>
     PHQ-9スコアと妥当性が評価された診断面接によるうつ病診断を比較する適格研究。一次研究のデータと、一次レポートから抽出されたと研究レベルのデータが統合された。臨床医が実施する半構造化(semistructured)面接、非専門家が実施する全構造化(fully structured)面接、および簡便な全構造化面接であるMINI(the Mini International Neuropsychiatric)を用いた研究において、5~15のカットオフ・スコアについて、統合感度と特異度を推定するために二変数・変量効果メタ解析が用いられた。メタ回帰を用いて単一モデルで全サブグループ変数を検討しながら、参加者サブグループごとに感度と特異度を調べた。
    <結果>
     72のうち58の適格研究からデータを得た(総計n=17,357; うつ病症例 n=2,312)。半構造化面接を用いた研究では、10またはそれ以上のカットオフ・スコアで統合感度と特異度が最高となった(29研究, 6,725参加者; 感度 0.88, 95%信頼区間 [0.83-0.92]; 感度 0.85 [0.82-0.88],)。5~15のカットオフ・スコアを通して、半構造化面接を用いた場合の感度は全構造化面接(MINIを除く14研究, 7,680参加者)より5~22%、MINI(15研究, 2,952参加者)より2~15%高くなった。特異度は診断面接間で同程度であった。
    PHQ-9の感度は同程度のようであるが特異度は高齢患者より若年患者の方が低いかもしれない。10またはそれ以上のカットオフ・スコアは年齢に関係なく使用可能である。
    <結論>
     半構造化診断面接と比較したPHQ-9の感度は、参照基準を統合した以前の標準的メタ解析における感度よりも高かった。10またはそれ以上のカットオフ・スコアは、全体およびサブグループについて感度と特異度を最大化した。
    <登録>
     PROSPERO CRD42014010673.

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未治療のうつ病に対する第1および第2選択治療戦略の最適化―SUN☺D研究:実際的多施設共同評価者盲検ランダム化比較試験
    Kato T et al. BMC Med 2018; 16(1): 103.
    Optimising first- and second-line treatment strategies for untreated major depressive disorder - the SUN☺D study: a pragmatic, multi-centre, assessor-blinded randomised controlled trial.

    論文要旨:
    <背景>
     うつ病の治療を始める患者について、現在のガイドラインは抗うつ薬の用量を忍容性に問題がなければ承認範囲の最大量まで増やすことを推奨している。また患者が数週以内に寛解を達成しない場合、もう一つの抗うつ薬を加える、あるいは他に切り替えるとある。しかし、これらガイドライン戦略の相対的利益は未確定である
    <方法>
     この多施設共同オープンラベル評価者盲検の実際的試験には2つのステップがあった。ステップ1はオープン・クラスターランダム化を用いて、外来診療部門を3週までに1日最高50mg群、または1日最高100mg群に割り付けた。ステップ2は中央ランダム化を用いて、3週時に寛解しなかった患者をセルトラリンの継続、ミルタザピンの追加、またはミルタザピンへの切り替えに割り付けた。主要評価項目は9項目の患者健康質問票(the Patient Health Questionnaire-9、PHQ-9)(スコアの範囲は0~27、高スコアほどうつ病が重い)で測定された9週時のうつ病重症度であった。重要なベースライン共分散で調整した混合モデル・反復測定分析を採用した。
    <結果>
     我々は2010年12月から2015年3月の間に日本の48の外来診療部門において、これまで未治療のうつ病を持つ2011人の参加者を募集した。ステップ1において、970人の参加者が1日50mg群に、1041人が1日100mg群に割り付けられ、1927人(95.8%)が主要評価項目を提供した。3週時の調整済PHQ-9スコアは1日50mg群と1日100mg群の間で統計的有意差はなかった(0.25ポイント, 95% 信頼区間(CI), - 0.58 to 1.07, P = 0.55)。他の評価項目も2群で同様であった。
     ステップ2において、3週時に寛解しなかった1646人の参加者がセルトラリンの継続(n = 551)、ミルタザピンの追加(n = 537)、またはミルタザピンへの切り替えにランダム化され、1613人(98.0%)が主要評価項目を提供した。9週時にセルトラリンの継続と比較してミルタザピンの追加は0.99ポイント(0.43 to 1.55, P = 0.0012)のPHQ-9スコアの減少を、ミルタザピンへの切り替えは1.01ポイントの減少を達成した(0.46 to 1.56, P = 0.0012)。組み合わせは寛解パーセントを12.4%(6.1 to 19.0%)、切り替えは8.4%(2.5 to 14.8%)増価させた。有害作用に違いはなかった。
    <結論>
     新規発症のうつ病を持つ患者において、セルトラリンを50mgから100mgに増量する有利性は見出せなかった。3週までに寛解しなかった患者は、セルトラリンからミルタザピンに切り替える、あるいはミルタザピンを加えることで、9週時に抑うつ症状の軽減において小さな利得を得た。
    <試験登録>
     ClinicalTrials.gov, NCT01109693. Registered on 23 April 2010.

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統合失調症はEBウイルスに対する異常免疫反応と関連する
    Dickerson F et al. Schizophr Bull 2019; 45(5): 1112-1119.
    Schizophrenia is Associated With an Aberrant Immune Response to Epstein-Barr Virus.

    論文要旨:
    <背景>
     EBウイルス(Epstein-Barr virus、EBV)は、高度に蔓延している中枢神経系に感染して持続感染を成立させ得るヒトヘルペスウイルスである。
    <方法>
     固相免疫測定法が、統合失調症を持つ432人と精神疾患の既往のない311人においてEBVウイルス粒子への免疫グロブリンG(IgG)クラス抗体を測定してタンパク質を特定するために用いられた。ウエスタンブロット試験が、特定のEBVタンパクへの反応性を実証するために実施された。統合失調症の多遺伝子リスクが、ゲノム配列決定アレイから計算された。臨床的・遺伝的・人口統計的測定を組み入れた多変量解析を用いて、グループ間の抗体レベルが比較された。
    <結果>
     統合失調症を持つ人は対照母集団と比較して、EBVウイルス粒子に対する抗体レベルが著明に上昇していた。追加解析はEBVウイルス外殻抗体(EBV-viral capsid antibody、VCA)への反応レベルの上昇を示したが、EBV核抗原-1(EBV nuclear antigen-1、EBNA-1)または他のヒトヘルペスウイルスに対してはそうではなかった。ウエスタンブロット解析は、統合失調症を持つ人のグループにおけるVCAタンパク質への反応性上昇を確認し、EBNA-1への抗体レベルの上昇はないことを実証した。
     遺伝解析はEBVウイルス粒子に対する抗体レベルの上昇の相加的効果と、統合失調症への遺伝的感受性、すなわち両タイプのマーカーレベルが上昇している人は統合失調症の診断について8.5倍超のオッズを有することを示した。
    <結論>
     統合失調症を持つ人は、全てではないがいくつかのEBVタンパク質に対する抗体レベルが上昇していて、これはEBV感染に対する異常反応を示唆する。この異常反応は統合失調症および関連疾患の免疫病理の一因かもしれない。

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抗うつ薬とヨガで治療されたうつ病を持つ患者における神経認知機能と血清脳由来神経栄養因子レベルの改善
    Halappa NG et al. Indian J Psychiatry 2018; 60(1): 32-37.
    Improvement in neurocognitive functions and serum brain-derived neurotrophic factor levels in patients with depression treated with antidepressants and yoga.

    論文要旨:
    <背景・目的>
     うつ病を持つ患者の認知障害はよく知られている。この研究はうつ病を持つ患者において、特定の神経心理学的機能に対する抗うつ薬とヨガ療法の併用、ヨガ療法単独、および抗うつ薬単独の効果を調べた。また、神経心理学的検査の変化と血清脳由来神経栄養因子(brain-derived neurotrophic factor、BDNF)レベルの変化の間の相関を探索した。
    <対象・方法>
     抗うつ薬の投与を受けたことがない、あるいは抗うつ薬を服用していないうつ病通院患者が、抗うつ薬のみ(n = 23)、抗うつ薬とヨガ療法(n = 26)、またはヨガ療法のみ(n = 16)を受けた。うつ病はハミルトンうつ病評価尺度を用いて評価された。神経心理学的検査には数字の順唱と逆唱、レイ聴覚性言語学習検査、およびTrail Making Test(TMT-AとTMT-B)が含まれた。これらの検査は患者では治療の3ヶ月前と3ヶ月後に、健常対照者(n = 19)では1度行われた。
    <統計解析>
     ベースラインの差が、独立サンプルのt検定、カイ二乗検定、および1元配置の分散分析を用いて分析された。ベースラインから経過観察までの変化を分析するために、対応のあるt検定が用いられた。2変数間で変化の関連を探索するためにピアソン相関が用いられた。
    <結果>
     患者は大抵の神経心理学的検査において成績が不良であった。3ヶ月後に有意な改善を認めた―大多数のテストについて患者の成績は健常対照のそれと同等であった。ヨガ単独群において、BDNFレベルの増加とTMT-A時間の改善に有意な逆相関が観察された(r = -0.647; P = 0.009)。
    <結論>
     まとめると、ヨガ療法単独または薬剤との併用は、うつ病を持つ患者の神経心理学的機能の改善と神経可塑的効果に関連する。

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治療抵抗性うつ病を持つ服薬中の患者において経頭蓋磁気刺激は左背外側前頭皮質と辺縁領域間の安静時脳波・機能的結合性を調節する
    Kito S et al. J Neuropsychiatry Clin Neurosci 2017; 29(2): 155-159.
    Transcranial Magnetic Stimulation Modulates Resting EEG Functional Connectivity Between the Left Dorsolateral Prefrontal Cortex and Limbic Regions in Medicated Patients With Treatment-Resistant Depression.

    論文要旨:
    高頻度の左前頭前皮質への反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)は治療抵抗性うつ病に対して有効であることが示されてきた。しかし、rTMSの機能的結合性への効果は今も明らかにされていない。rTMS前後の機能的結合性の変化を調べるために、治療抵抗性を持つ患者14人の安静時脳波がベースラインと4週時*の2回記録された。脳波データはsLORETAを用いて解析された。結果は、高頻度の左前頭前皮質へのrTMSは左背外側前頭皮質と辺縁領域(帯状皮質膝下部と海馬傍回を含む)間の安静時脳波・機能的結合性を調節することを示す。

    *4週時に14例中4例(28.6%)が寛解(平均HDSRスコアはベースラインの24.1点から13.6点に低下)

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小児虐待およびネグレクトの破壊的な臨床的帰結:気分障害における易罹患性の増加と不良な治療反応
    Lippard ETC and Nemeroff CB. Am J Psychiatry 2020; 177(1) :20-36.
    The Devastating Clinical Consequences of Child Abuse and Neglect: Increased Disease Vulnerability and Poor Treatment Response in Mood Disorders.

    論文要旨:
     発達のすべての段階において小児期虐待が長期的影響を及ぼし得ることが多くのエビデンスにより示されてきた。それは著明な精神疾患と身体疾患のリスク上昇と関連する。このレビューは、気分障害の疾患易罹患性に対する小児期虐待の効果を調べた文献、特に気分障害を持つ人において小児期虐待がより広範であり、初回気分エピソード、エピソードの再発、より多い併存症、および自殺念慮と自殺企図のリスク上昇と関連することを示す横断研究および最新の縦断研究を要約する。それは疾患易罹患性とより悪性の疾病経過に寄与するかもしれない視床下部-下垂体-副腎系と炎症性サイトカインの変化を含む小児期虐待と関連する持続的変化に要約される。著者らは疾患易罹患性と疾病経過に影響を与え得るいくつかの候補遺伝子および環境因子(例えば、物質使用)と、これらの関係を媒介するかもしれない小児期虐待後の神経生物学的変化を検討する。諸研究は修正可能な機序への洞察を与え、治療戦略と予防戦略の両方を改善するための方向性を提供する。

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食物フラボノールとアルツハイマー型認知症のリスク
    Holland TM et al. Neurology. Published online January 29, 2020.
    Dietary flavonols and risk of Alzheimer dementia.

    論文要旨:
    <目的>
     食事からのフラボノール(flavonol、訳注:3-ヒドロキシフラボン骨格を有するフラボノイドの一群、フラバノール[flavanol、カテキンなど]とは異なる)摂取はアルツハイマー型認知症と関連するか。
    <方法>
     本研究は、現在進行中の地域ベースの前向きコホート研究(the Rush Memory and Aging Project [MAP])の参加者921人において実施された。参加者は毎年の神経学的評価と、妥当性を有する食物頻度質問票を用いた食事評価を受けた。
    <結果>
     当初は認知症がなかった分析サンプルのMAP参加者921人のうち、220人がアルツハイマー型認知症を発症した。サンプルの平均年齢は81.2歳(SD 7.2)、大多数(n = 691, 75%)が女性であった。総フラボノールの摂取が最も多い参加者は、より高水準の教育を受け、より多く身体的・認知的活動に参加した。年齢、性別、教育、APOE ɛ4、認知的・身体的活動への参加を調整したCox比例ハザードモデルにおいて、食事からのフラボノール摂取は偶発アルツハイマー型認知症と逆関連した。
     摂取の第1五分位値に対する第5五分位値のハザード比(Hazard ratio、HR)は次のとおりであった:総フラボノール, 0.52 (95% 信頼区間 [CI], 0.33-0.84); ケンペロール (kaempferol), 0.49 (95% CI, 0.31-0.77); ミリセチン (myricetin), 0.62 (95% CI, 0.4-0.97); イソラムネチン (isorhamnetin), 0.62 (95% CI, 0.39-0.98)。ケルセチン(Quercetin)はアルツハイマー型認知症と関連しなかった(0.69; 95% CI, 0.43-1.09)。
    <結論>
     食事からのフラボノール摂取が多いことは、アルツハイマー型認知症の発症リスクの低下と関連するかもしれない。

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統合失調症と診断された人の原因別損失生存年数:改善しているのか、それとも悪化しているのか
    Laursen TM et al. Schizophr Res 2019; 206: 284-290.
    Cause-specific life years lost among persons diagnosed with schizophrenia: Is it getting better or worse?

    論文要旨:
    <背景>
     統合失調症を持つ人は一般人口と比較して早期死亡のリスクが高い。我々は、どの種類の死因が超過死亡に寄与しているのかを定量して、1995年から2015年に統合失調症を持つ人の超過死亡の増加があったか否かを調査することを目的とした。
    <方法>
     デンマーク国民全員を含むコホートデザインを用いた。95歳の規定参照年齢と比較したコホートメンバーの損失生存年数を計算した。分解モデルを用いて、過去20年間の暦トレンドを含めて統合失調症を持つ人と一般人口の間の原因別死亡差を調べた。
    <結果>
     一般人口と統合失調症を持つ人の両方で過去20年間に生存年数の改善を認めた。統合失調症を持つ男性は一般人口より13.5年多く損失した(女性は11.4年)。一般人口と比較して、統合失調症を持つ人では自殺と事故について大きな改善を認めたが、この改善は病気による死亡と身体疾患の損失生存年数増加によって相殺された。
    <結論>
     我々の結果は、統合失調症を持つ人において一般身体疾患の集中的治療が急務であると強調する。そのような投資なしでは、(一般人口と比較した)統合失調症を持つ人の損失生存年数は今後数十年でさらに悪化し続けるだろう。

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統合失調症の生涯にわたる過剰な身体的併存症と死亡率:デンマークの全国民登録研究
    Brink M et al. Schizophr Res 2019; 206: 347-354.
    Excess medical comorbidity and mortality across the lifespan in schizophrenia: A nationwide Danish register study.

    論文要旨:
    <序論>
     重度精神疾患を持つ人は、未発見の/治療が十分でない身体疾患のリスクがより高く、結局は早期死亡のリスクとなる。この研究は、慢性の身体併存症が統合失調症の生涯にわたってどのように進展するか、および関連する死亡率への影響を調べた。
    <方法>
     統合失調症の生涯にわたる心血管疾患(CVD)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、癌、糖尿病の偶発症例とこれら疾患による死亡を同定するために、登録ベースの後方視的コホート内(nested)症例対照研究が行われた。
    <サンプル>
     統合失調症コホートは、1970~1979年における精神科病院部門への入院中に統合失調症診断(ICD-8: 295.0-3 + 295.9)を登録された18~40歳の4,924人から構成された。年齢と性別について、統合失調症ケースを一般人口の対照22,597人とマッチさせた。
    <結果>
     CVDと癌の率比(rate ratio、RR)は対照と同様であった。COPDと糖尿病のRRは生涯にわたって高かった。CVD、癌、肺疾患、または糖尿病が死亡前に診断される確率は、対照と比較して統合失調症ケースでは非常に低かった。あらゆる理由による死亡とCVD、COPD、糖尿病による死亡は、統合失調症のすべての年齢グループで高いままであった。身体的併存症の登録は生存の増加と関連した。
    <結論>
     過剰な身体的併存症は生涯にわたって持続して高齢にも及ぶ。統合失調症における主要な慢性の身体的併存症の発生は、年齢を重ねても糖尿病を除いて低下しない。

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統合失調症の再現可能なエピジェネティックリスク特性と脳のメチル化および機能の関連
    Junfang Chen et al. JAMA Psychiatry. Published online February 12, 2020.
    Association of a Reproducible Epigenetic Risk Profile for Schizophrenia With Brain Methylation and Function.

    キーポイント:
    <疑問>
     疾患特異的で脳のエピジェネティックな変化と疾患に関連する脳機能を予測する統合失調症のエピジェネティックリスクを導くことは可能か。
    <結果>
     この症例対照研究では、機械学習を用いることで再現可能な統合失調症の血中DNAメチル化特徴が同定され、それは背外側前頭前皮質と海馬の機能的結合性に関連し、背外側前頭前皮質と海馬の機能的結合性の死後脳サンプルで見出されたメチル化の相違にマップされ、シナプス機能と関連する生物学的経路の指標となった。統合失調症の多遺伝子リスクとの交互作用は認めなかった。
    <意義>
     これらの結果は、確立された中間機能表現型と脳のエピジェネティックな特徴と関連する統合失調症における系統的なメチル化特徴の存在を支持し、ゆえにそれは遺伝子-環境相互作用の生物学的効果を捕らえるのに有用に違いない。

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予後予測的妥当性を持つ精神病サブグループの探究と遺伝的基礎の探索
    Dominic B. Dwyer et al. JAMA Psychiatry. Published online February 12, 2020.
    An Investigation of Psychosis Subgroups With Prognostic Validation and Exploration of Genetic Underpinnings.

    キーポイント:
    <疑問>
     高次元の臨床データを用いたデータ駆動型クラスタリングは、予後および多遺伝子リスクと関連を持つ精神病サブグループを明らかにするか。
    <結果>
     この1223人を含むコホート研究は、大部分が双極性障害と統合失調症の診断を持つ765人の発見サンプルにおいて異なる臨床特徴、疾患軌跡、および学業達成度の遺伝的スコアを持つ5つのサブグループを同定した。結果の妥当性は458人のサンプルで確認された。
    <意義>
     厳密な妥当性を有する新規のデータ駆動型クラスタリングは、症状に基づく精神病分類を機能的アウトカム、遺伝的マーカー、および疾患の軌跡に基づく層別化へ拡張する方法を提供するかもしれない。

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アルコール使用障害に対する動機付け強化療法を併用したケタミンの単回注射:ランダム化ミダゾラム比較試験
    Dakwar E et al. Am J Psychiatry 2020; 177(2): 125-133.
    A Single Ketamine Infusion Combined With Motivational Enhancement Therapy for Alcohol Use Disorder: A Randomized Midazolam-Controlled Pilot Trial.

    論文要旨:
    <目的>
     アルコール使用障害に対する薬物療法と行動療法の有効性には限界があり、革新的機序を持つ新しい治療法が有益と考えられる。このパイロット試験において著者らは、アルコール依存を持ち動機付け強化療法に参加した成人へのケタミンの単回麻酔域下注射が飲酒転帰に影響するか否かを検証した。
    <方法>
     参加者は動機付け強化療法の5週間の通院治療計画の第2週に提供される52分間のケタミン(0.71 mg/kg, N=17)、または実薬対照のミダゾラム(0.025 mg/kg, N=23)の静脈内投与に無作為割り付けされた。注射後のアルコール摂取はTLFB法(timeline followback method、訳注:手帳などの「カレンダー」により飲酒機会などの記憶を呼び起こし、標準飲酒量フォーマットを使って1回に数種類のアルコールを飲んだ時でも正確に飲酒量を思い起こさせる手法)を用いて評価され、禁酒は尿中エチルグルクロニド(訳注:飲酒アルコールからのグルクロン酸抱合により生成されるエタノール代謝物)で確認された。ケタミンの注射後21日間にわたる日々の断酒をモデル化するために、縦断的ロジスティック混合効果モデルが用いられた。
    <結果>
     参加者(N=40)の大部分は中年で(平均年齢=53歳 [標準偏差=9.8])、白人が多く(70.3%)、大抵は雇用されていて(71.8%)、研究に参加する前に1日平均5ドリンク飲酒した。ミダゾラムと比較してケタミンは、断酒尤度を有意に増やし、再発までの時間を遅らせ、大量飲酒日尤度を低下させた。注射の忍容性は良好で、有害事象の結果として研究参加を取りやめた患者はいなかった。
    <結論>
     ケタミンの単回注射は、動機付け強化療法に参加したアルコール依存を持つ人の飲酒量を改善することが分かった。これらの予備的データは、アルコール使用障害の統合的薬物・行動療法における新しい方向性を示す。この有望な結果をより大規模なサンプルで再現するために、さらなる研究が必要である。
 
  1. 徐放性ナルトレキソン(naltrexone)またはブプレノルフィンとナロキソン(buprenorphine-naloxone)で治療されたオピオイド依存を持つ成人における不安、抑うつ、不眠:ランダム化臨床試験と経過追跡研究
  2. 自閉スペクトラム症を持つ成人における非社会的および社会的認知機能のパターン
  3. 治療開始前後における高齢者の抗うつ薬の使用と股関節骨折の関連
  4. 7テスラ・プロトン磁気共鳴スペクトロスコピーを用いた初回エピソード精神病を持つ患者の脳代謝評価
  5. 重度の精神疾患を持つ人におけるヒドロキシメチルグルタリルCoA還元酵素阻害薬、L型カルシウムチャネル拮抗薬、およびビグアニドと精神科入院・自傷率の関連
  6. バルプロ酸および他の抗てんかん薬への出生前曝露と子の注意欠如・多動症リスクの関連
  7. うつ病における治療反応予測のための脳波バイオマーカー:メタ解析
  8. デンマーク国民母集団における精神疾患内の併存調査
  9. 青年の統合失調症リスク非同義変異と被殻体積の関連:ボクセル単位・全ゲノム関連研究
  10. ベンゾジアゼピンまたは関連薬剤と肺炎のリスク:系統的レビューとメタ解析
  11. 注意欠如・多動症と入学月
  12. 成人における身体活動とうつ病の双方向的関係の評価:2サンプル・メンデル無作為化研究
  13. 小児期の鉛曝露と成人期のパーソナリティ特性および生涯の精神健康との関連
  14. 血清中の神経フィラメント動態は発症前アルツハイマー病の神経変性と臨床的進行を予測する
  15. アリピプラゾールと精神科入院、自傷、または自殺のリスクとの関連
  16. 大うつ病、双極性障害、および統合失調症の多遺伝子易罹患性とデンマーク一般住民におけるうつ病リスクの関連
  17. 一般市民患者における外傷性脳損傷後の心的外傷後ストレス障害とうつ病:TRACK-TBI研究
  18. 生活史と感情およびパーソナリティ特性から導かれる不眠障害のサブタイプ
  19. 米国における外来でのベンゾジアゼピン処方のパターン
  20. 胎児成長と一般的および特定の精神健康状態の関連
  21. 自殺リスクを持つ青年のための若者が指名する支援チームによる介入と11-14年の死亡転帰の関連:ランダム化臨床試験の副次解析
  22. 若年成人における有酸素運動の認知に対する効果:ランダム化臨床試験
  23. 青年期の大麻使用と若年成人期の抑うつ・不安・自殺傾向リスクとの関連:系統的レビューとメタ解析
  24. 自殺予防のための簡単な気遣いテキスト・メッセージを用いた軍人に対する標準的ケアの強化の効果:ランダム化臨床試験
  25. 周産期うつ病への予防介入:米国予防医療専門委員会の勧告声明
  26. アルコールおよびオピオイド使用障害の治療薬と自殺行動、過失による過量摂取、および犯罪
  27. アルコール依存またはアルコール使用障害治療における薬理学的にコントロールされた飲酒:ナルメフェン、ナルトレキソン、アカンプロセート、バクロフェン、およびトピラメートの系統的レビューと直接およびネットワークメタ解析
  28. ナルメフェン(nalmefene)はアルコール依存症の報酬期待を低下させる:実験的fMRI研究
  29. コクランレビュー:認知症におけるうつ病治療のための抗うつ薬
  30. 醜形恐怖症/身体醜形障害を持つ成人に対する治療者が提供する認知行動療法の効果と治療後効果:支持的精神療法と比較したランダム化臨床試験
  31. 統合失調症を持つ成人における抗精神病薬の多剤併用および単剤療法と精神科再入院の関連
  32. 統合失調症を持つ患者における向精神薬の追加投与の比較有効性
  33. トラゾドン(trazodone)使用と認知症リスク:住民ベースのコホート研究
  34. 精神病性障害では認知機能を支える機能的脳ネットワークの老化が加速されている
  35. 不眠症状を持つ女性におけるエピジェネティックな老化と免疫老化:女性の健康の先導的研究からの所見
  36. 母親の出産前のビタミン使用と若年同胞における自閉スペクトラム症の再現リスクの関連
  37. せん妄に対する薬理学的介入の反応性および安全性とせん妄の管理および予防の関連:ネットワークメタ解析
  38. 高リスクの人において自殺企図を予測する抑うつ症状の重症度と変動性
  39. ベンゾジアゼピン受容体作動薬の減薬:エビデンスに基づく臨床診療ガイドライン
  40. アルツハイマー病薬候補の加齢関連表現型スクリーニングは、イエルバ・サンタ(Yerba santa)から強力な神経保護化合物ステルビン(sterubin)を同定した
  41. 閾下精神病体験は援助未希求母集団からの非選択的サンプルにおいて臨床的アウトカムを予測するか:系統的レビューとメタ解析、新知見による強化
  42. 一般人口における白色雑音の会話錯聴:精神病体験および精神病危険因子との関連
  43. 閾下抑うつ症状を持つ過体重または肥満症の成人における総合栄養素補給と食品関連行動活性化療法のうつ病/大うつ病性障害予防に対する効果:MooDFOODランダム化臨床試験
  44. 肥満症とうつ病を持つ患者における統合された行動的減量法と問題解決療法のBMIと抑うつ症状に対する効果:RAINBOWランダム化臨床試験
  45. 子宮内感染曝露後の神経精神疾患の長期リスク
  46. うつ病/大うつ病性障害の前頭前皮質におけるモノアミン酸化酵素B総分布容積:[11C]SL25.1188陽電子放出断層撮影法(PET)研究
  47. 公的資金を受けた精神保健サービスにおいて自閉スペクトラム症を持つ子供のための個別化された精神保健介入を提供するセラピストの養成の有効性:クラスター・ランダム化臨床試験
  48. うつ病を持つ人の職場における生産性の全般的様式:absenteeismとpresenteeismは8つの異なる国々にわたって費用負担を強いる
  49. プライマリーケアにおけるうつ病の同定:症例発見尺度についての文献統合
  50. 米国における成人の注意欠如・多動症の有病率と関連性:全米併存疾患再調査(NCS-R2)から
  51. 注意欠如・多動症の治療薬とうつ病のリスク:全国縦断コホート研究
  52. うつ病/大うつ病性障害における共通の遺伝的変異と抗うつ薬の有効性:3つの全ゲノム薬理遺伝研究のメタ解析
  53. うつ病/大うつ病性障害におけるノルアドレナリントランスポーター:PET研究
  54. ヒト脳におけるデュロキセチンによるノルアドレナリントランスポーター占有率:(S,S)-[18F]FMeNER-D2を用いた陽電子放出断層撮影法(PET)研究
  55. うつ病/大うつ病性障害を持つ患者脳において、徐放性ベンラファキシンはノルアドレナリントランスポーターを阻害する:[18F]FMeNER-D2を用いた陽電子放出断層撮影(PET)研究
  56. 自殺企図と既遂の予測モデル:系統的レビューとシミュレーション
  57. アルコール薬物療法におけるアウトカムとしての飲酒リスクレベルの評価:3つのランダム化臨床試験の二次解析
  58. 脳画像計測に位置付けられた子供の脳機能と快感消失(anhedonia)の関連
  59. コホートおよび個人の物質使用と薬物使用・薬物使用障害への移行リスク、障害からの寛解の関連:世界精神保健調査からの知見
  60. 小児期の虐待の前向き測定と後向き測定の一致:系統的レビューとメタ解析
  61. 小児期早期から青年期におけるBMIと内在化症状の併存、共進展、時間的関係
  62. 自分で行うアプリによるバーチャル・リアリティ認知行動療法の高所恐怖症に対する有効性:ランダム化臨床試験
  63. 気分安定薬と双極性障害における脳卒中のリスク
  64. 青年期における大気汚染と精神病体験の関連
  65. 外来統合失調症患者に対するニトロプルシド・ナトリウム(Sodium Nitroprusside)の補助的静脈注射の有効性と認容性:ランダム化臨床試験
  66. 成人における自殺企図と併存精神疾患の家族集積性と共集積
  67. 自閉スペクトラム症を持つ子供の社会化を改善するためのウェアラブルデジタル介入の効果:ランダム化臨床試験
  68. 注意欠如・多動症を持つ子供の治療におけるサフラン(Crocus sativus L)とメチルフェニデート:ランダム化・二重盲検パイロット研究
  69. 注意欠如・多動症を持つ患者における精神病とメチルフェニデートまたはアンフェタミン
  70. うつ病の再発に対する小児期虐待の影響の皮質構造による媒介:2年間の縦断的観察研究
  71. 日本人労働者における抑うつ症状と併存健康問題によって引き起こされたabsenteeism とpresenteeismによる遂行能力損失の経済的影響
  72. 心理社会的要因と精神疾患を持つ労働者の職場復帰状況に対する同僚の見方:日本人母集団に基づく研究
  73. 仕事への満足と心理社会的ストレスの抑うつ症状の発症と持続への寄与:1年間の前向き研究
  74. アルコール使用障害を持つ男性とアルコールを過剰摂取するラットにおける早期断酒中の白質微細構造変化
  75. いじめを受けるリスクに関連する個人の脆弱性を同定する複数の多遺伝子スコアによる方法
  76. アミロイド陽電子放出断層撮影法は軽度認知障害または認知症を持つメディケア受益者の臨床的管理のその後の変更と関連するか。
  77. 注意欠如・多動症とパーソナリティ:メタ解析的レビュー
  78. 5因子モデルパーソナリティ特性は注意欠如・多動症と関連するが特定の神経認知プロフィールとは関係しない
  79. クロニンジャーのパーソナリティ次元と注意欠如・多動症:メタ解析的レビュー
  80. 治療抵抗性統合失調症に対する抗てんかん薬を用いたクロザピンの増強:ランダム化比較試験のメタ解析
  81. 運動と抑うつの予防:HUNTコホート研究(Health Study of Nord-Trøndelag County)の結果
  82. 骨格筋PGC-1α1はキヌレニン代謝を調整してストレス誘発性の抑うつに対するレジリエンスを介在する
  83. 統合失調症における脳の異質性とその多遺伝子リスクとの関連
  84. うつ病を持つ成人における認知行動療法提供様式の有効性と認容性:ネットワークメタ解析
  85. 稀なコピー数変異とうつ病リスクの関連
  86. 日本人サンプルにおけるクロニンジャーの気質と性格の7因子モデルの遺伝構造
  87. 2008~2013年のフランスにおける認知症負担に対するアルコール使用障害の寄与:全国的後方視コホート研究
  88. ニトロ化肉製品はヒトの躁病とラットの行動および脳の遺伝子発現変化と関連する
  89. 律動的脳回路の同期による高齢成人におけるワーキングメモリーの回復
  90. アルツハイマー病薬候補の加齢関連表現型スクリーニングは、イエルバ・サンタ(Yerba santa)から強力な神経保護化合物ステルビン(sterubin)を同定した
  91. プロバイオティック微生物の追加は急性躁病を持つ患者の再入院を予防する:ランダム化比較試験
  92. 1998~2015年に米国でうつ病の外来治療を受けた患者の治療および支出動向
  93. 成人のNMDA受容体抗体脳炎の精神病理学:系統的レビューと個別患者データの表現型解析
  94. 成人期の食事パターンと中年期の認知能力
  95. 神経認知機能は情動刺激に対する認知バイアスに影響するか:一般注意力と脅威に対する注意バイアスの関連
  96. 心的外傷後ストレス障害を持つ日本人女性における認知機能:運動習慣との関連
  97. 心的外傷後ストレス障害を持つ女性における炎症マーカーとその推定される認知機能への影響
  98. 母親の神経発達リスクアレルと早期曝露の関連
  99. うつ病を持つ人における線条体ドーパミントランスポーター結合の評価:生体陽電子放出断層撮影および剖検によるエビデンス
  100. 双極ⅠおよびⅡ型障害を持つ成人の治療におけるプラセボと比較した補助的インフリキシマブ(infliximab)の効果:ランダム化臨床試験
  101. 若年成人における快感消失(anhedonia)の軽減および左腹側線条体報酬反応と生活満足度の6カ月改善との関連
  102. 妊娠早期におけるベンゾジアゼピンへの偶発的曝露と自然流産の関連
  103. 不安およびストレス関連障害と関係する遺伝的バリアント:全ゲノム関連研究とマウスモデル研究
  104. 米国における若者の自殺の増加と13の理由の公開との関連
  105. 若者における環境悪化の負荷と精神病理、成熟、および脳行動パラメータの関連
  106. 持続性抑うつ障害の急性期治療の有効性と認容性:ネットワークメタ解析
  107. 成人の持続性抑うつ障害のための継続・維持療法の比較有効性
  108. 持続性抑うつ障害に対する認知行動分析システム精神療法(CBASP)、薬剤、または併用:個々の参加者データに基づくネットワークメタ回帰を用いた治療選択の個別化
  109. 重度かつ持続性の精神疾患の外来患者集団における原発性多飲水の同定:前向き観察研究
  110. gは一つの独立した存在か:三段論法と知能テストを用いた日本人の双生児研究
  111. 神経心理学的状態評価のための再施行可能なバッテリー(RBANS)の競合する因子構造の経験的比較:Project FRONTIER研究
  112. 神経心理学的状態評価のための再施行可能なバッテリー(RBANS)の不変2因子構造
  113. 軽度認知障害の疑いのある高齢患者におけるRBANSの因子構造:5因子構造のエビデンス
  114. アルツハイマー病サンプルで支持されたRBANSの5因子構造:神経心理学的評価法の妥当性に関して
  115. 治療抵抗性うつ病を持つ患者の再発予防のための経口抗うつ薬と併用されたエスケタミン鼻腔用スプレーの有効性:ランダム化臨床試験
  116. 精神病における内因性カンナビノイドシステムの攪乱の測定:系統的レビューとメタ解析
  117. カナダにおける幼児期の行動と成人の雇用賃金の関連
  118. 子供の思春期前後における虐待経験と成人の扁桃体機能の関連
  119. 問題のあるインターネット使用における認知欠損:40研究のメタ解析
  120. 多遺伝子リスクスコアは認知関連の経路を通して統合失調症の易罹患性を増加させる
  121. 統合失調症スペクトラム障害における個人の治療反応の違いの評価:メタ解析
  122. 抗コリン薬への曝露と認知症のリスク:コホート内症例対照研究
  123. 治療抵抗性うつ病において新規に開始された経口抗うつ薬と併用された可変容量エスケタミン鼻腔用スプレーの有効性と安全性:ランダム化・二重盲検・実薬対照研究
  124. 電気けいれん療法後の再発予防における継続薬物療法:ランダム化比較試験
  125. インド人の全ゲノム関連研究における統合失調症リスクとナイアシン代謝障害の関連
  126. 初回エピソード精神病を持つ患者におけるカンナビノイド1受容体の生体利用度
  127. インターネット・コンピューターゲーム依存の短期治療の有効性:ランダム化臨床試験
  128. 辺縁系優位の加齢関係性TDP-43脳症(LATE):コンセンサス作業部会からの報告
  129. 5カ国のコホートにおける遺伝および環境要因と自閉症の関連
  130. 生活スタイルおよび遺伝的リスクと認知症発症の関連
  131. メチオニン/ホモシステイン比と脳磁気共鳴画像測定および認知症リスクの関連
  132. クロザピンと他の内服第2世代抗精神病薬について統合失調症を持つ患者における入院とあらゆる理由による中止の関連:コホート研究の系統的レビューとメタ解析
  133. 複数エピソード統合失調症を持つ成人の急性期治療のための32の抗精神病薬の比較有効性と忍容性:系統的レビューとネットワークメタ解析
  134. うつ病を持つ高齢患者における薬理学的・非薬理学的介入の有効性と忍容性:系統的レビュー、一対比較とネットワークメタ解析
  135. 精神病リスク症候群における聴覚性オドボール刺激へのP300反応と臨床的帰結の関連
  136. 注意欠如・多動症を持つ子供と大人における早期死亡と併存精神疾患の関連
  137. 難民における精神病リスク:系統的レビューとメタ解析
  138. 若者における注意欠如・多動症の遺伝・環境リスクと軽躁症状の関連
  139. アラン・チューリングはアスペルガー症候群であったか
  140. 単極うつ病に対する電気けいれん療法後の自殺と再入院の予防のためのリチウム:住民登録研究
  141. うつ病の再発予防のための薬物療法を併用した継続電気けいれん療法と薬物療法単独の比較:ランダム化比較試験
  142. 精神病性うつ病に対するオランザピンとセルトラリン、およびオランザピンとプラセボの二重盲検・ランダム化比較試験:精神病性うつ病の薬物療法研究(STOP-PD)
  143. 寛解した精神病性うつ病の固定化治療:STOP-PD研究
  144. 寛解中の精神病性うつ病を持つ患者の再発に対するプラセボと比較したオランザピン継続の効果:STOP-PD IIランダム化臨床試験
  145. 自閉症を持つ人と持たない人を比較した研究の効果量の経時変化:メタ解析
  146. 臨床的に意味のある心的外傷後ストレス障害の改善と2型糖尿病のリスクとの関連
  147. 深層学習を用いた心理療法の内容と臨床転帰の関連の定量化
  148. 自閉スペクトラム症の中核的社交症状に対する鼻腔投与オキシトシンの効果:ランダム化比較試験
  149. カナダにおける妊娠中の母親のフッ化物曝露と子の知能指数スコアの関連
  150. レストレスレッグス症候群と自殺および自傷のリスク
  151. 精神疾患における診断横断的プロセスとしての遅延割引:メタ解析
  152. 早期介入精神保健サービスを利用した不安、気分、および精神病性障害を持つ12~25歳の人における臨床病期の移行
  153. 表情の定量分析によって示された自閉症におけるオキシトシンの有効性と時間経過
  154. うつ病における選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の効果に対するベースライン重症度の影響:症状項目ごとの患者レベルの事後解析
  155. うつ病の異質性解析:よく使われるうつ病評価尺度の探索的因子分析
  156. 重度精神疾患を持つ人のための認知矯正療法と仕事に焦点化した社会技能訓練で補完された個別型援助付き雇用の効果:ランダム化臨床試験
  157. 重度精神疾患を持つ人における心血管死に先立つ未診断の心血管疾患
  158. 長期大麻使用者における輸送タンパク(translocator protein)の生体イメージング
  159. 出産前の母親の貧血と神経発達症の関連
  160. ためこみ症(Hoarding Disorder)の有病率:系統的レビューとメタ解析
  161. ためこみ(Hoarding):発症年齢のメタ解析
  162. ためこみ症(Hoarding Disorder)のための地域ベースの当事者主導のグループ療法と心理士主導のグループ療法のランダム化試験
  163. サイトメガロウイルスおよびトキソプラズマ原虫に対する抗体力価と双極性障害の関連
  164. 電気けいれん療法後の再発
  165. うつ病における電気けいれん療法成功後の再発:メタ解析
  166. 簡易陰性症状尺度(the Brief Negative Symptom Scale):心理測定学的特徴
  167. 統合失調症の陰性症状の5因子構造の異文化間妥当性
  168. DSM-5特定用語「不安性の苦痛」を持つうつ病は双極性(bipolarity)と関連するか? 単極うつ病、双極Ⅰ型、およびⅡ型障害を持つ患者についての多施設共同コホート研究
  169. 抗うつ薬の使用と有害な健康アウトカムの関連:系統的アンブレラ・レビュー*
  170. 青年女性と若年成人女性における経口避妊薬の使用と抑うつ症状の関連
  171. 精神疾患を持つ患者と持たない患者における院外心停止:冠動脈造影、冠血行再建術、および植込み型除細動器の使用と生存率の差異
  172. 心血管リスクは過去10年間に双極性障害では軽度改善するも統合失調症では依然として高い
  173. 成人のうつ病における急性期治療のための非外科的脳刺激の比較有効性と忍容性:系統的レビューとネットワークメタ解析
  174. 自殺念慮に対するケタミン単回静脈投与の効果:系統的レビューおよび個々の患者データを用いたメタ解析
  175. 産後うつ病におけるbrexanolone注射液:二施設共同・二重盲検・ランダム化・プラセボ対照・第3相試験
  176. うつ病を持つ患者におけるSAGE-217試験
  177. 短期の食事介入は若年成人のうつ病症状を低下させる:ランダム化比較試験
  178. 統合失調症の陰性症状を治療するための経頭蓋直流電気刺激(tDCS)の有効性と安全性:ランダム化臨床試験
  179. 女性における神経性過食症と心血管疾患の長期リスクおよび死亡との関連
  180. 高校生時のパーソナリティ表現型と54年後の認知症の関連:全米サンプルからの結果
  181. 20年間を通した高齢者におけるうつ病の有病率と治療
  182. 自閉スペクトラム症を持つ子供と青年の強迫的行動に対するフルオキセチンの効果:ランダム化臨床試験
  183. 経口避妊薬の継続、または間欠投与による月経前不快気分症の治療:3群ランダム化比較試験の結果
  184. 小児期の親の収入と後年の統合失調症のリスクの関連
  185. 機械学習とデンマークの一支払者の医療登録データを用いた性別特異的自殺リスクの予測
  186. 統合失調症を持つ人の一次聴覚皮質におけるシナプスプロテオームの変異
  187. 運動は統合失調症を持つ人の心肺機能を改善する:系統的レビューとメタ解析
  188. 運動は統合失調症の臨床症状、生活の質、全般的機能、および抑うつを改善する:系統的レビューとメタ解析
  189. 健康的食事の指標とうつ病発症のリスク:観察研究の系統的レビューとメタ解析
  190. アセトアミノフェンへの子宮内曝露の臍帯血漿バイオマーカーと小児期の注意欠如・多動症および自閉スペクトラム症の関連
  191. 気分障害と不安障害に共通する神経表現型:226の課題関連機能画像研究のメタ解析
  192. 統合失調症を持つ若者と中年の癌発生率:台湾(2000~2010年)における全国コホート研究
  193. 統合失調症を持つ患者における癌の発生率:コホート研究のメタ解析
  194. 統合失調症を持つ患者における肺癌の発生率:メタ解析
  195. 統合失調症は乳癌のリスクファクターか?―遺伝データからの証拠
  196. 統合失調症患者では肝癌のリスクがより低い:コホート研究の系統的レビューとメタ解析
  197. 統合失調症を持つ患者と持たない患者の癌ステージ、治療、および院内死亡率の差異:後向きマッチドペア・コホート研究
  198. 統合失調症を持つ外来患者のがん検診受診と受診率に対する機能障害の影響:日本の横断研究
  199. 統合失調症を持つ日本人のがん検診受診率は低い:横断研究
  200. 交代勤務(Shift Work)と不良な精神的健康:縦断研究のメタ解析
  201. 精神病の臨床的高リスクにある人における不良なアウトカムと、情動処理およびその神経基盤の関連
  202. 米国における娯楽目的のマリファナ合法化と、2008~2016年のマリファナ使用および大麻使用障害の変化
  203. 小児期と青年期に診断される全精神疾患の発症率および累積発症率
  204. 母親の摂食障害と妊娠および新生児転帰の関連
  205. 非定型うつ病の特徴、併存症、および相関物:英国バイオバンク精神健康調査からの証拠
  206. 非定型うつ病と非定型ではないうつ病:HPA軸機能はバイオマーカーか:系統的レビュー
  207. 単極性うつ病と診断された91,587人における双極性障害への移行パターンと予測因子
  208. 米国における成人DSM-5うつ病(Major Depressive Disorder)の疫学とその特定用語
  209. DSM-5減弱精神病症候群の臨床的妥当性:診断の進歩、予後、および治療
  210. うつ病サブタイプの同定のための潜在クラス分析の利用:系統的レビュー
  211. 成人の単極性および双極性うつ病に対する非侵襲的脳刺激の有効性と忍容性:ランダム化シャム比較試験の系統的レビューとメタ解析
  212. 成人における抑うつエピソードの急性期治療のための非外科的脳刺激の比較有効性と忍容性:系統的レビューとネットワークメタ解析
  213. 重症の月経前症候群と月経前不快気分障害を評価する症状日記(symptom diary)
  214. 月経前不快気分障害(PMDD)を持つ女性における月経前症状クラスター:表出、安定性、および機能障害との関連
  215. 不安関連疾患に対する認知行動療法の長期転帰:系統的レビューとメタ解析
  216. 自殺リスクのある米国陸軍人のための短期認知行動療法と従来の治療の経済的評価
  217. 双極Ⅰ型/Ⅱ型障害を持つ人と対照参加者の睡眠特性の遺伝的易罹患性についての比較
  218. PHQ-2を用いたうつ病の同定:診断メタ解析
  219. 最適テスト作成法による自己報告式精神健康症状尺度の短縮化:PHQ-Dep-4の開発と検証
  220. アルツハイマー病を持つ高齢成人におけるビタミンD補充の認知機能と血中アミロイドβ関連バイオマーカーに対する効果:ランダム化・二重盲検・プラセボ比較試験
  221. 統合失調症を持つ女性における乳癌健診:系統的レビューとメタ解析
  222. 概説:統合失調症
  223. 非自発的精神科入院のリスク上昇と関連する臨床的・社会的因子:系統的レビュー、メタ解析、およびナラティブ統合
  224. 抗うつ薬の単独または認知行動療法の併用によるうつ病からの回復後の再発予防:第2相試験
  225. 統合失調症を持つ患者における部位別の癌死亡率:系統的レビューとメタ解析
  226. 青年の自殺念慮は連続的または範疇的か(Continuous or Categorical?):分類分析
  227. 精神疾患を持つ人における原因別損失生存年数:全国登録に基づくコホート研究
  228. 精神疾患に関連する死亡関連健康指数の包括的分析:全国登録に基づくコホート研究
  229. 男性と性交渉を持つシスジェンダーの男性とトランスジェンダーの女性におけるメタアンフェタミン使用障害に対するミルタザピンの効果:プラセボ比較ランダム化臨床試験
 

徐放性ナルトレキソン(naltrexone)またはブプレノルフィンとナロキソン(buprenorphine-naloxone)で治療されたオピオイド依存を持つ成人における不安、抑うつ、不眠:ランダム化臨床試験と経過追跡研究
    Zill-e-Huma Latif et al. JAMA Psychiatry. Published online December 19, 2018.
    Anxiety, Depression, and Insomnia Among Adults With Opioid Dependence Treated With Extended-Release Naltrexone vs Buprenorphine-Naloxone: A Randomized Clinical Trial and Follow-up Study.

    キーポイント:
    <疑問>
     最近解毒を行ったオピオイド依存を持つ成人において、ブプレノルフィンとナロキソンの複合薬の連日舌下投与と比較して、ナルトレキソン(訳注:オピオイドμ受容体拮抗薬の1つでオピオイド使用に伴う“報酬効果”を阻害する)の持続性注射剤による治療は不安、抑うつ、または不眠の症状を露呈させたり増強させたりするか。
    <結果>
     このオピオイド依存を持つ159人の男女のランダム化臨床試験において、不安と抑うつの症状の軽減について両方の治療は等しく有効であったが、不眠の症状は有意に徐放性ナルトレキソン治療によってさらに軽減した。より長期間の徐放性ナルトレキソン治療によって、すべての症状がさらに改善した。
    <意義>
     中止の意志があるオピオイド依存の持つ成人における不安、抑うつ、または不眠の症状の併存は、オピオイド作動薬から徐放性ナルトレキソン治療への切り替えの妨げにはならない。

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自閉スペクトラム症を持つ成人における非社会的および社会的認知機能のパターン
    Tjasa Velikonja et al. JAMA Psychiatry. Published online January 2, 2019.
    Patterns of Nonsocial and Social Cognitive Functioning in Adults With Autism Spectrum Disorder: A Systematic Review and Meta-analysis.

    キーポイント:
    <疑問>
     自閉スペクトラム症を持つ成人における非社会的および社会的認知機能のパターンは何か。
    <結果>
     この自閉スペクトラム症を持つ成人3,361人と定型的神経機能を持つ成人5,344人の75研究の系統的レビューとメタ解析において、自閉スペクトラム症を持つ人は、心の理論および情動知覚と処理、次いで処理速度と言語性学習・記憶においてより大きな障害を示した。
    <意義>
     特定された自閉スペクトラム症を持つ人における非社会的および社会的認知の領域横断的障害の重大性は、主要な介入目標に光を当て臨床実践における重要な意義を示す。

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治療開始前後における高齢者の抗うつ薬の使用と股関節骨折の関連
    Jon Brännström et al. JAMA Psychiatry. Published online January 2, 2019.
    Association Between Antidepressant Drug Use and Hip Fracture in Older People Before and After Treatment Initiation.

    キーポイント:
    <疑問>
     抗うつ薬の使用と股関節骨折に関連はあるか。
    <結果>
     この65歳以上の住民408,144人のマッチングコホート研究(matched cohort study)において、抗うつ薬の使用と股関節骨折の関連を治療開始の前および後に認めた。このパターンはすべての抗うつ薬およびサブグループで一貫していた。
    <意義>
     これらの結果は抗うつ薬の使用と股関節骨折の関連について疑問を投げかけ、治療研究における更なる解析を要求する。

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7テスラ・プロトン磁気共鳴スペクトロスコピーを用いた初回エピソード精神病を持つ患者の脳代謝評価
    Anna M. Wang et al. JAMA Psychiatry. Published online January 9, 2019.
    Assessing Brain Metabolism With 7-T Proton Magnetic Resonance Spectroscopy in Patients With First-Episode Psychosis.

    キーポイント:
    <疑問>
     7テスラの局所プロトン磁気共鳴スペクトロスコピーは、初回エピソード精神病の経過中の代謝変化を特定できるか。
    <結果>
     初回エピソード精神病を持つ81人の患者が、91人の年齢を一致させた対照参加者と比較され、7つの脳領域におけるN-アセチルアスパラギン酸のレベル低下と、選択的領域におけるグルタミン酸、グルタチオン、およびγアミノ酪酸の減少が見出された。
    <意義>
     7テスラ磁気共鳴スペクトロスコピーによって、初回エピソード精神病を持つ患者の複数の代謝異常が特定可能であり、それは神経心理学的検査の成績と相関する。

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重度の精神疾患を持つ人におけるヒドロキシメチルグルタリルCoA還元酵素阻害薬、L型カルシウムチャネル拮抗薬、およびビグアニドと精神科入院・自傷率の関連
    Joseph F. Hayes et al. JAMA Psychiatry. Published online January 9, 2019.
    Association of Hydroxylmethyl Glutaryl Coenzyme A Reductase Inhibitors, L-Type Calcium Channel Antagonists, and Biguanides With Rates of Psychiatric Hospitalization and Self-Harm in Individuals With Serious Mental Illness.

    キーポイント:
    <疑問>
     身体的健康問題のためによく使われる薬(ヒドロキシメチルグルタリル還元酵素阻害薬、L型カルシウムチャネル拮抗薬、およびビグアニド)は、重度の精神疾患を持つ人における精神科入院・自傷率の減少と関連するか。
    <結果>
     この一連の双極性障害、統合失調症、または非感情病性精神病を持つ142,691人の患者の個人内コホートにおいて、非曝露期間と比較してあらゆる研究薬剤への曝露が、精神科入院率の減少と関連した。自傷は双極性障害と統合失調症を持つ患者では全研究薬剤への曝露中に、非感情病性精神病を持つ患者ではL型カルシウムチャネル拮抗薬を服薬中に減少した。
    <意義>
     ヒドロキシメチルグルタリルCoA還元酵素阻害薬、L型カルシウムチャネル拮抗薬、およびビグアニドは重度の精神疾患における再利用薬としての潜在力を有し、これら薬剤の中枢神経におけるメカニズムの更なる研究が必要である。

    コメント:
     ヒドロキシメチルグルタリルCoA還元酵素阻害薬はスタチン (Statin)とも呼ばれ、HMG-CoA還元酵素の働きを阻害して血液中のコレステロール値を低下させる。L型カルシウムチャネル拮抗薬はL型カルシウムチャネルの活性を阻害することで、高血圧や他の心疾患の治療に用いられる。ビグアニドは糖尿病治療薬。

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バルプロ酸および他の抗てんかん薬への出生前曝露と子の注意欠如・多動症リスクの関連
    Jakob Christensen et al. JAMA Netw Open 2019; 2(1): e186606.
    Association of Prenatal Exposure to Valproate and Other Antiepileptic Drugs With Risk for Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder in Offspring.

    キーポイント:
    <疑問>
     出生前にバルプロ酸および他の抗てんかん薬に曝露された子供における注意欠如・多動症のリスクは如何なるものか。
    <結果>
     デンマークにおける子供913,302人の地域ベースのコホート研究において、バルプロ酸に未暴露の子供と比較して、バルプロ酸への出生前曝露は48%の注意欠如・多動症リスクの上昇と有意に関連した。他の抗てんかん薬については関連を認めなかった。
    <意義>
     この研究の結果は、妊娠中または出産可能性がある女性において、バルプロ酸の使用に対するカウンセリングが適切であることを裏付ける。

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うつ病における治療反応予測のための脳波バイオマーカー:メタ解析
    Widge AS et al. Am J Psychiatry 2019; 176(1): 44-56.
    Electroencephalographic Biomarkers for Treatment Response Prediction in Major Depressive Illness: A Meta-Analysis.

    <目的>
     不首尾の治療試験を減らすことは、うつ病治療を改善するかもしれない。定量脳波(Quantitative EEG、QEEG)は治療反応を予測する可能性があり、この目的で商業的に販売されている。著者らはうつ病における反応予測についてQEEGの信頼性を定量して、入手可能な科学的証拠の方法論的限界を特定することを目的とした。
    <方法>
     2000年1月から2017年11月の間に公表された論文に基づいて、著者らはうつ病におけるQEEGの診断精度(diagnostic accuracy)のメタ解析を実施した。レビューは患者母集団、治療、またはQEEGマーカーに関係なく、抑うつエピソード中の反応予測にQEEGを用いたすべての論文を含めた。感度、特異度、および診断オッズ比(diagnostic odds ratio)の対数で表された、うつ病治療への反応を予測する精度がメタ解析の主要評価項目であった。また、評価者は各論文を優れた研究実践(good research practice)の指標に準拠して判定した。
    <結果>
     81のバイオマーカーを報告する76の論文において、メタ解析推定は0.72(95% CI=0.67-0.76)の感度と0.68(95% CI=0.63-0.73)の特異度を示した。診断オッズ比の対数は1.89(95% CI=1.56-2.21)で、受信者動作曲線(receiver operator curve)下の面積は0.76(95% CI=0.71-0.80)であった。漏斗プロット解析はかなりの公表バイアスを示した。大抵の研究は理想的な実践(ideal practices)を用いていなかった。
    <結論>
     否定的結果の過少報告、別サンプルでの検証の欠如、および先行結果の不十分な直接再現のため文献には限界あり、GEEGはうつ病の治療反応予測について臨床的に信頼できるとは言えない。これらの限界が是正されるまでは、QEEGを精神科治療の選択指針として推奨しない。

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デンマーク国民母集団における精神疾患内の併存調査
    Oleguer Plana-Ripoll et al. JAMA Psychiatry. Published online January 16, 2019.
    Exploring Comorbidity Within Mental Disorders Among a Danish National Population.

    キーポイント:
    <疑問>
     ある人が特定の精神疾患の診断を受けた後に他の精神疾患を発症するリスクは増加するか。
    <結果>
     この83.9百万人年の経過を追跡された594万778人の住民ベースのコホート研究において、精神疾患内の併存は広範囲にわたり(指標とした精神疾患の後に、全ての他の精神疾患を発症するリスクの増加を認めた)、併存症を発展させるリスクはある精神疾患の発症1年目に最も顕著であったが、そのリスクの増加は15年以上も続いた。一部の障害(例、気分障害)については、後に特定の障害(例、不安症/不安障害)を発症する絶対リスクが相当大きかった(例、5年間に30~40%)。
    <意義>
     臨床医と精神疾患を持つ人が、診断、年齢、および性別特異的な潜在する将来の併存症の絶対リスクを前もって知ることができるなら、この情報はより適合した介入と自己管理についてのより良い教育(すなわち個別化医療)を可能とするだろう。

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青年の統合失調症リスク非同義変異と被殻体積の関連:ボクセル単位・全ゲノム関連研究
    Qiang Luo et al. JAMA Psychiatry. Published online January 16, 2019.
    Association of a Schizophrenia-Risk Nonsynonymous Variant With Putamen Volume in Adolescents: A Voxelwise and Genome-Wide Association Study.

    キーポイント:
    <疑問>
     統合失調症の精神病理に情報を与える青年の脳発達と関連する遺伝的変異は存在するか。
    <結果>
     この脳構造の画像遺伝学研究において、SLC39A8内のミスセンス変異(以前に統合失調症と関連した遺伝子)と被殻灰白質体積の有意な関連が発見され、5つの独立サンプルからの10,411人の健常参加者において再現された。健常対照者と比較して、このような関連は統合失調症を持つ患者と非罹患同胞の両方で有意に弱かった。
    <意義>
     共有遺伝変異は、統合失調症の精神病理と被殻の構造発達の両方におけるニューロンのイオン輸送の関与を示唆する。

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ベンゾジアゼピンまたは関連薬剤と肺炎のリスク:系統的レビューとメタ解析
    Sun GQ et al. Int J Geriatr Psychiatry. Published online January 8, 2019.
    Benzodiazepines or related drugs and risk of pneumonia: A systematic review and meta-analysis.

    論文要旨:
    <目的>
     ベンゾジアゼピンおよびベンゾジアゼピン関連薬剤(BZRD)は様々な精神疾患の治療に使われるが、BZRDが肺炎のリスクを増加させる懸念がある。
    <方法>
     BZRDが肺炎リスクに影響するか否かを決定するために、我々は観察研究の系統的レビューとメタ解析を実施した。我々の解析は、BZRDの処方を受けた患者と治療を受けなかった患者において肺炎の発症を比較したすべての観察研究を含んだ。
    <結果>
     全部で120,000人以上の肺炎症例を含む10研究の12文献が、我々のメタ解析に含まれた。推定値を統合後、BZRD未使用者と比べてBZRD使用者の肺炎発症の可能性は1.25倍高かった(オッズ比[odd ratio, OR]= 1.25; 95% 信頼区間[confidence interval, CI], 1.09-1.44)。
     曝露時期に基づくと、肺炎リスクは現在の使用者(OR = 1.4; 95%CI, 1.22-1.6)と最近の使用者(OR = 1.38; 95% CI, 1.06-1.8)で増加していたが、過去の使用者(OR = 1.11; 95%CI, 0.96-1.27)では増加していなかった。
    <結論>
     現在または最近のBZRDへの曝露は肺炎リスクの増加に関連する。臨床医はBZRDを用いることの利益とリスクのバランスに重きを置くべきであり、他の肺炎のリスク因子を持つ人については尚更である。

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注意欠如・多動症と入学月
    Layton TJ et al. N Engl J Med 2018; 379(22): 2122-2130.
    Attention Deficit-Hyperactivity Disorder and Month of School Enrollment.

    論文要旨:
    <背景>
     子供がより若年であることよりも注意欠如・多動症(ADHD)に原因を求め得る行動の年齢による差のために、同学年コホートにおいてより若年の子供はより年長の同級生よりもADHDの診断を受けやすいかもしれない。大抵の米国の州は公立学校への入学について任意の年齢カットオフを設けている。したがって、同じ学年内においてカットオフに近い誕生日を持つ子供は年齢について1年近くの違いが生じ得る。
    <方法>
     幼稚園の入園について「9月1日までに5歳である子供」という条件がある州とない州において、8月生まれの子供におけるADHD診断率を9月生まれの子供のそれと比較するために、我々は2007年から2015年までの大規模保険データベースからの資料を用いた。ADHD診断は改訂ICD-9の診断コードに基づいて決定された。また、9月1日のカットオフ日を持つ州と持たない州において、8月生まれの子供と9月生まれの子供のADHD治療を比較するために処方記録を用いた。
    <結果>
     研究母集団は2007年から2009年の期間に生まれて2015年の12月まで経過観察された全米407,846人の子供を含んだ。9月1日のカットオフがある州の子供における請求ベースのADHD診断は、8月生まれの子供では10,000人あたり85.1人(36,319人の子供のうち309症例; 95% 信頼区間 [CI], 75.6~94.2)、9月生まれの子供では10,000人あたり63.6人(35,353人の子供のうち225症例; 95% CI, 55.4~71.9)、絶対差は10,000人あたり21.5人(95% CI, 8.8~34.0)であった。一方、9月1日のカットオフのない州における絶対差は10,000人あたり8.9(95% CI, -14.9~ 20.8)人であった。
     ADHDの治療率は8月生まれの子供では10,000人あたり52.9人(36,319の子供のうち192人; 95% CI, 45.4~60.3)、9月生まれの子供では10,000人あたり40.4人(35,353人の子供のうち143人; 95% CI, 33.8~47.1)、絶対差は10,000人あたり12.5人(95% CI, 2.43~22.4)であった。これらの違いはその他の月と月の比較については観察されず、幼稚園の開始について9月でないカットオフ日を持つ州についても観察されなかった。加えて、9月1日のカットオフを持つ州において8月生まれの子供と9月生まれの子供の間で、喘息、糖尿病、または肥満症の有病率に有意差を認めなかった。
    <結論>
     幼稚園の入園について9月1日のカットオフを持つ州において、ADHDの診断率と治療率は9月に生まれた子供より8月に生まれた子供でより高い(資金提供:国立衛生研究所)。

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成人における身体活動とうつ病の双方向的関係の評価:2サンプル・メンデル無作為化研究
    Karmel W. Choi et al. JAMA Psychiatry. Published online January 23, 2019.
    Assessment of Bidirectional Relationships Between Physical Activity and Depression Among Adults: A 2-Sample Mendelian Randomization Study.

    キーポイント:
    <疑問>
     身体活動はうつ病リスクを軽減する因果的役割を持つ可能性があるか。
    <結果>
     この因果的影響の可能性を支持する大規模な全ゲノム関連研究からの遺伝手法を用いた2サンプル・メンデル無作為化研究において、より高水準の身体活動(加速度計による客観的データによって示される)はうつ病発症率の低下と関連した。
    <意義>
     結果はうつ病への効果的介入戦略としての身体活動に対する経験的支持を強化する。

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小児期の鉛曝露と成人期のパーソナリティ特性および生涯の精神健康との関連
    Aaron Reuben et al. JAMA Psychiatry. Published online January 23, 2019.
    Association of Childhood Lead Exposure With Adult Personality Traits and Lifelong Mental Health.

    キーポイント:
    <疑問>
     小児期の鉛曝露は成人期の精神疾患のリスクや難しいパーソナリティ特性と関連するか。
    <結果>
     この579人のニュージーランドの子供を30年以上にわたって追跡した縦断的コホート研究において、より大きな小児期の鉛曝露は、より重い生涯にわたる精神病理と成人期の難しいパーソナリティ特性と関連した。
    <意義>
     小児期の鉛曝露は成人の精神健康とパーソナリティに長期的影響を持つかもしれない。

    論文要旨:
    <重要性>
     いま中年期に入ろうとしている数百万人の成人が、小児期に高レベルの鉛(発達に影響する神経毒の1つ)に暴露された。これまで小児期の鉛曝露は行動発達の異常と関連付けられてきたが、成人における精神と行動の健康に対する長期的影響は十分わかっていない。
    <目的>
     小児期の鉛曝露がより重い生涯にわたる精神病理と難しいパーソナリティ特性に関連するか否か調べること。
    <設計・設定・参加者>
     この前向きコホート研究は、1972年4月1日から1973年3月31日にニュージーランドのダニディンに生まれた人の住民代表出生コホート研究(the Dunedin Multidisciplinary Health and Development Study)に基づいて行われた。メンバーは38歳になる2012年12月まで追跡された。データ解析は2018年3月14日から2018年10月24日に実施された。
    <曝露>
     11歳時に測定された血中鉛レベルとして確定された小児期の鉛曝露。血中鉛レベルは家庭の社会経済的状態とは関連しなかった。
    <主要評価項目>
     主要評価項目は、1)18歳、21歳、26歳、32歳、および38歳時に、臨床面接を介して評価された成人の精神健康障害の症状で、確認的因子分析を介して一般精神病理と内在化、外在化、および思考障害の症状の連続測定に変換された(すべて平均100、標準偏差15に標準化された)、2)26歳、32歳、および38歳時に、神経症傾向、外向性、 経験への開放性、協調性、および勤勉性を評価するBig Fiveパーソナリティ検査を用いた回答者の報告を通して評価された成人のパーソナリティ(すべて平均0、標準偏差1に標準化された)であった。仮説はデータ収集後に作成され、解析計画は前もって決定された。
    <結果>
     1,037人の元々の研究参加者のうち579人(55.8%)が11歳時の鉛曝露について検査された。平均(標準偏差)鉛レベルは11.08(4.96)μg/dLであった。研究共変量について調整後、小児期の血中鉛レベルの5μg/dLの増加は一般精神病理における1.34ポイント(95% CI, 0.11-2.57; P = .03)の増加と関連し、それは内在化(b = 1.41; 95% CI, 0.19-2.62; P = .02)と思考障害(b = 1.30; 95% CI, 0.06-2.54; P = .04)の症状に駆動された。
     小児期の血中鉛レベルの5μg/dLの増加はまた、神経症傾向の0.10標準偏差の増加(95% CI, 0.02-0.08; P = .02)、協調性の0.09標準偏差の減少(95% CI, −0.18 to −0.01; P = .03)、および勤勉性の0.14標準偏差の減少(95% CI, −0.25 to −0.03; P = .01)と関連した。回答者が評価した外向性(b = −0.09; 95% CI, −0.17 to 0.004; P = .06)と経験への開放性(b = −0.07; 95% CI, −0.17 to 0.03; P = .15)の関連は統計的に有意でなかった。
    <結論および関連性>
     ここ数十年の鉛に暴露された子供の縦断研究において、より高い小児期の血中鉛レベルは、より重い生涯にわたる精神病理と難しいパーソナリティ特性と関連した。小児期の鉛曝露は、成人の精神健康とパーソナリティに長期的影響を持つかもしれない。

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血清中の神経フィラメント動態は発症前アルツハイマー病の神経変性と臨床的進行を予測する
    Preische O et al. Nature Medicine. Published online January 21, 2019.
    Serum neurofilament dynamics predicts neurodegeneration and clinical progression in presymptomatic Alzheimer's disease.

    論文要旨:
     神経フィラメント軽鎖(Neurofilament light chain、NfL)は、様々な脳タンパク蓄積症について疾患進行の有望な液性バイオマーカーである。そこで我々は、髄液中(n = 187)および血清中(n = 405)のNfLレベルが互いに相関し、家族性アルツハイマー病の発症前段階において上昇していることを示すために、優生遺伝性アルツハイマー病ネットワークに特有の特徴と超高感度免疫測定技術を利用した。
     NfL動態(n = 196)の縦断的被験者内分析はこの上昇を確認し、さらに血清NfLの変化率が横断的絶対NfLレベルよりもおよそ10年早く(推定発症発現前16.2年 対 6.8年)、突然変異の保因者を非保因者から峻別可能であることを明らかにした。血清NfL変化率は、発症前段階から有症状段階へ移行した参加者において最も高くなり、MRIで評価された皮質菲薄化と関連したが、アミロイドβ蓄積またはグルコース代謝(PETで評価された)とはそれほど関連しなかった。血清NfLは、皮質菲薄化率とMMSEと論理的記憶テストで評価された認知変化の両方について予測的であった。
     したがって、血清中のNfL動態は家族性アルツハイマー病の早期発症前段階において疾患進行と脳変性を予測し、この結果は臨床上有効なバイオマーとしての血清NfLの潜在的有用性を支持する。

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アリピプラゾールと精神科入院、自傷、または自殺のリスクとの関連
    François Montastruc et al. JAMA Psychiatry. Published online January 30, 2019.
    Association of Aripiprazole With the Risk for Psychiatric Hospitalization, Self-harm, or Suicide.

    キーポイント:
    <疑問>
     アリピプラゾールに変薬された、またはアリピプラゾールを追加された患者は、他の抗精神病薬に変薬された、または追加された場合と比較して、精神科入院、自傷、または自殺のリスクが高まるか。
    <結果>
     他の抗精神病薬を使い始めた対照患者と比較した、このアリピプラゾールを使い始めた1,643人の住民ベースのコホート研究において、アリピプラゾールは精神科入院、自傷、または自殺のリスク上昇とは関連しなかった。
    <意義>
     アリピプラゾールへの変薬やアリピプラゾールの追加は、一部の患者においては精神状態の悪化と関連するかもしれないが、本結果はこれら増悪が精神医学的治療の重大な失敗を引き起こすことはないことを示す。本結果は大規模観察研究における再現が必要である。

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大うつ病、双極性障害、および統合失調症の多遺伝子易罹患性とデンマーク一般住民におけるうつ病リスクの関連
    Katherine L. Musliner et al. JAMA Psychiatry. Published online January 30, 2019.
    Association of Polygenic Liabilities for Major Depression, Bipolar Disorder, and Schizophrenia With Risk for Depression in the Danish Population.

    キーポイント:
    <疑問>
     大うつ病、双極性障害、および統合失調症の多遺伝子易罹患性(polygenic liabilities)は、一般住民におけるうつ病と関連するか。
    <結果>
     この34,573人の症例コホート研究において、大うつ病の多遺伝子リスクの各々1標準偏差分の増加は、病院ベースの精神科医療におけるうつ病診断の危険の30%増加と関連した。統合失調症と双極性障害の多遺伝子易罹患性もうつ病診断の危険の増加と関連したが、その程度はより小さかった。
    <意義>
     多数の大うつ病症例のサンプルにおいて学習された多遺伝子リスク点数は、一般住民における初回のうつ病と関連する。

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一般市民患者における外傷性脳損傷後の心的外傷後ストレス障害とうつ病:TRACK-TBI研究
    Murray B. Stein et al. JAMA Psychiatry. Published online January 30, 2019.
    Risk of Posttraumatic Stress Disorder and Major Depression in Civilian Patients After Mild Traumatic Brain Injury: A TRACK-TBI Study.

    キーポイント:
    <疑問>
     軽度の外傷性脳損傷(mild traumatic brain injury、mTBI)の継続後に、心的外傷後ストレス障害(PTSD)や大うつ病といった精神健康問題を発症する最高のリスクにあるのは誰か。
    <結果>
     このmTBIを持つ患者1,155人と頭部を除く整形外科的損傷を持つ患者230人からなるコホート研究において、mTBIを持つ患者は損傷後3および6カ月に、PTSDおよび/またはうつ病の症状をより多く報告した。mTBIを持つ患者では、損傷前(例、先立つ精神健康問題)および損傷関連(例、PTSDの場合は攻撃または他の損傷の暴力的原因)の特徴の数が、精神健康問題のリスクの増加と関連した。
    <意義>
     脳への損傷は、一部の患者において前から存在する精神健康問題の初発または増悪と関連する。リスクファクターの知識は、予防、スクリーニング、診断、および治療改善の努力に情報を与え得る。

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生活史と感情およびパーソナリティ特性から導かれる不眠障害のサブタイプ
    Tessa F Blanken et al. Lancet Psychiatry. Published online January 07, 2019.
    Insomnia disorder subtypes derived from life history and traits of affect and personality.

    論文要旨:
    <背景>
     不眠障害は2番目に多い精神疾患であり、うつ病の主要なリスクファクターである。不眠障害を持つ患者の一貫しない臨床およびバイオマーカー所見は、異質性の存在とこの疾患のいまだ認識されていないサブタイプを示唆する。かつてトップダウン的に提案された疾患分類学におけるサブタイプの妥当性は不十分であった。この大規模研究において、我々は生物学に基づく特性の多次元セットのデータ駆動型解析を用いて、不眠障害の頑強なサブタイプ明らかにすることを目的とした。
    <方法>
     この一連の研究において、我々は18歳以上のボランティアのデータベースであるオランダ睡眠登録(the Netherlands Sleep Registry)から参加者を募った。選ばれた34の質問表(うち参加者は少なくとも1つに回答した)を用いて睡眠、生活上の出来事、および健康履歴を調べるためにオンラインで参加者を追跡した。不眠障害のサブタイプは潜在クラス分析(latent class analyses)を用いて同定した。オランダ睡眠登録参加者の新規サンプルへ電子メールで送られたニュースレターを通して募集した2つ目の非重複コホートの使用と、経過追跡の数カ月間における被験者内安定性の評価によって、同定された不眠障害サブタイプの価値を評価した。これらサブタイプの臨床的妥当性を、睡眠愁訴の進展、併存症(うつ病を含む)、およびベンゾジアゼピンへの反応について幅広く検証した。我々はまた、不眠障害の2つのサブタイプにおいて、脳波バイオマーカーと認知行動療法の有効性を用いてこれらサブタイプの臨床的関連を評価した。実施を促進するために、我々は次に簡便なサブタイプ質問表を作り、2つ目の非重複コホートにおいてこの質問表の妥当性を検証した。
    <結果>
     4,322人のオランダ睡眠登録参加者が、2010年3月2日から2016年10月28日に、少なくとも1つの選ばれた質問表、人口統計の質問表、不眠症重症度質問票(Insomnia Severity Index、ISI)の評価に回答した。2,224人(51%)の参加者が少なくとも10点のISIスコアとして定義される確実な不眠障害(probable insomnia disorder)を持ち、より低いISIスコアを持つ2,098人(49%)の参加者は対照群として扱われた。2,224人の質問表への回答の潜在クラス分析を用いて、我々は5つの新しい不眠障害サブタイプを同定した:1)重度および中等度の苦痛/報酬反応性(楽しい情動への正常な反応)、2)中等度の苦痛/報酬不応性、3)軽度の苦痛/高反応性(環境と生活上の出来事に対して)、4)軽度の苦痛/低反応性(環境と生活上の出来事に対して)、5)軽度の苦痛/低反応性。
     2017年6月12日から2017年11月26日に評価された251人の新規参加者からなる2つ目の非重複再現サンプルにおいて、5つのサブタイプが最適であると同定された。開発サンプルと再現サンプルの両方において、各参加者は高い事後確率(0.91–1.00)をもって唯一のサブタイプに分類された。不眠を持つ2,224人の参加者の原サンプルのうち4.8(標準偏差1.6)年後(2017年4月13日から2017年6月21日)に再評価された215人において、原サブタイプを維持している確率は0.87と分類の安定性を示した。進展軌跡、治療反応、脳波バイオマーカーの存在における同定されたサブタイプ間差、および最大5倍のグループ間差となったうつ病リスクを見出したことは、これらサブタイプの臨床的関連を示す。
    <解釈>
     不眠を持つ人の高次データ駆動型サブタイプ化は、不眠障害の異質性を減らすという満たされない要求(unmet need)にかなう。サブタイプ化は、不眠の背景にある原因の特定、個別化治療の開発、うつ病予防の試験に含めるべきうつ病リスクが最も高い患者の選択を促進する。
    <資金>
     European Research Council and Netherlands Organization for Scientific Research.

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米国における外来でのベンゾジアゼピン処方のパターン
    Sumit D. Agarwal et al. JAMA Netw Open 2019; 2(1): e187399.
    Patterns in Outpatient Benzodiazepine Prescribing in the United States

    キーポイント:
    <疑問>
     どのようにベンゾジアゼピンは処方されるのか、処方パターンは時間経過で変化したのか。
    <結果>
     この2003年から2015年までの外来診療受診者386,457人の一連の横断研究において、外来診療におけるベンゾジアゼピンの使用は、他の鎮静剤との併用も含めて受診の3.8%~7.4%に大きく増加した。精神科医における使用は安定していたが(29.6% vs 30.2%)、プライマリ―ケア医を含む他のすべての医師における使用は増加し、一つのグループとして全ベンゾジアゼピン処方受診の約半数を占めた。
    <意義>
     ベンゾジアゼピン過量摂取に関連した死亡率の増加の観点から、処方パターンへ注意を向けることは増え続けるベンゾジアゼピンの使用を抑制するのに役立つかもしれない。

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胎児成長と一般的および特定の精神健康状態の関連
    Erik Pettersson et al. JAMA Psychiatry. Published online February 6, 2019. Association of Fetal Growth With General and Specific Mental Health Conditions.

    キーポイント:
    <疑問>
     家族性の交絡因子と精神医学的併存症を調整後も、胎児成長とその後の精神健康状態は関連するか。
    <結果>
     この100万人以上の参加者を含む同胞対内デザインを用いた登録ベースの研究は、(在胎期間で統計的に調整された)より重い出生時体重と、注意欠如・多動症、自閉症、強迫症、およびうつ病のより低いリスクが有意に関連することを見出した。さらに、出生時体重が1 kg増加すると、精神病理の一般因子は0.047標準偏差(SD)、特定の神経発達因子は0.159 SD減少した。
    <意義>
     家族因子と精神医学的併存症の調整後、胎児成長は特定の神経発達症と最も強く関連した。

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自殺リスクを持つ青年のための若者が指名する支援チームによる介入と11-14年の死亡転帰の関連:ランダム化臨床試験の副次解析
    Cheryl A. King et al. JAMA Psychiatry. Published online February 6, 2019.
    Association of the Youth-Nominated Support Team Intervention for Suicidal Adolescents With 11- to 14-Year Mortality Outcomes: Secondary Analysis of a Randomized Clinical Trial.

    キーポイント:
    <疑問>
     自殺リスクを持つ青年のための若者が指名する支援チームによる介入-第2版(the Youth-Nominated Support Team Intervention for Suicidal Adolescents–Version II)は、11から14年を通した死亡率の減少と関連するか。
    <結果>
     この自殺リスクが高いために入院した448人の青年を含むランダム化臨床試験の副次解析において、11から14年の追跡中に若者が指名する支援チームによる介入に割り付けられた青年における死亡が2人であったのに対して、従来の治療に割り付けられた群における死亡は13人と有意な差を認めた。
    <意義>
     自殺リスクを持つ青年のための若者が指名する支援チームによる介入-第2版を、入院歴のある自殺リスクの高い青年に導入することは、死亡リスクの減少に関連するかもしれないが、結果は予備的であって再現性が確認されるべきである。

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若年成人における有酸素運動の認知に対する効果:ランダム化臨床試験
    Stern Y et al. Neurology. Published online January 30, 2019.
    Effect of aerobic exercise on cognition in younger adults: A randomized clinical trial.

    論文要旨:
    <目的>
     若年成人における有酸素運動(aerobic exercise)の認知機能に対する効果を確認する。
    <方法>
     ランダム化・並行群・観察者盲検・地域ベースの臨床試験において、132人の認知的に正常な中央値以下の有酸素容量を持つ20~67歳の人が、6カ月間、週に4回の2条件:有酸素運動とストレッチング/トーニング(stretching/toning)の1つに割り付けられた。有効性の測定には、有酸素容量、いくつかの領域(実行機能、エピソード記憶、処理速度、言語、および注意)の認知機能、日常機能、体格指数(BMI)、および皮質厚(cortical thickness)が含まれた。
    <結果>
     有酸素運動条件では有酸素容量が有意に増加し(β = 2.718; p = 0.003)、BMIが有意に減少したが(β = -0.596; p = 0.013)、ストレッチング/トーニング条件では変化しなかった。有酸素運動条件では実行機能が有意に改善したが、この効果は加齢によって加減された(β = 0.018 SD/y; p = 0.028)。実行機能測定が40歳では0.228 SD (95% 信頼区間 [CI] 0.007-0.448)、60歳では0.596 SD (95% CI 0.219-0.973)増加した。左の前頭領域の皮質厚が有酸素運動群で有意に増加したが、年齢との交互作用はなかった。年齢とベースライン能力を調整すると、アポリポ蛋白E(APOE)のε4アリル(allele)を少なくとも1つ持つ人は、有酸素運動による実行機能の改善がより少なかった(β = 0.5129, 95% CI 0.0381-0.988; p = 0.0346)。
    <結論>
     このランダム化臨床試験は、20~67歳の成人における有酸素運動の認知に対する有効性を示す。有酸素運動の実行機能に対する効果が年齢に従って強調されたことは、それが加齢に伴う低下を軽減する可能性を示唆する。皮質厚の増加は、20歳くらいの若い人においても有酸素運動が脳の健康に寄与することを示す。
    <臨床試験の登録>
     NCT01179958.
    <エビデンスの分類>
     この研究は中央値以下の有酸素容量を持つ20~67歳の成人について、「有酸素運動は実行機能を有意に改善するが他の認知機能の測定は改善しない」という2類(Class II)エビデンスを提供する。

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青年期の大麻使用と若年成人期の抑うつ・不安・自殺傾向リスクとの関連:系統的レビューとメタ解析
    Gabriella Gobbi et al. JAMA Psychiatry. Published online February 13, 2019.
    Association of Cannabis Use in Adolescence and Risk of Depression, Anxiety, and Suicidality in Young Adulthood: A Systematic Review and Meta-analysis.

    キーポイント:
    <疑問>
     青年期の大麻摂取は若年成人期の抑うつ・不安・自殺傾向リスクと関連するか。
    <結果>
     この11研究、23,317人の系統的レビューとメタ解析において、病前疾患がない場合でも、青年期の大麻摂取は以降の人生における抑うつと自殺行動の発症リスクの上昇と関連したが、不安との関連はなかった。
    <意義>
     大麻の使用は若年成人期の抑うつと自殺傾向の発症リスクの上昇と関連するため、前青年期および青年期においてその使用を避けるべきである。若者の大麻使用を減らすための予防戦略に適用するために、これらの結果が公衆衛生政策および政府に知らされるべきである。

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自殺予防のための簡単な気遣いテキスト・メッセージを用いた軍人に対する標準的ケアの強化の効果:ランダム化臨床試験
    Katherine Anne Comtois et al. JAMA Psychiatry. Published online February 13, 2019.
    Effect of Augmenting Standard Care for Military Personnel With Brief Caring Text Messages for Suicide Prevention: A Randomized Clinical Trial.

    キーポイント:
    <疑問>
     テキスト・メッセージによる介入(Caring Contacts:気遣いの連絡)は、現役軍人の自殺念慮と自殺行動を減らすか。
    <結果>
     この658人の兵士と海兵隊員のランダム化臨床試験において、Caring Contactsを用いた標準的ケアの強化は、12カ月間の経過追跡において自殺念慮または自殺リスク事象を減少させなかった。しかし、Caring Contactsはいずれかの自殺念慮を持つ(80% vs 88%)、および自殺企図を行う(9% vs 15%)オッズ(odds)を減少させた。
    <意義>
     主たる仮説は支持されなかったが、Caring Contactsは自殺念慮や自殺企図の発生を減少させることに有効かもしれない簡単で拡張可能な介入であることが分かった。

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周産期うつ病への予防介入:米国予防医療専門委員会の勧告声明
    US Preventive Services Task Force. JAMA 2019; 321(6): 580-587.
    Interventions to Prevent Perinatal Depression: US Preventive Services Task Force Recommendation Statement.

    論文要旨:
    <重要性>
     妊娠期または出産後の抑うつ障害の発症である周産期うつ病は、女性の7人に1人に生じる最も一般的な妊娠・産後期における合併症の1つである。周産期うつ病が母子双方に有害な短期的・長期的影響を与え得ることは、十分確立されている。
    <目的>
     周産期うつ病への予防介入に関する米国予防医療専門委員会(US Preventive Services Task Force、USPSTF)の新勧告を公表すること
    <エビデンス・レビュー>
     USPSTFは妊娠中または出産後の女性の周産期うつ病、あるいはその子供への予防介入の利益と損益に関するエビデンスをレビューした。USPSTFは周産期うつ病のリスクが高い女性、および最も有効な予防介入時期を特定するために使用された測定方法の精度に関する文脈情報をレビューした。
     レビューされた介入法にはカウンセリング、ヘルスシステム介入、身体運動、教育、支持的介入、そして幼児睡眠、トレーニング、および表出的筆記(expressive writing、訳注:「こころのライティング」という訳もある)といった行動介入が含まれた。薬理学的方法にはノルトリプチリン、セルトラリン、およびω3脂肪酸が含まれた。
    <結果>
     USPSTFは「認知行動療法や対人関係療法といったカウンセリング介入が周産期うつ病の予防に効果がある」とする説得力のあるエビデンスを見出した。うつ病の既往、現在の抑うつ症状、ある種の社会経済的リスクファクター(例、低収入、若者、または片親)を持つ女性はカウンセリング介入から利益を得るだろうし、リスクが高いと考えられた。
     USPSTFは介入の特徴および重大な損益が生じる可能性の低さに基づき、「カウンセリング介入の潜在的損益は小さい」と評価する十分なエビデンスを見出したが、カウンセリング以外の他の介入の利益と損益を評価するエビデンスは不十分であった。USPSTFは適度な確実性をもって、「リスクの高い妊娠中または出産後の女性にカウンセリング介入を提供するか紹介することには、周産期うつ病の予防に結局のところ程々の利益がある」と結論する。
    <結論と推奨>
     USPSTFは「臨床家が周産期うつ病のリスクが高い妊娠中および出産後の女性にカウンセリング介入を提供するか紹介する」ことを推奨する(B推奨)。

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アルコールおよびオピオイド使用障害の治療薬と自殺行動、過失による過量摂取、および犯罪
    Molero Y et al. Am J Psychiatry 2018; 175(10): 970-978.
    Medications for Alcohol and Opioid Use Disorders and Risk of Suicidal Behavior, Accidental Overdoses, and Crime.

    論文要旨:
    <目的>
     アルコールおよびオピオイド使用障害の治療薬(アカンプロセート[acamprosate]、ナルトレキソン[naltrexone]、メサドン[methadone]、ブプレノルフィン[buprenorphine])と自殺行動、過失による過量摂取、および犯罪の関連を調べた。
    <方法>
     この全集団コホート研究において、2005年から2013年に4つの治療薬のうち少なくとも1つで治療を受けた21,281人が同定された。薬剤使用と転帰に関するデータがスウェーデンの住民登録から収集された。個人内デザイン(層別化Cox比例ハザード回帰モデル)が、同一人の投薬を受けていた時期と受けていなかった時期について自殺行動、過失による過量摂取、および犯罪を比較するために用いられた。
    <結果>
     アカンプロセートについては、どの主要アウトカムとも有意な関連はなかった。
     ナルトレキソンについては、投薬を受けていた時期と受けていなかった時期を比較した場合に、過失による過量摂取のハザード比(Hazard Ratio、HR)の減少を認めた(HR=0.82, 95% CI=0.70, 0.96)。
     ブプレノルフィンは、全犯罪カテゴリー(つまり、暴力的、非暴力的、および物質関連)についての逮捕率と過失による過量摂取の減少と関連した(HR=0.75, 95% CI=0.60, 0.93)。
     メサドンについては、全犯罪カテゴリーおよび自殺行動率(HR=0.60, 95% CI=0.40-0.88)が有意に低下したが、メサドンを服薬していた人では過失による過量摂取リスクの上昇を認めた(HR=1.25, 95% CI=1.13, 1.38)。
    <結論>
     アルコールおよびオピオイド使用障害の治療に現在使用される薬剤はまた、投薬期間中の自殺傾向と犯罪を低下させるようである。

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アルコール依存またはアルコール使用障害治療における薬理学的にコントロールされた飲酒:ナルメフェン、ナルトレキソン、アカンプロセート、バクロフェン、およびトピラメートの系統的レビューと直接およびネットワークメタ解析
    Palpacuer C et al. Addiction 2018; 113(2): 220-237.
    Pharmacologically controlled drinking in the treatment of alcohol dependence or alcohol use disorders: a systematic review with direct and network meta-analyses on nalmefene, naltrexone, acamprosate, baclofen and topiramate.

    論文要旨:
    <背景と目的>
     アルコール依存またはアルコール使用障害治療における薬理学的にコントロールされた飲酒(Pharmacologically controlled drinking)は新規の概念である。この適応症に使用される薬剤の比較有効性を調べることが我々の目的であった。
    <研究デザイン>
     アルコール依存またはアルコール使用障害と診断されたが禁酒していない成人におけるナルメフェン(nalmefene)、ナルトレキソン(naltrexone)、アカンプロセート(acamprosate)、バクロフェン(baclofen)、またはトピラメート(topiramate)の有効性を評価した二重盲検・ランダム化比較試験の系統的レビューと直接およびネットワークメタ解析。
     2人の独立した査読者がMedline、Cochrane Library、Embase、ClinicalTrials.gov、連絡が取れた製薬企業、欧州医薬品庁(the European Medicines Evaluation Agency)、および米国食品医薬品局(the Food and Drug Administration)に関して公表・非公表の研究を選択し、データを抽出した。
    <設定と参加者>
     32のランダム化比較試験の全部で6,036人の患者。
    <測定>
     主要評価項目は総アルコール摂取(total alcohol consumption、TAC)で、他の摂取アウトカムと健康アウトカムは副次評価項目とされた。
    <結果>
     薬剤どうしを直接比較する研究は無かった。不完全なアウトカムデータのリスクは26研究(81%)に、選択的なアウトカムの報告は17研究(53%)に認めた。
     ナルメフェン[標準化平均差 (SMD) = -0.19, 95% 信頼区間 (CI) = -0.29, -0.10; I2 = 0%]、バクロフェン[SMD = -1.00, 95% CI = -1.80, -0.19; 1研究]、およびトピラメート[SMD = -0.77, 95% CI = -1.12, -0.42; I2 = 0%]は、総アルコール摂取に関してプラセボに対する優越性を示したが、ナルトレキソン、またはアカンプロセートの有効性は観察されなかった。バクロフェンを除けば(総アルコール摂取に関して好ましいアウトカムが再現されなかった)、他の摂取アウトカムについても同様の結果が観察された。
     ナルメフェンとナルトレキソンの下で、安全性の理由による離脱の回数が増加した。治療はいかなる損益の低減(harm reduction)も示さなかった(健康アウトカムを調べるのに十分な検出力を持つ研究がなかった)。間接比較はトピラメートがナルメフェン、ナルトレキソン、およびアカンプロセートより摂取アウトカムに関して優れていることを示唆したが、その安全性プロフィールは低いことが知られている。
    <結論>
     アルコール依存またはアルコール使用障害を持つ患者において、ナルメフェン、ナルトレキソン、アカンプロセート、バクロフェン、またはトピラメートを用いて飲酒を制御する薬理学的治療について、今のところ質の高いエビデンスは存在しない。高いバイアスリスクを持つ研究全般を通して、ある種の治療は「小」から「程々」の飲酒低減効果を示すが、健康アウトカムに関する利益を示す治療はない。

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ナルメフェン(nalmefene)はアルコール依存症の報酬期待を低下させる:実験的fMRI研究
    Quelch DR et al. Biol Psychiatry 2017; 81(11): 941-948.
    Nalmefene Reduces Reward Anticipation in Alcohol Dependence: An Experimental Functional Magnetic Resonance Imaging Study.

    論文要旨:
    <背景>
     アルコール依存の治療のために最近ヨーロッパで認可されたナルメフェン(nalmefene)は、µおよびδオピオイド受容体のアンタゴニスト、κオピオイド受容体の部分アゴニストである。それは高リスクの飲酒をしているアルコール依存症の人にアルコール摂取を減らす治療法を提供する。しかし、そのアルコール摂取に対する効果の背景にある神経生物学的機序は不明である。
     我々はランダム化・二重盲検・プラセボ比較・被験者内交叉デザインを用いて、アルコール投与後の金銭的インセンティブ遅延課題(monetary incentive delay task)を用いた金銭的報酬(monetary reward)を期待中の、ナルメフェン単回投与の線条体におけるBOLD(blood oxygen level-dependent、訳注:血液中の酸素化レベルに応じて画像ボクセル内の磁性が変化しMRI信号強度も変化する現象)信号反応に対する効果を確かめることを目的とした。
    <方法>
     22人の現在大量飲酒しているが、治療を求めていないアルコール依存の男性が募集された。プラセボと比較した単回投与のナルメフェン(18㎎)の、報酬期待中の事前に定義された線条体関心領域のBOLD信号反応の変化に対する効果が機能的MRIを用いて調べられた。両条件ともアルコール静脈内投与下で実施された(80 mg/dLを目標水準として6% vol/vol注入)。
    <結果>
     18人の参加者からのデータセットが利用可能であり、アルコール注入下でナルメフェンはプラセボと比較して有意に線条体関心領域のBOLD反応を減少させたが、ナルメフェンは脳潅流(brain perfusion)を変化させることはなかった。
    <結論>
     ナルメフェンは金銭的報酬の期待とアルコール注入の間の中脳辺縁系におけるBOLD反応を鈍化させる。これは中脳辺縁系のドーパミン系を調節するナルメフェンのオピオイド受容体への作用と一致し、その有効性の神経生物学的基盤を提供する。
    <試験登録>
     ClinicalTrials.gov NCT01969617.

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コクランレビュー:認知症におけるうつ病治療のための抗うつ薬
    Dudas R, et al. Cochrane Database of Systematic Reviews, version published on 31 August 2018, edited by Cochrane Dementia and Cognitive Improvement Group. Antidepressants for treating depression in dementia.

    簡単な言語による要約(Plain language summary):
    <レビューにおける疑問>
     認知症を持つ人のうつ病に対する抗うつ薬の効果に関するエビデンスをレビューする。
    <背景>
     認知症を持つ人のうつ病を認識することは時に困難であるが、うつ病は一般的であり、能力低下の増加、より低いQOL、平均余命の短縮と関連するというエビデンスがある。認知症を持つ多くの人にうつ病の治療のための抗うつ薬が処方されるが、これがどの程度効果的かについて不確実性がある。このレビューは2002年に初めて公表された旧版の改訂である。
    <検索日付>
     我々は2017年8月までの関連研究を検索した。
    <研究特性>
     レビューに含まれる1,592人の10研究を見出した。1つの研究は9カ月間継続されたが、平均の研究期間はせいぜい12週間であった。それら研究の各々がうつ病と認知症の両方を診断するための公式の基準一式を用いて、抗うつ薬と偽薬(プラセボ)を比較していた。より過去の研究はより旧式の抗うつ薬(イミプラミン[imipramine]、クロミプラミン[clomipramine]、およびモクロベマイド[moclobemide])を、より最近の研究はより現代的な抗うつ薬(セルトラリン[sertraline]、フルオキセチン[fluoxetine]、シタロプラム[citalopram]とエスシタロプラム[escitalopram])を用いていた。研究に参加した人の平均年齢は75歳で、軽症から中等症の認知症を持っていた。2つの研究を例外として、参加者は外来で治療された。
    <主な結果>
     12週間にわたって抗うつ薬で治療された人とプラセボで治療された人の間で、うつ病評価尺度の得点差はほとんど無いか全く無かった。この結果を支持するエビデンスの質は高いので、今後の研究が異なる結果を導く可能性は低いことが示唆される。6から9カ月の治療後にも得点差はほとんど無いか全く無かった。抗うつ薬の効果を評価する別の方法は、抗うつ薬群とプラセボ群において有意な臨床的改善(反応)を示した、またはうつ病から回復(寛解)した人の数を数えることである。有意な臨床的改善を示した人の数に関するエビデンスの質は低く、結果は不正確であったので、この測定に対する効果について確実なことは言えなかった。抗うつ薬を服薬した人はプラセボを服薬した人よりおそらく回復しやすかった(抗うつ薬: 40%, プラセボ: 21.7%)。この結果に関するエビデンスの質は程々であったので、今後の研究が異なる結果を導くことはあり得る。抗うつ薬は日常活動の管理能力に影響せず、認知機能(注意、記憶および言語を含む)検査に対して効果がほとんど無いか全く無かった。抗うつ薬を内服した人は治療からより脱落しやすく、少なくとも1つの不必要な副作用を示した。
    <エビデンスの質>
     主として不適切に実施された研究と使用されたアウトカムの測定に関連した問題のために、エビデンスの質は様々であった。これはうつ病評価尺度と回復率に関して異なる結果を解釈する上で考慮すべきことである。というのは、エビデンスの質が後者より前者ついてより高いからである。もう一つの主要な問題は、研究において副作用が十分報告されることはめったにないということである。したがって、さらなる研究はより信頼できる結論に達するのに有用だろうし、何が誰に役立つかを医師と患者が知る手助けになり得る。

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醜形恐怖症/身体醜形障害を持つ成人に対する治療者が提供する認知行動療法の効果と治療後効果:支持的精神療法と比較したランダム化臨床試験
    Sabine Wilhelm et al. JAMA Psychiatry. Published online February 20, 2019.
    Efficacy and Posttreatment Effects of Therapist-Delivered Cognitive Behavioral Therapy vs Supportive Psychotherapy for Adults With Body Dysmorphic Disorder: A Randomized Clinical Trial.

    キーポイント:
    <疑問>
     醜形恐怖症/身体醜形障害(body dysmorphic disorder)に対する認知行動療法は、醜形恐怖症/身体醜形障害の症状重症度の軽減について支持的精神療法より有効か。
    <結果>
     この原発性醜形恐怖症/身体醜形障害を持つ120人の成人の2施設・ランダム化臨床試験において、醜形恐怖症/身体醜形障害に対する認知行動療法と支持的精神療法の有効性の違いは施設特異的であった。1つの施設では2つの治療の有効性は同程度であったが、他の施設では醜形恐怖症/身体醜形障害に対する認知行動療法が統計的に有意により良い結果を達成した。
    <意義>
     両治療とも醜形恐怖症/身体醜形障害の重症度を軽減したが、醜形恐怖症/身体醜形障害に対する認知行動療法は、2施設を通してより一貫して症状重症度を軽減させた。

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統合失調症を持つ成人における抗精神病薬の多剤併用および単剤療法と精神科再入院の関連
    Jari Tiihonen et al. JAMA Psychiatry. Published online February 20, 2019.
    Association of Antipsychotic Polypharmacy vs Monotherapy With Psychiatric Rehospitalization Among Adults With Schizophrenia.

    キーポイント:
    <疑問>
     統合失調症の維持療法において、単剤療法より優れている特定の抗精神病薬の組み合わせは存在するか。
    <結果>
     統合失調症を持つ62,250人について個人内分析を用いて選択バイアスを最小化して、最長20年間追跡した本コホート研究は、抗精神病薬の多剤併用は一般に単剤療法よりわずかに低い精神科再入院のリスクと関連することを示した。クロザピンとアリピプラゾールの組み合わせが最良のアウトカムと関連し、最良のアウトカムと関連する単剤治療であるクロザピン単剤よりも再入院のリスクが14~23%低かった。
    <意義>
     この研究の結果は、ある種の多剤併用は単剤療法と比べてより少ない再入院と関連することを示唆する。

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統合失調症を持つ患者における向精神薬の追加投与の比較有効性
    T. Scott Stroup et al. JAMA Psychiatry. Published online February 20, 2019.
    Comparative Effectiveness of Adjunctive Psychotropic Medications in Patients With Schizophrenia.

    キーポイント:
    <疑問>
     抗精神病薬を服用しているが薬剤変更を必要とする統合失調症患者について、様々な向精神薬オプションの比較有効性はいかなるものか。
    <結果>
     この統合失調症と診断された81,921人の成人外来患者の比較有効性研究において、1種類の新規抗精神病薬を使うことで始めた場合と比べて、抗うつ薬の追加は精神科入院と救急部受診のより低いリスクと関連し、ベンゾジアゼピンの追加はこれらアウトカムのより高いリスクと関連した。
    <意義>
     結果は「統合失調症の治療において抗うつ薬の追加投与が、他の向精神薬を用いた方法より良いアウトカムと関連する」ことを示す。

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トラゾドン(trazodone)使用と認知症リスク:住民ベースのコホート研究
    Ruth Brauer et al. PLOS medicine. Published February 5, 2019.
    Trazodone use and risk of dementia: A population-based cohort study.

    著者による要約:
    <なぜこの研究がなされたか?>
     認知症は増え続ける世界的な健康問題であり利用可能な疾患修飾治療は存在しない。最近の生体外および動物研究は、認可された抗うつ薬であるトラゾドン(trazodone)が認知症に対して神経保護的である可能性を示唆してきた。しかし、臨床的設定でヒトの認知症に対するトラゾドンの効果を評価した研究はない。

    <研究者は何を行い、何を見つけたのか?>
     英国において2000年1月から2017年1月の間に、少なくとも2回の連続する抗うつ薬処方を受けた50歳以上の患者を同定するために、我々は健康改善ネットワーク(the Health Improvement Network)からのプライマリ―ケア電子健康記録を検索した。1:5の傾向スコアマッチング(propensity score matching)によるコックス回帰モデルを用いて、トラゾドン使用者4,716人における認知症リスクが類似のベースライン特性を持つ他の抗うつ薬使用者420,280人のリスクと比較された。トラゾドンを処方された人における認知症の発症率は、マッチさせた抗うつ薬使用者のそれより高く(100人年あたり1.8 対 1.1)、ハザード比(hazard ratio、HR)は1.80であった(95% 信頼区間 [CI] = 1.56–2.09)。トラゾドン使用者の認知症診断までの中央期間は1.8年(四分位範囲 [IQR] = 0.5–5.0 years)であった。

    <これらの結果が意味するもの何か?>
     この英国の住民ベースの大規模研究において、我々はトラゾドン使用と他の抗うつ薬と比べた認知症リスクの減少に関連はないことを発見した。トラゾドン使用者は早発型の認知症を持ち、これはトラゾドンが認知症を停止させる、あるいは遅延させるかもしれないとする動物研究からの示唆とは矛盾するように見える。トラゾドンを服用している患者における認知症の発症率は他の抗うつ薬を服用している患者のそれより高いとはいえ、リスク差は治療期間の増加とともにゼロに近づくので、認知症の前駆期にある人にトラゾドンが処方されやすいのかもしれない。

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精神病性障害では認知機能を支える機能的脳ネットワークの老化が加速されている
    Julia M. Sheffield et al. Biological Psychiatry. Published online January 3, 2019.
    Accelerated Aging of Functional Brain Networks Supporting Cognitive Function in Psychotic Disorders.

    論文要旨:
    <背景>
     ネットワーク横断的に、前頭-頭頂ネットワーク(frontoparietal network、FPN)と帯状-弁蓋ネットワーク(cingulo-opercular network、CON)の結合性減少が健康な老化の最初期に示されていて、これは認知障害の一因となる。そして精神病性障害を持つ人は、複数の生物システムにわたる老化の加速の証拠を示す。早期から慢性期の精神病を持つ患者の大規模サンプルを利用することで、この研究はCONとFPNが精神病性障害における老化の加速の証拠を示すか否かを確定し、ネットワークの効率性と認知の関連を確認し、ネットワークの効率低下が早期精神病で観察されるか否かを確定することを試みた。
    <方法>
     安静時fMRI(Resting-state functional magnetic resonance imaging)と認知データが、精神病性障害を持つ240人の患者と健康な対照参加者178人について得られた。機能統合の測定である全般的効率性が、CONとFPN、皮質下ネットワーク、および視覚ネットワークについて計算された。年齢と認知の関連が評価され群間比較された。
    <結果>
     老化の加速に一致して、有意な群-年齢間交互作用は、CON(精神病: r = −.37; 健常対照: r = −.16)とFPN(精神病: r = −.31; 健常対照: r = −.05)の両方について健常対照より精神病を持つ患者において有意に強い効率性と年齢の関係を反映した。老化の加速が皮質下ネットワークでも視覚ネットワークでも観察されなかったことは、健康な老化において最も早期に衰える認知ネットワークの特異性を示唆する。先の結果を再現して、CONとFPNの両方の効率性はすべての参加者にわたって認知機能と相関した(r > .11, p < .031)。さらに、慢性精神病を持つ患者(p = .004)は早期精神病を持つ患者(p = .553)とは異なり、健常対照と比較して有意に低いFPN効率性を示した。
    <結論>
     早期精神病では高次認知ネットワークの機能統合は問題ないが老化が加速されている証拠があり、これは早期精神病期のうちに認知を標的とする介入を行う可能性を示唆する。

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不眠症状を持つ女性におけるエピジェネティックな老化と免疫老化:女性の健康の先導的研究からの所見
    Judith E. Carrolla et al. Biological Psychiatry 2017; 81(2): 136–144.
    Epigenetic Aging and Immune Senescence in Women With Insomnia Symptoms: Findings From the Women’s Health Initiative Study.

    論文要旨:
    <背景>
     不眠症状は、加齢に関連する疾病と死亡に対する脆弱性と関連する。横断データは加速された生物学的加齢が、睡眠がリスクに影響するメカニズムである可能性を示唆している。DNAの後成的メチル化(epigenetic methylation)を利用して加齢の加速を確認する新しい方法は、エピジェネティク時計(epigenetic clock)としての予測的有用性、および加齢に関連する疾病と死亡の予後予測を示した。
    <方法>
     我々はエピジェネティク年齢(epigenetic age)、免疫細胞老化(immune cell aging)と、次に述べる評価を有する女性の健康の先導的研究(the Women’s Health Initiative study:2078人、平均年齢 64.5 ± 7.1歳)における睡眠の関連を調べた:不眠症状(落ち着きのなさ、入眠困難、中途覚醒、再入眠困難、および早朝覚醒)、睡眠時間(短時間睡眠、5時間以下;長時間睡眠、8時間以上)、エピジェネティク年齢、未感作T細胞(CD8+CD45RA+CCR7+)、および遅延分化T細胞(CD8+CD28–CD45RA–)
    <結果>
     共変量の調整後、不眠症状はエピジェネティク年齢の進行と関連した(β ± SE = 1.02 ± 0.37, p = .005)。不眠症状はまた、より多い遅延分化T細胞(late differentiated T cells)と関連したが(β ± SE = 0.59 ± 0.21, p = .006)、未感作T細胞(native T cells)とは関連しなかった。
    自己報告された短および長睡眠時間は、エピジェネティク年齢と関連しなかった。(長時間睡眠ではなく)短時間睡眠がより少ない未感作T細胞と関連したが(p < .005)、どちらもち遅延分化T細胞とは関連しなかった。
    <結論>
     不眠症状は血液組織のエピジェネティク年齢の上昇、および遅延分化型CD8+ T細胞数の増加と関連する。短時間睡眠はエピジェネティク年齢や遅延分化T細胞数とは関連しないが、未感作T細胞の減少と関連する。この米国女性の地域ベースの大規模研究において、不眠症状は老化の加速に関係した。

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母親の出産前のビタミン使用と若年同胞における自閉スペクトラム症の再現リスクの関連
    Rebecca J. Schmidt et al. JAMA Psychiatry. Published online February 27, 2019.
    Association of Maternal Prenatal Vitamin Use With Risk for Autism Spectrum Disorder Recurrence in Young Siblings.

    キーポイント:
    <疑問>
     母親の出生前のビタミン使用は、自閉スペクトラム症を持つ子供の同胞における自閉症再現リスクの低下に関連するか。
    <結果>
     この自閉症を持つ子供の若年同胞241人のコホート研究において、自閉スペクトラム症の有病率は、母親が妊娠1カ月にビタミンを摂取した子供においては14.1%であったのに対して、母親がその時期にビタミンを摂取しなかった子供では32.7%であった。
    <意義>
     妊娠1カ月における母親の毎日の出生前ビタミン摂取は、高リスク家族における自閉症の再現低下に関連するようだ。これらの結果を確かめ、特定の栄養素を調べて、自閉スペクトラム症の予防に関する公衆衛生上の推奨を提供するために更なる研究が必要である。

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せん妄に対する薬理学的介入の反応性および安全性とせん妄の管理および予防の関連:ネットワークメタ解析
    Yi-Cheng Wu et al. JAMA Psychiatry. Published online February 27, 2019.
    Association of Delirium Response and Safety of Pharmacological Interventions for the Management and Prevention of Delirium: A Network Meta-analysis.

    キーポイント:
    <疑問>
     最高せん妄反応率(the best delirium response rate)と最低せん妄発症率(the lowest delirium occurrence rate)を提供する薬剤は何か、せん妄の治療と予防について最も認容性が高い薬剤は何か。
    <結果>
     9,603人を含む58のランダム化臨床試験のネットワークメタ解析の結果、ハロペリドールとワイパックスの併用が最高せん妄反応率を、ラメルテオンが最低せん妄発症率を示した。プラセボ群または対照群と比較して薬理学的管理が、せん妄の治療または予防の間により高いあらゆる理由による死亡と関連することはなかった。
    <意義>
     せん妄の治療および予防のために、ハロペリドールとワイパックスの併用およびラメルテオンの使用が推奨される。

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高リスクの人において自殺企図を予測する抑うつ症状の重症度と変動性
    Nadine M. Melhem et al. JAMA Psychiatry. Published online February 27, 2019.
    Severity and Variability of Depression Symptoms Predicting Suicide Attempt in High-Risk Individuals.

    キーポイント:
    <疑問>
     最も重要な自殺企図の臨床的予測因子は何か。
    <結果>
     この気分障害を持つ両親の子663人の縦断研究において、最も高い平均スコアと経時的変動性を示す抑うつ症状の軌跡が、精神科診断以上に自殺企図を予測した。さらなる予測因子は、より若年(30歳以下)、気分障害、小児期虐待、本人および両親の自殺企図の既往であった。
    <意義>
     臨床医が日常の精神医学的診療において前々から評価している予測因子が特定された。臨床医は自殺行動のリスクを低下させる抑うつ症状を特に監視して対処するべきである。

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ベンゾジアゼピン受容体作動薬の減薬:エビデンスに基づく臨床診療ガイドライン
    Pottie K et al. Can Fam Physician 2018; 64(5): 339-351.
    Deprescribing benzodiazepine receptor agonists: Evidence-based clinical practice guideline.

    論文要旨:
    <目的>
     ベンゾジアゼピン受容体作動薬(benzodiazepine receptor agonists、BZRAs)を安全に漸減して中止する時期と方法について、臨床医が意思決定する際に役立つエビデンスに基づくガイドラインを作成する。ガイドライン作成、レビュー、そして承認手続きにおいて、利用可能な最高レベルのエビデンスに焦点を当て、プライマリ―ケアの専門家から意見を求める。
    <方法>
     チーム全体は臨床家8人(家庭医1、精神科医2、臨床心理学者1、臨床薬理学者1、臨床薬剤師2、および老年病専門家1)と方法論者1人から構成され、メンバーは利益相反(conflicts of interest、COI)を開示した。ガイドライン作成にあたっては、GRADE (Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation) アプローチを含む系統的な作成過程が採用された。不眠症に関するBZRAs減薬試験の系統的レビューを行い、BZRA使用を続ける損益に関するレビューの批評と患者の嗜好性と資源への含意のナラティブな統合を行うことでエビデンスは作られた。このエビデンスとGRADEエビデンス質評価(GRADE quality of evidence ratings)が推奨を作成するために利用された。第一線の臨床医の疑問に対処するために、チームはコンセンサスと総合的・臨床的検討を通してガイドラインの内容と推奨を改訂した。ガイドラインの草案は臨床医と利害関係者によって閲覧された。
    <推奨>
     我々は、その使用期間に関係なくBZRAsの減薬(漸減)がBZRAsを服用している高齢成人(65歳以上)に提供されることを推奨し、BZRAsを4週間以上にわたって使用した18歳から64歳の成人に提供されることを提案する。これらの推奨は、純粋不眠症(原発性不眠症)、または潜在する併存症が効果的に管理されている併存不眠症を治療するためにBZRAsを使用している患者に適用される。このガイドラインは不眠症を発症させるか増悪させる可能性がある他の睡眠障害、または未治療の不安、抑うつ、または他の身体的精神的健康問題を持っている人には適用されない。
    <結論>
     ベンゾジアゼピン受容体作動薬は損益と関係し、その治療効果は短期的かもしれない。BZRAsの漸減は重大な損益なしに従来の治療よりも中止率を改善する。その合理的理由(潜在的損益)を理解して、漸減計画の立案に参画して行動面の助言を得るのであれば、患者は漸減に向けた対話をより受け入れることができるかもしれない。このガイドラインはBZRAsを漸減して中止する時期と方法に関する意思決定のための推奨を提供する。本推奨は患者を交えた意思決定の(指示ではなく)支援をすることを意図している。

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アルツハイマー病薬候補の加齢関連表現型スクリーニングは、イエルバ・サンタ(Yerba santa)から強力な神経保護化合物ステルビン(sterubin)を同定した
    Wolfgang Fischer et al. Redox Biology. Volume 21, February 2019, 101089.
    Old age-associated phenotypic screening for Alzheimer's disease drug candidates identifies sterubin as a potent neuroprotective compound from Yerba santa.

    ハイライト:
    • 植物抽出物の公開ライブラリーの表現型スクリーニングにより、イエルバ[ヤーバ]・サンタ(Yerba santa、訳注:学名はEriodictyon californicum、アメリカの中央カリフォルニアからオレゴン州の太平洋岸に分布する低木の常緑樹で、痰を出す成分を含み咳止めシロップなどに幅広く利用されている)が同定された。
    • フラボノイドのステルビン(sterubin)が、イエルバ・サンタの主要有効成分である。
    • ステルビンは、脳の老化における複数の毒性に対して非常に神経保護的である。
    • ステルビンは、Nrf2(NF-E2-related factor-2)誘導依存性の潜在的抗炎症活性を持つ。
    • ステルビンは、その神経保護活性を増幅する可能性がある鉄キレート剤でもある。

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閾下精神病体験は援助未希求母集団からの非選択的サンプルにおいて臨床的アウトカムを予測するか:系統的レビューとメタ解析、新知見による強化
    Kaymaz N et al. Psychol Med 2012; 42(11): 2239-53.
    Do subthreshold psychotic experiences predict clinical outcomes in unselected non-help-seeking population-based samples? A systematic review and meta-analysis, enriched with new results.

    論文要旨:
    <背景>
     援助未希求集団からの非選択的代表サンプルにおける閾下精神病体験(曝露)から臨床的精神病性障害(アウトカム)への移行基準率は知られていない。
    <方法>
     閾下精神病体験のベースライン評価と臨床的精神病および非精神病アウトカムの経過観察評価を持つ住民ベースの代表縦断コホートの系統的レビューとメタ解析が実施された。
    <結果>
     ベースラインにおいて自己報告された閾下精神病体験の3~24年の経過観察を持つ6つのコホートが同定された。曝露された人における臨床的精神病アウトカムへの移行の年間リスク(0.56%)は精神病体験を持たない人のリスク(0.16%)より3.5倍高く、精神病体験の重症度/持続性との用量反応メタ解析エビデンスを認めた。個々の研究はまた、動機付けの障害と社会機能の障害の役割を示している。結果の方向性は類似しているものの、非精神病アウトカムへの移行のエビデンスはより弱かった。
    <結論>
     援助未希求疫学サンプルにおける自己報告された閾下精神病体験は、精神病性障害のリスクの精神測定的指標となり、その重症度/持続性は強い修飾効果を持つ。これらのデータは、より高い移行率が示されてきた援助を希求する超高リスクの人の多様な選択サンプルのための参照母集団として役立ちうる。

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一般人口における白色雑音の会話錯聴:精神病体験および精神病危険因子との関連
    Schepers E et al. PLoS One 2019; 14(2): e0211914.
    White noise speech illusions in the general population: The association with psychosis expression and risk factors for psychosis.

    論文要旨:
    <序論>
     患者とその血縁者では陽性精神病体験は白色雑音の会話錯聴率の上昇と関連する。しかし、一般人口において会話錯聴がどのくらい精神病の閾下出現に関係しているかについては結果が一貫していない。この研究の目的は、一般人口サンプルにおける会話錯聴と陽性精神病体験の関係を調べることである。加えて、「会話錯聴は精神病の既知の危険因子(小児期虐待と最近のライフイベント)から精神病の閾下出現の経路上にある」とする仮説が調べられた。
    <方法>
     経過追跡デザイン(ベースラインと6カ月)において、白色雑音の会話錯聴数と、精神病体験の地域における評価(Community Assessment of Psychic Experiences、CAPE)を用いて評価された精神病体験の自己報告の関連が一般人口サンプル(n = 112)において調査された。加えて、会話錯聴と小児期虐待およびライフイベントの関連が、世話と虐待の小児期体験質問表(Childhood Experiences of Care and Abuse questionnaire)および社会再適応評価尺度(Social Readjustment Rating Scale)を用いて調べられた。
    <結果>
     CAPE陽性尺度と白色雑音会話錯聴の間に関連を認めなかった。CAPE陽性尺度は12~16歳の間の小児期虐待(B = 0.980 p = 0.001)およびライフイベント(B = 0.488 p = 0.044)と有意に関連したが、会話錯聴数は小児期虐待ともライフイベントとも関連しなかった。
    <結論>
     非臨床母集団における危険因子から閾下精神病体験の出現への経路は、白色雑音会話錯聴を中間アウトカムとして含むことはなかった。

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閾下抑うつ症状を持つ過体重または肥満症の成人における総合栄養素補給と食品関連行動活性化療法のうつ病/大うつ病性障害予防に対する効果:MooDFOODランダム化臨床試験
    Mariska Bot et al. JAMA 2019; 321(9): 858-868.
    Effect of Multinutrient Supplementation and Food-Related Behavioral Activation Therapy on Prevention of Major Depressive Disorder Among Overweight or Obese Adults With Subsyndromal Depressive Symptoms: The MooDFOOD Randomized Clinical Trial.

    キーポイント:
    <疑問>
     閾下抑うつ症状を持つ過体重または肥満症の成人における総合栄養素補給と食品関連行動活性化療法のうつ病/大うつ病性障害の新規エピソードの予防に対する効果はいかなるものか。
    <結果>
     この1,025人の成人を含む2×2要因のランダム化臨床試験において、総合栄養素補給 対 プラセボ(54 [10.5%] vs 51 [9.9%])、食品関連行動活性化療法 対 無治療(48 [9.4%]) vs 57 [11.1%])を1年間追跡したが、うつ病/大うつ病性障害のエピソードにおいて有意な差を認めなかった。
    <意義>
     これらの結果は、うつ病/大うつ病性障害の予防のために総合栄養素補給または食品関連行動活性化療法を用いることを支持しない。

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肥満症とうつ病を持つ患者における統合された行動的減量法と問題解決療法のBMIと抑うつ症状に対する効果:RAINBOWランダム化臨床試験
    Jun Ma et al. JAMA 2019; 321(9): 869-879.
    Effect of Integrated Behavioral Weight Loss Treatment and Problem-Solving Therapy on Body Mass Index and Depressive Symptoms Among Patients With Obesity and Depression: The RAINBOW Randomized Clinical Trial.

    キーポイント:
    <疑問>
     統合的共同ケア介入は肥満症とうつ病を持つ患者において減量と抑うつ症状を改善するか。
    <結果>
     この肥満症とうつ病を持つ409人の患者を含むランダム化臨床試験において、必要に応じて抗うつ薬を用いる行動的減量法と問題解決療法を統合した介入は、従来のケアと比較して12カ月時のBMI(順に、− 0.7 vs −0.1)と抑うつ症状(20項目Depression Symptom Checklistに関して、−0.3 vs −0.1;得点範囲、0-4)の統計的に有意な減少をもたらした。
    <意義>
     必要に応じて抗うつ薬を用いる行動的減量法と問題解決療法を統合する共同ケア介入は、従来のケアと比較してBMIと抑うつ症状の統計的に有意な減少をもたらしたが、その効果量は小さく臨床的重要性については不明である。

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子宮内感染曝露後の神経精神疾患の長期リスク
    Benjamin J. S. al-Haddad et al. JAMA Psychiatry. Published online March 6, 2019.
    Long-term Risk of Neuropsychiatric Disease After Exposure to Infection In Utero.

    キーポイント:
    <疑問>
     妊娠中の母親の感染曝露は、主要な神経精神疾患の長期リスクを上昇させるか。
    <結果>
     この1973年から2014年にスウェーデンに生まれた子供の住民コホート研究において、妊娠中の感染曝露は自閉スペクトラム症とうつ病のリスクを有意に上昇させた。
    <意義>
     妊娠中の母親の感染は、曝露された子の小児期と成人期における自閉スペクトラム症とうつ病の発症に部分的に寄与するかもしれない。

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うつ病/大うつ病性障害の前頭前皮質におけるモノアミン酸化酵素B総分布容積:[11C]SL25.1188陽電子放出断層撮影法(PET)研究
    Sho Moriguchi et al. JAMA Psychiatry. Published online March 6, 2019.
    Monoamine Oxidase B Total Distribution Volume in the Prefrontal Cortex of Major Depressive Disorder: An [11C]SL25.1188 Positron Emission Tomography Study.

    キーポイント:
    <疑問>
     うつ病/大うつ病性障害の抑うつエピソード中の前頭前皮質におけるモノアミン酸化酵素B(monoamine oxidase B 、MAO-B)分布容積(MAO-B濃度の指標)は増加しているか。
    <結果>
     このケースコントロール研究は、MAO-B分布容積が、健常対照(n = 20)と比較して抑うつエピソードを持つ患者(n = 20)の前頭前皮質では有意に上昇(平均, 26%)していることを示した。罹病期間は前頭前皮質におけるMAO-B分布容積と有意に正相関した。
    <意義>
     結果は、セロトニン再取り込み阻害薬と両立し得る低コストの同定法と選択的な治療法の開発が必要なうつ病/大うつ病性障害に続発する抑うつエピソードを持つ患者の前頭前皮質におけるMAO-Bレベルの上昇という、新規の表現型を示唆する。

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公的資金を受けた精神保健サービスにおいて自閉スペクトラム症を持つ子供のための個別化された精神保健介入を提供するセラピストの養成の有効性:クラスター・ランダム化臨床試験
    Lauren Brookman-Frazee et al. JAMA Psychiatry. Published online March 6, 2019.
    Effectiveness of Training Therapists to Deliver An Individualized Mental Health Intervention for Children With ASD in Publicly Funded Mental Health Services: A Cluster Randomized Clinical Trial.

    キーポイント:
    <疑問>
     介入を提供する地域精神保健セラピストの訓練は、自閉スペクトラム症を持つ子供の困難な行動に効果があるか。
    <結果>
     クラスター・ランダム化コミュニティー有効性試験において、エビデンスに基づく方法でそのセラピストが訓練と継続的助言を受けた自閉スペクトラム症を持つ202人の子供は、そのセラピストが従来のケアを提供した子供と比較して、18カ月間にわたって困難な行動のより大きな減少を示した。セラピストの忠実度の観察者評価は介入効果を媒介した。
    <意義>
     この研究は目標とされたコミュニティサービスの内容に特に合わせて設計された介入の有効性を支持し、忠実度が高いセラピストの提供を目的とする実現戦略を開発して検証する必要性を強調する。

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うつ病を持つ人の職場における生産性の全般的様式:absenteeismとpresenteeismは8つの異なる国々にわたって費用負担を強いる
    Evans-Lacko S and Knapp M. Soc Psychiatry Psychiatr Epidemiol 2016; 51: 1525-1537.
    Global patterns of workplace productivity for people with depression: absenteeism and presenteeism costs across eight diverse countries.

    論文要旨:
    <目的>
     うつ病は世界中で能力低下の主な原因である。研究によれば、うつ病の経済面への全般的影響に跳びぬけて最も強く寄与するのは生産性の損失であることが示されているが、欧米の高収入国以外でのうつ病の費用に関する研究はほとんど無い。そこで、この研究は8つの多様な国々におけるうつ病の職場の生産性に対する影響を調べる。
    <方法>
     我々は、8つの国々(ブラジル、カナダ、中国、日本、韓国、メキシコ、南アフリカ、米国)にわたって職場におけるうつ病関連のabsenteeismとpresenteeismの程度と費用を推定した。また、低生産性に関連する個人・職場・社会の要因を調べた。
    <結果>
     我々の知る限り、これは文化と国内総生産(GDP)の両方の点で多様な国々にわたるうつ病の職場における生産性への影響を調べた最初の研究である。Absenteeismの1人当たり平均年間費用は韓国が最低($181)で日本が最高($2674)であった。Presenteeismの1人当たり平均年間費用は米国($5524)とブラジル($5788)で最高であった。Presenteeismに関連する費用はabsenteeism に関連する費用の5~10倍となる傾向を認めた。
    <結論>
     これらの結果は、絶対的な金銭の点と国のGDPに対する割合との関連の両方において、職場におけるうつ病の影響がすべての国を通して相当のものであることを示す。全般的に見れば、うつ病はその国の経済発展、国民所得、または文化に関係なく、もっと大々的に注目されるべき問題と言える。

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プライマリーケアにおけるうつ病の同定:症例発見尺度についての文献統合
    Williams JW Jr et al. Gen Hosp Psychiatry 2002; 24(4): 225-37.
    Identifying depression in primary care: a literature synthesis of case-finding instruments.

    論文要旨:
     我々はMedline(メドライン、訳注:米国国立医学図書館が作成する医学・薬学等の文献データベース)、専門分野別の試験登録、および選択された論文中の文献リストの英語文献を用いて、プライマリーケア設定においてうつ病/大うつ病性障害、または気分変調症を持つ患者を同定する症例発見尺度の有用性を評価した。研究はプライマリーケア設定で任意抽出された患者を用いて行われ、症例発見尺度と広く認められたうつ病/大うつ病性障害の標準的診断基準を比較した。
     全部で16の症例発見尺度が38の研究において評価された。32,000人以上の患者が症例発見尺度によるスクリーニングを受け、このうち約12,900人が診断基準による標準的評価を受けた。症例発見尺度の質問の長さは1~30、平均施行時間は2分以下~6分に及んだ。感度の中央値は85%(範囲 50~97%)、特異度の中央値は74%(範囲 51~98%)で、尺度間に有意な差を認めなかった。しかし、個々の尺度の感度と特異度の推定値は研究間で有意に異なった。うつ病/大うつ病性障害、または気分変調症の併存診断について、全体の感度は79%(CI、 74~83%)、全体の特異度は75%(CI、70~81%)であった。層別解析は研究方法、基準の選択、または患者特性が全体の尺度性能に有意に影響しないことを示した。
     我々は、プライマリーケアの臨床医がうつ病/大うつ病性障害を持つ患者を同定する際に役立つ妥当な動作特性を持つ複数の尺度が利用可能であることを見出した。これら尺度の動作特性は類似しているので、特定の尺度の選択は実施しやすさ、実施および採点時間、重症度や治療反応性の監視のような付加的目的に役立つ尺度能力といった問題に依存するだろう。

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米国における成人の注意欠如・多動症の有病率と関連性:全米併存疾患再調査(NCS-R2)から
    Kessler RC et al. Am J Psychiatry 2006; 163(4): 716-23.
    The prevalence and correlates of adult ADHD in the United States: results from the National Comorbidity Survey Replication.

    論文要旨:
    <目的>
     成人の注意欠如・多動症(ADHD)への関心が増々高まっているものの、その有病率と関連事項については不明である。
    <方法>
     成人ADHDのためのスクリーニングが、広範囲のDSM-IV障害を評価するために非専門家が実施する診断面接を用いた国民代表世帯調査である全米併存疾患再調査(NCS-R2)における18~44歳の回答者の確率サブサンプル(N=3,199)に含まれていた。成人のADHDの盲検化臨床経過観察面接が、過剰標本抽出のスクリーニング陽性者である154人の回答者に実施された。有病率と臨床医評価の成人ADHDとの関連事項を推定するために多重代入法(訳注:不完全データを用いた統計分析が完全データによる統計分析と同様に統計的に妥当になる欠測値対処法)が用いられた。
    <結果>
     現在の成人ADHDの推定有病率は4.4%であった。有意な関連事項は男性である、以前に結婚していた、失業中、非ヒスパニック系の白人であった。成人のADHDは調査で評価された多くの他のDSM-IV障害と高度に併存し、相当な役割障害と関連した。多数の人が他の併存精神障害および物質関連障害の治療を受けていたが、ADHD症例の大部分は未治療であった。
    <結論>
     成人ADHDの特定と治療を増加させる努力が必要である。効果的なADHD治療が成人のADHDに併存する障害の発症、持続、重症度を減らすか否かを確かめる研究が必要である。

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注意欠如・多動症の治療薬とうつ病のリスク:全国縦断コホート研究
    Chang Z et al. Biol Psychiatry 2016; 80(12): 916-922.
    Medication for Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder and Risk for Depression: A Nationwide Longitudinal Cohort Study.

    論文要旨:
    <背景>
     注意欠如・多動症(attention-deficit/hyperactivity disorder、ADHD)は、うつ病を含む高率な精神医学的併存症と関連する。しかし、ADHD治療薬がうつ病のリスクを上昇させるのか低下させるのかは不明である。
    <方法>
     我々は、1960年から1998年にスウェーデンで生まれたADHD診断を持つすべての人(N = 38,752)を調査した。我々は、住民登録からADHD治療薬の処方、うつ病および他の精神疾患の診断、および社会人口学的要因についてのデータを得た。ADHD治療薬とうつ病の関連がコックス比例ハザード回帰を用いて推測された。
    <結果>
     社会人口学的および臨床的交絡因子を調整後、ADHDの薬物治療はうつ病の長期(3年後の)リスクの減少と関連した(ハザード比 = 0.58; 95% 信頼区間, 0.51-0.67)。リスクはADHDの薬物治療の期間が長いほど低かった。また、ADHD治療薬はうつ病併存率の低下と関連した。個人内分析は患者がADHDの薬物治療を受けた期間は受けなかった期間と比較してうつ病の併存が20%少ないことを示した(ハザード比 = 0.80; 95% 信頼区間, 0.70-0.92)。
    <結論>
     我々の研究は、ADHDの薬物治療がその後のうつ病のリスクを増加させず、むしろ薬物治療が将来と現在のうつ病のリスク減少と関連することを示唆する。

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うつ病/大うつ病性障害における共通の遺伝的変異と抗うつ薬の有効性:3つの全ゲノム薬理遺伝研究のメタ解析
    GENDEP Investigators; MARS Investigators; STAR*D Investigators. Am J Psychiatry 2013; 170(2): 207-17.
    Common genetic variation and antidepressant efficacy in major depressive disorder: a meta-analysis of three genome-wide pharmacogenetic studies.

    論文要旨:
    <目的>
     間接的エビデンスは、共通する遺伝的変異がうつ病/大うつ病性障害を持つ人における抗うつ薬有効性の個人差の一因となることを示唆するが、以前の研究はこれらの効果を見出すには検出力が不足していた。
    <方法>
     うつ病/大うつ病性障害を持つ北ヨーロッパ系の2256人を含み、前向きに抗うつ薬治療のアウトカムが収集された3つの全ゲノム薬理遺伝研究(Genome-Based Therapeutic Drugs for Depression [GENDEP] project、Munich Antidepressant Response Signature [MARS] project、the Sequenced Treatment Alternatives to Relieve Depression [STAR*D] study)のデータについてメタ解析が実施された。データ補間後、最長12週間の抗うつ薬治療後の症状の改善と寛解に関連する共通変異を捉えるために、120万の一塩基変異多型(single-nucleotide polymorphisms)が検証された。
    <結果>
     一次解析において、個々の関連は統計的有意性の全ゲノム閾値を満たさなかった。GENDEPとMARSの参加者のメタ解析から算出される多遺伝子スコアは、STAR*Dのアウトカムの分散の最大でおよそ1.2%を説明し、これは多くの多型に広く分散する弱い一致信号を示唆する。
     シタロプラム(STAR*D)またはエスシタロプラム(GENDEP)で治療された1,354人に限定した解析は、治療2週間後の早期改善と関連する5番染色体上の遺伝子間領域を特定した。
    <結論>
     メタ解析による高い統計的検出力にも関わらず、著者らは抗うつ薬治療のアウトカムについて信頼できる予測因子を特定できなかった。しかし、共通する遺伝的変異が抗うつ薬反応の個人差の一因となる弱い直接的エビデンスを見出した。

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うつ病/大うつ病性障害におけるノルアドレナリントランスポーター:PET研究
    Moriguchi S et al. Am J Psychiatry 2017; 174(1): 36-41.
    Norepinephrine Transporter in Major Depressive Disorder: A PET Study.

    論文要旨:
    <目的>
     ノルアドレナリントランスポーター(Norepinephrine Transporter)は、うつ病/大うつ病性障害において重要な役割を持つと言われてきた。しかし、うつ病/大うつ病性障害におけるノルアドレナリントランスポーターの利用率と臨床症状におけるその役割は不明である。著者らは、検証結果と臨床症状の関連を特定することを目的に、うつ病/大うつ病性障害を持つ患者におけるノルアドレナリントランスポーターの利用率を検証した。
    <方法>
     本研究は、19人のうつ病・大うつ病性障害を持つ患者と19人の性別と年齢を合致させた健常対照者が、放射性リガンド (S,S)-[18F]FMeNER-D2によって測定されたノルアドレナリントランスポーターの利用率を評価する陽電子放出断層スキャンを受けた横断研究であった。置換不能結合能(nondisplaceable binding potential、BPND)について、視床およびその亜領域におけるノルアドレナリントランスポーターの利用率が定量された。また、ノルアドレナリントランスポーター利用率と臨床症状の関連を分析した。
    <結果>
     健常被験者と比較して、うつ病/大うつ病性障害を持つ患者における視床のBPND値は29.0%高かった。特に、解剖学的に前頭前皮質と結合する視床の亜領域では28.2%上昇していた。患者の視床において上昇していたノルアドレナリントランスポーターの利用率は、Trail Making TestのパートAによって測定された注意と正相関した。
    <結論>
     これらの結果は、うつ病/大うつ病性障害を持つ患者におけるノルアドレナリントランスポーターを介した伝達の変化を示し、この変化はこの患者母集団における注意と関連し得ることを示唆した。

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ヒト脳におけるデュロキセチンによるノルアドレナリントランスポーター占有率:(S,S)-[18F]FMeNER-D2を用いた陽電子放出断層撮影法(PET)研究
    Moriguchi S et al. Int J Neuropsychopharmacol 2017; 20(12): 957-962.
    Occupancy of Norepinephrine Transporter by Duloxetine in Human Brains Measured by Positron Emission Tomography with (S,S)-[18F]FMeNER-D2.

    論文要旨:
    <背景>
     脳のノルアドレナリントランスポーターは精神疾患の治療の標的とされてきた。デュロキセチン(duloxetine)はうつ病の治療に広く使われるセトロニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬である。しかし、デュロキセチン用量と血漿濃度、ヒト脳におけるノルアドレナリントランスポーター占有率の関係性は確認されていない。この研究で、我々は異なるデュロキセチン用量によるノルアドレナリントランスポーター占有率を調べた。
    <方法>
     我々はデュロキセチンの単回経口投与(20 mg, n = 3; 40 mg, n = 3; 60 mg, n =2)の前後2回の(S,S)-[18F]FMeNER-D2を用いた陽電子放出断層撮影スキャンから、ノルアドレナリントランスポーター占有率を算出した。陽電子放出断層撮影スキャンは(S,S)-[18F]FMeNER-D2の静脈注射後120分と180分に行われた。デュロキセチンの血漿濃度を測定するために、2回目の陽電子放出断層撮影スキャンの直前後に静脈血サンプルが採取された。
    <結果>
     デュロキセチンによるノルアドレナリントランスポーター占有率は、20 mgで29.7%、40 mgで30.5%、60 mgで40.0%であった。50%のノルアドレナリントランスポーター占有率を誘導する推定デュロキセチン用量は76.8 mg、50%のノルアドレナリントランスポーター占有率を誘導する推定デュロキセチン血漿濃度は58.0 ng/mLであった。
    <結論>
     ヒト脳における臨床用量のデュロキセチンによるノルアドレナリントランスポーター占有率は、(S,S)-[18F]FMeNER-D2陽電子放出断層撮影法による推定によれば約30%~40%であった。

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うつ病/大うつ病性障害を持つ患者脳において、徐放性ベンラファキシンはノルアドレナリントランスポーターを阻害する:[18F]FMeNER-D2を用いた陽電子放出断層撮影(PET)研究
    Arakawa R et al. Int J Neuropsychopharmacol. Published: 11 January 2019.
    Venlafaxine ER blocks the norepinephrine transporter in the brain of patients with major depressive disorder: a PET study using [18F]FMeNER-D2.

    論文要旨:
    <背景>
     ベンラファキシン(venlafaxine)は生体外(in vitro)ではノルアドレナリントランスポーター(norepinephrine transporter、NET)よりもセロトニントランスポーター(serotonin transporter、5-HTT)に高い親和性を持つので、臨床用量のベンラファキシンのNETへの生体内結合は疑問視されてきた。臨床的に意味のある用量のベンラファキシンの5-HTT占有率は報告されているが、ヒト脳におけるNET占有率の報告は無い。
    <方法>
     これは非盲検・単一施設の探索的PET研究であった。徐放性ベンラファキシン(venlafaxine extended-release [ER])に反応したうつ病/大うつ病性障害(major depressive disorder、MDD)の患者12人と対照9人が募集された。各被験者は[18F]FMeNER-D2を用いた1度のPET測定に参加した。脳における結合能(binding potential、BPND)が、視床を標的領域、白質を参照領域として曲線下面積比法によって定量された。対照群と2つの用量範囲に分けられた患者群のBPND値の差が評価された。すべての患者のNET占有率(%)が、対照をベースラインとする平均BPNDを用いて算出された。また、用量または総活性分画の血漿濃度とNET占有率の間の関係が推定された。
    <結果>
     150 - 300 mg/日の患者群のBPNDは対照群より有意に低かった。NET占有率(8 - 61 %)は用量依存的に増加したが、150㎎/日を超えて明確な差は認めなかった。
    <結論>
     この研究は、臨床的に意味のある用量の徐放性ベンラファキシンが、MDD患者の脳のNETを阻害することを示す。データは、ベンラファキシンの抗うつ効果が5-HTT阻害とNET阻害の双方に関係するという見解を支持する。

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自殺企図と既遂の予測モデル:系統的レビューとシミュレーション
    Bradley E. Belsher et al. JAMA Psychiatry. Published online March 13, 2019.
    Prediction Models for Suicide Attempts and Deaths: A Systematic Review and Simulation.

    キーポイント:
    <疑問>
     統計モデリングの進歩は、自殺予防アルゴリズムによる予測を使用可能な状態にするほど十分にアルゴリズムの予測妥当性を改善したか。
    <結果>
     この64の異なる自殺予防モデルを含む17の研究の系統的レビューにおいて、モデルは良好な全般的分類と低い陽性予測値を示した。これらモデルの使用はそれが単独で実施されるならば、高い偽陽性率と相当な偽陰性率をもたらすことになるだろう。
    <意義>
     今のところ、自殺の予測モデルの能力は「自殺による死亡の予測の実用性は限られている」ことを示唆する。

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アルコール薬物療法におけるアウトカムとしての飲酒リスクレベルの評価:3つのランダム化臨床試験の二次解析
    Daniel E. Falk et al. JAMA Psychiatry. Published online March 13, 2019.
    Evaluation of Drinking Risk Levels as Outcomes in Alcohol Pharmacotherapy Trials: A Secondary Analysis of 3 Randomized Clinical Trials.

    キーポイント:
    <疑問>
     アルコール使用障害の薬物治療試験において妥当性が認められた飲酒のハームリダクション(harm reduction)測定は、有効性アウトカムとしてどの程度うまく機能しているか。
    <結果>
     この1,169人の参加者からなる3つのランダム化臨床試験の二次解析において、1日当たりのアルコールグラム摂取量で測定される世界保健機関飲酒リスクレベル(WHO drinking risk levels)に基づくアウトカムを得た。レベル1リダクションとレベル2リダクションは、米国食品医薬品局(FDA)が認める断酒アウトカムと類似した仕方で薬物効果を区別したが、過度の飲酒がない日(no heavy drinking days)がより多くの患者によって達成された。
    <意義>
     WHO飲酒リスクレベルの低下は、断酒よりも患者の目標に強く協調し、より多くの人を治療に成功していると認識して、アルコール使用障害のための将来の薬剤開発を促進し得る。

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脳画像計測に位置付けられた子供の脳機能と快感消失(anhedonia)の関連
    Narun Pornpattananangkul et al. JAMA Psychiatry. Published online March 13, 2019.
    Association of Brain Functions in Children With Anhedonia Mapped Onto Brain Imaging Measures.

    キーポイント:
    <疑問>
     快感消失(anhedonia)を持つ子供の脳機能は、どのように内因性および課題関連性の脳画像計測に位置付けられるか。
    <結果>
     この2,878人の子供を含む大規模・横断的fMRI研究において、低い気分、不安、または注意欠如・多動症ではなく快感消失が、腹側線条体と帯状-弁蓋ネットワーク間の安静時の低結合性と、背側線条体と帯状-弁蓋ネットワークにおける報酬期待中の低賦活に関連した。
    <意義>
     快感消失を持つ子供は、内因性報酬覚醒統合(intrinsic reward arousal integration)の混乱と外因性報酬期待活動(extrinsic reward anticipation activity)の低下に位置付けられた。

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コホートおよび個人の物質使用と薬物使用・薬物使用障害への移行リスク、障害からの寛解の関連:世界精神保健調査からの知見
    Louisa Degenhardt et al. JAMA Psychiatry. Published online March 13, 2019.
    Association of Cohort and Individual Substance Use With Risk of Transitioning to Drug Use, Drug Use Disorder, and Remission From Disorder: Findings From the World Mental Health Surveys.

    キーポイント:
    <疑問>
     ある人の出生コホートにおいてアルコールおよび他の薬物が使用される程度は、その人の薬物使用の開始、問題のある使用への移行、および寛解への到達のリスクと関連するか。
    <結果>
     この世界精神保健調査(the World Mental Health Surveys)からの回答者90,027人の横断的全国データの研究は、より高度な薬物使用への関与に移行するその人の個人的リスクは、年齢コホートの物質使用歴と関連することを見出した。結果は社会人口学的要因の調整後も統計的に有意であり、国民所得水準によらず一貫していた。
    <意義>
     この分析を通して、コホート内の物質使用を減らすいかなる介入もまた、より高度な薬物使用への関与に移行する個人レベルのリスクを減らす可能性がある。

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小児期の虐待の前向き測定と後向き測定の一致:系統的レビューとメタ解析
    Jessie R. Baldwin et al. JAMA Psychiatry. Published online March 20, 2019.
    Agreement Between Prospective and Retrospective Measures of Childhood Maltreatment: A Systematic Review and Meta-analysis.

    キーポイント:
    <疑問>
     小児期の虐待の前向き測定と後向き測定の一致はどの程度か。
    <結果>
     この異なる16の研究と25,471人参加者の系統的レビューとメタ解析は、小児期の虐待の前向き測定と後向き測定の一致は乏しい(Cohen κ = 0.19)ことを見出した。平均すると、小児期の虐待が前方視的に観察された人の52%が後方視的に虐待を報告せず、同様に小児期の虐待を後方視的に報告した人の56%に虐待が前方視的に観察されなかった。
    <意義>
     このメタ解析の結果は、小児期の虐待の前向き測定と後向き測定は大きく異なるグループを特定し、関連する健康転帰とリスクメカニズムを研究するために、2つの測定を互換的に使用することはできないことを示す。

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7
小児期早期から青年期におけるBMIと内在化症状の併存、共進展、時間的関係
    Praveetha Patalay et al. JAMA Psychiatry. Published online March 20, 2019.
    Comorbidity, Codevelopment, and Temporal Associations Between Body Mass Index and Internalizing Symptoms From Early Childhood to Adolescence.

    キーポイント:
    <疑問>
     小児期早期から青年期において、BMI(body mass index)と内在化症状(internalizing symptoms)はどのように関連するか。
    <結果>
     ある英国の出生コホート研究からの17,215人からなる本研究において、小児期早期ではBMIと内在化症状に関連を認めなかったが、小児期中期から青年期ではその共進展に関連が観察され、併存尤度の増加を認めた。
    <意義>
     この結果は、肥満と内在化問題は子供が年齢を重ねると同時発生しやすく、小児期中期からBMIと内在化症状の進展に関連を認めることを示す。

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自分で行うアプリによるバーチャル・リアリティ認知行動療法の高所恐怖症に対する有効性:ランダム化臨床試験
    Tara Donker et al. JAMA Psychiatry. Published online March 20, 2019.
    Effectiveness of Self-guided App-Based Virtual Reality Cognitive Behavior Therapy for Acrophobia: A Randomized Clinical Trial.

    キーポイント:
    <疑問>
    低コスト(ボール紙製)のバーチャル・リアリティ(virtual reality、VR)ゴーグルを用いて、すべてを自分で行うアプリを基本とするバーチャル・リアリティ(virtual reality、VR)認知行動療法は、利用者に使いやすく、かつ待機リスト対照群と比較して高所恐怖症状の減少に有効か。
    <結果>
    高所恐怖症状を持つ193人の参加者を含む単盲検ランダム化臨床試験において、アプリを用いた治療は、待機リスト対照者と比べて高所恐怖症状の有意で大きな低下を示し、利用者にとって使いやすいと評価された。
    <意義>
    高所恐怖の認知行動療法は、標準的なスマートフォンと低コストのVRゴーグルを介して治療者の介入なしに、現行の対面式の治療またはハイエンドのVR暴露療法にかかるコストのごく一部で効果的に提供され得る。

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気分安定薬と双極性障害における脳卒中のリスク
    Chen PH et al. Br J Psychiatry. 2018 Oct 8: 1-6.
    Mood stabilisers and risk of stroke in bipolar disorder.

    論文要旨:
    <背景>
     双極性障害患者に限定した気分安定薬使用後の脳卒中リスクに関する研究は少ない。
    <目的>
     この研究において、我々は双極性障害を持つ患者における気分安定薬への曝露後の脳卒中リスク調べた。
    <方法>
     この全国的な住民ベースの研究のデータは、台湾国民健康保険研究データベース(the Taiwan National Health Insurance Research Database)に由来する。双極性障害を持つ患者の後向きコホート(n = 19,433)において、1999年から2012年に609の脳卒中新規発症例が特定された。14日間の時間枠を用いたケース・クロスオーバー研究デザインが、双極性障害を持つ患者における虚血性、出血性、および他のタイプの脳卒中のリスクに対する個々の気分安定薬の急性曝露効果を評価するために適用された。
    <結果>
     1つのグループとして、気分安定薬は双極性障害を持つ患者における脳卒中リスクの上昇と有意に関連した(調整済リスク比, 1.26; P = 0.041)。個々の気分安定薬では、カルバマゼピンへの急性曝露が最も高い脳卒中リスクを持ち(調整済リスク比, 1.68; P = 0.018)、特に虚血性タイプで高かった(調整済リスク比, 1.81; P = 0.037)。加えて、バルプロ酸への急性曝露が出血性の脳卒中リスクを上昇させた(調整済リスク比, 1.76; P = 0.022)。対照的に、リチウムとラモトリギンへの急性曝露はどのタイプの脳卒中リスクも有意に上昇させなかった。
    <結論>
     リチウムとラモトリギンではなく、カルバマゼピンとバルプロ酸の使用が双極性障害を持つ患者の脳卒中リスクの上昇に関連する。

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青年期における大気汚染と精神病体験の関連
    Joanne B. Newbury et al. JAMA Psychiatry. Published online March 27, 2019.
    Association of Air Pollution Exposure With Psychotic Experiences During Adolescence.

    キーポイント:
    <疑問>
     大気汚染への曝露は青年期の精神病体験と関連するか。
    <結果>
     この英国生まれの2,232人の子供の国民代表コホート研究において、二酸化窒素(nitrogen dioxide)、窒素酸化物(nitrogen oxides、【略】NOx)、および粒子状物質(particulate matter、【略】PM)への屋外曝露と青年期における精神病体験の報告に、有意な関連が見出された。加えて、二酸化窒素と窒素酸化物の両方で都市居住と青年期の精神病体験の関連の60%を説明した。
    <意義>
     都市居住と青年期の精神病体験の関連は、都市環境における高レベルの屋外大気汚染によって一部説明される。

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外来統合失調症患者に対するニトロプルシド・ナトリウム(Sodium Nitroprusside)の補助的静脈注射の有効性と認容性:ランダム化臨床試験
    Hannah E. Brown et al. JAMA Psychiatry. Published online March 27, 2019.
    Efficacy and Tolerability of Adjunctive Intravenous Sodium Nitroprusside Treatment for Outpatients With Schizophrenia: A Randomized Clinical Trial.

    キーポイント:
    <疑問>
     補助療法としてのニトロプルシド・ナトリウム(sodium nitroprusside、訳注:血管拡張薬として、日本では「手術時の低血圧維持」と「手術時の異常高血圧の救急処置」に使用される)の静脈注射は、ある程度の治療抵抗性を示す統合失調症を持つ人のための有効かつ安全な治療であるか。
    <結果>
     この抗精神病薬で治療されている慢性統合失調症を持つ52人の成人の多施設共同・ランダム化・二重盲検臨床試験において、毎分体重1kg当たり0.5μgのニトロプルシド・ナトリウムの静脈注射後に、陽性、陰性、または認知症状の改善は認められなかった。クロザピンの治療状態で層別化した場合も反応に差はなかった。全体として治療は良好な認容性を示した。
    <意義>
     この十分な検出力を持つ臨床試験の結果は、毎分体重1kg当たり0.5μgで注射されたニトロプルシド・ナトリウムの追加は、ある程度の治療抵抗性を示す統合失調症を持つ人に対する有効な治療ではないことを示す。

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成人における自殺企図と併存精神疾患の家族集積性と共集積
    Elizabeth D. Ballard et al. JAMA Psychiatry. Published online March 27, 2019.
    Familial Aggregation and Coaggregation of Suicide Attempts and Comorbid Mental Disorders in Adults.

    キーポイント:
    <疑問>
     自殺企図は家族性か、その家族集積性は併存精神疾患によって説明可能か。
    <結果>
     この1,119人の成人発端者と5,355人の第1親等血縁者データの研究において、自殺企図は程々に家族性で精神疾患、特に気分障害と関連した。発端者の社会不安症/社会不安障害は、血縁者の自殺企図と統計的に有意に関連した。
    <意義>
     自殺企図は家族性のようであるが、家族集積性の多くは併存する精神疾患によって説明できるかもしれない。社会不安またはその根本要素の家族素因を持つ人における自殺企図リスクの増加は、自殺の機序と予防に対する洞察を与えてくれる。

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自閉スペクトラム症を持つ子供の社会化を改善するためのウェアラブルデジタル介入の効果:ランダム化臨床試験
    Catalin Voss et al. JAMA Pediatr. Published online March 25, 2019.
    Effect of Wearable Digital Intervention for Improving Socialization in Children With Autism Spectrum Disorder: A Randomized Clinical Trial.

    キーポイント:
    <疑問>
     自宅で使うためにデザインされた顔の動作と情動の認知を強化するウェアラブル(装着可能な)人工知能介入は、自閉スペクトラム症を持つ子供の社会化を改善することができるか。
    <結果>
     この自閉スペクトラム症を持つ71人の子供のランダム化臨床試験において、ウェアラブル介入を用いて自宅で治療された子供は、標準的治療の行動療法だけを受けた子供と比較して、社会化の有意な改善を示した。
    <意義>
     自閉スペクトラム症を持つ子供のより高い社会化を達成するために、子供の自然な環境において情動の認知と関連を教えるモバイル介入は標準的治療を増強することができる。

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注意欠如・多動症を持つ子供の治療におけるサフラン(Crocus sativus L)とメチルフェニデート:ランダム化・二重盲検パイロット研究
    Sara Baziar et al. J Child Adolesc Psychopharmacol. Published Online: 11 Feb 2019.
    Crocus sativus L. Versus Methylphenidate in Treatment of Children with Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder: A Randomized, Double-Blind Pilot Study.

    論文要旨:
    <目的>
     注意欠如・多動症(Attention-deficit/hyperactivity disorder、ADHD)は、最も多い小児期・青年期の神経精神疾患の1つであるが、患者の約30%は中枢刺激薬に反応しないか、その副作用に耐えられない。したがって、植物薬のような代替薬が検討されるべきである。この試験の目的は、ADHDを持つ子供の症状の改善におけるサフラン(saffron、訳注:学名Crocus sativus、アヤメ科の植物)とメチルフェニデートの安全性と有効性を比較することである。
    <方法>
     6週間のランダム化・二重盲検研究において、DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアルによるADHD診断を持つ54人の患者(6~17歳の子供)が、1日20または30 mgのメチルフェニデート(<30 kgの場合は1日20 mg、>30 kgの場合は1日30 mg)、あるいは1日20または30 mgのサフランカプセル(<30 kgの場合は1日20 mg、>30 kgの場合は1日30 mg)に無作為に割り付けられた症状は親および教師によるDSM-IV用ADHD評価尺度(ADHD-RS-IV)を用いて、ベースライン、3週時、6週時に評価された。
    <結果>
     50人の患者が試験を完了した。親および教師評価のADHD-RS-IVスコアに関して、反復測定の一般線型モデルは2群間の有意な差を示さなかった(親評価: F = 0.749, df = 1.317, p = 0.425; 教師評価: F = 0.249, df = 1.410, p = 0.701)。ベースラインから研究終了までの教師および親評価のADHD-RS-IVスコアの変化は、サフラン群とメチルフェニデート群で有意な差を認めなかった。有害作用の頻度はサフラン群とメチルフェニデート群で同程度であった。
    <結論>
     サフランカプセルを用いた短期治療はメチルフェニデートと同じ効果を示したが、今後の研究のためにより大規模でより長期の治療期間を有する比較試験が必要である。

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注意欠如・多動症を持つ患者における精神病とメチルフェニデートまたはアンフェタミン
    Moran LV et al. N Engl J Med 2019; 380(12): 1128-1138.
    Psychosis with Methylphenidate or Amphetamine in Patients with ADHD.

    論文要旨:
    <背景>
     注意欠如・多動症(attention deficit-hyperactivity disorder、ADHD)の治療のために、中枢刺激薬であるメチルフェニデートまたはアンフェタミンが処方されて使用することが増えている。2007年に米国医薬品局は、新規発症精神病の知見に基づき中枢刺激薬の薬剤ラベルに変更を命じたが、中枢刺激薬の間でADHDを持つ青年と若年成人における精神病リスクが異なるのか否かについては十分に調べられていない。
    <方法>
     我々は、2004年1月1日から2015年9月30日の間にADHDの診断を受けてメチルフェニデートまたはアンフェタミンの服用を開始した13~25歳の患者を評価するために、2つの民間保険請求データベースからのデータを使用した。アウトカムは、精神病発症後の最初の60日間にその精神病に対して抗精神病薬が処方された精神病の新規診断であった。精神病のハザード比を推定するために、我々は各々データベースでメチルフェニデートを処方された患者とアンフェタミンを処方された患者をマッチさせるために傾向スコア(propensity score)を使用し、2つの中枢刺激薬グループ間で精神病の発症率を比較して、2つのデータベースを通して結果を要約した。
    <結果>
     我々はADHDのために中枢刺激薬の処方を受けた337,919人の青年と若年成人を評価した。研究母集団は143,286人年の経過観察を有する221,846人の患者から構成された。メチルフェニデートを服用している110,923人の患者は、アンフェタミンを服用している110,923人の患者とマッチ(match)された。マッチ母集団において343の精神病エピソード(精神病の新規診断コードで定義されるエピソードと抗精神病薬の処方がある)があり(1,000人年あたり2.4)、メチルフェニデート群が106エピソード(0.10%)、アンフェタミン群が237エピソード(0.21%)であった(アンフェタミン使用のハザード比, 1.65; 95% 信頼区間, 1.31-2.09)。
    <結論>
     ADHDを持ち中枢刺激薬の処方を受けている青年および若年成人では、新規発症の精神病が患者660人におよそ1人発生する。アンフェタミンの使用は、メチルフェニデートより大きな精神病リスクと関連した。
    <資金>
     米国国立精神保健研究所(NIMH)ほか。

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うつ病の再発に対する小児期虐待の影響の皮質構造による媒介:2年間の縦断的観察研究
    Opel N et al. Lancet Psychiatry 2019; 6(4): 318-326.
    Mediation of the influence of childhood maltreatment on depression relapse by cortical structure: a 2-year longitudinal observational study.

    論文要旨:
    <背景>
     小児期虐待は、うつ病/大うつ病性障害における不良な疾患経過の主要な環境因子である。虐待とうつ病の両方が類似の脳構造変化と関連することは、脳構造変化がうつ病の臨床的アウトカムに対する虐待の有害な影響を媒介する可能性を示す。しかし、縦断研究はこの仮説を確認することができなかった。ゆえに我々は、縦断的デザインにおいて小児期虐待、脳構造変化、およびうつ病再発の関係を明確にすることを目的とした。
    <方法>
     我々はミュンスター大学精神科(ドイツ)において、2年間の縦断的臨床データが利用可能なミュンスター神経画像コホートから参加者を募集した。ベースラインデータの収集は、臨床評価、構造的MRI、および小児期トラウマ質問表(the Childhood Trauma Questionnaire)を用いた小児期虐待経験の程度の遡及的評価から構成された。臨床経過観察評価は、最初の募集後の2年間にすべての参加者において実施された。
    <結果>
     最初の募集は2010年3月21日から2016年1月29日、経過観察・再評価は2012年9月7日から2018年3月9日に行われた。うつ病を持つ110人の患者が本研究に参加した。35人の患者は再発しなかったが、75人の患者は2年間の経過観察期間内にうつ病の再発を経験した。小児期虐待は、経過観察中のうつ病の再発と有意に関連した(オッヅ比 [OR] 1·035, 95% CI 1·001-1·070; p=0·045)。過去の小児期虐待の体験と将来のうつ病の再発の両方が、ベースラインにおける皮質(OR 0·996, 95% CI 0·994-0·999; p=0·001)、特に右島(r=-0·219, p=0·023)の表面積減少と関連した。島の表面積は、虐待と将来のうつ病再発の関連を媒介した(間接効果: 係数 0·0128, 標準誤差 0·0081, 95% 信頼区間 0·0024-0·0333)。
    <解釈>
     若年期ストレスは脳構造に対して有害作用を持ち、うつ病の不良な疾患経過のリスクを増加させる。臨床研究とトランスレーショナル研究は、潜在する臨床的・生物学的に異なるうつ病の亜型を生じさせる小児期虐待の役割を探究すべきである。
    <資金>
     The German Research Foundation, the Interdisciplinary Centre for Clinical Research, and the Deanery of the Medical Faculty of the University of Münster.

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日本人労働者における抑うつ症状と併存健康問題によって引き起こされたabsenteeism とpresenteeismによる遂行能力損失の経済的影響
    Wada K et al. Ind Health 2013; 51(5): 482-9.
    The economic impact of loss of performance due to absenteeism and presenteeism caused by depressive symptoms and comorbid health conditions among Japanese workers.

    論文要旨:
     我々は18~59歳の日本人労働者において、抑うつ症状と併存し得る5つの疾患、1)背部または頚部障害、2)うつ病、不安症、または情動障害、3)慢性頭痛、4)胃腸障害、5)不眠症によるabsenteeism とpresenteeismの経済的影響を確定することを目的とした。参加者は主な健康問題を一つ特定して、その結果として過去4週間に生じた遂行能力損失(0-100%)を決定した。10年ごとの年齢帯を用いて、男女別に賃金損失を推定した。
     全部で6,777人の参加者が研究に参加した。このうち、我々は標的とする主要健康問題を選択する18~59歳の年齢帯の人のデータ(男性2,535人、女性2,465人)を抽出した。同定された主要健康問題は、背部または頚部障害であった。
     我々は10年ごとの全年齢帯にわたる労働者100人あたりのpresenteeismとabsenteeismによる賃金損失と、背部または頚部障害で損失が高いことを見出した。1人あたりの賃金損失はうつ病、不安症、または情動障害が同定された人で相対的に高かった。これらの結果は、職務遂行能力の向上に関する職場介入戦略の開発に洞察を与える。

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心理社会的要因と精神疾患を持つ労働者の職場復帰状況に対する同僚の見方:日本人母集団に基づく研究
    Eguchi H et al. Environ Health Prev Med 2017; 22(1): 23.
    Psychosocial factors and colleagues' perceptions of return-to-work opportunities for workers with a psychiatric disorder: a Japanese population-based study.

    論文要旨:
    <背景>
     この研究は心理社会的要因と精神疾患によって労働能力に制約がある人に適正な雇用状況が与えられていないという見方の関連を調べた。
    <方法>
     我々は日本の雇用者(20~69歳)3,710人のオンライン横断調査を行った。調査には職業性ストレス簡易調査表(the Brief Job Stress Questionnaire)が含まれ、職場復帰中の精神疾患を持つ人の職場における状況に対する参加者の見方(同僚の否定的な見方)と心理社会的要因(仕事の負担、仕事のコントロール度、および職場における社会的サポート)が調査された。多重ロジスティック回帰分析が、心理社会的要因と同僚の否定的見方の潜在的関連を評価するために使われた。
    <結果>
     同僚の否定的な見方は、職場における社会的サポートの低さ(3分の中位: オッヅ比 [OR]: 1.26, 95% 信頼区間 [CI]: 1.12-1.40; 3分の低位: OR 1.45, 95% CI: 1.32-1.58; p [トレンド] <0.01)、仕事のコントロール度の低さ(3分の中位: OR 1.22, 95% CI: 1.06-1.38; 3分の低位: OR 1.64, 95% CI: 1.46-1.81; p [トレンド] <0.01)、精神疾患を持つ人と働いた過去の経験がないこと(OR 1.74, 95% CI: 1.60-1.88)に関連した。
    <結論>
     心理社会的要因は、日本において職場復帰中の精神疾患を持つ人に対する同僚の見方に影響するかもしれない。他のどこでも同じように日本でも、職場における心理社会的要因をもっと考慮することが精神疾患を持つ人をうまく職場復帰させるために必要かもしれない。

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仕事への満足と心理社会的ストレスの抑うつ症状の発症と持続への寄与:1年間の前向き研究
    Tatsuse T et al. J Occup Environ Med 2019; 61(3): 190-196.
    The Contributions Made by Job Satisfaction and Psychosocial Stress to the Development and Persistence of Depressive Symptoms: A 1-Year Prospective Study.

    論文要旨:
    <目的>
     この研究の目的は、職場環境における1年の経過中にうつ病の発症と持続に寄与する要因を確定することであった。
    <方法>
     対象は992人の日本人の公務員(19~65歳)であった。ベースラインデータ、およびリンクされたデータが1年の経過観察で収集された。
    <結果>
     ベースラインの抑うつ水準で調整後、仕事への満足と仕事関連の心理社会的ストレス(仕事のコントロール度と負担量)は1年の経過観察時のうつ病と関連した。さらに、仕事への不満足を報告した人はうつ病を発症するリスクがより高く(オッヅ比 [OR]: 1.94)、持続するうつ病は仕事のコントロール度の低さ(OR: 2.64)、および仕事の負担量の多さ(OR: 2.20)と関連した。
    <結論>
     ベースラインにおける仕事への満足と心理社会的ストレスは、1年の経過観察におけるうつ病の発症と回復をそれぞれ予測した(コメント:うつ病の予防には仕事への満足が、うつ病からの回復には職場ストレスの管理が重要である)。

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アルコール使用障害を持つ男性とアルコールを過剰摂取するラットにおける早期断酒中の白質微細構造変化
    Silvia De Santis et al. JAMA Psychiatry. Published online April 3, 2019.
    Microstructural White Matter Alterations in Men With Alcohol Use Disorder and Rats With Excessive Alcohol Consumption During Early Abstinence.

    キーポイント:
    <疑問>
     アルコール使用障害にしばしば観察される白質欠損は、トランスレーショナル拡散テンソル画像アプローチを用いてアルコールと関連させ得るか、それは早期断酒中の欠損進行のモニターに使えるか。
    <結果>
     このアルコール使用障害を持つ男性91人と健常男性対照36人、およびアルコールに高嗜好性を示すラット27匹と対照ラット9匹の研究は、種を超えて酷似する白質変化を見出した。早期断酒中(2~6週)に拡散テンソル画像変化の類似の進行パターンが患者とラットに見出された。
    <意義>
     ヒトとラットで再現可能な変化パターンはアルコールとの関連を支持して、早期断酒中の拡散テンソル画像変化の進行はアルコール使用の中止直後に進展する根本過程を示唆する。

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いじめを受けるリスクに関連する個人の脆弱性を同定する複数の多遺伝子スコアによる方法
    Tabea Schoeler et al. JAMA Psychiatry. Published online April 3, 2019.
    Multi–Polygenic Score Approach to Identifying Individual Vulnerabilities Associated With the Risk of Exposure to Bullying.

    キーポイント:
    <疑問>
     いじめ(bullying)への曝露に関連する主要な個人的要因は何か。
    <結果>
     個人における脆弱性と特性を研究するために遺伝的代理物(genetic proxies)として35の多遺伝子スコア(polygenic scores)を用いて、遺伝子型が決定された5,028人の本コホート研究は、いじめへの曝露と精神健康問題(例、うつ病やADHDの診断)の遺伝的脆弱性の間に最大の関連が存在することを見出した。
    <意義>
     結果は、精神健康の脆弱性と他の個人的特性がいじめを受けるリスク因子であることを意味する。いじめへ繰り返し曝露されるサイクルを打ち破ることを手助けするために、前から存在する脆弱性に対処する予防プログラムが、いじめを受けるリスクを有する子供と青年における長期的アウトカムを改善するかもしれない。

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アミロイド陽電子放出断層撮影法は軽度認知障害または認知症を持つメディケア受益者の臨床的管理のその後の変更と関連するか。
    Gil D. Rabinovici et al. JAMA 2019; 321(13): 1286-1294.
    Association of Amyloid Positron Emission Tomography With Subsequent Change in Clinical Management Among Medicare Beneficiaries With Mild Cognitive Impairment or Dementia.

    キーポイント:
    <疑問>
     アミロイド(amyloid)陽電子放出断層撮影法(positron emission tomography、PET)は、その原因が不明な軽度認知障害(mild cognitive impairment、MCI)または認知症を持つ患者の管理のその後の変更と関連するか。
    <結果>
     その原因が不明なMCIまたは認知症を持つ11,409人の参加者を含むこの縦断研究において、アミロイドPET試行後の90日間に、MCIを持つ患者の60.2%、認知症を持つ患者の63.5%で患者管理が変更された。
    <意義>
     アミロイドPETは、認知障害の診断について検討の余地がある患者のその後の管理の変更と関連する。

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注意欠如・多動症とパーソナリティ:メタ解析的レビュー
    Rapson Gomeza and Philip J.Corr. Clinical Psychology Review 2014; 34(5): 376-388. ADHD and personality: A meta-analytic review.

    ハイライト:
    • 5因子パーソナリティ統合モデルとADHDの可能性が調べられた。
    • ADHD症状は不注意(inattention、IA)と多動性/衝動性(hyperactivity/impulsivity、HI)に群分けされた。
    • 低い誠実性は、HIより強くIAと負の関連を持った(IAが強い)。
    • 低い協調性は、IAより強くHIと負の関連を持った(HIが強い)。
    • ・IAとHIは否定的情動性(negative emotionality)と概ね等しく正の関連を持った。

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5因子モデルパーソナリティ特性は注意欠如・多動症と関連するが特定の神経認知プロフィールとは関係しない
    Fiona E. Van Dijk et al. Psychiatry Research 2017; 258: 255-261.
    Five factor model personality traits relate to adult attention-deficit/hyperactivity disorder but not to their distinct neurocognitive profiles.

    ハイライト:
    • 5因子モデル(Five Factor Model、FFM)パーソナリティ特性の知的好奇心(Openness)は注意欠如・多動症(attention-deficit/hyperactivity disorder、ADHD)の神経認知プロフィールと関連するが、他のFFM因子はそれとは関連しない。
    • ADHD被検者は健常対照者より高い情緒不安定性(Neuroticism)と、より低い外向性(Extraversion)、協調性(Agreeableness)、良識性(Conscientiousness)を示した。
    • ADHDの存在は認知プロフィールよりもむしろパーソナリティ特性と関連する。

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クロニンジャーのパーソナリティ次元と注意欠如・多動症:メタ解析的レビュー
    Rapson Gomez et al. Personality and Individual Differences 2017; 107: 219-22.
    Cloninger's personality dimensions and ADHD: A meta-analytic review.

    ハイライト:
    • このメタ解析はクロニンジャーのパーソナリティ次元(Cloninger's personality dimensions)と注意欠如・多動症(ADHD)の関係を調べる。
    • 自己超越性(self-transcendence)を除くすべての次元はADHDと関連した。
    • これらの関連はADHDとの関係において異なる方向と程度を示した。
    • いくつかの関連は年齢(子供/青年 vs. 成人)によって調整された。
    • いくつかの関連は母集団(臨床vs.地域サンプル)によって調整された。

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治療抵抗性統合失調症に対する抗てんかん薬を用いたクロザピンの増強:ランダム化比較試験のメタ解析
    Zheng W et al. J Clin Psychiatry 2017; 78(5): e498-e505.
    Clozapine Augmentation With Antiepileptic Drugs for Treatment-Resistant Schizophrenia: A Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials.

    論文要旨:
    <目的>
     治療抵抗性統合失調症に対する抗てんかん薬(antiepileptic drug、AED)の追加によるクロザピン増強療法の有効性と安全性についてのランダム化比較試験(randomized controlled trial、RCT)のメタ解析を行うこと。
    <データソース>
     検索は英語のデータベース(PubMed、PsycINFO、Embase、Cochrane Library databases、Cochrane Controlled Trials Register)と中国語のデータベース(China Journal Net [CJN]、WanFang、China Biology Medicine [CBM])を含んだ。データベースは、(a) schizophrenia、(b) clozapine、(c) adjunctive drugsを反映する用語について、その開始から2016年1月1日までを含む日時を用いて検索された。
    <研究の選択>
     関連する可能性のある1,969の文献から、22のRCTを記述する21の文献が選択された。
    <データの抽出>
     2人の研究者が変量効果メタ解析のためのデータを独立に抽出し、研究の質をバイアスのリスクとJadad尺度を用いて評価した。標準化平均差(standard mean difference)、リスク比(risk ratio、RR)± 95% 信頼区間 (confidence interval、CI)、および有害必要数(number needed to harm、NNH)が用いられた。
    <結果>
     全部で4つのAED(トピラメート [5 RCTs、n = 270]、ラモトリギン [8 RCTs, n = 299]、バルプロ酸Na [6 RCTs、n = 430]、バルプロ酸Mg [3 RCTs、n = 228])について22のRCT(N = 1,227)が分析された。サンプルサイズで重み付けされた平均は、治療期間は12.1週間、年齢は36.2歳、男性頻度は61%であった。全般精神病理について、クロザピン単独療法と比較して有意な優勢性がトピラメート(P < .0001)、ラモトリギン(P = .05)、およびバルプロ酸(P = .002)で観察された。外れ値を削除後、バルプロ酸の肯定的効果は残ったがラモトリギンの否定的効果は消えた(P = .40)。陽性および全般症状の重症度における有意な改善効果が、トピラメート(順にP = .04とP = .02)とバルプロ酸Na(順にP = .009とP = .003)で観察された。より多いあらゆる理由による中断と関連したトピラメート(RR = 1.99;95% CI、1.16~ 3.39;P = .01;I² = 0%;NNH = 7)を除いて、有害な薬剤反応とあらゆる理由による中断について有意な差はなかった。
    <結論>
     バルプロ酸による増強は有効で安全であった。トピラメートによる増強は中断率があまりにも高かった。臨床勧告に情報を提供するには質の高いRCTが必要である。

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運動と抑うつの予防:HUNTコホート研究(Health Study of Nord-Trøndelag County)の結果
    Harvey SB et al. Am J Psychiatry 2018; 175(1): 28-36.
    Exercise and the Prevention of Depression: Results of the HUNT Cohort Study.

    論文要旨:
    <目的>
     今回の研究の目的は、1)運動が抑うつと不安の新規発症を保護するか、2)もしそうであるなら、保護を得るために運動の強度と量は必要か、3)関連の背景にあるメカニズムを調べることであった。
    <方法>
     一般精神疾患の症状がないか身体的健康問題が僅かであることに基づき選択された33,908人の“健康”なコホートが、前向きに11年間経過観察された。妥当性が確かめられた運動、抑うつ、不安、および広範な可能性のある交絡因子と媒介因子の測定が収集された。
    <結果>
     規則的な余暇運動の実施は、将来の(不安ではなく)抑うつの発症を低下させることに関連した。この保護効果の大多数は低レベルの運動で生じ、強度に関係なく観察された。交絡因子を調整後、人口寄与割合は「関連に因果関係を仮定すると、すべての参加者が毎週少なくとも1時間の身体活動に従事したならば、将来の抑うつ症例の12%が予防できた」ことを示す。運動の社会的・身体的な健康上の利益は保護効果の小さな割合を説明した。副交感迷走神経緊張の変化といった以前に提唱された生物学的機序は、抑うつに対する保護を説明する点で役割を持つようには思えなかった。
    <結論>
     規則的な余暇運動の実施は、将来の(不安ではなく)抑うつの発症を低下させることに関連した。集団レベルの運動の比較的小さな変化が重要な公衆衛生上の利益を持ち、かなりの数の抑うつ新規症例を予防するかもしれない。

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骨格筋PGC-1α1はキヌレニン代謝を調整してストレス誘発性の抑うつに対するレジリエンスを介在する
    Agudelo LZ et al. Cell 2014; 159(1): 33-45.
    Skeletal muscle PGC-1α1 modulates kynurenine metabolism and mediates resilience to stress-induced depression.

    ハイライト:
    • 骨格筋PGC-1α1(PPARγ[peroxisome proliferator-activated receptor γ] coactivator 1-α、ペルオキシソーム増殖因子活性化レセプターγ共役因子)のトランスジェニックマウスは、ストレス誘発性の抑うつに対してレジリエント(抵抗性)である。
    • PGC-1α1は、骨格筋のキヌレニンアミノトランスフェラーゼ(kynurenine aminotransferase、KAT)の発現を誘導する。
    • 骨格筋PGC-1α1は、血漿中および脳内のキヌレニン/キヌレン酸バランスを制御する。
    • 運動トレーニングは、マウスとヒトの骨格筋においてPGC-1α1:PPARα/δ:KAT経路を活性化する。

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統合失調症における脳の異質性とその多遺伝子リスクとの関連
    Dag Alnæs et al. JAMA Psychiatry. Published online April 10, 2019.
    Brain Heterogeneity in Schizophrenia and Its Association With Polygenic Risk.

    キーポイント:
    <疑問>
     統合失調症とその多遺伝子リスクは脳構造の平均的変化に加えてその異質性と関連するか。
    <結果>
     この1,151人の患者と2,010人の対照のケースコントロール解析において、統合失調症は平均推定値の明確な減少に加えて、前頭側頭皮質の厚さと表面積、皮質・脳室・海馬体積の異質性の増加と関連した。健常対照12,490人の独立サンプルにおいて、統合失調症の多遺伝子リスクはより薄い前頭側頭皮質とより小さな左海馬CA2/3領域体積と関連したが、異質性とは関連しなかった。
    <意義>
     統合失調症は、おそらく臨床的異質性、遺伝子と環境の相互作用、または二次的な疾患要因を反映する脳構造における個人差の増加と関連しているようである。

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うつ病を持つ成人における認知行動療法提供様式の有効性と認容性:ネットワークメタ解析
    Pim Cuijpers et al. JAMA Psychiatry. Published online April 17, 2019.
    Effectiveness and Acceptability of Cognitive Behavior Therapy Delivery Formats in Adults With Depression: A Network Meta-analysis.

    キーポイント:
    <疑問>
     急性うつ病の治療について、認知行動療法のどの提供様式が最も有効で認容性が高いか。
    <結果>
     この15,191人の患者を含む155の試験のネットワークメタ解析において、認容性はガイド付きセルフヘルプ様式でいくぶん低かったものの、個人、グループ、電話、およびガイド付きのセルフヘルプの治療様式の間で有効性に統計的有意差はなかった。ガイドなしのセルフヘルプ療法は従来の治療より有効とは言えなかった。
    <意義>
     うつ病の急性期症状については、グループ、電話による、ガイド付きのセルフヘルプ(インターネットを用いる/用いない)認知行動療法が有効と思われ、個人療法の代替として検討されるべきである。

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稀なコピー数変異とうつ病リスクの関連
    Kimberley Marie Kendall et al. JAMA Psychiatry. Published online April 17, 2019.
    Association of Rare Copy Number Variants With Risk of Depression.

    キーポイント:
    <疑問>
     大規模サンプルにおいて稀なコピー数変異はうつ病とリスクと関連するか。
    <結果>
     この英国バイオバンク研究(the UK Biobank study)における407,074人のケースコントロール研究において、神経発達症/神経発達障害(neurodevelopmental disorder)のコピー数変異は、神経発達症を持たない人におけるうつ病のリスクと関連するようである。身体健康、学業成績、社会的剥奪、喫煙状態、およびアルコール摂取はこの関連を部分的に説明する変数であり、コピー数変異負荷(copy number variant burden)の測定とうつ病の関連を示す証拠はなかった。
    <意義>
     神経発達的コピー数変異は、神経発達症を持たない人におけるうつ病リスクの増加と関連するようである。

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日本人サンプルにおけるクロニンジャーの気質と性格の7因子モデルの遺伝構造
    Ando J et al. Journal of personality 2002; 70(5): 583-609.
    The genetic structure of Cloninger's seven-factor model of temperament and character in a Japanese sample.

    論文要旨:
     クロニンジャーの気質と性格の7因子モデルにおいて提案されたパーソナリティの遺伝・環境構造についての理論仮定が、双生児法を用いて日本人サンプルで検証された。気質と性格の質問表(the Temperament and Character Inventory、TCI)が、年齢が14~28歳の296の双生児ペアにおいて実施された。
     4つの気質次元(新奇性探究 novelty seeking [NS]、損害回避 harm avoidance [HA], 報酬依存 reward dependence [RD]、固執 persistence [PS])のうち、損害回避[HA]と固執[PS]は有意な相加的遺伝寄与を示したが共有環境効果は認めず、元の理論仮定を支持した。新奇性探究[NS]と報酬依存[RD]は遺伝または非共有環境因子と共有環境によって説明することができた。すべての3つの性格次元(協調性 cooperativeness [CO]、自己志向性 self-directedness [SD]、自己超越性 self-transcendence [ST])は、もっぱら相加的寄与で説明することができたが共有環境効果はなかった。
     多変量遺伝解析は、理論が予測したように新奇性探究[NS]、損害回避[HA]、報酬依存[RD]の間に有意な関連はなく、固執[PS]、自己志向性[SD]、協調性[CO]の遺伝要素は気質次元の遺伝要素から派生することを示した。自己超越性[ST]に対して特異的で相当な負荷を持ち、固執[PS]と重複する4つ目の遺伝要素が同定された。非共有環境の効果の大部分は特性特異的であったが、新奇性探究[NS]と損害回避[HA]の間の表現型相関は非共有環境の重複で説明することができた。

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2008~2013年のフランスにおける認知症負担に対するアルコール使用障害の寄与:全国的後方視コホート研究
    Schwarzinger M et al. Lancet Public Health 2018; 3(3): e124-e132.
    Contribution of alcohol use disorders to the burden of dementia in France 2008-13: a nationwide retrospective cohort study.

    論文要約:
    <背景>
     認知症は60歳以上の人の5~7%が罹患する非常に多い疾病であり、世界中で60歳以上の人の能力障害の主要な原因となっている。我々は早期発症型の認知症(65歳未満)に重きを置きながら、アルコール使用障害と認知症のリスクの関連を調べることにした。
    <方法>
     我々は2008~2013年にフランスの都市部の病院に入院したすべての成人(20歳以上)患者の全国的後方視コホートを分析した。主要曝露はアルコール使用障害、主要転帰は認知症で、両方ともICD-10の退院時診断コードで定義された。早期発症型認知症の特徴が2008~2013年の症例で研究された。アルコール使用障害と認知症発症の他のリスク因子の関連が、2008~2010年に認知症の記録がない2011~2013年に病院に入院した患者において多変量Coxモデルで分析された。
    <結果>
     2008年~2013年にフランスの病院を退院した3,162万4,156人の成人のうち、110万9,343人が認知症と診断され分析に含められた。早期発症型の認知症57,353症例(5,2%)のうち、大多数が定義によりアルコール関連であるか(22,338症例 [38.9%])、アルコール使用障害の追加診断を持っていた(10,115症例 [17.6%])。アルコール使用障害は最も強い修正可能な認知症発症のリスク因子であり、調整済ハザード比は女性が3.34 (95% CI 3.28-3.41)、男性が3.36 (3.31-3.41)であった。認知症ケースの定義(アルツハイマー病を含む)または高齢の研究母集団に関する感度分析でも、アルコール使用障害は両性で認知症発症と関連した(調整済ハザード比 >1.7)。また、アルコール使用障害は認知症発症の他のすべてのリスク因子と有意に関連した(全て p<0.0001)。
    <解釈>
     アルコール使用障害は、あらゆる種類の認知症の発症について主要なリスク因子であった。したがって、過度の飲酒のスクリーニングが、必要時に提供される介入または治療とともに普段の医学的ケアの一部となるべきである。加えて、他のアルコール政策が一般人口における過剰な飲酒を減らすために検討されるべきである。

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ニトロ化肉製品はヒトの躁病とラットの行動および脳の遺伝子発現変化と関連する
    Khambadkone SG et al. Mol Psychiatry. Published: 18 July 2018.
    Nitrated meat products are associated with mania in humans and altered behavior and brain gene expression in rats.

    論文要旨:
     躁病は深刻な病態と死亡に関連する重大な神経精神疾患である。これまでの研究は、環境曝露が躁病の発症に関係し得ることを示してきた。我々は躁病および他の精神疾患を持つ人のコホートと、精神疾患を持たない対照コホートにおいて食事への曝露を測定した。
     我々は他の肉または魚製品ではなく、ニトロ化乾燥加工肉(nitrated dry cured meat)の摂取歴が現在の躁病と強く、そして独立に関連することを見出した(調整済オッズ比3.49, 95% 信頼区間 (CI) 2.24-5.45, p < 8.97 × 10-8)。より低い関連可能性がニトロ化乾燥加工肉と他の精神疾患の間に認められた。
     さらに硝酸塩で肉処理された餌をラットに与えると、ヒト躁病に類似した過活動、ヒト双極性障害に関係する脳経路の異常、および腸内細菌叢の変化が生じることを見出した。本結果は、躁病の予防と新規の治療介入のための新しい方法につながるかもしれない。

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律動的脳回路の同期による高齢成人におけるワーキングメモリーの回復
    Reinhart RMG and Nguyen JA. Nat Neurosci. Published: 08 April 2019.
    Working memory revived in older adults by synchronizing rhythmic brain circuits.

    論文要旨:
     正常な脳の老化を理解して、高齢者の認知を維持したり改善したりする方法を開発することは、基礎およびトランスレーショナル神経科学の主要な目的である。ここで我々は、認知の衰え―ワーキングメモリー低下の中核特徴が、側頭皮質におけるシータ・ガンマ、位相・振幅カップリングと前頭側頭皮質にわたるシータ位相同期によって例示される局所的回路と長距離回路の離断から生じることを示す。
     我々は60~76歳の成人における長距離シータ相互作用を調整するための非侵襲的刺激法を開発した。25分間刺激して個々の脳ネットワーク動態に周波数を同調させた後に、我々は神経同期パターンの優先的増加と、前頭側頭領域内と領域間における情報フローの送受信関係の回復を観察した。最終結果は、50分の刺激後期間にまで続くワーキングメモリー能力の迅速な改善であった。本結果は、加齢に関連した認知障害の生理学的基礎に洞察を与え、認知低下の側面に標的を定めた将来の非薬物的介入に向けた基礎作業に寄与する。

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アルツハイマー病薬候補の加齢関連表現型スクリーニングは、イエルバ・サンタ(Yerba santa)から強力な神経保護化合物ステルビン(sterubin)を同定した
    Wolfgang Fischer et al. Redox Biology. Volume 21, February 2019, 101089.
    Old age-associated phenotypic screening for Alzheimer's disease drug candidates identifies sterubin as a potent neuroprotective compound from Yerba santa.

    ハイライト:
    • 植物抽出物の公開ライブラリーの表現型スクリーニングにより、イエルバ[ヤーバ]・サンタ(Yerba santa、訳注:学名はEriodictyon californicum、アメリカの中央カリフォルニアからオレゴン州の太平洋岸に分布する低木の常緑樹で、痰を出す成分を含み咳止めシロップなどに幅広く利用されている)が同定された。
    • フラボノイドのステルビン(sterubin)が、イエルバ・サンタの主要有効成分である。
    • ステルビンは、脳の老化における複数の毒性に対して非常に神経保護的である。
    • ステルビンは、Nrf2(NF-E2-related factor-2)誘導依存性の潜在的抗炎症活性を持つ。
    • ステルビンは、その神経保護活性を増幅する可能性がある鉄キレート剤でもある。

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プロバイオティック微生物の追加は急性躁病を持つ患者の再入院を予防する:ランダム化比較試験
    Dickerson F et al. Bipolar Disord 2018; 20(7): 614-621.
    Adjunctive probiotic microorganisms to prevent rehospitalization in patients with acute mania: A randomized controlled trial.

    論文要旨:
    <目的>
     免疫学的異常は躁病の病態生理に役割を果たし、再発と関連付けられてきた。乳酸菌(Lactobacillus)やビフィズス菌(Bifidobacterium)といったプロバイオティック微生物(Probiotic organisms)は、ヒトと動物モデルで炎症を調節する。本試験は、プロバイオティック微生物が躁病のための入院後に最近退院した患者の精神科再入院を予防するか否かを調べた。
    <方法>
     躁病のために入院した患者(N = 66)が退院後に、並行2群デザイン様式で補助的プロバイオティクス(probiotics、訳注:体に良い働きをするとされる各種細菌のこと;本試験ではLactobacillus rhamnosus strain GG、およびBifidobacterium animalis subsp. lactis strain Bb12)または補助的プラセボに無作為に割りつけられた。再入院リスクに対する治療群の効果はCox回帰モデルを用いて計算された。全身性炎症の調節効果が、既定の抗原に対する免疫グロブリンレベルに基づく炎症スコアを用いて測定された。
    <結果>
     24週の観察期間中、プラセボを受けた33人では全部で24回、プロバイオティクスを受けた33人では8回の再入院があった(z = 2.63, P = .009)。ハザード関数は、プロバイオティクスの導入はすべての再入院についてやがては有意な有益性と関連することを示した(ハザード比 [HR] = 0.26, 95% 信頼区間 [CI] 0.10, .69; P = .007)。プロバイオティクス治療ではまた、結果的により少ない再入院日数となった(プラセボ治療で平均 8.3 vs プロバイオティクス治療で2.8 日; χ2 = 5.17, P = .017)。再入院の予防に関するプロバイオティクス治療の効果は、ベースラインにおける全身的炎症のレベルが上昇していた人で高かった。
    <結論>
     プロバイオティクスの追加は、躁病のための入院後に最近退院した患者の再入院率の低下と関連する
    <試験登録>
     ClinicalTrials.gov NCT01731171.

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1998~2015年に米国でうつ病の外来治療を受けた患者の治療および支出動向
    Jason M. Hockenberry et al. JAMA Psychiatry. Published online April 24, 2019.
    Trends in Treatment and Spending for Patients Receiving Outpatient Treatment of Depression in the United States, 1998-2015.

    キーポイント:
    <疑問>
     米国住民のうつ病の有病率と治療のための支出の動向は、1998~2007年から2007~2015年に変化したか。
    <結果>
     この1998年、2007年、および2015年の医療保険支出パネル調査(Medical Expenditure Panel Surveys)からの86, 216人の分析で、治療を受けたうつ病の有病率は100人あたり2.88人(2007年)から3.47人(2015年)と絶対的増加を認めた。この治療の増加分は保険、特にメディケイド(Medicaid、19%から36%に増加)によって負担された。
    <意義>
     これらの動向は、うつ病治療の保険補償範囲を増やすことを目的とする政策に合致すると思われる。

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成人のNMDA受容体抗体脳炎の精神病理学:系統的レビューと個別患者データの表現型解析
    Al-Diwani A et al. Lancet Psychiatry 2019; 6(3): 235-246.
    The psychopathology of NMDAR-antibody encephalitis in adults: a systematic review and phenotypic analysis of individual patient data.

    論文要旨:
    <背景>
     N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(N-methyl-D-aspartate receptor、NMDAR)抗体脳炎を持つ患者における免疫療法の早期導入は転帰を改善する。NMDA受容体抗体脳炎を持つ大抵の患者は精神科医を受診するので、正確な臨床的特定を促進して治療を推進するにはNMDA受容体抗体脳炎の精神病理学が明確に定義される必要がある。
    <方法>
     この系統的レビューのために、確実なNMDA受容体抗体脳炎(definite NMDAR-antibody encephalitis)の合意基準を満たす個別に報告された成人患者(18歳以上)を同定するために、我々は2005年1月1日から2017年10月7日に英語で公表された全ての研究をPubMedで検索した。50の細かい下位レベルの特徴のリストを作成した後、我々は人口統計的および病因論的データに加えて精神病学的データを抽出した。下位レベルの特徴は後に上位レベルのカテゴリー内に整理された。我々は品質管理の手段として、それら記載における精神医学的関与の代理マーカーに従ってデータをフィルターにかけた。続いて、我々は制約付き組合せ法と主成分分析を用いて操作化された精神医学的症候群を持つ個別の患者データからの下位レベルの特徴を比較して、複数の下位レベルの特徴間の相互関係を探索するためにネットワーク分析を行った。このレビュー手順はPROSPEROに事前登録された(登録番号:CRD42017068981)。
    <結果>
     PubMed で同定された1,096の記録のうち、333が包含基準を満たし、NMDA受容体抗体脳炎を持つ全部で1,100人の患者を記載していた。精神医学的症状の報告がある505人(46%)の患者の精神病理が、単に精神医学的または行動学的ではないより詳細な用語で記載されていた。505人のうち464人(91%)は患者データが個別に報告されている論文からであった。残りの解析は専らこれら464人の患者に関して重点的に行われた。
     平均年齢は27歳(四分位範囲 22-34)、464人の患者のうち368人(79%)が女性、147人(32%)ではNMDA受容体抗体脳炎が卵巣奇形腫と関連していた。464人の患者の最も多数が群分けされた5つの上位レベルカテゴリーは、行動(316 [68%])、精神病(310 [67%])、気分(219 [47%])、カタトニア(137 [30%])、および睡眠障害(97 [21%])であった。下位レベルの特徴の全体的パターンは、年齢、性別、妊娠関連、卵巣奇形腫の存在、単純ヘルペスウイルス脳炎の先行、および類を見ない精神医学的徴候によって分類された下位グループを通して統計的に安定していた(2元配置ANOVA p=0.6-0.9)。
     制約付き組合せと主成分分析は、どの単一診断のみよりも気分症候群と精神病症候群の混合が各々の患者に適合することを見出した(赤池情報量基準の平均変化 -0.04:非精神医学的に記載された下位グループ vs 0.61:精神医学的に記載された下位グループ)。また、上位レベルの特徴の重複的特性は精神医学的に記載されたデータの分析で強かった(329のうち221 [67%]が重複:非精神医学的に記載された下位グループ vs 118のうち96 [81%]が重複:精神医学的に記載された下位グループ, p=0.0052)。ネットワーク分析(network analysis)は、諸特徴は密接に関連していて個々の患者間で一貫していることを確認した。精神医学的に記載された下位グループは、顕著に高くて狭い範囲の近接中心性(closeness centrality)を持った(92% > 0.93:精神医学的に記載された下位グループ vs 51% > 0.93:非精神医学的下位グループ)
    <解釈>
     NMDA受容体抗体脳炎の精神病理の特徴的側面は複雑性であり、気分障害と精神病性障害の中核的側面が個々の患者内に一貫して共存していた。多数を占める若い女性層とともにこれら精神病理学的特徴が、精神科医が脳脊髄液検査と免疫療法から利益を得ると思われる患者を同定するのに役立つかもしれない。専用の質問表を用いてよく統制された前向き研究が、この臨床に根差したアプローチを進展させるために必要である。
    <資金>
     Wellcome Trust(訳注:ウェルカム・トラスト、英国に本拠地を持つ医学研究支援等を目的とする公益信託団体), NIHR Oxford Biomedical Research Centre, NIHR Oxford Health Biomedical Research Centre, British Medical Association Foundation for Medical Research.

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成人期の食事パターンと中年期の認知能力
    Claire T. McEvoy et al. Neurology. First published March 6, 2019.
    Dietary patterns during adulthood and cognitive performance in midlife: The CARDIA study.

    論文要旨:
    <目的>
     成人期の食事パターン(地中海食 [MedDiet]、高血圧を正常化させる食事療法 [DASH]、および食事の質スコア [APDQS])が中年期の認知能力と関連するか否か調べること。
    <方法>
     我々はCARDIA(Coronary Artery Risk Development in Young Adults、若年成人における冠動脈リスクの進展)の参加者2,621人(45%が黒人、57%が女性、ベースライン[0年]時の平均年齢は25 ± 3.5 歳)を調べた。平均食事スコアが、ベースライン時(平均年齢25歳)、7年時(平均年齢32歳)、20年時(平均年齢45歳)の食事歴から計算された。認知機能は25年時(平均年齢50歳)と30年時(平均年齢55歳)に評価された。線型モデルが、食事スコアの三分位数と30年時の集成認知機能、認知Zスコア(言語性記憶 [レイ聴覚性言語学習検査], 処理速度 [Digit Symbol Substitution Test],遂行機能 [ストループ干渉検査])、モントリオール式認知評価(the Montreal Cognitive Assessment、MoCA)の変化の関連を調べるために使われた。
    <結果>
     DASHは認知能力の変化と関連しなかった。より高いMedDietスコアとAPDQSスコアは、より少ない認知機能(MedDiet: 低 −0.04, 中 0.03, 高 0.03, p = 0.03; APDQS: 低 −0.04, 中 −0.00, 高 0.06, p < 0.01)とストループ干渉(MedDiet: 低0.09, 中 −0.06, 高 −0.03; APDQS: 低0.10, 中 0.01, 高 −0.09, 両方 p < 0.01)の衰えと関連した。最下位の食事スコアと比較した不良な全般的認知機能(平均MoCAスコアより1 SD以上下回る)のオッズ比(95% 信頼区間)は、MedDietについては0.54 (0.33–0.69)、APDQSについては0.48 (0.33–0.69)、そしてDASHについては0.89 (0.68–1.17)であった。
    <結論>
     成人期におけるMedDietとAPDQSの食事パターンへのより高い遵守は、中年期におけるより良い認知能力と関連した。生涯を通した最適な脳の健康のための食物と栄養素の組み合わせを明確にするために、更なる研究が必要である。

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神経認知機能は情動刺激に対する認知バイアスに影響するか:一般注意力と脅威に対する注意バイアスの関連
    Hakamata Y et al. Front Psychol 2014; 5: 881.
    Does neurocognitive function affect cognitive bias toward an emotional stimulus? Association between general attentional ability and attentional bias toward threat.

    論文要旨:
    <背景>
     より低い認知能力が不安と関連することが見出されてきたものの、神経認知機能が脅威情報に対する偏った認知処理に影響するか否かは今も不明である。我々は脅威に対する注意バイアスに焦点を当てつつ、標準的神経心理検査で評価された一般認知機能が偏った認知を予測するか否かを調べた。
    <方法>
     105人の健康な若年成人が、注意バイアスを測定するドット・プローブ課題と、即時記憶、視空間構成、言語、注意欠如・多動症、および遅延記憶の5領域から構成される神経心理学的状態評価のための再施行可能なバッテリー(the Repeatable Battery for the Assessment of Neuropsychological Status、RBANS)に取り組んだ。注意バイアスと認知機能の関係を調べるために段階的重回帰分析(stepwise multiple regression analysis)が実施された。
    <結果>
     注意領域が脅威に対する注意バイアスの最良予測因子であった(β = -0.26, p = 0.006)。注意領域の中では数字と記号の符号化(digit symbol coding)が注意バイアスと負相関した(r = -0.28, p = 0.005)。
    <結論>
     本研究は、標準的神経心理検査で評価された一般注意力が脅威情報に対する注意バイアスに影響する最初のエビデンスを提供する。個人の認知プロフィールは認知バイアスの測定と修正に重要かもしれない。

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心的外傷後ストレス障害を持つ日本人女性における認知機能:運動習慣との関連
    Narita-Ohtaki R et al. J Affect Disord 2018; 236: 306-312.
    Cognitive function in Japanese women with posttraumatic stress disorder: Association with exercise habits.

    論文要旨:
    <背景>
     心的外傷後ストレス障害(posttraumatic stress disorder、PTSD)は認知障害と関連付けられてきたが、アジア諸国におけるPTSD患者の認知機能に関する記載はほとんどない。定期的な運動がPTSD症状を軽減し得ることが示されているが、PTSD患者における運動と認知の関連を調べた研究は無い。この研究は、PTSDを持つ日本人女性の認知機能を調べて、定期的な運動と認知機能の関連を探究することを目的とした。
    <方法>
     DSM-IVのPTSDを持つ42人の女性と、人口統計的に合致した66人の健常対照女性が本研究に参加した。患者の大部分が対人関係暴力を経験した後にPTSDを発症した。認知機能は神経心理学的状態評価のための再施行可能なバッテリー(the Repeatable Battery for the Assessment of Neuropsychological Status、RBANS)を用いて評価された。定期的な運動習慣は自己報告の質問紙を用いて評価された。
    <結果>
     対照と比較してPTSD患者は、RBANSの即時記憶、視空間構成、言語、注意、遅延記憶、および総得点を含むすべての認知領域において成績が悪かった(すべてp < 0.001)。運動習慣のないPTSD患者と比較して習慣的に運動する患者は、有意に良い遅延記憶成績を示し(p = 0.006)、これは重回帰モデルで潜在的交絡変数を調整した後も残った。
    <限界>
     横断デザインと比較的小さなサンプルサイズが我々の結果に制約を与えた。
    <結論>
     日本人女性におけるPTSDは、言語性記憶の著明な障害を含む広く障害された認知機能と関連するこのような記憶障害は定期的な運動によって改善するのかもしれないが、さらなる研究がPTSDにおける運動と認知の因果関係を調べるために必要である。

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心的外傷後ストレス障害を持つ女性における炎症マーカーとその推定される認知機能への影響
    Imai R et al. J Psychiatr Res 2018; 102: 192-200.
    Inflammatory markers and their possible effects on cognitive function in women with posttraumatic stress disorder.

    論文要旨:
     論争はあるものの、心的外傷後ストレス障害(posttraumatic stress disorder、PTSD)は炎症の亢進と関連付けられてきた。もう一つのPTSDの重要な特徴は、広範囲の認知領域における機能の障害である。亢進した末梢性の炎症が認知機能不全の一因となることもあるが、この関係はPTSDを持つ患者において研究されたことはない。そこで我々は、小児期の虐待とうつ病/大うつ病性障害(MDD)の併存の潜在的交絡効果を考慮しつつ、健常対照と比較したPTSDを持つ成人患者における血液中の炎症マーカーを調べて炎症と認知の関連を探究した。
     我々は、PTSDを持つ40人の女性(その大部分が成人期の対人暴力後に障害を発症)と65人の健常対照女性を組み入れた。診断はDSM-IVに基づいて行われ、小児期の虐待歴は小児期トラウマ質問表(the Childhood Trauma Questionnaire、CTQ)を用いて評価された。認知機能は神経心理学的状態評価のための再施行可能なバッテリー(the Repeatable Battery for the Assessment of Neuropsychological Status、RBANS)を用いて評価された。インターロイキン-6(interleukin-6、IL-6)、可溶性IL-6受容体(soluble IL-6 receptor)、インターロイキン-1β(interleukin-1β)、高感度腫瘍壊死因子-α(high-sensitivity tumor necrosis factor-α)、および高感度C反応性タンパク(high-sensitivity C-reactive protein)を含む5つの炎症マーカーの測定のために血液サンプルが収集された。
     対照と比較して、PTSDを持つ患者は有意に高いIL-6レベルと(p = 0.009)、すべてのRBANS領域について有意に低いスコアを示した(all p < 0.01)。患者のIL-6レベルとMDDの併存の有無またはCTQスコアは有意に関連しなかった。患者のIL-6のレベルは、RBANSの視空間構成(p = 0.046)、言語(p = 0.008)、注意(p = 0.036)、および総得点(p = 0.008)と有意に負相関した。これらの結果は、上昇したIL-6がPTSDと関連し、PTSDにおけるより低い認知機能の一部は亢進した炎症による可能性を示す。

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母親の神経発達リスクアレルと早期曝露の関連
    Beate Leppert et al. JAMA Psychiatry. Published online May 1, 2019.
    Association of Maternal Neurodevelopmental Risk Alleles With Early-Life Exposures.

    キーポイント:
    <疑問>
     母親の神経発達症についての多遺伝子リスクスコア(polygenic risk score)は、早期曝露と関連するか。
    <結果>
     この7921人の母親の住民ベースのコホート研究において、注意欠如・多動症の多遺伝子リスクスコアは、子の神経発達症と関係する広範な早期曝露(訳注:感染、妊娠後期のアセトアミノフェン使用など)と関連した。自閉スペクトラム症と統合失調症の多遺伝子リスクスコアは、早期曝露とほとんど関係しなかった。
    <意義>
     結果は、注意欠如・多動症について高い遺伝的リスクを持つ母親は有害な妊娠期曝露のリスクも高い可能性を示唆する。今後の研究は、原因について情報を与える異なるアプローチからの証拠を測定すべきである。

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うつ病を持つ人における線条体ドーパミントランスポーター結合の評価:生体陽電子放出断層撮影および剖検によるエビデンス
    Diego A. Pizzagalli et al. JAMA Psychiatry. Published online May 1, 2019.
    Assessment of Striatal Dopamine Transporter Binding in Individuals With Major Depressive Disorder: In Vivo Positron Emission Tomography and Postmortem Evidence.

    キーポイント:
    <疑問>
     うつ病を持つ人は精神医学的に健康な対照参加者と比較して、脳報酬系内のより低いドーパミントランスポーターレベルで特徴付けられるか。
    <結果>
     25人のうつ病を持つ人と23人の健常対照者の陽電子放出断層撮影と、15人のうつ病を持つ人と14人の健常対照者の剖検データを分析した本横断研究において、うつ病は背側線条体におけるより低いドーパミントランスポーターレベルと関係した。画像データにおいて、この機能不全はうつ病のエピソードが多いほど増悪した。
    <意義>
     低下したドーパミントランスポーターの利用率は、中脳辺縁経路内の低いドーパミン作動性シグナル伝達による代償性の下方制御(downregulation)を表すのかもしれない。

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双極ⅠおよびⅡ型障害を持つ成人の治療におけるプラセボと比較した補助的インフリキシマブ(infliximab)の効果:ランダム化臨床試験
    Roger S. McIntyre et al. JAMA Psychiatry. Published online May 8, 2019.
    Efficacy of Adjunctive Infliximab vs Placebo in the Treatment of Adults With Bipolar I/II Depression: A Randomized Clinical Trial.

    キーポイント:
    <疑問>
     双極うつ病の治療において腫瘍壊死因子拮抗薬(tumor necrosis factor–antagonist)インフリキシマブ(infliximab)の有効性はどうか。
    <結果>
     このランダム化臨床試験は、気分障害を持つ成人における抑うつ症状の改善について、プラセボよりインフリキシマブが有意に有効であるとは言えないこと示した以前の研究を追試した。
    <意義>
     インフリキシマブ療法は双極うつ病を持つ患者の抑うつ症状の改善において有効ではない。

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若年成人における快感消失(anhedonia)の軽減および左腹側線条体報酬反応と生活満足度の6カ月改善との関連
    Kristen L. Eckstrand et al. JAMA Psychiatry. Published online May 8, 2019.
    Anhedonia Reduction and the Association Between Left Ventral Striatal Reward Response and 6-Month Improvement in Life Satisfaction Among Young Adults

    キーポイント:
    <疑問>
     どの神経報酬領域が、若年成人の精神医学的症状と心理社会的機能の改善に関連するか。
    <結果>
     このコホート画像研究において、左腹側線条体の報酬賦活は、6カ月の期間中の快感消失(アンヘドニア[anhedonia])の改善と関連した。快感消失の軽減は、左腹側線条体の報酬賦活と心理社会的機能の改善の関連を仲立ちした。
    <意義>
     左腹側線条体は、精神医学的症状と心理社会的機能を改善させる新しい治療法のための有望なバイオマーカーかもしれない。

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妊娠早期におけるベンゾジアゼピンへの偶発的曝露と自然流産の関連
    Odile Sheehy et al. JAMA Psychiatry. Published online May 15, 2019.
    Association Between Incident Exposure to Benzodiazepines in Early Pregnancy and Risk of Spontaneous Abortion.

    キーポイント:
    <疑問>
     どのタイプのベンゾジアゼピンが妊娠早期の女性の自然流産リスクを上昇させるか。
    <結果>
     このケベック妊娠コホート(the Quebec Pregnancy Cohort)に含まれた442,066妊娠のネスト化されたケースコントロール研究で、妊娠早期のベンゾジアゼピン曝露と自然流産リスクの関連が、ベンゾジアゼピン使用を薬剤クラス、作用時間、および特定のベンゾジアゼピン薬剤によって定量化した3つのモデルすべてにおいて観察された。
    <意義>
     結果は、妊娠早期のベンゾジアゼピン使用が自然流産と関連すること、健康管理に従事する臨床医は妊娠早期における気分および不安障害または不眠症の治療に対するベンゾジアゼピン使用のリスク便益比を評価すべきであることを示す。

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不安およびストレス関連障害と関係する遺伝的バリアント:全ゲノム関連研究とマウスモデル研究
    Sandra M. Meier et al. JAMA Psychiatry. Published online May 22, 2019.
    Genetic Variants Associated With Anxiety and Stress-Related Disorders: A Genome-Wide Association Study and Mouse-Model Study.

    キーポイント:
    <疑問>
     不安およびストレス関連障害と関係するのはどの遺伝的バリアントか、それらは他の特性と相関するか。
    <結果>
     全ゲノム関連データの本研究において、PDE4B(注:cAMP-specific 3',5'-cyclic phosphodiesterase 4B)バリアント(注:rs7528604)は不安およびストレス関連障害と関係し(注:P = 5.39 × 10−11; odds ratio = 0.89; 95% CI, 0.86-0.92)、それら遺伝的特徴は他の精神医学的特性、教育アウトカム、肥満関連の表現型、喫煙、および生殖の成功と重複していた。
    <意義>
     不安およびストレス関連障害と関係する遺伝的バリアントを正当に特定するためには大規模サンプルが必要である。

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米国における若者の自殺の増加と13の理由の公開との関連
    Thomas Niederkrotenthaler et al. JAMA Psychiatry. Published online May 29, 2019.
    Association of Increased Youth Suicides in the United States With the Release of 13 Reasons Why

    キーポイント:
    <疑問>
     Netflix(ネットフリックス:1997年に設立されたアメリカのオンラインオンデマンド放送業者)の番組「13の理由」(13 Reasons Why:配信直後からその衝撃的な内容と巧みな展開が大きな話題となって2017年にNetflixで最も観られたドラマ作品の一つ)の公開は、米国における若者の自殺の増加と関連するか。
    <結果>
     この1999年から2017年の毎月の自殺データの時系列分析において、全体的な増加傾向を超えた急な自殺増加が、番組の公開後3か月に10歳から19歳の標的視聴者で観察された。年齢と性別に特異的なモデルは、自殺死亡率との関連が10歳から19歳の人に限られ、比例的増加は女性でより強いことを示した。
    <意義>
     若年母集団に限られた自殺の増加と若い女性における潜在的により大きな比例的増加の警告は、すべてメディアによる伝染と矛盾しないと思われ、マスメディアにおけるより安全でより配慮された自殺の描写の必要性を強く求めるようだ。

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若者における環境悪化の負荷と精神病理、成熟、および脳行動パラメータの関連
    Raquel E. Gur et al. JAMA Psychiatry. Published online May 29, 2019.
    Burden of Environmental Adversity Associated With Psychopathology, Maturation, and Brain Behavior Parameters in Youths

    キーポイント:
    <疑問>
     子供および若年成人において、社会経済状態とストレスの強い外傷的出来事を含む有害な環境と、思春期の精神病理、神経認知、および脳パラメータの関連は如何なるものか。
    <結果>
     この参加者9,498人の地域ベースのコホート研究において、低い社会経済状態は不良な神経認知能力と、より多いストレスの強い外傷的出来事の体験はより重い精神病理と関連した。両因子は複数の脳の構造的機能的パラメータ、およびより早い成熟と関連した。
    <意義>
     低い社会経済状態とストレスの強い外傷的出来事の体験は、脳および行動と全般的および固有の関連を持つと思われる環境的側面であり、2つは加速された成熟と関連する。

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持続性抑うつ障害の急性期治療の有効性と認容性:ネットワークメタ解析
    Kriston L et al. Depress Anxiety 2014; 31(8): 621-30.
    Efficacy and acceptability of acute treatments for persistent depressive disorder: a network meta-analysis.

    論文要旨:
    <背景>
     我々は、持続性抑うつ障害に対する特定の治療の比較有効性と認容性に関する利用可能なエビデンスを統合することを目的とした。
    <方法>
     いくつかのデータベースを2013年1月まで検索し、薬理学的、心理療法的、および併用による急性期介入法を互いに、またはプラセボと比較したランダム化比較試験を含めた。アウトカム測定は、割り付けられた治療に反応した(有効性)、または脱落した(認容性)患者の割合であった。データ統合はネットワークメタ解析を用いて行われた。
    <結果>
     28薬剤を検証した45試験のネットワークには、有効性について5,806人、認容性について5,348人の患者データが含まれた。5つの心理療法介入と5つの併用による介入を検証した15試験からなる2つ目のネットワークには、有効性について2,657人、認容性について2,719人の患者データが含まれた。
     十分に検証された治療法のうち、フルオキセチン(オッズ比 2.94)、パロキセチン (3.79)、セルトラリン (4.47)、モクロベマイド (6.98)、イミプラミン (4.53)、リタンセリン (2.35)、アミスルピリド (5.63)、およびアシルカルニチン (5.67)がプラセボより有意に有効であった。1対比較(pairwise comparisons)は、フルオキセチンに対するモクロベマイド (2.38)とアミスルピリド (1.92)の優越を示した。セルトラリン (0.57) と アミスルピリド (0.53)はイミプラミンより低い脱落率を示した。
     対人関係療法(interpersonal psychotherapy [IPT])と薬剤の併用は、慢性うつ病/大うつ病性障害では薬剤単独より優れていたが、気分変調症ではそうではなかった。認知行動分析システム精神療法(cognitive behavioral analysis system of psychotherapy [CBASP]、訳注:2000年にNew England Journal of Medicineで実証的研究の成果が報告された)と薬剤の併用に関するエビデンスは、一部結論が出なかった。
     対人関係療法は、薬剤(0.48)および認知行動分析システム精神療法(0.45)より有効でなかった。他のいくつかの治療法が単独の研究で検証されていた。
    <結論>
     持続性抑うつ障害について、エビデンスに基づくいくつかの薬理学的、心理療法的、および併用の急性期治療法が利用可能であり、それらの間には有意な差がある。

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成人の持続性抑うつ障害のための継続・維持療法の比較有効性
    Katja Machmutow et al. Cochrane Systematic Review - Intervention Version published: 20 May 2019.
    Comparative effectiveness of continuation and maintenance treatments for persistent depressive disorder in adults.

    論文要約:
    <背景>
     持続性抑うつ障害(persistent depressive disorder、PDD)は、最短2年間の疾患持続期間を持つ抑うつ障害と定義され、4つの診断グループ(気分変調症、慢性うつ病、エピソード間に不完全寛解を伴う再発うつ病、二重うつ病)が含まれる。うつ病の持続型は抑うつ障害のかなりの割合を占め、西欧諸国における生涯有病率は3~6%に及ぶ。PDDが心理学的治療と薬理学的治療の併用を含むいくつかの急性期介入によく反応することを示すエビデンスが増えているが、急性期治療に反応した後の高率な再燃・再発率を考えると、長期の継続・維持療法がとても重要である。これまでPDDの継続・維持療法に関する利用可能なエビデンスの統合は実施されていない。
    <目的>
     持続性抑うつ障害のための心理学的および薬理学的継続・維持療法の効果を相互に、またはプラセボ(薬剤/注意プラセボ[attention placebo、情報提供を行う対照群]/非特異的治療対照)および従来の治療(treatment as usual、TAU)との比較において評価すること。継続療法は、現在寛解している人(寛解は症例レベルを下回る抑うつ症状として定義される)、または抗うつ治療に以前反応した人に提供される治療として定義される。維持療法は、6か月続く寛解として定義される回復期に提供される。
    <検索方法>
     2018年9月28日まで、Ovid MEDLINE (1950年~)、Embase (1974年~)、PsycINFO (1967年~)、およびthe Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL)を検索した。これらのデータベースの前検索は、Cochrane Common Mental Disorders Controlled Trial Register (CCMD‐CTR) (2015年12月11日までの全年)を介したRCTについても実施された。加えて、灰色文献(grey literature)資料、および国際試験登録のClinicalTrials.govとICTRP(International Clinical Trial Registry Platform、訳注:2005年にWHOが設立した世界各国の臨床試験情報を検索可能なシステム)を2018年9月28日まで検索した。含めた研究の文献リストを調べて、含めたすべての研究の第1著者と連絡をとった。
    <選択基準>
     我々は、公式にPDDと診断され薬理学的、心理学的、または両者併用の継続・維持介入を受けた成人におけるランダム化比較試験(randomized controlled trials、RCTs)と非ランダム化比較試験(non‐randomized controlled trials、NRCTs)を含めた。
    <データ収集と解析>
     2人のレビュー著者が、独立に研究を選択してデータを抽出・分析した。有効性の主要評価項目はうつ病の再燃/再発率であった。認容性の主要評価項目は再燃/再発以外のあらゆる理由による脱落であった。二分評価項目についてはリスク比(risk ratios、RR)を、連続評価項目については平均差(mean differences、MD)を、95%信頼区間(95% confidence intervals、CI)と共に用いて変量効果メタ解析(random‐effects meta‐analyses)を実施した。
    <主な結果>
     我々は、このレビューに840人の参加者を含む10の研究(7つのRCTs、3つのNRCTs)を含めた。5つの研究は継続治療を、5つの研究は維持治療を調べていた。全体として、含められた研究は低~程々のバイアスリスクを持っていた。3つのNRCTsについて、最も多いバイアスリスクの原因は結果の選択的報告であった。7つのRCTsについて、最も多いバイアスリスクの原因は項目評価の非盲検と他のバイアス(特に製薬会社の資金援助による利益相反)であった。
    [薬理学的継続・維持療法]
     最も多い比較は抗うつ薬とプラセボ錠剤の比較であった(5研究)。抗うつ薬を服用した参加者はプラセボ群の参加者と比較して、介入終了時に、再燃したり再発エピソードを経験したりする可能性がおそらく少ない(13.9% 対 33.8%, リスク比 0.41, 95% CI 0.21-0.79; 参加者 = 383; 研究数 = 4; I²(訳注:異質性指標の1つ)= 54%, 程々の質のエビデンス)。全体的な脱落率は薬剤群とプラセボ群の参加者間で同じかもしれない(23.0% 対 25.5%, RR 0.90, 95% CI 0.39-2.11; RCTs = 4; 参加者 = 386; I² = 64%, 低い質のエビデンス)。しかし感度分析は、低リスクのバイアスを持つ研究のみを含めると、主要評価項目の群間差を示すエビデンスはないことを示した。薬理学的治療または心理学治療をTAUと比較した研究は皆無であった。
    [心理学的継続・維持療法]
     1つの研究が心理学的療法と注意プラセボ/非特異的対照を比較していた。1つの研究が心理療法を薬剤と比較していた。心理療法を含む研究の結果は、継続または維持心理療法は無治療または抗うつ薬より有用な介入である可能性を示唆する。しかし、これらの比較についてのエビデンスの大きさは、質の高い結論を引き出すにはあまりにも小さく不明瞭であった。
    [心理学的および薬理学的継続・維持療法の併用]
     3つの研究が心理学的および薬理学的継続・維持療法の併用を、薬理学的療法単独と比較していた。1つの研究が心理学的および薬理学的継続・維持療法の併用を、心理学的療法の単独比較していた。しかし、これらの比較についてのエビデンスの大きさは、質の高い結論を引き出すにはあまりにも小さく不明瞭であった。
    [各種抗うつ薬の比較]
     2つの研究が2つの抗うつ薬の直接比較に関するデータを報告していた。しかし、この比較についてのエビデンスの大きさは、質の高い結論を引き出すにはあまりにも小さく不明瞭であった。
    <著者らの結論>
     現在のところ、レビューされた抗うつ薬を用いた継続または維持薬物療法が、PDDを持つ人の再燃と再発を予防する頑強な治療であるか否かについては不明である。他のすべての比較について、エビデンスの大きさが最終結論を引き出すには小さすぎるが、もしかしたら継続・維持心理療法が無治療より有効かもしれない。より質の高い心理学的介入の試験が必要である。今後の研究は、より精密に健康関連のQOLと有害作用、経過観察データの評価に取り組むべきである。

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持続性抑うつ障害に対する認知行動分析システム精神療法(CBASP)、薬剤、または併用:個々の参加者データに基づくネットワークメタ回帰を用いた治療選択の個別化
    Furukawa TA et al. Psychother Psychosom 2018; 87(3): 140-153.
    Cognitive-Behavioral Analysis System of Psychotherapy, Drug, or Their Combination for Persistent Depressive Disorder: Personalizing the Treatment Choice Using Individual Participant Data Network Metaregression.

    論文要約:
    <背景>
     持続性抑うつ障害(persistent depressive disorder)は、しばしば診断される能力低下を引き起こす疾患であるが治療は難しいことが多い。認知行動分析システム精神療法(cognitive-behavioral analysis system of psychotherapy、CBASP)は、その治療のために特別に開発された唯一の心理療法である。しかし、CBASP、抗うつ薬物療法、あるいはそれらの併用のどれが、そしてどのタイプの患者に最も効果的なのかは不明である。この研究は、個々の参加者データのネットワークメタ回帰(individual participant data network metaregression)に基づいて患者の特性と嗜好に合わせた治療選択における協働意思決定(shared decision-making)を促進するために、個別化された予測モデルを提示することを目的とした。
    <方法>
     我々はCBASP、薬物療法、またはその併用の2つを比較するランダム化比較試験の包括的検索を行い、同定された試験からの個々の参加者データを求めた。主要評価項目は、有効性については抑うつ症状の重症度の減少、治療認容性についてはあらゆる理由による脱落であった。
    <結果>
     同定された3研究(参加者1,036人)のすべてが本解析に含められた。平均して、併用療法は有効性と認容性に関して、2つの単独療法より有意な優越性を示したが、後者の2つの治療法は基本的に類似の結果を示した。ベースラインの抑うつ、不安、過去の薬物療法、年齢、およびうつ病サブタイプが相対的有効性に影響したことは、特定の患者サブグループについては薬物療法またはCBASPの単独が低コストで、より有害作用が少なく個々の患者の嗜好に合致する可能性がある推奨できる治療選択であることを示唆した。双方向性のウェブ・アプリ(https://kokoro.med.kyoto-u.ac.jp/CBASP/prediction/)は、患者特性のすべての可能な組み合わせについて、予測される疾患経過を示す。
    <結論>
     個々の参加者データによるネットワークメタ回帰は、個々の患者特性に基づく治療推奨を可能とする。

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重度かつ持続性の精神疾患の外来患者集団における原発性多飲水の同定:前向き観察研究
    Iftene F et al. Psychiatry Res 2013; 210(3): 679-83.
    Identification of primary polydipsia in a severe and persistent mental illness outpatient population: a prospective observational study.

    論文要約:
     入院している精神疾患患者集団における原発性多飲水をもっぱら調査してきた従来の研究によると、その有病率は3から25%に及ぶ。本研究の目的は、精神科外来集団における原発性多飲水の発生を確認し、自己誘発性水中毒を有する外来患者の過剰水分摂取の理由、健康リスク、および自身の行動への洞察に関する認識を確定することであった。
     オンタリオ州(Ontario)キングストン(Kingston)の地域アウトリーチプログラムからの115人の精神科外来患者全員が本研究に参加することを求められ、うち89人(77.4%)が研究に登録された。データ収集には診療録のレビュー、構造化面接、体重測定、および採尿が含まれた。
     原発性多飲水の発生率は15.7%であった。水中毒を示唆する医学的合併症を示す多飲水患者の半数は、強い関連要因として喫煙を認めた。自己誘発性水中毒の質問表に対する興味深い回答があり、これは1日に必要な通常の水分量と健康行動に関する知識の欠落を示していた。
     過剰な飲水は施設/病院の設定外の精神科患者集団においても発生し、自身の問題の重症度とそこから生じ得る合併症に対する患者の認識は限られている。多飲水の有病率を考慮すれば、この問題の同定と対応に取り組む努力をもっとすべきである。

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gは一つの独立した存在か:三段論法と知能テストを用いた日本人の双生児研究
    Chizuru Shikishima et al. Intelligence 2009; 37(3): 256-267.
    Is g an entity? A Japanese twin study using syllogisms and intelligence tests.

    論文要旨:
     行動遺伝学的アプローチを用いて、我々はヒトの一般知能の単一性に関する仮説、すなわちg理論の妥当性を、100の三段論法問題と全知能検査の2つのテスト結果を分析することで調べた。参加者は448人の日本人若年成人双生児(一卵性双生児の167組と二卵性双生児の53組)であった。データが2種類の多変量遺伝モデル、すなわち高次潜在変数であるgを1つの独立した存在として仮定する共通経路モデル(common pathway model)と、高次潜在変数を仮定しない独立経路モデル(independent pathway model)への適合性について分析された。
     これらの分析は、相加的な遺伝因子と非共有環境因子を含む共通経路モデルが3つの明確に異なる知的能力、すなわち三段論法の論理的・演繹的推論能力、言語的能力、空間的能力を最もうまく説明することを明らかにした。歴史的にヒト知能の象徴と認識されてきた三段論法的解決についての相当なg負荷、および因果論的レベル、つまり遺伝的・環境的因子レベルにおける1つの独立した存在としてのgの出現は、g理論へのさらなる支持を提供する。

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神経心理学的状態評価のための再施行可能なバッテリー(RBANS)の競合する因子構造の経験的比較:Project FRONTIER研究
    Torrence ND et al. Arch Clin Neuropsychol 2016; 31(1): 88-96.
    An Empirical Comparison of Competing Factor Structures for the Repeatable Battery for the Assessment of Neuropsychological Status: A Project FRONTIER Study.

    論文要旨:
     神経心理学的状態評価のための再施行可能なバッテリー(the Repeatable Battery for the Assessment of Neuropsychological Status、RBANS)の元の因子構造は経験的支持を受けてこなかったが、少なくとも8つの代替因子構造が文献中に同定された。本研究は元のRBANSモデルを8つの代替モデルと比較するために、確認的因子分析を一般因子を含むように調整して用いた。参加者データは地方の健康についての疫学研究であるProject FRONTIERから得たもので、341人(女性229人、男性112人)の成人から構成され、平均年齢は61.2歳(標準偏差 = 12.1歳)、平均教育年数は12.4歳(標準偏差 = 3.3歳)であった。Duffらによって提案された2因子バージョンがデータに最も適合したが(CFI = 0.98; RMSEA = 0.07)、適切な因子負荷を生み出すには更なる変更が必要であった。結果は一般因子を含めることを支持し、DuffらによるRBANSモデルを部分的に追試した。

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神経心理学的状態評価のための再施行可能なバッテリー(RBANS)の不変2因子構造
    Vogt EM et al. Appl Neuropsychol Adult. 2017 Jan-Feb; 24(1): 50-64.
    Invariant two-component structure of the Repeatable Battery for the Assessment of Neuropsychological Status (RBANS).

    論文要旨:
     神経心理学的状態評価のための再施行可能なバッテリー(the Repeatable Battery for the Assessment of Neuropsychological Status、RBANS、1998、2012)は、臨床的設定で認知機能を評価する短時間の神経認知測定法である。かつての因子構造研究は、サンプル間における微妙な差異を明らかにしてきた。これらの差異は、主に研究者らによってなされた方法論上の決定の結果によると仮定された。
     本研究は、経験的に支持された抽出基準(parallel analysis; minimum average partial procedure)を利用して5つのサンプルを一様に調べた。以前に公表された4研究(Carlozzi et al. 2008; Duff et al. 2010; Duff et al. 2006; Wilde 2006)からのRBANSデータを再解析し、新規の臨床サンプルをGundersen Health System Memory Centerから得た。
     因子構造の一致を直交ベクトル行列(orthogonal vector matrix)を比較することで調べ(Barrett、2005)、サンプルを通して頑強な2因子構造が信頼性をもって現れた。不変なRBANSの2因子構造は、主として記憶と視空間機能を強調した。この結果は、以前の研究で同定された2因子RBANSモデルへのさらなる支持を与え、多様なサンプルを通した再現の経験的証拠を提供した。RBANSの広範な使用のため、この心理測定の知識は重要な臨床的意義を有する。検査データの正確な解釈を促進し、多様な臨床的設定で本測定法を使用することが適切か否かを臨床医がより多くの情報を得て意思決定できるようにすべきである。

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軽度認知障害の疑いのある高齢患者におけるRBANSの因子構造:5因子構造のエビデンス
    Emmert N et al. Appl Neuropsychol Adult. 2018 Jan-Feb; 25(1): 38-50.
    RBANS factor structure in older adults with suspected cognitive impairment: Evidence for a 5-factor structure.

    論文要旨:
     認知障害を評価するために使われる短時間であるが包括的で標準化された神経心理学的テストバッテリーであるRBANS(the Repeatable Battery for the Assessment of Neuropsychological Status)の理論的に形成された5因子構造について、過去の研究は最小限の経験的支持しか与えていない。本研究は、理論的に形成された5因子構造と3つの代替因子解を、探索的因子分析法と確認的因子分析法を組み合わせて検証した。
     外来患者の神経心理学サービスにおいて評価された150人の高齢者からなる臨床サンプルからの保管データを利用した。確認的因子分析を用いて全部で4つのRBANSモデルが特定された。5因子モデルの結果は、そのモデルの改良後に「良好」から「非常に良好」な適合度を示した。カイ二乗検定の結果は、5因子モデルが統計的に2または3因子モデルより優れていることを示した(p < .001)。
     要約すると、結果は高齢成人の臨床サンプルにおける理論的に導かれたRBANSの5因子構造を支持する。各々指標を構成する検査間の成績に最小限の相違しかない場合は特に、5つの明確な認知領域としてのRBANS指標スコアに注意深い解釈が必要かもしれない。

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アルツハイマー病サンプルで支持されたRBANSの5因子構造:神経心理学的評価法の妥当性に関して
    Holden HM et al. Appl Neuropsychol Adult. 2018 Oct 31:1-11.
    Five-factor structure of the RBANS is supported in an Alzheimer's disease sample: Implications for validation of neuropsychological assessment instruments.

    論文要旨:
     神経心理学的状態評価の再施行可能なバッテリー(the Repeatable Battery for the Assessment of Neuropsychological Status、RBANS)の開発は、5つの認知領域にわたる能力評価の提供を目的として理論的に導かれたものである。その開発以来、数多くの因子分析研究が提案された5因子構造への経験的支持を提供することに失敗し、この方法の内部構造に関する同意も欠落している。これら先行研究の重要な限界は正常または混合臨床サンプルの使用であり、これは特定の均質な臨床サンプルでは明白かもしれない区別を曖昧なものにし得る行為である。
     本研究は、確実な(probable)アルツハイマー病(Alzheimer's disease、AD)と診断された107人の男性退役軍人サンプルにおいてRBANSの因子構造を調べた。5つの指標スコア(即時記憶、視空間/構成、言語、注意、および遅延記憶)を反映するモデルの確認的因子分析は、提案された5因子構造がデータによく適合することを見出した。これらの結果は、RBANSは5つの明確な構成概念をきちんと測定して、指標スコアの使用が適切であることを示す。さらに本結果は、神経心理学的評価方法の構成概念妥当性を特定の均質サンプルにおいて検証する重要性を強調する。

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治療抵抗性うつ病を持つ患者の再発予防のための経口抗うつ薬と併用されたエスケタミン鼻腔用スプレーの有効性:ランダム化臨床試験
    Ella J. Daly et al. JAMA Psychiatry. Published online June 5, 2019.
    Efficacy of Esketamine Nasal Spray Plus Oral Antidepressant Treatment for Relapse Prevention in Patients With Treatment-Resistant Depression: A Randomized Clinical Trial.

    キーポイント:
    <疑問>
     治療抵抗性うつ病を持つ患者におけるエスケタミン鼻腔用スプレーの長期効果は如何なるものか。
    <結果>
     この臨床試験の維持段階において無作為に割り付けられた治療抵抗性うつ病を持つ297人の成人のうち、エスケタミンと抗うつ薬を用いた16週間の初期治療後に経口抗うつ薬とプラセボ鼻腔用スプレーで治療した人と比べて、経口抗うつ薬と併用してエスケタミン鼻腔用スプレーを間欠的に使用した人は、再発するまでの時間が有意に遅かった。
    <意義>
     経口抗うつ薬と併用したエスケタミン鼻腔用スプレーによる継続的治療は、治療抵抗性うつ病を持つ患者における抗うつ効果を、経口抗うつ薬単独よりも長く持続させることができる。

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精神病における内因性カンナビノイドシステムの攪乱の測定:系統的レビューとメタ解析
    Amedeo Minichino et al. JAMA Psychiatry. Published online June 5, 2019.
    Measuring Disturbance of the Endocannabinoid System in Psychosis: A Systematic Review and Meta-analysis.

    キーポイント:
    <疑問>
     精神病を持つ人の内因性カンナビノイド(訳注:生体内で作られるカンナビノイド受容体のリガンド、大麻草に含まれる生理活性成分の総称で、いわゆる脳内マリファナ類似物質のこと[脳科学辞典「エンドカンナビノイド」より])システムは異常か。
    <結果>
     この18の研究の系統的レビューとメタ解析において、精神病を持つ人では内因性カンナビノイドシステムがより高い傾向にあることが観察された。所見は病気のすべての段階を通して一貫しており、抗精神病薬治療と現在のカンナビノイド使用とは独立していた。この増加傾向は精神病症状の重症度と逆関連し、精神病の寛解後に正常化した。
    <意義>
     精神病症状を持つ人では内因性カンナビノイドシステムが異常のようで、病気の測定と治療のための有益な標的を提供する。

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カナダにおける幼児期の行動と成人の雇用賃金の関連
    Francis Vergunst et al. JAMA Psychiatry. Published online June 19, 2019.
    Association Between Childhood Behaviors and Adult Employment Earnings in Canada

    キーポイント:
    <疑問>
     幼稚園における行動は、知能指数と家庭背景を調整しても、30年後の雇用賃金と関連するか。
    <結果>
     30年間経過観察された参加者2850人の本研究において、知能指数と家庭の逆境を調整しても、6歳時の不注意は33~35歳におけるより低い年収と関連することが分かった。男性参加者についてのみ、攻撃-敵対(aggression-opposition)がより低い年収と、向社会性(prosociality)がより高い年収と関連した。
    <意義>
     幼稚園の教師は30年後のより低い賃金と関連する行動を同定することができる。高水準の不注意、攻撃-敵対、および低水準の高社会的行動を示す子供の早期監視と支援は、個人および社会にとっての長期的な社会経済上の利益を持つ可能性がある。

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子供の思春期前後における虐待経験と成人の扁桃体機能の関連
    Jianjun Zhu et al. JAMA Psychiatry. Published online June 26, 2019.
    Association of Prepubertal and Postpubertal Exposure to Childhood Maltreatment With Adult Amygdala Function.

    キーポイント:
    <疑問>
     様々な年齢における小児虐待への曝露と、成人の脅威顔に対する扁桃体反応の関連は如何なるものか。
    <結果>
     この成人202人のコホート研究において、自己報告された小児期早期の虐待への曝露は機能的MRIによる鈍麻した扁桃体反応と有意に関連したが、10代早期の曝露は増大した扁桃体反応と有意に関連した。
    <意義>
     結果は、虐待が扁桃体の過大反応で特徴付けられる障害と、扁桃体の過小反応で特徴付けられる障害のリスク要因である可能性を示唆し、それらは小児期において特定のタイプの逆境に曝露された際の年齢の違いと関連するかもしれない。

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問題のあるインターネット使用における認知欠損:40研究のメタ解析
    Ioannidis K et al. Br J Psychiatry. Published online: 20 February 2019.
    Cognitive deficits in problematic internet use: meta-analysis of 40 studies.

    論文要旨:
    <背景>
     インターネットの広範な使用は、世界的な公衆衛生上の問題であると益々認識されている。個別の研究が問題のあるインターネット使用(problematic internet use、PIU)における認知障害を報告してきたものの、様々な方法論的限界に悩まされてきた。PIUにおける認知欠損の確認は、この障害の神経生物学的説明を支持するであろう。
    <目的>
     症例対照研究からのPIUにおける認知能力の厳密なメタ解析を実施すること、結果に対する研究の質、主要なオンライン行動のタイプ(例えばゲーム)、および他のパラメータの影響を評価すること。
    <方法>
     PIUを持つ人(広く定義)の認知と健常対照のそれを比較する(同業者によって査読された)症例対照研究の系統的文献レビューが実施された。結果が抽出され、所定の関心認知領域について少なくとも4つの文献が存在する場合にメタ解析が実施された。
    <結果>
     このメタ解析は40研究にわたる2,922人の参加者から構成された。対照と比較して、PIUは抑制制御(ストループ課題、Hedgesのg = 0.53[s.e. = 0.19-0.87])、停止信号課題(g = 0.42[s.e. = 0.17-0.66])、Go/No-Go課題(g = 0.51[s.e. = 0.26-0.75])、意思決定(g = 0.49[s.e. = 0.28-0.70])、および作業記憶(g = 0.40[s.e. = 0.20-0.82])の有意な障害と関連した。ゲーム(gaming)がオンライン行動優勢型であるか否かは、観測された認知効果に有意に影響することはなく、年齢、性別、報告の地理的地域、または併存症の存在もそうであった。
    <結論>
     地理的場所に関係なくPIUが広範な神経心理領域にわたる低下と関連することは、その異文化にわたる生物学的妥当性を支持する。これらの結果はまた、インターネットゲーム障害について異なる神経認知プロフィールよりもむしろ、ゲームを含むPIU行動にわたって共通する神経生物学的脆弱性を示唆する。

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多遺伝子リスクスコアは認知関連の経路を通して統合失調症の易罹患性を増加させる
    Toulopoulou T et al. Brain 2019; 142(2): 471-485.
    Polygenic risk score increases schizophrenia liability through cognition-relevant pathways.

    論文要旨:
     認知欠損は少なくとも部分的には統合失調症リスクの遺伝機構を表すと考えられ、双生児データの統計学的モデル化からの最新のエビデンスは、前者から後者への直接的因果関係を示唆している。しかし、初期のエビデンスは分子遺伝データでなく双生児からの推定に基づいており、遺伝的影響が診断までの途中で認知をどの程度介するかについては不明である。そこで我々は、認知欠損が障害に対する多遺伝子リスクスコアの効果の幾ばくかを媒介する程度を評価するために、因果モデルに遺伝リスクの直接的測定(例えば統合失調症多遺伝子リスクスコア)を含めた。家族データの因果モデルは重要な変数間の関係を検証し、遺伝分散要素の解析を可能とした。多遺伝子リスクスコアは最新で最大の統合失調症全ゲノム関連研究からの要約統計量を用いて計算され、潜在特性として表された。認知も潜在特性としてモデル化された。
     参加者は1,078家族からの1,313名(416人の統合失調症を持つ患者、290人の非罹患同胞、および607人の対照)であった。モデル化は、統合失調症において認知欠損はおそらく因果的役割を持つとする以前の所見を支持した。全体で、多遺伝子リスクスコアは我々のサンプルの統合失調症リスクの8.07%(信頼区間[CI]5.45-10.74%)を説明した。このうち、多遺伝子リスクスコアの影響の3分の1以上(2.71%, CI 2.41-3.85%)が認知経路を通して媒介され、これは多遺伝子リスクスコアの統合失調症リスクに対する直接的影響(1.43%, CI 0.46-3.08%)を超えていた。多遺伝子リスクスコアの影響の残りは(3.93%, CI 2.37-4.48%)、統合失調症の易罹患性と認知の間の相互的因果関係(例えば循環的様式での相互的影響)を反映していた。統合失調症易罹患性の遺伝分散要素の分析は、26.87%(CI 21.45-32.57%)が多遺伝子リスクスコアでは捕らえることができない認知に関する経路と関連することを示唆した。統合失調症の残りの分散は、認知関連の多遺伝子リスクスコア以外の経路を介してであった。
     我々の結果は統計学的モデル化による推定に基づいており、因果の確実な証拠を提供するものではないが、認知経路が累積的遺伝リスクの統合失調症に対する影響のかなりの部分を媒介することがわかる。我々のモデルからは全体の遺伝リスクの33.51%(CI 27.34-43.82%)が認知に対する影響を通して媒介されると推定されるが、統合失調症の遺伝学がもっと良く特徴付けられるためには、更なる研究と分析が必要である。

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統合失調症スペクトラム障害における個人の治療反応の違いの評価:メタ解析
    Stephanie Winkelbeiner et al. JAMA Psychiatry. Published online June 3, 2019.
    Evaluation of Differences in Individual Treatment Response in Schizophrenia Spectrum Disorders: A Meta-analysis.

    キーポイント:
    <疑問>
     抗精神病薬への反応は患者間で異なるとするランダム化臨床試験からのエビデンスはあるか。
    <結果>
     この統合失調症または統合失調感情障害の診断を持つ15,360人の患者の52のランダム化臨床試験のメタ解析において、抗精神病薬治療群におけるアウトカムのばらつきは、プラセボ対照群のそれより高くはなく、若干低かった。
    <意義>
     本研究は薬剤反応の個人差が今なお存在することを除外することはできないが、抗精神病薬治療への反応が個人的要素であるとする仮定は疑問である。

    論文要旨:
    <重要性>
     臨床医と研究者の仮定によれば、ランダム化臨床試験(RCT)における統合失調症を持つ患者の抗精神病薬への反応はかなり異なる。
    <目的>
     治療群と対照群間でばらつきを比較することで、個人の治療反応のランダム変動に対する全体的変動を評価すること。
    <データソース>
     Cochrane Schizophrenia、 MEDLINE/PubMed、Embase、PsycINFO、Cochrane CENTRAL、BIOSIS Previews、ClinicalTrials.gov、およびWorld Health Organization International Clinical Trials Registry Platformを、1995年1月1日から2016年12月31日まで検索した。
    <研究選択>
     統合失調症スペクトラム障害と診断され、認可された抗精神病薬の処方を受けた成人の二重盲検・プラセボ比較RCT。
    <データ抽出と統合>
     陽性・陰性症状評価尺度の治療前後のアウトカム得点差の平均と標準偏差が抽出された。データの質および妥当性がPRISMAガイドラインに準拠して確かめられた。
    <主要評価項目>
     アウトカム測定は、RCTを通したメタ解析における全体的変動の治療/対照比であった。個人の変動比は逆分散法(inverse-variance method:分散の逆数を用いる)で重み付けされ、ランダム効果モデルに投入された。反応の個人的要素は、対照群と比較して治療群における変動性のかなりの全体的増加によって示されると仮定された。
    <結果>
     治療群または対照群に無作為割り付けされた統合失調症を持つ30人の患者から構成されるRCTがシュミレーションされた。RCTにおける分散の異なる要素がシュミレートデータで表された。加えて、我々は統合失調症または統合失調感情障害の診断を有する15,360人の患者を含む52のRCTで変動比を評価した。変動性は対照群より治療群でわずかに小さかった(変動比 = 0.97; 95% CI, 0.95-0.99; P = .01)。
    <結論と関連性>
     この研究において、抗精神病薬がアウトカム分散を増加させるというエビデンスをRCTにおいて認めず、これは治療への反応の個人的要素はなくて、むしろ分散は対照群より治療群でわずかに小さいことを示す。本研究は患者の小集団が治療に異なる反応を示すことを除外はしないが、平均的な治療効果は個々の患者についての理にかなった仮定であることを示唆する。

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抗コリン薬への曝露と認知症のリスク:コホート内症例対照研究
    Carol A. C. Coupland et al. JAMA Intern Med. Published online June 24, 2019.
    Anticholinergic Drug Exposure and the Risk of Dementia: A Nested Case-Control Study.

    キーポイント:
    <疑問>
     55歳以上の人において認知症のリスクは様々な種類の抗コリン薬の使用と関連するか。
    <結果>
     この認知症診断を持つ58,769人の患者と、マッチさせた225,574人の対照のコホート内症例対照研究(nested case-control study、訳注:追跡中のコホート内に発症した患者を症例とし、対照は症例と同じコホートから選択されるが、その選択が症例の発症後に行われる症例対照研究のことで、対照群と症例群の生存時間のバランスがとれるなど多くの交絡因子が除去される利点がある)において、交絡因子を調整した後も、認知症のリスクと抗コリン作用のある抗うつ薬、抗パーキンソン薬、抗精神病薬、膀胱抗ムスカリン薬、および抗てんかん薬への曝露の間に統計的に有意な関連を認めた。
    <意義>
     特定の種類の抗コリン薬について観察された関連は、これら薬剤は中高年の成人において注意して処方されなければならないことを示唆する。

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治療抵抗性うつ病において新規に開始された経口抗うつ薬と併用された可変容量エスケタミン鼻腔用スプレーの有効性と安全性:ランダム化・二重盲検・実薬対照研究
    Vanina Popova et al. Am J Psychiatry, Published Online: 21 May 2019.
    Efficacy and Safety of Flexibly Dosed Esketamine Nasal Spray Combined With a Newly Initiated Oral Antidepressant in Treatment-Resistant Depression: A Randomized Double-Blind Active-Controlled Study.

    論文要旨:
    <目的>
     複数の抗うつ薬による治療にも関わらず、うつ病を持つ患者のおよそ3分の1は寛解に達しない。この研究は治療抵抗性うつ病を持つ患者において、無効な抗うつ薬から新規に開始された抗うつ薬と可変容量のエスケタミン鼻腔用スプレーの併用、または新規に開始された抗うつ薬(実薬対照)とプラセボ鼻腔用スプレーの併用への切換の有効性と安全性を比較した。
    <方法>
     これは39カ所の外来照会センターにおける第3相・二重盲検・実薬対照・多施設共同研究であった。研究には現在のエピソードが中等度から重度の非精神病性のうつ病で、少なくとも2つの抗うつ薬に無反応であった病歴を持ち、1つの抗うつ薬は前向きに評価された成人が登録された。確認済の非反応者が、エスケタミン鼻腔用スプレー(56㎎または84㎎を週に2回)と抗うつ薬、またはプラセボ鼻腔用スプレーと抗うつ薬を用いた治療に無作為に割り付けられた。主要有効性評価項目であるMontgomery-Åsbergうつ病評価尺度(MADRS)のベースラインから28日までの変化が、反復測定を用いた混合効果モデルで評価された。
    <結果>
     スクリーニングされた435人の患者のうち、227人が無作為割り付けされ、197人が28日間の二重盲検の治療段階を完了した。28日目において、エスケタミン鼻腔用スプレーと抗うつ薬のMADRSスコアの変化は、プラセボ鼻腔用スプレーと抗うつ薬のそれより有意に大きかった(最小2乗平均の差 −4.0、標準誤差 1.69、95% 信頼区間 −7.31から−0.64)。さらに、より早い時点で、臨床的に意味のある改善がエスケタミン鼻腔用スプレーと抗うつ薬の併用群で観察された。
     最も頻度の高かった5つの有害事象(解離、嘔気、めまい 味覚障害、ふらつき)はすべて、抗うつ薬とプラセボの併用群より抗うつ薬とエスケタミンの併用群においてより多く観察され、各々の治療群の0.9%および7%の患者が有害事象のために試験薬剤を中止した。抗うつ薬とエスケタミンの併用群における有害事象は、投与後すぐに現れて投与後1.5時間で消失した。
    <結論>
     治療抵抗性うつ病のための現在の治療選択肢は、有効性と患者忍容性の点でかなり限られている。エスケタミンはその新しい作用機序と抗うつ効果の迅速な発現を通して、この母集団における満たされない医学的需要に対処することが期待される。治療抵抗性うつ病を持つ患者のための、迅速に作用する抗うつ薬としてのエスケタミン鼻腔用スプレーの有効性と安全性を本研究は支持する。

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電気けいれん療法後の再発予防における継続薬物療法:ランダム化比較試験
    Sackeim HA et al. JAMA 2001; 285(10): 1299-307.
    Continuation pharmacotherapy in the prevention of relapse following electroconvulsive therapy: a randomized controlled trial.

    論文要約:
    <背景>
     電気けいれん療法(Electroconvulsive therapy、ECT)はうつ病の治療に非常に有効であるが、自然経過研究はECT中止後の高い再発率を示す。
    <目的>
     電気けいれん療法後の再発予防における塩酸ノルトリプチリン、またはノルトリプチリンと炭酸リチウムの併用による継続薬物療法の有効性を確かめること。
    <デザイン>
     1993年から1998年にランダム化・二重盲検・プラセボ比較の試験が実施され、指標エピソードにおける薬物抵抗性または精神病性うつ病の存在で層別化された。
    <設定>
     2つの大学附属病院と1つの私立精神科病院。
    <患者>
     非盲検のECT治療段階を完了して臨床照会を通して募集された単極性大うつ病を持つ290人の患者のうち、159人の患者が寛解基準を満たした。84人の寛解患者が適格とされ、継続研究への参加に同意した。
    <介入>
     患者はプラセボ(n = 29)、ノルトリプチリン(目標定常状態レベル:75-125 ng/mL、n = 27)、またはノルトリプチリンとリチウムの併用(目標定常状態レベル:0.5-0.9 mEq/L、n = 28)による24週間の継続治療に無作為に割り付けられた。
    <主要評価項目>
     大うつ病エピソードの再発が3つの継続群において比較された。
    <結果>
     ノルトリプチリンとリチウムの併用療法は、再発までの時間において際立った有利性を認めて、プラセボとノルトリプチリンの両方より優れていた。24週間の試験を通した再発率は、プラセボで84%(95% 信頼区間 [CI], 70%-99%)、ノルトリプチリンで60%(95% CI, 41%-79%)、ノルトリプチリンとリチウムの併用で39%(95% CI, 19%-59%)であった。1つを除くすべての再発例がノルトリプチリンとリチウムの併用ではECTの終了後5週間以内に生じたのに対して、プラセボまたはノルトリプチリン単独ではその治療期間を通して再発が続いた。薬物抵抗性の患者、女性の患者、ECT後の抑うつ症状がより重症の患者では、より速い再発を求めた。
    <結論>
     我々の研究は、実薬による治療なしには事実上すべての寛解患者がECT中止後6カ月以内に再発することを示唆する。ノルトリプチリンによる単剤療法は有効性に限界がある。ノルトリプチリンとリチウムの併用はより有効であるが、再発率は依然として高く、継続療法の最初の1カ月は特にそうである。

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インド人の全ゲノム関連研究における統合失調症リスクとナイアシン代謝障害の関連
    Sathish Periyasamy et al. JAMA Psychiatry. Published online July 3, 2019.
    Association of Schizophrenia Risk With Disordered Niacin Metabolism in an Indian Genome-wide Association Study.

    キーポイント:
    <疑問>
     インド人母集団の固有な遺伝的構成と環境を考えると、そこに統合失調症の新しい原因が特定されることがあるだろうか。
    <結果>
     この南インドからの3,092人を含む全ゲノム関連研究において、ゲノム全体での統合失調症との有意な関連が染色体長腕上(8q24.3)に観察された。生物情報学、細胞、動物モデルのエビデンスはこの領域内の最上位遺伝子として、重要なナイアシン代謝酵素をコードする遺伝子NAPRT1(Nicotinate Phosphoribosyltransferase Domain-Containing Protein 1)を指し示した。
    <意義>
     これらの結果は、最上位の関連シグナルの遺伝子型、およびナイアシン状態が、統合失調症易罹患性と治療に関連することを示す。

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初回エピソード精神病を持つ患者におけるカンナビノイド1受容体の生体利用度
    Faith Borgan et al. JAMA Psychiatry. Published online July 3, 2019.
    In Vivo Availability of Cannabinoid 1 Receptor Levels in Patients With First-Episode Psychosis

    キーポイント:
    <疑問>
     大麻使用と疾患慢性化の交絡のない初回エピソード精神病において、カンナビノイド1受容体は変化しているか。
    <結果>
     この58人の男性の横断的症例対照研究において、カンナビノイド1受容体の生体利用度は、抗精神病薬を服用したことがないか服用していない患者を含む初回エピソード精神病を持つ男性患者でより低く、より大きな減少は低い認知機能とより重い症状重症度と関連することが探索的分析で示された。
    <意義>
     精神病の初期におけるカンナビノイド1受容体の変化は明白であり、症状重症度と認知に関連する可能性があり、カンナビノイド1受容体の調節が精神病性障害の治療の潜在的標的となることを示唆する。

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インターネット・コンピューターゲーム依存の短期治療の有効性:ランダム化臨床試験
    Klaus Wölfling et al. JAMA Psychiatry. Published online July 10, 2019.
    Efficacy of Short-term Treatment of Internet and Computer Game Addiction: A Randomized Clinical Trial.

    キーポイント:
    <疑問>
     マニュアル化された認知行動療法的短期療法は、インターネット・コンピューターゲーム依存の有効な治療であるか。
    <結果>
     この143人の男性におけるランダム化臨床試験において、待機リスト対照群に対する認知行動療法治療群におけるインターネット・コンピューターゲーム依存からの高い寛解率が認められた。
    <意義>
     インターネット・コンピューターゲーム依存に対する外来設定でのる短期CBT治療が有効である。

    論文要旨:
    <重要性>
     インターネット・コンピューターゲーム依存は、世界保健機関(WHO)も認める増加中の精神健康問題である。
    <目的>
     インターネット・コンピューターゲーム依存のための短期治療(short-term treatment for internet and computer game addiction、STICA)を用いたマニュアル化された認知行動療法(cognitive behavioral therapy、CBT)が、インターネット・コンピューターゲーム依存を持つ人において有効か否かを調べること。
    <デザイン・設定・参加者>
     多施設共同・ランダム化臨床試験が、経過観察期間を含む2012年1月24日から2017年6月14日に、ドイツとオーストリアの4つの外来クリニックにおいて実施された。測定は盲検化された。143人の男性の連続サンプルが、治療群(STICA; n = 72)または待機リスト対照群(WLC; n = 71)に無作為に割り付けられた。主な包含基準は、男性および主診断がインターネット依存であった。STICA群では6カ月の追加の経過観察を行った(n = 36)。データは2018年11月から2019年3月に分析された。
    <介入>
     インターネットの機能的使用を回復させるためのマニュアル化されたCBTプログラム。プログラムは15回の毎週のグループセッションと、最大で8回の2週間の個人セッションから構成された。
    <主要評価項目>
     事前に定義された主要アウトカムは、インターネット・コンピューターゲーム依存評価―自己報告版(Assessment of Internet and Computer Game Addiction Self-report、 AICA-S)であった。副次アウトカムは、自己報告されたインターネット依存症状、平日のオンライン時間消費、心理社会的機能、および抑うつであった。
    <結果>
     全部で143人の男性(平均 [標準偏差] 年齢, 26.2 [7.8] 歳)が、ITT(intent-to-treat)分析に基づき解析された。これらの参加者のうち、STICA群では72人中50人(69.4%)が、WLC群では71人中17人(23.9%)が寛解を示した。インターネット依存のベースライン重症度、併存症、治療施設、および年齢を調整したロジスティック回帰分析では、WLC群よりSTICA群で寛解率が高かった(オッヅ比, 10.10; 95% 信頼区間, 3.69-27.65)。WLC群と比較したSTICA治療終了時の効果量は、AICA-Sについてはd = 1.19、平日のオンライン時間消費についてはd = 0.88、心理社会的機能についてはd = 0.64、抑うつについてはd = 0.67であった。14の有害事象と8つの重大な有害事象が発生した。2つの有害事象(STICA, 1; WLC, 1)が治療との因果関係があり得るとされた。
    <結論および関連性>
     複数の治療施設における広範囲のインターネット依存のためのマニュアル化された短期のCBTは、インターネット・コンピューターゲーム依存に対する有望な短期治療である。今後は、STICAの長期の有効性と特定の集団/下位集団を実対照条件と比較して調べる試験が必要である。
    <試験登録>
     ClinicalTrials.gov identifier: NCT01434589

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辺縁系優位の加齢関係性TDP-43脳症(LATE):コンセンサス作業部会からの報告
    Nelson PT et al. Brain. Published: 30 April 2019.
    Limbic-predominant age-related TDP-43 encephalopathy (LATE): consensus working group report.

    論文要旨:
     我々は最近になって認識された疾患単位の1つ、辺縁系優位の加齢関係性TDP-43(TAR DNA-binding protein 43 kDa)脳症(limbic-predominant age-related TDP-43 encephalopathy、LATE)を記載する。LATEの神経病理学的変化(LATE neuropathological change、LATE-NC)は、高齢成人における定型的なTDP-43プロテイノパチー(proteinopathy)によって定義され、併存する海馬硬化病理の有無によらない。LATE-NCはよくあるTDP-43プロテイノパチーであり、後方視的剖検研究においてはアルツハイマー型認知症に類似した健忘型の認知症症候群と関連する。LATEはTDP-43病理を持つ前頭側頭葉変性症と、その疫学(LATEは一般に高齢者を侵す)および、TDP-43プロテイノパチーの比較的限定された神経病理学的分布に基づいて区別される。住民ベースの剖検コホートでは最高で25%の脳が、確認された認知障害と関連するほど十分なLATE-NC負担を有していた。LATE-NCを持つ多くの人に併存脳病理があり、しばしばアミロイドβ斑とタウオパチーが含まれる。(85歳以上の)超高齢期がLATE-NCの最大のリスクであり、多くの国において高齢者が急速に増加する人口層を構成していることを考えれば、LATEは公衆衛生に対して増大しつつあるも十分に認識されていない影響力を持つ。これらの理由によって、LATEの診断基準の作成をするために作業部会が招集され、研究を奨励して認知症に至るこの経路の認識を促進することを目指した。我々は、診断ガイドラインとLATE-NCの病期分類を含むコンセンサスに基づく推奨を報告する。
     LATE-NCの一連の決められた剖検方法については、脳を侵す階層的パターンを反映する3つの脳領域:扁桃体、海馬、および中前頭回由来の組織についてのTDP-43免疫組織化学による解剖学に基づく予備的な病期分類法が提案されている。LATE-NCは好んで内側側頭構造を侵すようであるが、他の領域にも影響はある。神経画像研究によると、LATE-NCを持つ被検者ではまた、内側側頭葉、前頭皮質、および他の脳領域の萎縮を認めた。これまでのところ遺伝学研究は、LATE-NCのリスクアレルを持つ5つの遺伝子、すなわちGRN、TMEM106B、ABCC9、KCNMB2、およびAPOEを示唆した。これら遺伝的リスクバリアントの発見は、LATEが前頭側頭葉変性症とアルツハイマー病の両方と病因機序を共有することを示唆する一方で、疾患特異的な発症機序を示す。我々のLATEの理解には、まだ大きな空白が残っている。予防、診断および治療の進歩について、LATEに焦点を当てた研究が至急必要である。LATEの生前同定に関して、体液または神経画像バイオマーカーといった診断ツールがないことが臨床診断の障壁である。疾患バイオマーカーの開発は、LATEのリスク因子、自然経過、および臨床特性、そして最終的な臨床試験における標的治療の対象募集をより特定する観察研究を拡大させるだろう。

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5カ国のコホートにおける遺伝および環境要因と自閉症の関連
    Dan Bai et al. JAMA Psychiatry. Published online July 17, 2019.
    Association of Genetic and Environmental Factors With Autism in a 5-Country Cohort

    キーポイント:
    <疑問>
     自閉スペクトラム症の原因の起源は如何なるものか。
    <結果>
     200万人以上の人(うち22,156人がASDと診断)を含む大規模な住民ベースの多国籍コホート研究において、自閉スペクトラム症の遺伝率はおよそ80%と推定され、国を超えて再現された自閉スペクトラム症リスクの起源は僅かに異なる可能性があった。
    <意義>
     集団中の自閉スペクトラム症の発生率の変動は、大部分は遺伝的に受け継がれる遺伝的影響によるものであり、母性効果の寄与は支持されない。

    論文要旨:
    <重要性>
     自閉スペクトラム症(ASD)の起源と進展は未解決のままであり、いくつかの国にわたるASDの相加的遺伝、母性、および環境効果の推定値を提供する個人レベルの研究はない。
    <目的>
     ASDにおける相加的遺伝、母性、および環境効果を推定すること。
    <デザイン・設定・参加者>
     1998年1月1日から2011年12月31日に、デンマーク、フィンランド、イスラエル、および西オーストラリアで生まれて16歳まで経過観察された子供の出生コホートを含む住民ベースの多国籍コホート研究。データは2016年9月23日から2018年2月4日に分析された。
    <主要評価項目>
     5つの国にわたって、相加的遺伝、母性、および共有/非共有環境効果によるASD発生リスクの全分散を記述する分散成分を推定するモデルが適用された。
    <結果>
     200万1,631人の分析サンプルのうち、102万7,546人(51.3%)は男性であった。全サンプルのうち22,156人がASDと診断された。ASDの遺伝率の中央値(95% 信頼区間)は、各国ごとの点推定については80.8%(73.2%-85.5%)であり、フィンランドの50.9%(25.1%-75.6%)からイスラエルの86.8%(69.8%-100.0%)に及んだ。北欧諸国全体では、遺伝率の推定値は81.2%(73.9%-85.3%)から82.7%(79.1%-86.0%)に及んだ。母性効果は0.4%~1.6%と推定された。自閉性障害の遺伝、母性、および環境効果の推定値はASDと類似していた。
    <結論と関連性>
     5つの国からの住民データに基づくと、ASDの遺伝率はおよそ80%と推定された。これは集団中のASD発生率の変動は、大部分は遺伝的に受け継がれる遺伝的影響によるものであり、母性効果の寄与は支持されないことを示す。結果は国によってASDのリスクの起源は僅かに異なる可能性を示唆する。

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生活スタイルおよび遺伝的リスクと認知症発症の関連
    Ilianna Lourida et al. JAMA. Published online July 14, 2019.
    Association of Lifestyle and Genetic Risk With Incidence of Dementia.

    Key Points
    <疑問>
     健康的な生活スタイルは遺伝的リスクとは関係なく認知症リスクの低下と関連するか。
    <結果>
     このベースライン時に認知症がないヨーロッパ系の60歳以上の参加者196,383人を含む前向きコホート研究において、低い遺伝的リスクと望ましい生活スタイル得点を持つ参加者と比較した高い遺伝的リスクと望ましくない生活スタイル得点を持つ参加者の、あらゆる原因による偶発認知症のハザード比 は2.83であり統計的に有意であった。望ましい生活スタイルは認知症リスクの低下と関連し、遺伝的リスクと健康的な生活スタイルの間に有意な交互作用を認めなかった。
    <意義>
     遺伝的に低または高リスクにある参加者において、健康的な生活スタイルは認知症リスクの低下と関連した。

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メチオニン/ホモシステイン比と脳磁気共鳴画像測定および認知症リスクの関連
    Babak Hooshmand et al. JAMA Psychiatry. Published online July 24, 2019.
    Association of Methionine to Homocysteine Status With Brain Magnetic Resonance Imaging Measures and Risk of Dementia

    キーポイント:
    <疑問>
     メチル化状態(メチオニン/ホモシステイン比)は、高齢成人の偶発認知症および構造的脳変化と関連するか。
    <結果>
     このベースラインにおいて認知症のない2,570人の高齢者からの縦断データを用いたコホート研究において、より高いメチオニン/ホモシステイン比は、より良いビタミンB12または葉酸状態を持つ参加者において観察され、偶発認知症とアルツハイマー病のリスク低下と関連した。また、6年間の全脳組織容積減少率の低下と関連した。
    <意義>
     メチル化マーカーが6年間の認知症発症と構造的脳変化と関連したことは、より高いメチオニン/ホモシステインが、高齢成人の脳萎縮率を減少させ認知症リスクを低下させる点で重要である可能性を示唆する。

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クロザピンと他の内服第2世代抗精神病薬について統合失調症を持つ患者における入院とあらゆる理由による中止の関連:コホート研究の系統的レビューとメタ解析
    Takahiro Masuda et al. JAMA Psychiatry. Published online July 31, 2019.
    Association With Hospitalization and All-Cause Discontinuation Among Patients With Schizophrenia on Clozapine vs Other Oral Second-Generation Antipsychotics: A Systematic Review and Meta-analysis of Cohort Studies.

    キーポイント:
    <疑問>
     非ランダム化コホート研究のメタ解析で、クロザピンと他の第2世代抗精神病薬(second-generation antipsychotics、SGAs)はどう異なるのか。
    <結果>
     この109,341人の参加者から構成される63のコホート研究の系統的レビューとメタ解析において、より重度の患者がクロザピンを内服していたが、クロザピンの使用は入院、あらゆる理由による中止、および全般的症状に関してより良い有効性アウトカムと関連した。しかし心臓・代謝関連のアウトカムのリスクは、他のSGAsより高かった。
    <意義>
     ランダム化試験よりも一般化可能な統合失調症患者サンプルにおいて、クロザピンは他のSGAsと比較して統計的・臨床的により良い有効性アウトカムと関連したが、安全性に関するいくつかの懸念から、注意深い監視と臨床上の注意が必要である。

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複数エピソード統合失調症を持つ成人の急性期治療のための32の抗精神病薬の比較有効性と忍容性:系統的レビューとネットワークメタ解析
    Huhn M et al. Lancet. Published online Jul 11, 2019.
    Comparative efficacy and tolerability of 32 oral antipsychotics for the acute treatment of adults with multi-episode schizophrenia: a systematic review and network meta-analysis.

    論文要旨:
    <背景>
     統合失調症は世界中で最も多くて重荷となり、費用がかかる成人の精神疾患の1つである。抗精神病薬はその治療選択肢であるが、どの薬剤を使うべきかについて異論がある。我々はランダム化比較試験からの情報を定量化することで、抗精神病薬を比較して順位付けすることを目的とした。
    <方法>
     我々はプラセボ比較と1対直接比較のランダム化比較試験のネットワークメタ解析を行い、32の抗精神病薬を比較した。データベースの開始から2019年1月8日までの、Embase、MEDLINE、PsycINFO、PubMed、 BIOSIS、Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL)、WHO International Clinical Trials Registry Platform、およびClinicalTrials.govを検索した。2人の著者が独立に研究を選択して、データを抽出した。統合失調症および関連障害の急性症状を持つ成人のランダム化比較試験を含めた。治療抵抗性、初回エピソード、優位な陰性症状/抑うつ症状、および併存身体疾患を有する患者の研究と再発予防研究は除外した。主要アウトカムは、標準化された評価尺度で測定された全体症状の変化であった。また、8つの有効性アウトカムと8つの安全性アウトカムのデータを抽出した。研究結果の相違は、メタ回帰と感度分析で探索された。効果量測定は95% 確信区間(credible intervals [CrIs]) を持つ標準化平均差、平均差、またはリスク比であった。エビデンスの信頼性は、CINeMA (Confidence in Network Meta-Analysis) を用いて評価された。研究プロトコルはPROSPERO(番号:CRD42014014919)に登録されている。
    <結果>
     我々は54,417文献を同定し、53,463人の参加者データを持つ402研究を含めた。効果量の推定値は全ての抗精神病薬がplaceboよりも全体症状を低下させることを示し(ただし6つの薬剤については統計的有意差なし)、標準化平均差はclozapineの-0·89 (95% CrI -1·08 to -0·71) からlevomepromazineの-0·03 (-0·59 to 0·52) に及んだ。
    Placeboと比較した陽性症状(参加者31,179人)の減少についての標準化平均差はamisulprideの-0·69 (95% CrI -0·86 to -0·52) からbrexpiprazoleの-0·17 (-0·31 to -0·04) 、陰性症状(参加者32,015人)についてはclozapineの-0·62 (-0·84 to -0·39) からflupentixolの-0·10 (-0·45 to 0·25) 、抑うつ症状(参加者19,683)についてはsulpirideの-0·90 (-1·36 to -0·44) からflupentixolの0·04 (-0·39 to 0·47) と異なった。
     Placeboと比較したあらゆる理由による中止(参加者42,672人)についてのリスク比はclopenthixolの0·52 (0·12 to 0·95) からpimozideの1·15 (0·36 to 1·47) 、鎮静(参加者30,770人)についてはpimozideの0·92 (0·17 to 2·03) からzuclopenthixolの10·20 (4·72 to 29·41) 、抗パーキンソン薬の使用(参加者24,911人)についてはclozapineの0·46 (0·19 to 0·88) からpimozide の6·14 (4·81 to 6·55) に及んだ。
     Placeboと比較した体重増加(参加者28,317人)についての平均差はziprasidoneの-0·16 kg (-0·73 to 0·40) からゾテピンの3·21 kg (2·10 to 4·31) 、プロラクチン上昇(参加者21,569人)についてはclozapineの-77·05 ng/mL (-120·23 to -33·54) からpaliperidoneの48·51 ng/mL (43·52 to 53·51) 、QTc延長(参加者15,467人)についてはlurasidoneの-2·21 ms (-4·54 to 0·15) からsertindoleの23·90 ms (20·56 to 27·33) に及んだ。
     主要アウトカムについての結論は、あり得る効果モデレーターの調整後、または感度分析(例、placeboと比較した研究を除外した場合)において本質的に変わらなかった。エビデンスの信頼性は大抵が「低い」または「非常に低い」であった。
    <解釈>
     抗精神病薬間で有効性にいくらかの差があるものの、差の大部分は離散的というよりも段階的である。一方、副作用の差はより顕著である。これらの結果は、臨床医がその国で利用できるこれら薬剤のリスクとベネフィットのバランスを取る上で助けとなるだろう。臨床医は各アウトカムの重要性、患者の医学的問題および嗜好を考慮すべきである。
    <資金>
     German Ministry of Education and Research.

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うつ病を持つ高齢患者における薬理学的・非薬理学的介入の有効性と忍容性:系統的レビュー、一対比較とネットワークメタ解析
    Krause M et al. Eur Neuropsychopharmacol. Published online Jul 18, 2019.
    Efficacy and tolerability of pharmacological and non-pharmacological interventions in older patients with major depressive disorder: A systematic review, pairwise and network meta-analysis.

    論文要旨:
     うつ病を持つ高齢患者における介入の有効性と安全性の包括的評価がないため、この母集団におけるすべての介入について、系統的レビューとネットワークメタ解析を行った。
    我々は65歳を超える患者のうつ病治療についての全てのランダム化比較試験と同定するために、2017年12月12日までのCochrane一般精神疾患グループの専門登録, MEDLINE、EMBASE、PsycINFO、CochraneLibrary、ClinicalTrials.gov、および世界保健機関(WHO)登録を検索した。主要アウトカムはハミルトンうつ病評価尺度、あるいは他の妥当性が確認されたうつ病評価尺度上で少なくとも50%の減少で定義される反応であった。副次アウトカムは寛解、抑うつ症状、全脱落、無効と有害事象による脱落、QOL、および社会機能であった。加えて116の有害事象を分析した。
     1990年から2017年に公表された9,274人の参加者を含む53のRCTから129の文献を特定した。参加者の平均年齢は73.7歳であった。主要アウトカムである治療への反応に関して、ネットワークメタ解析はプラセボと比較したクエチアピンとデュロキセチンの有意な優越性を示した。加えて1対比較のメタ解析において、アゴメラチン、イミプラミン、およびボルチオキセチンはプラセボを凌いだ。また、副次アウトカムにおいて、プラセボと比較したいくつかの抗うつ薬の有意な優越性を認めた。非常に限られたエビデンスは、競争的記憶トレーニング、高齢者在宅治療グループ、および超然としたマインドフルネス状態が抑うつ症状を軽減することを示した。
     うつ病を持つ高齢患者において、いくつかの抗うつ薬とクエチアピンは有効であると示されたが、比較するにはデータが少ないため結果は強固なものとは言えない。分析された複数の副作用の相違も薬剤選択の際に考慮されるべきである。一部の非薬理学的治療について有意な効果を認めたものの、小さなサンプルサイズを持つ少数の試験に基づくため、うつ病における非薬理学的治療の全体的なエビデンスは不十分である。

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精神病リスク症候群における聴覚性オドボール刺激へのP300反応と臨床的帰結の関連
    Holly K. Hamilton et al. JAMA Psychiatry. Published online August 7, 2019.
    Association Between P300 Responses to Auditory Oddball Stimuli and Clinical Outcomes in the Psychosis Risk Syndrome

    キーポイント:
    <疑問>
     精神病リスク症候群を持つ若者において、聴覚性P300事象関連電位振幅は将来の臨床的帰結と関連するか。
    <結果>
     この精神病リスク症候群の基準を満たす552人からなる8施設での症例対照研究において、新規オドボール刺激ではなくベースライン時点の標的P300振幅のより大きな欠損が精神病への移行、およびこの移行の切迫性と関連した。2年後に精神病へ移行せずにリスク症候群からの寛解を達成した人は、ベースラインの標的P300振幅が正常であった。
    <意義>
     結果は、P300が精神病リスク症候群において推定される臨床的帰結の予後バイオマーカーであることを示す。

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注意欠如・多動症を持つ子供と大人における早期死亡と併存精神疾患の関連
    Shihua Sun et al. JAMA Psychiatry. Published online August 7, 2019.
    Association of Psychiatric Comorbidity With the Risk of Premature Death Among Children and Adults With Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder.

    キーポイント:
    <疑問>
     注意欠如・多動症(attention-deficit/hyperactivity disorder、ADHD)は早期死亡と関連するか、併存精神疾患の役割は何か。
    <結果>
     このADHDを持つ86,670人から構成されるスウェーデンの登録データのコホート研究において、ADHDは早期死亡リスクの上昇と関連し、併存精神疾患は成人においてあらゆる原因と特定の原因による(死亡との)関連について重要な役割を演じた。早期発症の併存精神疾患は自然死と主に関連し、晩期発症の併存精神疾患は自殺と不慮の負傷を含む非自然的原因による死亡と主に関連した。
    <意義>
     これらの結果は、高リスク群を特定して予防努力を遂行するために、ヘルスケアの専門家はADHDを持つ人の特定の併存精神疾患を綿密に監視する必要があることを示す。

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難民における精神病リスク:系統的レビューとメタ解析
    Lasse Brandt et al. JAMA Psychiatry. Published online August 14, 2019.
    Risk of Psychosis Among Refugees: A Systematic Review and Meta-analysis.

    キーポイント:
    <疑問>
     難民における非感情病性精神病の発症率は、難民ホスト国の先住民や難民でない移民と比べて高いか。
    <結果>
     この9つの研究の系統的レビューとメタ解析において、難民ホスト国の先住民や難民でない移民と比較して、難民は非感情病性精神病を発症する相対リスクがより高かった。バイアスリスクの低い研究において、難民の相対リスクは難民でない移民に対しては1.39、先住民に対しては2.41まで統計的に有意に増加したが、利用可能なエビデンスは欧米のホスト国に限られた。
    <意義>
     難民経験は、移民における非感情病性精神病の独立したリスク因子である可能性があり、この集団のための精神医学的予防戦略とアウトリーチ計画の必要性を示す。

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若者における注意欠如・多動症の遺伝・環境リスクと軽躁症状の関連
    Georgina M. Hosang et al. JAMA Psychiatry. Published online August 14, 2019.
    Association of Genetic and Environmental Risks for Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder With Hypomanic Symptoms in Youths

    キーポイント:
    <疑問>
     若者では注意欠如・多動症と軽躁病の症状は遺伝・環境リスクを共有するか。
    <結果>
     この登録時に9歳から12歳の13,532人のスウェーデン双生児ペア研究において、軽躁症状の分散の最大29%が、注意欠如・多動症特性と共有される遺伝リスク因子と関連し、同定された推定値は注意欠如・多動症の不注意症状領域(最大16%)と比較して多動-衝動性症状領域(最大25%)で高かった。
    <意義>
     注意欠如・多動症と軽躁症状は類似の遺伝因子と関連するようである。

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アラン・チューリングはアスペルガー症候群であったか
    Henry O'Connell & Michael Fitzgerald. Irish Journal of Psychological Medicine 2003; 20: 28-31.
    Did Alan Turing have Asperger's syndrome?

    論文要約:
     アラン・チューリングは1912年6月23日にロンドンのパディントンで生まれ、家庭は中流階級で裕福であった。幼少期から科学に魅了され、特に化学と数学の領域において早熟な才能を示した。シャーバーン・パブリックスクール(Sherbourne Public School)からケンブリッジ大学のキングス・カレッジ(King's College)に入学し、そこで数学を勉強した。ケンブリッジにおける彼の関心領域は、確率論(probability theory)と数理論理学(mathematical logic)であった。ケンブリッジにおいて彼は初めて、万能チューリングマシン(Universal Turing Machine)、つまり後に計算の現代的理論につながるアイデアを概念化した。今や彼はコンピュータの生みの親とされている。
     1936年から1938年まで、彼はプリンストン大学で暗号機(cipher machine)について研究した。第2次世界大戦中はイギリス政府のために、ブレッチレイ・パーク(Bletchley Park)の暗号作成と解読のための特別な教育機関(the Government Code and Cipher School)で働いた。彼は最終的にエニグマ(Enigma、訳注:解読不可能と言われたドイツの暗号)解読の立役者となった。戦後、彼はマンチェスター大学にポストを得て、人工知能のアイデアについて仕事を続けた。彼は1952年に逮捕、同性愛行為(homosexual activity)の罪で訴追され、エストロゲン治療のコースを受けたが、1954年に自殺した。
     彼は同僚や友人から非社交的な変わり者とされた。数学、化学、そして論理学に幼少期から興味を持つ一方で、他の活動は排除した。本論文は、彼がアスペルガー症候群の基準を満たすか否かを立証することを目的とする。

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単極うつ病に対する電気けいれん療法後の自殺と再入院の予防のためのリチウム:住民登録研究
    Brus O et al. BJPsych Open. 2019 May; 5(3):e46.
    Lithium for suicide and readmission prevention after electroconvulsive therapy for unipolar depression: population-based register study.

    論文要旨:
    <背景>
     電気けいれん療法(electroconvulsive therapy、ECT)は単極うつ病に有効であるが、再発と自殺が重要な課題である。リチウムはこれらのリスクを低下させる潜在的可能性があるが、ごく一部の患者にしか使用されない。
    <目的>
     この研究は自殺と再入院のリスクに対するリチウムの効果を定量化して、再入院と自殺に関連する要因を特定する。
    <方法>
     この住民登録研究は、ECTについてのスウェーデン国民クオリティ登録(Swedish National Quality Register)と他のスウェーデンの国民登録からのデータを用いた。2011年から2016年の間に入院患者として単極うつ病に対するECTを受けた患者が、死亡、病院への再入院、または2016年末の研究終了時まで経過観察された。Cox回帰が、調整モデルにおける再入院と自殺のハザード比(hazard ratios、HR)を推定するために使われた。
    <結果>
     7,350人の患者のうち、56人が自殺で死亡し、4,203人が再入院した。リチウムは638人(9%)の患者に処方されていた。平均観察期間は1.4年であった。リチウムは自殺(P = 0.014)および再入院(HR 0.84 95% CI 0.75-0.93)のより低いリスクと有意に関連した。リチウムを用いて1つの再入院を予防するのに必要な治療数(NNT)は16であった。
     加えて、次に述べる要因が自殺と統計的に関連した:男性、未亡人であること、物質使用障害、および自殺企図の既往。
     再入院は若年、離婚または失業、併存不安障害、非精神病性うつ病、ECT後のより重度な症状、ECTに非反応、継続ECTまたは抗うつ薬を受けていない、抗精神病薬、抗不安薬、またはベンゾジアゼピンの利用、薬物抵抗性が重度、および過去の入院回数と関連した
    <結論>
     より多くの患者がリチウム治療から利益を得ることができるだろう。

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うつ病の再発予防のための薬物療法を併用した継続電気けいれん療法と薬物療法単独の比較:ランダム化比較試験
    Nordenskjöld A et al. J ECT. 2013 Jun;29(2):86-92.
    Continuation electroconvulsive therapy with pharmacotherapy versus pharmacotherapy alone for prevention of relapse of depression: a randomized controlled trial.

    論文要旨:
    <目的>
     本研究の主たる目的は、「薬物療法を併用した継続電気けいれん療法(ECT)による再発予防は薬物療法単独よりも有効である」とする仮説を検証することであった。
    <方法>
     2並行群を持つ多施設共同・非盲検化・ランダム化比較試験が、2008年から2012年にスウェーデンの4つの病院で行われた。単極または双極うつ病を持ち、ECT治療コースに反応した患者が適格とされた。患者(n = 56)は、1年間の薬物療法を併用した29回の継続ECT、または薬物療法単独のいずれかに無作為、均等(1:1)に割り付けられた。薬物療法は抗うつ薬(98%)、リチウム(56%)、そして抗精神病薬(30%)で構成された。主要アウトカムは1年以内のうつ病の再発であった。再発はMontgomery Åsbergうつ病評価尺度で20ポイント以上、または精神科入院治療、または自殺の疑いと定義された。ランダム化された56人すべての患者が包括解析(intention to treat、ITT)された。
    <結果>
     1年以内に薬物療法で治療された患者の61%、ECTに薬物療法を併用して治療された患者の32%が再発した(P = 0.036)。Cox比例ハザード比は2.32(1.03-5.22)であった。両群の再発しなかった患者について、認知機能と記憶測定は安定していた。中毒による1件の自殺の疑いと3件の自殺企図が生じたが、全件が薬物療法単独群においてであった。
    <結論>
     ECT後の再発は両治療群でかなり高かったが、薬物療法と継続ECTの併用治療に統計的に有意な優位性があった。継続ECT、薬物療法、およびそれらの併用の適応を定めるために、さらなる研究が必要である。

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精神病性うつ病に対するオランザピンとセルトラリン、およびオランザピンとプラセボの二重盲検・ランダム化比較試験:精神病性うつ病の薬物療法研究(STOP-PD)
    Meyers BS et al. Arch Gen Psychiatry 2009; 66(8): 838-47.
    A double-blind randomized controlled trial of olanzapine plus sertraline vs olanzapine plus placebo for psychotic depression: the study of pharmacotherapy of psychotic depression (STOP-PD).

    論文要旨:
    <背景>
     精神病性の特徴を伴う大うつ病を持つ患者の併用薬物療法の有効性に関するエビデンスは限られていて、肯定的試験はない。
    <目的>
     非定型抗精神病薬とセロトニン再取り込み阻害薬の併用で治療された患者と抗精神病薬の単剤療法で治療された患者において、精神病性の特徴を伴う大うつ病の寛解率を比較すること。
    <デザイン>
     12週の二重盲検・ランダム化比較試験。
    <設定>
     4つの大学施設の臨床部門において、精神病性の特徴を伴う大うつ病を持つ259人の患者が年齢(60歳未満、または60歳以上)(117人の若年成人においては平均 [標準偏差 (SD)], 41.3 [10.8] 歳;142の高齢参加者においては71.7 [7.8] 歳)でランダム化。介入標的用量はオランザピン1日15㎎から20㎎に加えてセルトラリン、またはプラセボを1日150㎎から200㎎、主要評価項目は精神病性の特徴を伴ううつ病の寛解率であった。
    <結果>
     オランザピンとセルトラリンを用いた治療は、オランザピンとプラセボより高い試験中の寛解率と関係した(オッズ比 [OR], 1.28; 95% 信頼区間 [CI], 1.12-1.47; P < .001)。単剤療法で治療された被験者の23.9%と比較して、併用療法を受けた被験者の41.9%が最終評価時に寛解した(カイ二乗(1) = 9.53, P = .002)。
     併用療法は若年成人(OR, 1.25; 95% CI, 1.05-1.50; P = .02)と高齢成人(OR, 1.34; 95% CI, 1.09-1.66; P = .01)の両方において同程度に優れ、全体として忍容性は両年齢群で同程度であった。両年齢群でコレステロール濃度と中性脂肪濃度は上昇したが、統計的に有意な増加は若年成人においてのみ発生した。若年成人は高齢被験者より有意に体重が増加した(平均 [標準偏差], 6.5 [6.6] kg vs 3.3 [4.9] kg, P = .001)。
    <結論>
     併用薬物療法は、精神病性の特徴を持つ大うつ病の治療に有効である。今後の研究は、12週間を超えて非定型抗精神病薬を続ける利益とリスクを確認すべきである。
    <試験登録>
     clinicaltrials.gov Identifier: NCT00056472.

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寛解した精神病性うつ病の固定化治療:STOP-PD研究
    Bingham KS et al. Acta Psychiatr Scand 2018; 138(3): 267-273.
    Stabilization treatment of remitted psychotic depression: the STOP-PD study.

    論文要旨:
    <目的>
     我々は寛解した精神病性うつ病を持つ患者において、12週間の固定化薬物療法の二重盲検研究を行った。
    <方法>
     オランザピンとセルトラリン、またはオランザピンとプラセボにランダム化された際に精神病性うつ病の寛解を達成した18歳以上の71人の患者が、寛解に関連する二重盲検治療を継続した。うつ病と精神病の症状と体重が4週間ごとに測定された。コレステロール、中性脂肪、およびグルコースが固定化段階のベースラインと第12週(終了時)に測定された。
    <結果>
     固定化段階のうつ病、体重、または代謝測定について、時間経過と共に治療効果が有意に変化することはなかった。71人の参加者のうち8人(11.3%; 95% CI: 5.8, 20.7)が大うつ病、精神病、またはその両方の再発を経験した。治療群は再発頻度において違いはなかった。治療群全体で、体重変化の調整後推定値は12週の固定化段階の間で1.66 kg (95% CI: 0.83, 2.48)の増加、総コレステロール変化の調整後推定値は14.8 mg/dL (95% CI: 3.5, 26.1)の減少であった。残りの代謝測定に有意な変化はなかった。
    <結論>
     急性期治療の継続は寛解の固定と関連した。
    <試験登録>
     ClinicalTrials.gov NCT00056472.

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寛解中の精神病性うつ病を持つ患者の再発に対するプラセボと比較したオランザピン継続の効果:STOP-PD IIランダム化臨床試験
    Alastair J. Flint et al. JAMA. 2019; 322(7):622-631.
    Effect of Continuing Olanzapine vs Placebo on Relapse Among Patients With Psychotic Depression in Remission: The STOP-PD II Randomized Clinical Trial.

    キーポイント:
    <疑問>
     寛解中の精神病性うつ病を持つ患者において、抗精神病薬の継続は再発のリスクを低下させるか。
    <結果>
     この18歳以上の126人の患者を含む36週間のランダム化臨床試験において、セルトラリン+オランザピンにランダム化された13人の参加者(20.3%)と、セルトラリン+プラセボにランダム化された34人(54.8%)の参加者が再発を経験し、その差は統計的に有意であった。
    <意義>
     寛解中の精神病性うつ病を持つ患者について、オランザピンの継続は36週間にわたって再発リスクを低下させた。

    論文要旨:
    <重要性>
     精神病性うつ病は重度の能力低下を引き起こす致死的にもなり得る障害であるが、寛解中の精神病性うつ病を持つ患者における抗精神病薬継続の有効性と忍容性は不明である。
    <目的>
     精神病性うつ病のエピソードが抗うつ薬と抗精神病薬の併用療法に反応した時点で、抗精神病薬継続の臨床効果を確認すること。
    <デザイン・設定・参加者>
     36週間のランダム化臨床試験が4つの大学メディカルセンターで実施された。患者は18歳以上で、精神病性のうつ病エピソードに対する最長12週間の急性期治療をセルトラリンとオランザピンで行い、臨床試験参加前の8週間に精神病の寛解と抑うつ症状の寛解または準寛解の基準を満たした。研究は2011年11月から2017年6月に実施され、経過観察最終日は2017年6月13日であった。
    <介入>
     参加者はオランザピンを継続する(n = 64)、またはオランザピンからプラセボに切り換える(n = 62)にランダム化された。すべての参加者がセルトラリンを継続した。
    <主要評価項目>
     主要アウトカムは再発リスク、主な副次アウトカムは体重、ウエスト径、脂質、血清グルコース、およびヘモグロビンA1c(HbA1c)であった。
    <結果>
     ランダム化された126人の患者(平均 [標準偏差] 年齢, 55.3 歳 [14.9 歳]; 78人 [61.9%] が女性)のうち、114人(90.5%)が試験を完遂した。ランダム化の時点で、セルトラリン用量の中央値は150 mg/d(四分位範囲 [IQR], 150-200 mg/d)、オランザピン用量の中央値は15 mg/d(IQR, 10-20 mg/d)であった。
     セルトラリン+オランザピンにランダム化された13人の参加者(20.3%)、セルトラリン+プラセボにランダム化された34人(54.8%)の参加者が再発を経験した(ハザード比, 0.25; 95% CI, 0.13 to 0.48; P < .001)。
     身体および代謝測定の1日当たりの値に対するオランザピンの効果は、体重 (0.13 lb; 95% CI, 0.11 to 0.15)、ウエスト径 (0.009 インチ; 95% CI, 0.004 to 0.014)、および総コレステロール (0.29 mg/dL; 95% CI, 0.13 to 0.45)については、プラセボと有意に異なった。
     LDLコレステロール (0.04 mg/dL; 95% CI, −0.01 to 0.10)、HDLコレステロール (−0.01 mg/dL; 95% CI, −0.03 to 0.01)、中性脂肪 (−0.153 mg/dL; 95% CI, −0.306 to 0.004)、グルコース (−0.02 mg/dL; 95% CI, −0.12 to 0.08)、HbA1c レベル (−0.0002 mg/dL; 95% CI, −0.0021 to 0.0016)については、プラセボと有意差なかった。
    <結論と関連性>
     寛解中の精神病性うつ病を持つ患者において、セルトラリンとプラセボと比較してセルトラリンとオランザピンの継続は、36週間にわたり再発リスクを低下させた。このメリットは体重増加を含むオランザピンの潜在的有害作用とバランスをとる必要がある。
    <試験登録>
     ClinicalTrials.gov Identifier: NCT01427608

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自閉症を持つ人と持たない人を比較した研究の効果量の経時変化:メタ解析
    Eya-Mist Rødgaard et al. JAMA Psychiatry. Published online August 21, 2019.
    Temporal Changes in Effect Sizes of Studies Comparing Individuals With and Without Autism: A Meta-analysis.

    キーポイント:
    <疑問>
     過去数十年間で、自閉症を持つ人と持たない人の群レベルの差の効果量は減少したか。
    <結果>
     11のメタ解析の本メタ解析において、自閉症群と対照群の7つの明確な群間差の効果量は時間と共に減少し、その減少傾向は7つのうち5つ(訳注:情動認知、心の理論、プランニング、P3bの振幅、脳の大きさ)において統計的に有意であった。
    <意義>
     結果は、自閉症を持つ人と持たない人の差が時間と共に減少したことを示し、それは診断行為の変化と関連している可能性がある。

    *備考:自閉症と同じく異質性はあるが有病率の上昇は報告されていない統合失調症において、心の理論、抑制(ストループ課題)、灰白質体積の効果量に有意な経時変化はなかった。

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臨床的に意味のある心的外傷後ストレス障害の改善と2型糖尿病のリスクとの関連
    Jeffrey F. Scherrer et al. JAMA Psychiatry. Published online August 21, 2019.
    Association Between Clinically Meaningful Posttraumatic Stress Disorder Improvement and Risk of Type 2 Diabetes

    キーポイント:
    <疑問>
     臨床的に意味のある心的外傷後ストレス障害(PTSD)症状の低下(PTSDチェックリスト得点において20ポイント以上の低下)は、臨床的意義が乏しい改善または改善なしと比較して、より低い偶発2型糖尿病のリスクと関連するか。
    <結果>
     この1,598人の診療録からのコホート研究において、臨床的に意味のあるPTSDの改善は、臨床的意義が乏しい改善または改善なしと比較して、49%の偶発2型糖尿病リスクの減少と関連した。
    <意義>
     PTSDと関係する長期の慢性健康問題は、治療や自然回復による臨床的に意味のある症状軽減を経験した患者ではより少ないかもしれない。

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深層学習を用いた心理療法の内容と臨床転帰の関連の定量化
    Michael P. Ewbank et al. JAMA Psychiatry. Published online August 22, 2019.
    Quantifying the Association Between Psychotherapy Content and Clinical Outcomes Using Deep Learning.

    キーポイント:
    <疑問>
     心理療法の内容のどの側面が臨床転帰と有意に関連するか。
    <結果>
     この質改善研究において、深層学習モデルがおよそ90,000時間のインターネットで利用可能な認知行動療法(CBT)からの治療者の発語を自動的に分類するように訓練された。CBTの変化技法の量の増加は、患者の症状の信頼できる改善と正に関連し、治療とは関係しない内容の量は負の関連を示した。
    <意義>
     この結果は治療としてのCBTの背景にある重要な原則を支持し、深層学習の大規模臨床データへの適用が心理療法の有効性に価値ある洞察を提供することができることを示す。

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自閉スペクトラム症の中核的社交症状に対する鼻腔投与オキシトシンの効果:ランダム化比較試験
    Yamasue H et al. Mol Psychiatry, Published: 29 June 2018.
    Effect of intranasal oxytocin on the core social symptoms of autism spectrum disorder: a randomized clinical trial.

    論文要旨:
     小規模の研究が自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder、ASD)における社会性の欠損に対するオキシトシンの効果を記述しているものの、大規模な研究は実施されていない。この日本におけるランダム化・並行群・多施設共同・プラセボ対照・二重盲検試験において、2015年1月から2016年3月にASDを持つ106人(18~48歳)が登録された。参加者は6週間の鼻腔投与オキシトシン(48IU/day, n = 53)、またはプラセボ群(n = 53)に無作為に割り付けられ、103人の参加者が分析された。
     オキシトシンは主要エンドポイントであるAutism Diagnostic Observation Schedule (ADOS)の相互的対人関係(reciprocity)得点を有意に低下させたが(from 8.5 to 7.7; P < .001)、プラセボも有意に低下させたので(8.3 to 7.2; P < .001)、群間差は認めなかった(効果量 -0.08; 95% 信頼区間, -0.46 to 0.31; P = .69)。しかし、血漿オキシトシンはプラセボ群と比較してオキシトシン群のみでベースラインからエンドポイントまで上昇した(効果量 -1.12; -1.53 to -0.70; P < .0001)。
     副次エンドポイントでは、オキシトシン(2.0 to 1.5; P < .0001)はプラセボ(2.0 to 1.8; P = .43)と比較して、ADOSの反復的行動(repetitive behavior)を有意に軽減させた(効果量 0.44; 0.05 to 0.83; P = .026)。もう一つの副次エンドポイントである社会的に意味がある領域に対する凝視時間は、プラセボ(45.7 to 40.4; P = .25)と比較してオキシトシン(41.2 to 52.3; P = .03)で増加した(効果量 0.55; 0.10 to 1.0; P = .018)。他の副次エンドポイントについては有意な効果を認めなかった。1人の参加者がオキシトシン投与後に一時的な女性化乳房を経験したものの、有害事象の有病率に有意な群間差を認めなかった。
     今回の結果に基づくと、成人男性における高機能ASDの中核的社交症状の治療に、現行の用量と期間でオキシトシンを継続的に単独で鼻腔投与することは推奨できない。

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カナダにおける妊娠中の母親のフッ化物曝露と子の知能指数スコアの関連
    Rivka Green et al. JAMA Pediatr. Published online August 19, 2019.
    Association Between Maternal Fluoride Exposure During Pregnancy and IQ Scores in Offspring in Canada.

    キーポイント:
    <疑問>
     フッ素を最適に添加された水を供給されたカナダのコホートにおいて、妊娠中の母親のフッ化物曝露は小児期の知能指数(IQ)と関連するか。
    <結果>
     この前向き出生コホート研究において、妊娠中のフッ化物への曝露は3~4歳の子供におけるより低いIQスコアと関連した。
    <意義>
     妊娠中のフッ化物曝露は子供の知的発達への悪影響と関連する可能性があり、妊娠中のフッ化物摂取を減らす必要があるかもしれない。

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レストレスレッグス症候群と自殺および自傷のリスク
    Sheng Zhuang et al. JAMA Netw Open 2019; 2(8): e199966.
    Association of Restless Legs Syndrome With Risk of Suicide and Self-harm.

    キーポイント:
    <疑問>
     レストレスレッグス症候群は自殺および自傷の高リスクと関連するか。
    <結果>
     16万9,373人の参加者を含むコホート研究において、レストレスレッグス症候群を持つ人は、年齢と性別を合致させたレストレスレッグス症候群のない参加者より高い自殺および自傷のリスクと関連した。リスクの増加は一般身体疾患とは関係しなかった。
    <意義>
     レストレスレッグス症候群は自殺および自傷のリスクの増加と関連する。
 


精神疾患における診断横断的プロセスとしての遅延割引:メタ解析
    Michael Amlung et al. JAMA Psychiatry. Published online August 28, 2019.
    Delay Discounting as a Transdiagnostic Process in Psychiatric Disorders: A Meta-analysis.

    キーポイント:
    <疑問>
    遅延割引(delay discounting)は精神疾患における診断横断的プロセスか。
    <結果>
     この8つの診断カテゴリーにわたる43研究からの57効果量のメタ解析において、精神疾患を持つ人と対照の間に遅延割引の頑強な差異が観察された。精神疾患(うつ病、双極性障害、統合失調症、境界性パーソナリティ障害、神経性過食症、過食性障害を含む)を持つ大部分の人は対照より大幅な割引(steeper discounting)を示したが、神経性やせ症を持つ人は対照より小幅な割引(shallower discounting)を示した。
    <意義>
     本研究からのエビデンスは、遅延割引の意思決定は広範囲の精神疾患にわたる頑強な診断横断的プロセスであり、実行可能な治療介入目標である可能性を示す。

    コメント:
     遅延割引の概念では、得られるまでに時間を要するような報酬は、その個体内において実際の量や金額よりも時間に応じて割り引かれて評価される。遅延を伴う報酬が複数ある場合、どれを選択するかは、時間に応じて割り引かれた後の報酬価がより大きいものを選択することになる(小野田慶一ら. 脳と精神の医学 2009; 20(3): 249)。
 


早期介入精神保健サービスを利用した不安、気分、および精神病性障害を持つ12~25歳の人における臨床病期の移行
    Frank Iorfino et al. JAMA Psychiatry. Published online August 28, 2019.
    Clinical Stage Transitions in Persons Aged 12 to 25 Years Presenting to Early Intervention Mental Health Services With Anxiety, Mood, and Psychotic Disorders.

    キーポイント:
    <疑問>
     どの人口統計的・臨床的因子が、早期(閾値以下)の精神疾患から閾値を満たす主要な持続的または反復的精神疾患への移行と関連するか。
    <結果>
     この早期介入精神保健サービスを利用した12~25歳の人の縦断的コホート研究において、主要な不安、気分、精神病性、または併存障害への有意かつ継続的な移行を認めた。より低い社会機能、精神病様の体験、躁病様の体験、および概日リズムの障害が病気の進行と関連した。
    <意義>
     特定の若者サービスのための臨床病期モデルは、若者への適切なケアの効率的配分と、関連の早期介入、および二次予防戦略の根拠に基づく計画立案を支援するかもしれない。
 


表情の定量分析によって示された自閉症におけるオキシトシンの有効性と時間経過
    Owada K et al. Brain. Published: 16 May 2019.
    Quantitative facial expression analysis revealed the efficacy and time course of oxytocin in autism.

    論文要旨:
     自閉スペクトラム症に対するオキシトシンの単回投与と反復投与の有効性の相違は、研究者をもってしてペプチドホルモンの反復投与によって有効性の時間経過に変化が誘導されるとする仮説に導いた。しかし、自閉スペクトラム症の中核症状の繰り返し可能で客観的な定量測定がないことが、有効性の時間経過の潜在的変化を調べることを困難にさせている。我々は、自閉スペクトラム症の中核症状の繰り返し可能で客観的な定量測定を用いてこの仮説を検証した。
     自閉スペクトラム症を持つ成人男性に対するオキシトシン(48 IU/day)の鼻腔内反復投与の一施設での探索(n = 18, 被験者内交差デザイン)および多施設での確認(n = 106, 並行群デザイン)二重盲検・プラセボ比較・6週間の試験において、我々は主要アウトカムとして施行された半構造化社会的相互作用中のビデオ記録を調べた。主要アウトカムは、ADOSの繰り返し可能なパートにおける客観的に定量された表情強度の統計代表値:中性表情と幸福表情の各々の確率密度関数上の最大確率(すなわち最頻値[mode])とそれら最頻値の自然対数であった。
     我々の今回の研究は、これらの指標の増加が定型神経発達者との比較において自閉症の表情を特徴付けることを明らかにした。結果は探索試験(Effect size, -0.57; 95% CI, -1.27 to 0.13; P = 0.023)と確認試験(-0.41; -0.62 to -0.20; P < 0.001)において、中性表情の確率密度関数上の増加した最頻値の自然対数を、プラセボと比較してオキシトシンが一貫して有意に減少させたことを明らかにした。確認試験において、時間経過(ベースライン、2週、4週、6週、8週)と中性表情の確率密度関数上の最頻値の自然対数に対するオキシトシンの有効性の間に有意な交互作用が認められた(P < 0.001)。
     事後解析は2週(P < 0.001, Cohen's d = -0.78; 95% CI, -1.21 to -0.35)における最大効果と4週(P = 0.042, Cohen's d = -0.46; 95% CI, -0.90 to -0.01)および6週(P = 0.10, Cohen's d = -0.35; 95% CI, -0.77 to 0.08)における効果減弱を明らかにしたが、その一方で効果は治療後2週、すなわち8週(P < 0.001, Cohen's d = -1.24; 95% CI, -1.71 to -0.78)において維持された。
    表情の定量分析は、自閉症者の表情に対するオキシトシン反復の好ましい効果を実証し、効果の時間経過の変化を示した。本結果はオキシトシン治療の最適な投与計画のさらなる開発を支持する。
 


うつ病における選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の効果に対するベースライン重症度の影響:症状項目ごとの患者レベルの事後解析
    Fredrik Hieronymus et al. Lancet Psychiatry 2019; 6(9):745-752.
    Influence of baseline severity on the effects of SSRIs in depression: an item-based, patient-level post-hoc analysis.

    論文要旨:
    <背景>
     「抗うつ薬は重症うつ病を持つ患者においてのみ有効である」と主張する報告が治療ガイドラインに影響を与えてきたが、通常これらの報告は、争点となっている改善の測定、すなわち17項目のハミルトンうつ病評価尺度(the 17-item Hamilton Depression Rating Scale、HDRS-17)を使用して、患者レベルよりはむしろグループレベルのデータに基づく。
    <方法>
     我々はこの項目ごとの患者レベルの事後解析において、成人の大うつ病における選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、シタロプラム、パロキセチン、またはセルトラリンのすべての完了した急性期、プラセボ対照、企業出資のHDRSに基づく試験からのデータを統合した。HDRS-17の合計スコア、HDRSの抑うつ気分項目、6項目のHDRS下位尺度(HDRS-6、訳注:メランコリアの特徴とされる以下の6項目、depressed mood 抑うつ気分、feelings of guilt 罪責感、work and interest 仕事と興味、psychic anxiety 精神的不安、general somatic symptoms 一般的身体症状、psychomotor retardation 精神運動抑制)、およびこの下位尺度に含まれない残りの11項目のHDRS(非HDRS-6)を用いて評価された治療反応に対するベースライン重症度の効果を評価するために、患者レベルのデータが統合され項目ごとの事後解析に使用された。患者はベースラインのHDRS-17の合計スコアが18点以下であった場合は非重症うつ病を、27点以上であった場合は重症うつ病を持つと定義された。
    <結果>
     我々の研究母集団は、28のプラセボ対照SSRI試験からの患者8,262人から構成された。参加者はシタロプラム(n=744)、パロキセチン(n=2,981)、セルトラリン(n=1,202)、フルオキセチン(実薬対照群; n=754)、またはプラセボ(n=2,581)で治療された。654人の患者が非重症うつ病を、1,377人の患者が重症うつ病を持つと定義された。SSRIによる抑うつ気分とHDRS-6下位尺度に含まれる他のHDRS症状の軽減に関して、非重症うつ病を持つ患者と重症うつ病を持つ患者に違いはなかった。しかし、稀で極端なベースライン値を持つ患者を除外した後は、効果変数としてHDRS-17合計スコアを用いた場合の有効性と重症度の間に正の関連を認めた。この結果は非HDRS-6項目に関して、非重症うつ病を持つ患者と比べて、重症うつ病を持つ患者におけるより大きな治療反応に概ね由来した。
     この帰結はHDRS-6項目よりも非HDRS-6項目(非重症ケースと比べて重症ケースのベースラインでより重度かつ広範)によって説明されるかもしれない。従って、非重症うつ病を持つ患者では、これら領域(HDRS-6項目)における改善の余地はより少ない。
    <解釈>
     非重症うつ病を持つ患者のベースラインで低いと評点された症状を含むアウトカム測定を用いると、これらの患者ではSSRIは有効ではないと解釈されるかもしれない。HDRS-6項目の軽減に関しては、SSRIは重症うつ病を持つ患者と同様に、非重症うつ病を持つ患者でも有効と考えられる。
    <資金>
     Swedish Medical Research Council, AFA Insurance, Swedish Brain Foundation, Sahlgrenska University Hospital (Avtal om Läkarutbildning och Forskning), Bertil Hållsten's Foundation, and Söderberg's Foundation.
 


うつ病の異質性解析:よく使われるうつ病評価尺度の探索的因子分析
    Ballard ED et al. J Affect Disord 2018; 231: 51-57.
    Parsing the heterogeneity of depression: An exploratory factor analysis across commonly used depression rating scales.

    ハイライト:
    • うつ病は多様な症状を示す不均一な障害である。
    • うつ病評価尺度は複数の構成概念を捉えている可能性がある。
    • この因子分析はうつ病の臨床試験でよく使われる評価尺度を調べた。
    • 同定された構成概念はケタミンに対して異なる反応を示した。
    • その構成概念はうつ病の神経生物学の研究に役立つかもしれない。

    論文要旨:
    <背景>
     抑うつ気分、アンヘドニア(快感消失)、否定的な認知の歪み、および活動レベルの変化を含む抑うつ症状の異質性のため、しばしば研究者は症状を評価するためにうつ病評価尺度を組み合わせて用いる。この研究はうつ病の評価尺度横断的な単次元構成概念を同定して、即効性の抗うつ薬(ケタミン)の臨床試験にわたるこれら構成概念を評価することを目的とした。
    <方法>
     ベック抑うつ質問票(Beck Depression Inventory、BDI)、ハミルトンうつ病評価尺度(Hamilton Depression Rating Scale、HAM-D)、Montgomery Asbergうつ病評価尺(Montgomery-Asberg Depression Rating Scale、MADRS)、およびSnaith Hamilton喜び評価尺度(Snaith-Hamilton Pleasure Rating Scale、SHAPS)のベースライン評価に関して、探索的因子分析(Exploratory factor analysis、EFA)が行われた。うつ病/大うつ病性障害(n = 76)または双極うつ病(n = 43)を持つ入院患者が、ケタミンの臨床試験に参加していた。結果として得られた単次元スコアの推移が、ケタミンの臨床試験に参加した双極うつ病を持つ41人の被験者において評価された。
    <結果>
     データへの極めて良い適合を示した最適解は、抑うつ気分(Depressed Mood)、緊張(Tension)、否定的認知(Negative Cognition)、睡眠障害(Impaired Sleep)、自殺念慮(Suicidal Thoughts)、食欲低下(Reduced Appetite)、快感消失(Anhedonia)、および無気力(Amotivation)の8因子から構成された。治療効果(ケタミン 対 プラセボ)とプラセボ反応の程度の両方において、多様な反応パターンが臨床試験データにわたって観察されたことは、これらの単次元構成概念の使用が、個別の尺度をこれまでのやり方で採点するのでは観察されないパターンを明らかにする可能性を示唆する。
    <限界>
     限界には1)小サンプル(および測定不変の確認ができない)、2)因子構造の確認のための独立サンプルの欠損、3)母集団の治療抵抗性の特徴が含まれ、それらは一般化を制約し得る。
    <結論>
     単次元構成概念の経験的同定により、特定の症状と背景の精神病理の関連を解明する可能性があるより洗練されたスコアが生み出される。
    <試験登録>
     ClinicalTrials.gov NCT00088699.
 


重度精神疾患を持つ人のための認知矯正療法と仕事に焦点化した社会技能訓練で補完された個別型援助付き雇用の効果:ランダム化臨床試験
    Christensen TN et al. JAMA Psychiatry. Published online September 4, 2019.
    Effects of Individual Placement and Support Supplemented With Cognitive Remediation and Work-Focused Social Skills Training for People With Severe Mental Illness: A Randomized Clinical Trial.

    キーポイント:
    <疑問>
     デンマークにおける重度精神疾患を持つ人のための個別型援助付き雇用、認知矯正療法と仕事に焦点化した社会技能訓練で補完された個別型援助付き雇用、および従来のサービスの効果はどれ程か。
    <結果>
     この重度精神疾患を持つ成人720人のランダム化臨床試験において、競争的雇用と教育を達成した人の割合はIPSで59.9%、強化IPSを受けた人では59.1%、従来のサービスを受けた人では46.5%であった。
    <意義>
     IPSと強化IPSは、デンマークにおいて重度精神疾患を持つ人の雇用と教育を増加させる実行可能な方法であるが、認知矯正療法と仕事に焦点化した社会技能訓練で補完されたIPSによる付加的効果は認められなかった。
 


重度精神疾患を持つ人における心血管死に先立つ未診断の心血管疾患
    Heiberg IH et al. Acta Psychiatr Scand 2019; 139(6): 558-571.
    Undiagnosed cardiovascular disease prior to cardiovascular death in individuals with severe mental illness.

    論文要旨:
    <目的>
     統合失調症または双極性障害を持つ人が、それらを持たない人と比較して、心血管死に先立って心血管疾患を診断されない可能性は同等か否かを調べる。
    <方法>
     2011-2016年の72,451心血管死の全国データを含む多変量ロジスティック回帰分析。この中に、一次または専門医療における814の統合失調症診断、673の双極性障害診断を認めた。
    <結果>
     重度精神疾患を持たない人と比較して、統合失調症を持つ人は66%(OR: 1.66; 95% CI: 1.39-1.98)、双極性障害を持つ女性は38%(adjusted OR: 1.38; 95% CI: 1.04-1.82)、心血管死に先立って心血管疾患を診断されない可能性が高かったが、双極性障害を持つ男性では同等であった(OR: 0.88, 95% CI: 0.63-1.24)。重度精神疾患と未診断の心血管疾患を持つ人のほとんど全員(98%)が、死亡前に一次または専門身体医療を受けていた。心血管疾患で死亡したそれ以外の人では88%であった。
    <結論>
     統合失調症を持つ人と双極性障害を持つ女性は、心血管疾患の高いリスクのために多くの一次および専門身体医療を受けるにもかかわらず、未診断の心血管疾患によって死亡する可能性がより高い、若い頃からの重度精神疾患を持つ人の心血管疾患を予防、認識、治療する努力の強化が必要である。
 


長期大麻使用者における輸送タンパク(translocator protein)の生体イメージング
    Tania Da Silva et al. JAMA Psychiatry. Published online September 18, 2019.
    In Vivo Imaging of Translocator Protein in Long-term Cannabis Users.

    キーポイント:
    <疑問>
     18キロダルトン(kDa)の輸送タンパク(translocator protein)の発現は、長期大麻使用者において変化しているか。
    <結果>
     この24人の長期大麻使用者と27人の大麻未使用対照者において、大麻使用者は対照者よりも高い神経免疫活性または輸送タンパクレベルを示し、それは大麻使用障害を持つ人でより顕著であった。より高い脳輸送タンパクレベルは、慢性のストレスと不安、より高い循環型C反応性タンパクレベルと関連した。
    <意義>
     大麻使用者におけるより高い輸送タンパクレベルの所見は、脳生体内における大麻の役割を理解するうえで重要な前進といえる。神経免疫シグナル伝達におけるカンナビノイドと輸送タンパクの役割を説明するには、補完的な前臨床システムがさらに必要である。
 


出産前の母親の貧血と神経発達症の関連
    Wiegersma AM et al. JAMA Psychiatry. Published online September 18, 2019.
    Association of Prenatal Maternal Anemia With Neurodevelopmental Disorders.

    キーポイント:
    <疑問>
     母親の妊娠中の貧血は、しばしば併存する3つの神経発達症:自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、および知的能力障害のリスクと関連するか。
    <結果>
     この養子ではないスウェーデンの子供53万2,232人とその母親29万9,768人のコホート研究において、妊娠前期(30週以前)に診断された貧血は、子の自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、および知的能力障害のリスク上昇と有意に関連した。これらの関連は、妊娠後期に診断された貧血については明らかではなかった。
    <意義>
     結果は、妊娠前期における母親の貧血が自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、特に知的能力障害のリスク上昇と関連することを示唆し、妊婦管理における鉄の状態の早期スクリーニングと栄養カウンセリングの重要性を強調する。

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ためこみ症(Hoarding Disorder)の有病率:系統的レビューとメタ解析
    Postlethwaite A et al. J Affect Disord 2019; 256: 309-316.
    Prevalence of Hoarding Disorder: A systematic review and meta-analysis.

    ハイライト:
    • 一般人口のおよそ100人に2人がためこみ症(Hoarding Disorder)の基準を満たす。
    • 先進国における有病率はどこも同程度のようである。
    • ためこみ症の有病率は年齢とともに増加するようだが、これを確定するための更なる研究が必要である。

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ためこみ(Hoarding):発症年齢のメタ解析
    Brian A. Zaboski II et al. Depress Anxiety 2019; 36(6): 552-564.
    Hoarding: A meta‐analysis of age of onset

    論文要旨(抜粋):
    • ためこみ症(Hoarding Disorder)は一般人口の2~6%(ごく最近のメタ解析では2%[Postlethwaite A et al. J Affect Disord 2019; 256: 309-316])に存在し、患者およびその家族の人生に多大な影響を与えうる。
    • 病的ためこみ症の発症年齢は重要な疫学的測定であるが、ためこみの定型的発症年齢はいまだ確定されていない。
    • 本研究は、ためこみ症状の発症年齢に関する情報を有する1900年から2016年に英語で公表された研究の系統的レビューとメタ解析である。
    • 25研究が選択基準を満たし、ため込み症状の平均発症年齢は16.7歳、発症の2峰性分布の証拠を認めた。

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ためこみ症(Hoarding Disorder)のための地域ベースの当事者主導のグループ療法と心理士主導のグループ療法のランダム化試験
    Mathews CA et al. BJPsych Open 2018; 4(4): 285-293.
    Randomised clinical trial of community-based peer-led and psychologist-led group treatment for hoarding disorder.

    論文要旨:
    <背景>
     通常、ためこみ症の治療(Hoarding Disorder)は精神保健の専門家によって行われるが、十分なサービスが提供されていない地域ではケアの利用度が潜在的に限られる。
    <目的>
     我々は当事者が援助するグループ療法(group peer-facilitated therapy、G-PFT)と心理士が主導するグループ認知行動療法(group psychologist-led cognitive-behavioural therapy、G-CBT)の非劣性試験を行うことを目的とした。
    <方法>
     ためこみ症を持つ323人の成人を、15週のG-PFTまたは16週のG-CBTに無作為割付し、ベースライン、治療後、長期経過後(治療後3カ月以上:平均14.4カ月、範囲 3-25)に評価した。治療反応の予測因子が調べられた。
    <結果>
     G-PFT(効果量 1.20)はG-CBT(効果量 1.21; 群間差 1.82ポイント, t = -1.71, d.f. = 245, P = 0.04)と同程度に効果的であった。ホームワークの完成度がより高く、家族や友人からの継続的支援がより多いと、長期経過観察時の重症度スコアがより低かった(t = 2.79, d.f. = 175, P = 0.006; t = 2.89, d.f. = 175, P = 0.004)。
    <結論>
     当時者主導のグループ療法は心理士主導のグループ療法と同程度に効果的であり、精神保健の専門家に相談できない人のための新しい治療法を提供する。

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サイトメガロウイルスおよびトキソプラズマ原虫に対する抗体力価と双極性障害の関連
    Mark A. Frye et al. JAMA Psychiatry. Published online September 18, 2019.
    Association of Cytomegalovirus and Toxoplasma gondii Antibody Titers With Bipolar Disorder.

    Key Points
    <疑問>
     双極性障害は、免疫活性化を伴う感染性因子への曝露と関連するか。
    <結果>
     この1,952人の患者ケースの症例対照研究において、対照者と比較して双極性障害を持つ患者では、サイトメガロウイルスIgGが有意に増加、トキソプラズマIgGが有意に低下していた。抗トキソプラズマ活性を有する薬物治療を受けた双極性障害を持つ患者は、この治療を受けていない患者と比較して、有意に低いトキソプラズマIgM力価を示した。
    <意義>
     サイトメガロウイルスとトキソプラズマに対する長期抗体反応の増減は、このサンプルの双極性障害と関連した。疾患の遺伝・環境リスクと、特に疾患の発症に関してどのような感染または免疫活動が全般的病因に寄与するのかをもっと理解するには、さらなる研究が必要なようである。

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電気けいれん療法後の再発
    Moksnes KM. Tidsskr Nor Laegeforen 2011; 131(20): 1991-3.
    Relapse following electroconvulsive therapy.

    論文要旨:
    <背景>
     用いられる治療法に関係なく、うつ病は治療が終了すると再発する傾向が強い。この後方視的研究の目的は、電気けいれん療法(electroconvulsive treatment、ECT)後の再発率と再発までの時間、およびこれを防ぐ方法を調べることである。
    <対象と方法>
     1960年から1995年の期間に、ダイクマーク病院(Dikemark Hospital:ノルウェーの精神科病院)の3つの精神科部門において電気けいれん療法を受けた患者のECT履歴と症例記録が系統的にレビューされた。再発は「1シリーズのECT治療後に改善を達成した患者における抑うつ症状の記録に残された明確な再発」と定義された。観察期間は「ダイクマーク病院における最初のECTシリーズの終了以降、1995年の12月31日を含めたこの日までの時間」として定義された。
    <結果>
     ダイクマーク病院における患者の最初のECTシリーズ後の観察期間の中央値は9年(範囲:3カ月から44年)であった。120人の患者のうち、最初のECTシリーズ後に改善を示したと記載された56人(47%)が、最初の6カ月の経過の中で再発を経験した。全部で86人(72%)が平均13カ月(中央値は3カ月)後に再発を経験したが、初めてのうつ病後に改善した7人はだれも再発しなかった。最初のECTシリーズ後、84人の患者(70%)が再発を予防するために抗うつ薬および/またはリチウムを受けた。46人の患者に施行された100回のうち87回のECTシリーズ後に改善の記述があった。これら87回のうち58回(67%)で再発が6カ月以内に生じた。
    <解釈>
     再発率は高かった。結果は、抗うつ薬を用いた電気けいれん療法後の追跡治療が、うつ病症例における再発率を減らす他の方法で補完される必要性を示す。
 


うつ病における電気けいれん療法成功後の再発:メタ解析
    Jelovac A et al. Neuropsychopharmacology 2013; 38(12): 2467-74.
    Relapse following successful electroconvulsive therapy for major depression: a meta-analysis.

    論文要旨:
     電気けいれん療法後(electroconvulsive therapy、ECT)の高い早期再発率が文献上しばしば報告されている。ECT後の維持療法の最適なやり方に関して、現在の治療ガイドラインは臨床医に十分な情報を提供するものではない。この研究の目的は、ECT後の再発に関する現存のエビデンスの系統的レビューを提供することである。
     電子データベースのキーワード検索が、大うつ病エピソードのために行われた急性期のECTコースへの反応者における再発率を報告する2013年1月より前の査読文献中の研究について行われた。適切であればメタ解析が行われた。最長で2年の経過観察期間を持つ32の研究が含まれた。
     最近の継続薬物療法研究では、ECTを用いた初回治療に成功後、12カ月までに患者の51.1%(95% CI=44.7-57.4%)が再発し、その大部分は最初の6カ月内に再発した。6カ月再発率は、継続ECTで治療された患者においても同様であった(37.2%, 95% CI=23.4-53.5%)。
     ランダム化比較試験において、最初の6カ月において、抗うつ薬はプラセボと比較して再発リスクを半分に減らした(リスク比=0.49, 95% 信頼区間=0.39-0.62, p<0.0001, 治療必要数 [NNT]=3.3)。継続療法にも関わらず、ECT後の最初の1年の再発リスクはかなり高く、最初の6カ月が最もリスクが高い期間であった。ECT後の再発の予防における有効性の最大のエビデンスは三環系抗うつ薬にあった。よく使われる新規抗うつ薬や好まれる増量方略については、公表されたエビデンスは限られているか存在しない。ECT成功後の安定の維持が改善される必要がある。

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簡易陰性症状尺度(the Brief Negative Symptom Scale):心理測定学的特徴
    Kirkpatrick B et al. Schizophr Bull 2011; 37(2): 300-5.
    The brief negative symptom scale: psychometric properties.

    論文要旨:
     陰性症状に関するNIMH-MATRICSコンセンサス開発会議の参加者は、感情鈍麻(blunted affect)、言語の貧困(alogia)、社会性の喪失(asociality)、快感消失(anhedonia)、および意欲・発動性の低下(avolition)を評価する測定法の開発を勧告した。簡易陰性症状尺度(the Brief Negative Symptom Scale、BNSS)は、5つの領域を評価する臨床試験および他の研究用に設計された13項目の測定法である。測定法の評価者間、テスト・再テスト、および内的整合性は強く、級内相関係数はBNSS合計スコアについては0.93、個々の下位尺度については0.89から0.95であった。陽性症状および他の陰性症状の測定法との比較は、本測定法の弁別的妥当性(discriminant validity)と併存的妥当性(concurrent validity)を支持した。

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統合失調症の陰性症状の5因子構造の異文化間妥当性
    Ahmed AO et al. Schizophr Bull 2019; 45(2): 305-314.
    Cross-cultural Validation of the 5-Factor Structure of Negative Symptoms in Schizophrenia.

    論文要旨:
    <目的>
     陰性症状は2次元構造を持つと現在は見なされていて、それは表出(expression、EXP)の減少と意欲・喜び(motivation and pleasure、MAP)の低下を反映する因子を持つが、いくつかの因子分析研究は、2次元モデルをめぐるコンセンサスは時期尚早であることを示している。本研究は、簡易陰性症状尺度(the Brief Negative Symptom Scale、BNSS)で評価された陰性症状の因子構造を調べて、広範囲の文化と言語にわたる異文化間妥当性を検証した。
    <方法>
     参加者には、BNSSについて評価された5つの異文化サンプル(全数 = 1,691)からの精神病性障害と診断された人が含まれた。まず、探索的因子分析が最多で6つの因子をデータから抽出するために用いられた。次に、確認的因子分析で5つのモデルの適合性を評価した:1)1因子モデル、2)MAPとEXPの因子を持つ2因子モデル、3)内的世界(inner world)、外見(external)、および言語の貧困(alogia)の因子を持つ3因子モデル、4)感情鈍麻(blunted affect)、言語の貧困(alogia)、快感消失(anhedonia)、意欲・発動性の低下(avolition)、および社会性の喪失(asociality)の個別の因子を持つ5因子モデル、5)前述した5つの領域を反映する5つの一次因子およびEXPとMAPを反映する2つの二次因子を持つ階層的モデル。
    <結果>
     4またはそれ以下の因子を持つモデルのデータ適合性はあまり良くなかった。5因子モデルを頂点として、5因子、6因子、および階層的二次5因子モデルは優れた適合性を示した。5因子構造は研究サンプルを通した不変性を示した。
    <結論>
     結果は、BNSSで評価された陰性症状の5因子構造の多様な文化と言語にわたる妥当性を支持する。この結果は、陰性症状の診断、評価、および治療について重要な意味を持つ。

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DSM-5特定用語「不安性の苦痛」を持つうつ病は双極性(bipolarity)と関連するか?単極うつ病、双極Ⅰ型、およびⅡ型障害を持つ患者についての多施設共同コホート研究
    Tundo A et al. J Affect Disord 2019; 245: 819-826.
    Is there a relationship between depression with anxious distress DSM-5 specifier and bipolarity? A multicenter cohort study on patients with unipolar, bipolar I and II disorders.

    論文要旨:
    <背景>
     うつ病、双極Ⅰ型、またはⅡ型障害を持つうつ状態の患者におけるDSM-5特定用語「不安性の苦痛(anxious distress specifier、ADS)」の有病率を推定し、ADS群と非ADS群で社会人口学的・臨床的特徴と自然的短期治療に対する反応を比較すること。
    <方法>
     抑うつエピソード(major depressive episode、MDE)を持つ241人の外来患者が連続的に集められた。アウトカムは治療12週後の4週間続く寛解(21項目HDRSの合計スコアが7点未満)、反応(ベースラインの21項目HDRS の50%以上の減少)、および改善(臨床全般印象度スコアが2点以下)であった。
    <結果>
     ADSはうつ病より双極性障害に多かった(順に51.2%, 66.9%, χ2 = 6.1, p = 0.013)。ADSがない患者と比較してADSがある患者は、初診時により重いうつ症状と躁症状を持ち(21項目HDRS合計スコア; 順に18.6 ± 3.9, 20.0 ± 4.4, t-test = 2.67, p = 0.008)、より高率に双極性障害の家族歴があり(順に22.2%, 35.2%,χ2検定 10.4, p = 0.004)、より多くの軽躁病エピソードの既往があった(順に平均[範囲]; 0 [0-15], 0 [0-20], MW検定 = 2.39, p = 0.017)。うつ病群では、ADSを持つ患者はより高い高揚気質と躁症状を持っていた(Y-MRS合計スコアの中央値[範囲]; 順に2.2 [0-26], 0 [0-11], M-W検定 2.071, p = 0.038)。ADS患者と非ADS患者はアウトカム測定において有意差なかった。
    <限界>
     研究の観察的特性、およびアウトカム評価における盲検化の欠如。
    <結論>
     不安性の苦痛は最も多い抑うつエピソードのDSM-5特定用語であり、双極性障害でより多く、抗うつ薬、特に三環系の使用を控え目にした個別化治療が必要である。

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抗うつ薬の使用と有害な健康アウトカムの関連:系統的アンブレラ・レビュー*
    Elena Dragioti et al. JAMA Psychiatry. Published online October 2, 2019.
    Association of Antidepressant Use With Adverse Health Outcomes: A Systematic Umbrella Review.

    キーポイント:
    <疑問>
     抗うつ薬の使用は有害な健康アウトカムと関連するか。この関連性を支持するエビデンスは、現実世界のデータの公表済メタ解析においてどのくらい信頼できるか。
    <結果>
     この観察研究についての45のメタ解析の系統的アンブレラ・レビューにおいて、19歳より若い人における抗うつ薬の使用と自殺企図または既遂の関連、および抗うつ薬の使用と子の自閉症リスクの関連に関する説得力のあるエビデンスが見出された。しかし、適応症による交絡を調整した感度分析の後は、これらの関連で説得力のあるレベルに留まったものはなかった。
    <意義>
     この研究結果は、抗うつ薬に関連する有害な健康アウトカムの主張は強固なエビデンスで支持されず、適応症による交絡で誇張されている可能性を示唆する。説得力のあるエビデンスで現在支持される抗うつ薬使用の絶対禁忌は存在しない。

    *アンブレラ・レビュー(umbrella review)
     既に報告された系統的レビューを対象とした系統的レビューのこと。さらに包括的な系統的レビューが必要な場合や、エビデンスの総括が急務な場合などに有効とされる。

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青年女性と若年成人女性における経口避妊薬の使用と抑うつ症状の関連
    Anouk E. de Wit et al. JAMA Psychiatry. Published online October 2, 2019.
    Association of Use of Oral Contraceptives With Depressive Symptoms Among Adolescents and Young Women.

    キーポイント:
    <疑問>
     青年女性と若年成人女性において、経口避妊薬の使用と併存する抑うつ症状の関連はどれほどか。
    <結果>
     この9年間にわたり追跡された1,010人の青年コホート研究において、16歳の経口避妊薬使用者は経口避妊薬を使用していない対照と比較して、併存する抑うつ症状のスコアがより高かった。経口避妊薬の使用者は非使用者と比較して、泣き叫び、摂食問題、睡眠過剰がより多かった。
    <意義>
     QOLへの影響や非遵守のリスクを高める可能性があるので、経口避妊薬を使用している青年の抑うつ症状を監視することが重要である。

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精神疾患を持つ患者と持たない患者における院外心停止:冠動脈造影、冠血行再建術、および植込み型除細動器の使用と生存率の差異
    Barcella CA et al. J Am Heart Assoc 2019; 8(16): e012708.
    Out-of-Hospital Cardiac Arrest in Patients With and Without Psychiatric Disorders: Differences in Use of Coronary Angiography, Coronary Revascularization, and Implantable Cardioverter-Defibrillator and Survival.

    論文要旨:
    <背景>
     精神疾患を持つ患者の医療格差(healthcare disparities)は一般的であるが、これら格差が院外心停止(out-of-hospital cardiac arrest、OHCA)の蘇生後管理に当てはまるか否かは不明である。我々は、精神疾患を持つ患者と持たない患者の間の院外心停止後の入院における心血管手技の相違を調べた。
    <方法と結果>
     デンマーク全国登録を用いて、我々は心臓が原因と推定される院外心停止(2001~2015年)後に病院に入院した患者を特定した。精神疾患は、病院における診断または向精神薬処方への支払を用いて特定した。精神疾患を持つ患者と持たない患者において、院外心停止後の入院中の年齢と性別で標準化された心血管手技の実施率(incidence rates)と実施率比(incidence rate ratios、IRRs)を計算した。全母集団と急性期冠動脈造影(acute coronary angiography、CAG)を受けた2日生存者において、30日生存と1年生存における差が多変量ロジスティック回帰を用いて評価された。
     院外心停止を経験した7,288人の入院患者のうち、1,661人(22.8%)が精神疾患を持っていた。精神疾患を持たない患者と比較して、精神疾患を持つ患者の急性期CAG (院外心停止後1日以内) (IRR, 0.51; 95% CI, 0.45-0.57)、亜急性期CAG (院外心停止後2日から30日) (IRR, 0.40; 95% CI, 0.30-0.52)、および植込み型除細動器 (IRR, 0.67; 95% CI, 0.48-0.95)の標準化実施率はより低かった。
     反対に、CAGを受けた患者の冠血行再建術に違いはなかった(IRR, 1.11; 95% CI, 0.94-1.30)。精神疾患を持つ患者は、急性期CAGを受けた2日生存者においてさえ生存期間は短かった(30日生存のオッヅ比, 0.68; 95% CI, 0.52-0.91; 1年生存のオッヅ比, 0.66; 95% CI, 0.50-0.88)。
    <結論>
     精神疾患を持つ患者は持たない患者と比較して、院外心停止後のCAGおよび植込み型除細動器が実施される確率がより低かったが、CAGを受けた患者における冠血行再建術の確率は同じであった。しかし、血管造影検査とは関係なく生存期間は短かった。

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心血管リスクは過去10年間に双極性障害では軽度改善するも統合失調症では依然として高い
    Rødevand L et al. Acta Psychiatr Scand 2019; 139(4): 348-360.
    Cardiovascular risk remains high in schizophrenia with modest improvements in bipolar disorder during past decade.

    論文要旨:
    <目的>
     心血管疾患のリスクは過去10年間に一般人口では低下したが、統合失調症および双極性障害を持つ患者の状況は不明である。
    <方法>
     我々は心血管疾患リスクファクターを、ノルウェーの同一の管轄区域の2002~2005年サンプル(2005年, N = 270) からの統合失調症および双極性障害を持つ患者と2006~2017年サンプル(2017年, N = 1011)からの患者間で比較した。また、2017年サンプルを同じ区域と期間からの健常対照(N = 922)および一般人口(N range = 1285-4587, Statistics Norway)と比較した。
    <結果>
     2017年サンプルにおいて、統合失調症と双極性障害を持つ患者は健常対照および一般人口と比較して、大抵のCVDリスク因子が有意に高かった。2017年サンプルの血糖値の僅かな上昇を除いて、2005年と2017年のサンプル間で統合失調症における心血管疾患リスクファクターの有病率に有意な差はなかった。双極性障害の2005年サンプルと比較して2017年サンプルでは、総コレステロール、LDLコレステロール、収縮期および拡張期血圧の軽度から中等度の低下を認めた。
    <結論>
     過去10年間の健康増進の大きな進歩にも関わらず、心血管疾患リスクのレベルは双極性障害では軽度改善するも統合失調症を持つ患者では低下していない。

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成人のうつ病における急性期治療のための非外科的脳刺激の比較有効性と忍容性:系統的レビューとネットワークメタ解析
    Mutz J et al. BMJ 2019; 364: 11079.
    Comparative efficacy and acceptability of non-surgical brain stimulation for the acute treatment of major depressive episodes in adults: systematic review and network meta-analysis.

    論文要旨:
    <目的>
     成人におけるうつ病の急性期治療のための非外科的脳刺激の比較臨床有効性と忍容性を推定する。
    <デザイン>
     系統的レビューと一対およびネットワークメタ解析。
    <データソース>
     2009年から2018年に公表されたレビュー中の引用文献の手動検索で補完された2018年5月8日までのEmbase、PubMed/Medline、およびPsycINFOの電子検索、および選択された臨床試験。
    <研究選択のための適格基準>
     電気けいれん療法(electroconvulsive therapy、ECT)、経頭蓋磁気刺激(transcranial magnetic stimulation;反復[rTMS]、加速[accelerated]、プライミング[priming]、深部[deep]、および同期[synchronized]), θバースト刺激(theta burst stimulation)、磁気けいれん療法(magnetic seizure therapy)、経頭蓋直流電気刺激(transcranial direct current stimulation、tDCS)、またはシャム療法(sham therapy)へランダム割付けされた臨床試験。
    <主要評価項目>
     主要アウトカムは反応(有効性)と、あらゆる理由による中止(忍容性)で、オッヅ比とその95%信頼区間で表された。治療後の寛解と、持続するうつ病重症度も調べられた。
    <結果>
     うつ病、または双極うつ病を持つ6,750人の患者(平均年齢47.9歳;59%が女性)を、ランダム化した113試験(262治療群)が包含基準を満たした。最も多く研究された治療比較は高頻度左側のrTMSおよびtDCS対シャム療法であり、最近の治療の研究はいまだ少なかった。エビデンスの質は大抵がバイアスのリスクが低いか不明であり(113試験のうち94、 83%)、治療効果の要約推定量の正確性はかなりばらついた。
     ネットワークメタ解析において、18のうち10の治療法がシャム療法より高い反応と関連した:両側 ECT (要約オッヅ比 8.91, 95% 信頼区間 2.57 to 30.91)、高用量右片側ECT (7.27, 1.90 to 27.78)、プライミングTMS (6.02, 2.21 to 16.38)、磁気けいれん療法 (5.55, 1.06 to 28.99)、両側rTMS (4.92, 2.93 to 8.25)、両側θバースト刺激 (4.44, 1.47 to 13.41)、低頻度右側rTMS (3.65, 2.13 to 6.24)、間欠的θバースト刺激 (3.20, 1.45 to 7.08)、高頻度左側rTMS (3.17, 2.29 to 4.37)、およびtDCS (2.65, 1.55 to 4.55)。
     他の実治療を対照とした実介入のネットワークメタ解析的推定量は、両側ECTと高用量右片側ECTが反応増加と関連することを示した。すべての治療法は少なくともシャム治療と同程度に許容可能であった。
    <結論>
     これらの結果は、うつ病を持つ成人のための選択肢または追加治療として非外科的脳刺激法を検討することを支持するエビデンスを提供する。また、新しい治療を比較するもっと良く設計されたランダム化比較試験や、磁気けいれん療法を研究するシャム対照試験といった脳刺激専門分野における重要な研究優先事項を強調する。

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自殺念慮に対するケタミン単回静脈投与の効果:系統的レビューおよび個々の患者データを用いたメタ解析
    Wilkinson ST et al. Am J Psychiatry 2018; 175(2): 150-158.
    The Effect of a Single Dose of Intravenous Ketamine on Suicidal Ideation: A Systematic Review and Individual Participant Data Meta-Analysis.

    論文要旨:
    <目的>
     自殺は治療選択肢が限られる公衆衛生上の危機である。自殺念慮に対するケタミン単回静脈投与の効果を調べるために、著者らは系統的レビューと個々の患者データを用いたメタ解析を行った。
    <方法>
     特定された生理食塩水またはミダゾラムを対照治療として用いた11の比較介入研究のうち10研究から個々の患者データを取得した。分析にはベースライン時に自殺念慮を持っていた参加者だけを含めた(N=167)。混合効果・マルチレベル・一般線型モデルを用いた1段階の個別の患者データによるメタ解析的手法が採用された。主要アウトカム測定は、長くてケタミン投与後1週間に得られた臨床医施行尺度(Montgomery-Åsbergうつ病評価尺度 [MADRS] または ハミルトンうつ病評価尺度 [HAM-D])と自己報告尺度(簡易抑うつ症状尺度 [QIDS-SR] または ベック抑うつ質問票 [BDI])からの自殺項目であった。
    <結果>
     臨床医施行と自己報告のアウトカム測定の両方に関して、ケタミンは急速に(1日以内に)自殺念慮を軽減した。効果量は投薬後すべての時点において、中から大(Cohen's d=0.48-0.85)であった。対照治療と比較してケタミンは、BDIを除くMADRS、HAM-D、そしてQIDS-SRの個々の自殺項目に関して有意な便益を持つことを感度分析は示した。自殺念慮に対するケタミンの効果は、同時に起きる抑うつ症状の重症度変化を調整後も依然有意であった。
    <結論>
     ケタミンは自殺念慮を持つ抑うつ患者において急速に自殺念慮を減少させ、その効果は1日以内から1週間であった。ケタミンが自殺念慮に対して特異的効果を発揮することを確認するために、診断横断的サンプルでの追加試験が必要であるが、ケタミンの自殺念慮に対する効果はその気分に対する効果とは一部独立していた。ケタミンの長期的な安全性と自殺リスク軽減の有効性に関するさらなる研究が、臨床実施の前に必要である。

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産後うつ病におけるbrexanolone注射液:二施設共同・二重盲検・ランダム化・プラセボ対照・第3相試験
    Meltzer-Brody S et al. Lancet 2018; 392(10152): 1058-1070.
    Brexanolone injection in post-partum depression: two multicentre, double-blind, randomised, placebo-controlled, phase 3 trials.

    論文要旨:
    <背景>
     産後うつ病は相当に重い病的状態と関連し、薬理学的治療選択を緊急に改善する必要がある。我々は、中等度から重度の産後うつ病の治療について、A型γアミノ酪酸(GABA-A)受容体の陽性アロステリック調節因子であるbrexanolone注射液(かつてのSAGE-547注射液)を評価した。
    <方法>
     米国の30の臨床研究センターと精神科専門ユニットにおいて、2つの二重盲検・ランダム化・プラセボ対照・第3相試験を実施した。適格とされた女性は、年齢が18~45歳、スクリーニング時に産後6カ月以内で、産後うつ病を持ち、17項目ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)スコアの基準(研究1については26点以上、研究2については20~25点)を満たした。透析を必要とする腎不全、貧血、アロプロゲステロン、またはプロゲステロンへの既知のアレルギー、あるいは統合失調症、双極性障害、または統合失調感情障害の病歴を持つ女性は除外された。
     研究1では、患者は無作為(1:1:1)に時間当たりbrexanolone 90 μg/kg(BRX90)、brexanolone 60 μg/kg(BRX60)の単回静脈注射、またはマッチさせた60時間のプラセボ、研究2では、患者は無作為(1:1)にBRX90または60時間のマッチさせたプラセボに割り付けられた。患者、研究チーム、施設スタッフ、研究責任者は治療割付について盲検化された。主要有効性エンドポイントは60時間後の17項目HAM-D合計スコアのベースラインからの変化で、研究薬剤またはプラセボの注射を開始して有効なHAM-Dベースライン時評価と、少なくとも1つのHAM-Dベースライン後評価を有するすべての患者で評価された。安全性集団には研究薬剤またはプラセボの注射を開始した全無作為化患者が含まれた。患者は30日まで追跡された。試験は完了してClinicalTrials.govに登録されている(番号:NCT02942004[研究1]およびNCT02942017[研究2])。
    <結果>
     参加者は研究1については2016年8月1日から2017年10月19日の間に、研究2については2016年7月25日から2017年10月11日の間に登録された。我々は375人の女性を両研究にわたって同時にスクリーニングして、研究1では138人がBRX90(n=45)、BRX60(n=47)、またはプラセボ(n=46)に、研究2では108人がBRX90(n=54)、またはプラセボ(n=54)に無作為割付された。
     研究1では、60時間後におけるHAM-D 合計スコア最小二乗平均のベースラインからの低下は、プラセボ群の14.0ポイント(標準誤差1.1)と比較してBRX60群は19.5ポイント(1.2)、BRX90群は17.7ポイント(1.2)であった(BRX60群: 差 -5.5 [95% CI -8.8 to -2.2], p=0.0013; BRX90群: 差 -3.7 [95% CI -6.9 to -0.5], p=0.0252)。研究2では、60時間後におけるHAM-D 合計スコア最小二乗平均のベースラインからの低下は、プラセボ群の12.1ポイント(標準誤差0.8)と比較してBRX90群は14.6ポイント(0.8)であった(差 -2.5 [95% CI -4.5 to -0.5], p=0.0160)。
     研究1では、プラセボ群の22人の患者に対してBRX60群では19人、BRX90群では22人の患者が有害事象を経験した。研究2では、プラセボ群の24人の患者に対してBRX90群では25人の患者が有害事象を経験した。Brexanolone群において最も多かった治療関連の有害事象は頭痛(研究1: n=7 BRX60群, n=6 BRX90群vs n=7 プラセボ群; 研究2: n=9 BRX90群vs n=6 プラセボ群)、めまい(研究1: n=6 BRX60群, n=6 BRX90群vs n=1 プラセボ群; 研究2: n=5 BRX90群vs n=4 プラセボ群)、および傾眠(研究1: n=7 BRX60群, n=2 BRX90群vs n=3 プラセボ群; 研究2: n=4 BRX90群vs n=2 プラセボ群)であった。
     研究1では、BRX60群の1人の患者が2つの重篤な有害事象を経験した(追跡期間中の自殺念慮および意図的な過量服用の企て)。研究2では、BRX90群の1人の患者が2つの重篤な有害事象を経験し(意識状態の変化と失神)、それは治療と関係があると考えられた。
    <解釈>
     産後うつ病に対するbrexanolone注射液の投与はプラセボと比較して、60時間後のHAM-D総得点の有意で臨床的に意味のある減少を示した。我々の結果は、brexanolone注射液が、産後うつ病を持つ女性の治療選択を改善する潜在力を有するこの疾患に対する新しい治療薬であることを示唆する。
    <資金>
     Sage Therapeutics, Inc.

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うつ病を持つ患者におけるSAGE-217試験
    Gunduz-Bruce H et al. N Engl J Med 2019; 381(10): 903-911.
    Trial of SAGE-217 in Patients with Major Depressive Disorder.

    論文要旨:
    <背景>
     γアミノ酪酸(γ-aminobutyric acid、GABA)の神経伝達変異がうつ病の発症に関わるとされてきたが、経口のGABA-A受容体ポジティブ・アロステリック調節因子(positive allosteric modulator[PAM]、訳注:内因性アゴニストのアゴニスト活性を促進するアロステリック部位に結合するリガンド)であるSAGE-217がうつ病の治療に有効かつ安全かについては不明である。
    <方法>
     この二重盲検・第2相試験において、我々はうつ病を持つ患者を登録し、1日1回30㎎のSAGE-217またはプラセボに1対1の比で無作為に割り付けた。主要エンドポイントは、17項目ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D; スコア範囲は0から52, より高いスコアがより重症のうつ病を示す)スコアの、ベースラインから15日までの変化であった。
     副次有効性エンドポイントは2から8日、および15日、21日、28日、35日、42日に評価され、追加の抑うつと不安の尺度、HAM-Dスコアのベースラインから50%以上の低下、HAM-Dスコアが7ポイント以下、および臨床全般印象度の改善スコアが1(非常に大きく改善)または2(大きく改善)(1から7までの尺度上、スコア7は症状が非常に大きく悪化したことを示す)を含んだ。
    <結果>
     全部で89人の患者がランダム化され、45人がSAGE-217群、44人がプラセボ群に割り付けられた。平均ベースラインHAM-Dスコアは、SAGE-217群では25.2、プラセボ群では25.7であった。ベースラインから15日までの最小二乗平均(±標準誤差)変化は、SAGE-217群では -17.4±1.3ポイント、プラセボ群では -10.3±1.3ポイントであった(変化の最小二乗平均差, -7.0ポイント; 95% 信頼区間, -10.2 to -3.9; P<0.001)。
     副次エンドポイントの差は、主要エンドポイントの差と概ね同方向にあった。重篤な有害事象はなかった。SAGE-217群において最も多かった有害事象は頭痛、めまい、嘔気、傾眠であった。
    <結論>
     1日1回14日間のSAGE-217投与は、15日における抑うつ症状の減少を示した。有害事象はプラセボ群と比較してSAGE-217群により多かった。うつ病におけるSAGE-217の持続性と安全性を確認し、SAGE-217と利用可能な治療を比較する追加試験が必要である(資金提供:Sage Therapeutics; 試験登録:ClinicalTrials.gov number, NCT03000530)。

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短期の食事介入は若年成人のうつ病症状を低下させる:ランダム化比較試験
    Francis HM et al. PLoS One 2019; 14(10): e0222768.
    A brief diet intervention can reduce symptoms of depression in young adults - A randomised controlled trial.

    論文要旨:
     健康に悪い食事がうつ病と関連する強い疫学的証拠がある。またその逆、つまり果物、野菜、魚、そして赤身の肉が豊富な健康に良い食事がうつ病のリスクを低下させることが示されてきた。現在までに、唯一のランダム化比較試験(randomised controlled trial、RCT)が選択基準である増加した抑うつ症状について行われ、食事介入が臨床的レベルのうつ病を減らし得ることが示された。しかし、このようなRCTは若年成人においては行われていない。
     抑うつ症状が増加していて健康に悪い食事を習慣的に摂っている若年成人が、3週間の短期食事介入(食事群)または習慣的食事(対照群)に無作為に割り付けられた。ベースライン時と介入後の主要評価項目と副次評価項目には次のものが含まれた:うつ病の症状(Centre for Epidemiological Studies Depression Scale; CESD-R; および Depression Anxiety and Stress Scale- 21 depression subscale; DASS-21-D)、現在の気分(Profile of Mood States)、自己効力感(New General Self-Efficacy Scale)、記憶(Hopkins Verbal Learning Test)。食事遵守は自己報告の質問票と分光測光法を用いて測定された。
     101人が本研究に登録され、食事群または対照群に無作為割付された。研究の終了時に各群38人の完全データがあった。自己報告と分光測光法を用いた評価によれば、食事介入推奨は良く遵守されていた。食事群は対照群と比較して、CESD-R自己報告抑うつ症状(p = 0.007, Cohen's d = 0.65)およびDASS-21抑うつ下位尺度(p = 0.002, Cohen's d = 0.75)が、これら尺度のベースライン得点を調整しても有意に低かった。DASS-21抑うつ下位尺度スコアの減少は、3カ月後の電話追跡調査で維持されていた(p = .009)。
     これらの結果は、抑うつ症状が増加している若年成人が食事介入に参加して継続でき、これがうつ病症状を低下させ得ることを示した最初のものである。結果は、これら利益の持続性、食事組成を変化させた場合の効果、およびその生物学的基礎をさらに研究する正当性を提供する。

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統合失調症の陰性症状を治療するための経頭蓋直流電気刺激(tDCS)の有効性と安全性:ランダム化臨床試験
    Leandro da Costa Lane Valiengo et al. JAMA Psychiatry. Published online October 16, 2019.
    Efficacy and Safety of Transcranial Direct Current Stimulation for Treating Negative Symptoms in Schizophrenia: A Randomized Clinical Trial.

    キーポイント:
    <疑問>
     経頭蓋直流電気刺激(transcranial direct current stimulation、tDCS)は、統合失調症の陰性症状に対する安全で有効な追加治療か。
    <結果>
     この陰性症状が優勢な統合失調症を持つ100人の患者のランダム化臨床試験において、実治療のtDCSは陰性症状の軽減においてシャムに勝り、陰性症状についてより優れた反応率(20%の改善)を示した。この効果は追跡期間中も継続し、tDCSは有意な有害作用と関連しなかった。
    <意義>
     経頭蓋直流電気刺激(tDCS)は、統合失調症の陰性症状に対する実施可能で安全、有効な追加治療である。

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女性における神経性過食症と心血管疾患の長期リスクおよび死亡との関連
    Rasmi M. Tith et al. JAMA Psychiatry. Published online October 16, 2019.
    Association of Bulimia Nervosa With Long-term Risk of Cardiovascular Disease and Mortality Among Women.

    キーポイント:
    <疑問>
     女性において神経性過食症は心血管疾患の長期リスクおよび死亡と関連するか。
    <結果>
     このカナダの41万6,709人の女性を12年間追跡した縦断的コホート研究において(神経性過食症のために入院した818人の女性と、妊娠に関連した事象のために入院した41万5,891人の女性)、神経性過食症の診断を持つ女性では、心血管疾患のための入院のリスクと、指標となる神経性過食症に関連した入院後8年までの死亡が有意に高かった。
    <意義>
     この研究の結果は、神経性過食症と診断された女性は、心血管リスクと心血管疾患の予防のための神経性過食症のより綿密な管理から利益を得る可能性を示す。

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高校生時のパーソナリティ表現型と54年後の認知症の関連:全米サンプルからの結果
    Benjamin P. Chapman et al. JAMA Psychiatry. Published online October 16, 2019.
    Association Between High School Personality Phenotype and Dementia 54 Years Later in Results From a National US Sample.

    キーポイント:
    <疑問>
     不適応的パーソナリティ特性は認知症の真のリスク因子か、それとも根底にある神経病理学的変化の早期発現に過ぎないのか。
    <結果>
     82,232人の参加者のコホート研究において、青年期(認知症病理が存在する可能性が低い時期)のパーソナリティ特性は、全米コホートにおいて約50年後の偶発認知症と関連した。温和(calm)で落ち着いた(mature)青年は認知症を発症する可能性がより低く、このリスク低下はより高い社会経済的地位で明白であった。
    <意義>
     この研究結果は、数十年前の不適応的パーソナリティ特性が70歳頃の認知症の独立したリスク因子であることを示す。

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20年間を通した高齢者におけるうつ病の有病率と治療
    Arthur A et al. Br J Psychiatry 2019 Oct 7:1-6.
    Changing prevalence and treatment of depression among older people over two decades.

    論文要旨:
    <背景>
     うつ病は能力障害の主要な原因であり、特に高齢者は不良な転帰をとりやすい。
    <目的>
     高齢者におけるうつ病の有病率と抗うつ薬の使用が、過去20年間で変化したか否かを調べること。
    <方法>
     認知機能と老化研究(the Cognitive Function and Ageing Studies) CFAS IとCFAS IIは、2つの英国の65歳以上の高齢者についての住民ベースのコホート研究で、各々のベースライン測定は20年の期間をおいて実施された(1990~1993年、2008~2011年)。
     うつ病は高齢者精神状態検査(the Geriatric Mental State examination)で評価され、コンピュータを使った分類アルゴリズムで自動化された高齢者検査(the Automated Geriatric Examination for Computer-Assisted Taxonomy algorithm)で診断された。
    <結果>
     CFAS Iでは、65歳以上の7,635人が面接を受け、うち1,457人が診断を評価された。 CFAS IIでは、7,762人が面接を受け診断を評価された。CFAS IIにおける年齢で標準化されたうつ病の有病率は6.8%(95% CI 6.3-7.5%)、CFAS Iからの有意な減少を示さなかった(リスク比 0.82, 95% CI 0.64-1.07, P = 0.14)。
     CFAS IIの時点で、住民の10.7%(95% CI 10.0-11.5%)が抗うつ薬を服用し、それはCFAS Iの2倍以上であった(リスク比 2.79, 95% CI 1.96-3.97, P < 0.0001)。介護施設の住民では、うつ病の有病率は変わらなかったが、抗うつ薬の使用は7.4%(95% CI 3.8-13.8%)から29.2%(95% CI 22.6-36.7%)に増加した。
    <結論>
     65歳以上の人について、20年間で抗うつ薬の服用を報告する人の割合はかなり増加したが、うつ病の特定の年齢の有病率が変化した証拠はなかった。

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自閉スペクトラム症を持つ子供と青年の強迫的行動に対するフルオキセチンの効果:ランダム化臨床試験
    Dinah S. Reddihough et al. JAMA 2019; 322(16): 1561-1569.
    Effect of Fluoxetine on Obsessive-Compulsive Behaviors in Children and Adolescents With Autism Spectrum Disorders: A Randomized Clinical Trial.

    キーポイント:
    <疑問>
     プラセボと比較してフルオキセチンは、自閉スペクトラム症を持つ子供と青年の強迫的行動を低下させるか。
    <結果>
     この146人の参加者を含むランダム化臨床試験において、16週時の強迫的行動(広汎性発達障害用に修正された子供版のYale-Brown 強迫観念・強迫行為尺度を用いて測定;範囲、0~20ポイント;最小限の臨床的に重要な差、2ポイント)の平均スコアはフルオキセチン群で9.02、プラセボ群で10.89であり、その差は統計的に有意であった。しかし、潜在する交絡因子とベースラインの不均衡を考慮した既定の分析では差はなく、信頼区間は最小限の臨床的に重要な差を含んだ。
    <意義>
     この自閉スペクトラム症を持つ子供と青年の予備的研究において、フルオキセチンを用いた治療の結果、16週時の強迫的行動のスコアは有意により低かった。しかし、交絡因子とベースラインの不均衡を考慮した既定の分析では差がないこと、および不正確な推定から、結果の解釈には限界がある。

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経口避妊薬の継続、または間欠投与による月経前不快気分症の治療:3群ランダム化比較試験の結果
    Eisenlohr-Moul TA et al. Depress Anxiety 2017; 34(10): 908-917.
    Treatment of premenstrual dysphoria with continuous versus intermittent dosing of oral contraceptives: Results of a three-arm randomized controlled trial.

    論文要旨:
    <背景>
     月経前不快気分症(premenstrual dysphoria、PMD)の治療について、従来用量の配合経口避妊薬(実薬が21日、非実薬が7日)がプラセボに勝ることは示されていないが、いくつかのランダム化比較試験は、無ホルモン期間を短縮して、または削除して施行された経口避妊薬がプラセボに勝ることを示唆している。しかし、これら試験の結果は矛盾しており、同じ経口避妊薬の継続投与と間欠投与スケジュールを直接比較した研究はない。本研究は、月経前不快気分症の治療について、プラセボ、経口避妊薬の間欠投与、および継続投与を比較した。
    <方法>
     前方視的に月経前不快気分症が確認された55人の女性が、1カ月のベースライン評価後に、3カ月のプラセボ(n = 22)、ドロスピレノン・エチニルエストラジオール(drospirenone/ethinyl estradiol)の21日間欠投与(n = 17)、またはドロスピレノン・エストラジオール(drospirenone/estradiol)の持続投与(n = 16)に無作為割付された3群ランダム化比較試験を終了した。
    <結果>
     3群とも時間と共に似たような月経前症状の頑強な減少を示した。顕著なプラセボ反応が観察された。
    <結論>
     本研究において、月経前不快気分症に対する経口避妊薬継続投与に固有の有益な効果は再現されなかった。月経前不快気分症を持つ女性のプラセボ反応を増強させる心理社会的文脈を理解するために、追加研究が必要である。
    <試験登録>
     ClinicalTrials.gov NCT00927095.

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小児期の親の収入と後年の統合失調症のリスクの関連
    Christian Hakulinen et al. JAMA Psychiatry. Published online October 23, 2019.
    Association Between Parental Income During Childhood and Risk of Schizophrenia Later in Life.

    キーポイント:
    <疑問>
     小児期における親の所得水準と収入増減は、後の統合失調症のリスクとどのように関連するか。
    <結果>
     このデンマークにおける100万人以上の人のコホート研究において、低収入状態に置かれた時間の量の増加と統合失調症のリスクの上昇に量-反応関連が見出された。出生時の親の所得水準に関係なく、所得の上昇は下降と比較して統合失調症のより低いリスクと関連した。
    <意義>
     因果関係の推定は難しいが、この研究の結果は、小児期の家計所得を上昇させることが後の統合失調症の発症を減らす可能性を示唆する。

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機械学習とデンマークの一支払者の医療登録データを用いた性別特異的自殺リスクの予測
    Jaimie L. Gradus et al. JAMA Psychiatry. Published online October 23, 2019.
    Prediction of Sex-Specific Suicide Risk Using Machine Learning and Single-Payer Health Care Registry Data From Denmark.

    キーポイント:
    <疑問>
     一般人口標本における自殺による死亡の性別特異的なリスクプロフィールとは何か。
    <結果>
     この自殺で死亡した14,103人の症例コホート研究において、自殺のリスクプロフィールは、自殺で死亡しなかった265,183人の一般人口標本の男女間で異なっており、身体的健康は女性と比べて男性の自殺リスクにより重要であった。結果は、向精神薬と精神疾患が自殺リスクに重要であることを示す。多くの診断変数と処方について、観察期間の長短(自殺の6か月前より48カ月前)が重要と考えられた。
    <意義>
     これらの結果は、自殺リスクについて既に知られていることとの一致と同時に、特定の下位集団における固有の自殺リスクプロフィールの証拠を持つ潜在的に重要であるが研究されてこなかったリスク因子を示す。

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統合失調症を持つ人の一次聴覚皮質におけるシナプスプロテオームの変異
    Matthew L. MacDonald et al. JAMA Psychiatry. Published online October 23, 2019.
    Synaptic Proteome Alterations in the Primary Auditory Cortex of Individuals With Schizophrenia.

    キーポイント:
    <疑問>
     統合失調症を持つ人の一次聴覚皮質からのシナプス中において、タンパクレベルは変異しているか、もしそうであれば、これらの差はシナプスに限られるのか、それとも灰白質全体に存在するのか。
    <結果>
     この統合失調症を持つ人とそれと一致させた対照者48組の症例対照研究において、ミトコンドリアタンパクと後シナプスタンパク(グルタミン酸受容体、γ-アミノ酪酸受容体を含む)のシナプスレベルに強固な変異が見出された。これは高度に共制御され、背景にある全灰白質レベルの差とは関連しなかった。
    <意義>
     これらの結果は、局所的なシナプスの、組織全体ではないタンパク質の恒常性(protein homeostasis)の変異によって最もうまく説明される統合失調症における広範かつ高度に共制御されたシナプスタンパクの再配列を示唆する。

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運動は統合失調症を持つ人の心肺機能を改善する:系統的レビューとメタ解析
    Vancampfort D et al. Schizophr Res 2015; 169(1-3): 453-457.
    Exercise improves cardiorespiratory fitness in people with schizophrenia: A systematic review and meta-analysis.

    論文要旨:
    <目的>
     運動が統合失調症を持つ人の心肺機能を改善し得るか否かを確認すること。
    <方法>
     主な電子データベースが2015年5月まで系統的に検索され、Hedgesのg値を計算するメタ解析が行われた。
    <結果>
     運動に携わると統合失調症を持つ人の心肺機能は改善する(g = 0.40, 95% CI = 0.16–0.64, p = 0.001, N = 7, n = 77)。4つの比較研究からのデータは、対照群(n = 48)と比較して運動(n = 53)は心肺機能を有意に改善することを示した(g = 0.43, 95% CI = 0.05–0.82, p = 0.028)。
    <結論>
     今回の結果を考慮すると、統合失調症の学際的治療はあらゆる理由による死亡を減らすために、身体機能の改善と肥満の軽減の両方への着目を含むべきである。

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運動は統合失調症の臨床症状、生活の質、全般的機能、および抑うつを改善する:系統的レビューとメタ解析
    Dauwan M et al. Schizophr Bull 2016; 42(3): 588-99.
    Exercise Improves Clinical Symptoms, Quality of Life, Global Functioning, and Depression in Schizophrenia: A Systematic Review and Meta-analysis.

    論文要旨:
    <背景>
     身体運動は臨床症状、生活の質、および認知に有益な効果を持つ可能性があるので、統合失調症スペクトラム障害を持つ患者にとって有益かもしれない。
    <方法>
     系統的検査がPubMed (Medline)、Embase、PsychInfo、およびCochrane Database of Systematic Reviewsを用いて実施された。統合失調症スペクトラム障害においてあらゆるタイプの身体運動介入の効果を調べる比較研究と非比較研究が含まれた。アウトカム測定は臨床症状、生活の質、全般的機能、抑うつ、および認知であった。メタ解析はソフトウェア(Comprehensive Meta-Analysis)を使用して行われた。Hedgesのg値における全体の重み付け効果量を計算するために、ランダム効果モデルが用いられた。
    <結果>
     1,109人の患者を調べた29の研究が含まれた。全体的症状重症度(k = 14, n = 719: Hedges' g = .39, P < .001)、陽性症状(k = 15, n = 715: Hedges' g = .32, P < .01)、陰性症状(k = 18, n = 854: Hedges' g = .49, P < .001)、全般症状(k = 10, n = 475: Hedges' g = .27, P < .05)、生活の質(k = 11, n = 770: Hedges' g = .55, P < .001)、全般的機能(k = 5, n = 342: Hedges' g = .32, P < .01)、および抑うつ症状(k = 7, n = 337: Hedges' g = .71, P < .001)の改善の点で、運動は対照条件に勝った。
     ヨガは特に認知の下位領域である長期記憶を改善したが(k = 2, n = 184: Hedges' g = .32, P < .05)、運動一般または他のどの様式の運動も認知への効果はなかった。
    <結論>
     身体運動は、統合失調症を持つ患者の臨床症状、生活の質、全般的機能、および抑うつ症状を改善する強力な追加治療である。認知への効果は示されていないが、ヨガについては効果があるかもしれない。

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健康的食事の指標とうつ病発症のリスク:観察研究の系統的レビューとメタ解析
    Lassale C et al. Mol Psychiatry 2019; 24(7): 965-986.
    Healthy dietary indices and risk of depressive outcomes: a systematic review and meta-analysis of observational studies.

    論文要旨:
     うつ病は先進国において最大の社会的コストを招く精神疾患であるため、うつ病における栄養の役割についての証拠を収集して推奨の進展に役立て、将来の精神科医療を導く必要があるこの系統的レビューの目的は、事前に定義された一連の指標で測定された食事の質とうつ病の発症の関連を統合することであった。抑うつ症状、または臨床的うつ病と健康的食事の関連を調べた研究について、2018年5月31日までMedline、Embase、およびPsychInfoを検索した。可能な場合は、観察研究デザインおよび食事スコアで層別化したランダム効果メタ解析を用いて推定量が統合された。
     全部で20の縦断研究と21の横断研究が含まれた。これらの研究は、地中海ダイエット(Mediterranean diet)遵守の様々な測定、健康的食事指数(Healthy Eating Index、HEI)と代替HEI(Alternative HEI、AHEI)、高血圧を予防する食事療法(Dietary Approaches to Stop Hypertension)、および食事炎症指数(Dietary Inflammatory Index)を含む一連の食事計測を利用していた。最も説得力のあるエビデンスは地中海ダイエットと偶発うつ病であり、4つの縦断研究からの統合相対リスク(最高遵守群 vs.最低順守群)の推定値は0.67(95% CI 0.55-0.82)であった。また、4つの縦断研究においてより低い食事炎症指数はより低いうつ病発症と関連した(相対リスク 0.76; 95% CI: 0.63-0.92)。他の指標を用いた縦断研究はより少なかったが、それらと横断研究はまた、健康的食事とうつ病の間の逆の関連を示唆した(例、HEI/AHEIについて相対リスク0.65; 95% CI 0.50-0.84)。
     結論として観察研究では、健康的食事への遵守、特に伝統的な地中海ダイエットや炎症の促進を避ける食事がうつ病に対して保護を与えるようである。これはうつ病を予防する食事介入の役割を評価する理にかなった証拠を提供する。この系統的レビューは系統的レビューの国際事前登録PROSPEROに登録された(番号CRD42017080579)。

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アセトアミノフェンへの子宮内曝露の臍帯血漿バイオマーカーと小児期の注意欠如・多動症および自閉スペクトラム症の関連
    Yuelong Ji et al. JAMA Psychiatry. Published online October 30, 2019.
    Association of Cord Plasma Biomarkers of In Utero Acetaminophen Exposure With Risk of Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder and Autism Spectrum Disorder in Childhood.

    キーポイント:
    <疑問>
     アセトアミノフェンへの子宮内曝露の臍帯血漿バイオマーカーと、小児期の注意欠如・多動症および自閉スペクトラム症のリスクとの関連は如何なるものか。
    <結果>
     この母子996組のコホート研究において、胎児のアセトアミノフェン曝露の臍帯血漿バイオマーカーは、小児期の注意欠如・多動症および自閉スペクトラム症のリスク上昇と有意に関連した。
    <意義>
     この結果はアセトアミノフェンへの子宮内曝露が小児期の注意欠如・多動症および自閉スペクトラム症のリスク上昇と関連することを示唆し、さらなる研究を行う根拠となる。

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気分障害と不安障害に共通する神経表現型:226の課題関連機能画像研究のメタ解析
    Delfina Janiri et al. JAMA Psychiatry. Published online October 30, 2019.
    Shared Neural Phenotypes for Mood and Anxiety Disorders: A Meta-analysis of 226 Task-Related Functional Imaging Studies.

    キーポイント:
    <疑問>
     うつ病、双極性障害、不安症、および心的外傷後ストレス障害にみられる臨床的重なりは、神経生物学的レベルにおいて反映されるか。
    <結果>
     この226の課題関連機能画像研究のメタ解析において、低賦活の診断横断的クラスターが下前頭前皮質/島、下頭頂小葉、および被殻に特定された。
    <意義>
     気分障害と不安障害を通した課題関連脳活動の最も一貫した診断横断的異常は、主として抑制的制御(inhibitory control)と顕現性処理(salience processing)に関連する領域に収斂する。

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統合失調症を持つ若者と中年の癌発生率:台湾(2000~2010年)における全国コホート研究
    Chen LY et al. Epidemiol Psychiatr Sci 2018; 27(2): 146-156.
    Cancer incidence in young and middle-aged people with schizophrenia: nationwide cohort study in Taiwan, 2000-2010.

    論文要旨:
    <目的>
     ほぼ1世紀の間、統合失調症を持つ人の癌の発生率は一般人口のそれより低かったが、ここ10年、癌と統合失調症の関係は曖昧になってきた。そこで我々は、統合失調症を持つ若者と中年の患者における癌のリスクを調べた。
    <方法>
     2000年1月から2008年12月に統合失調症のために新規入院した患者の記録が、台湾の精神科入院医療費請求(Psychiatric Inpatient Medical Claims)データベースから収集され、同期間における各患者の最初の精神科入院がベースラインとされた。我々は2010年12月まで観察された514の偶発癌症例を得た。統合失調症を持つ人と一般人口の癌リスクを比較するために、標準化発生率(standardised incidence ratios、SIRs)が計算された。癌発生率の層別解析が性別、癌の部位、ベースライン(最初の精神科入院)からの期間によって行われた。
    <結果>
     全部位の癌発生率は、その期間の一般母集団のそれより若干高かった(SIR = 1.15 [95% CI 1.06-1.26], p = 0.001)。男性では大腸癌の発生率が有意により高かった(SIR = 1.48 [95% CI 1.06-2.06], p = 0.019)。女性では乳癌の発生率がより高かった(SIR = 1.47 [95% CI 1.22-1.78], p < 0.001)。興味深いことに、大腸癌のリスクは最初の精神科入院後5年により顕著であり(SIR = 1.94 [1.36-2.75], p < 0.001)、乳癌のリスクもそうであった(SIR = 1.85 [1.38-2.48], p < 0.001)。統合失調症は癌に対して保護的であるという意見とは異なり、癌の発生率は統合失調症を持つ患者でより高かった。
    <結論>
     我々の分析は、統合失調症を持つ男女はある種の癌に罹患しやすいことを示し、一方の性別に特化した健診プログラムの必要性を示唆する。大腸癌のリスクは最初の精神科入院後5年により顕著である事実は、不健康な生活様式の影響、または診断の遅れの可能性を暗示しているのかもしれない。

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統合失調症を持つ患者における癌の発生率:コホート研究のメタ解析
    Li H et al. Schizophr Res 2018; 195: 519-528.
    The incidence rate of cancer in patients with schizophrenia: A meta-analysis of cohort studies.

    論文要旨:
    <背景>
     非常に多くの研究が、統合失調症を持つ患者の癌の有病率が一般人口と異なっている可能性を報告しているが、結果は一貫していない。
    <目的>
     我々の最新のコホート研究メタ解析は、統合失調症を持つ患者における全癌および部位特異的癌の発生リスクに関するコホート研究からのデータを解析する。
    <方法>
     電子データベースを用いて系統的検索を行った。統合失調症を持つ患者における癌の発生を評価して記載するコホート研究が含まれた。癌の発生リスクを評価するために、統合リスク比(Pooled risk ratios、RRs)が計算された。
    <結果>
     16のコホート研究が本メタ解析に組み込まれ、全部で統合失調症を持つ参加者480,356人と癌を持つ41,999症例が結合された。結果は、統合失調症を持つ患者における癌発生の全リスク比の僅かであるが有意な低下を示した(RR=0.90, 95% CI 0.81-0.99)。
     癌の部位と性別で層別化した場合、これらの患者では大腸癌(RR=0.82, 95% CI 0.69-0.98)と前立腺癌(RR=0.55, 95% CI 0.42-0.71)の発生リスク率が有意に低く、さらに男性患者では大腸癌の発生率が有意に低く(RR=0.89, 95% CI 0.81-0.98)、女性患者では肺癌の発生率が有意に高かった(RR=1.12, 95% CI 1.01-1.25)。
    <結論>
     一部の癌の発生リスクは統合失調症を持つ患者で低かった。性別と癌の種類は、我々の癌発生率メタ解析において調整を必要とした異質性の原因となる2大交絡因子であった。

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統合失調症を持つ患者における肺癌の発生率:メタ解析
    Zhuo C et al. Br J Psychiatry. 2019 Feb 26:1-8.
    Lung cancer incidence in patients with schizophrenia: meta-analysis.

    論文要旨:
    <背景>
     タバコのような肺癌のリスク因子は統合失調症を持つ患者に非常に多いが、これらの患者が肺癌の高いリスクを持つか否かは不明である。
    <目的>
     我々は、統合失調症を持つ患者が一般人口と比較して高い肺癌発生率を持つか調べた。
    <方法>
     統合失調症を持つ患者、および一般人口における肺癌症例を特定するために、適格な研究がPubMedとEMBASEのデータベースから検索された。本メタ解析はランダム効果モデルを利用して、これら適格な研究の異質性を計算するために予測区間を用いた。エビデンスの質をGRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)法を用いて、評価した。
    <結果>
     全部で496,265人の患者を含む12の研究がこのメタ解析に含められた。データは、ベースラインの統合失調症診断は全母集団における肺癌発生率の如何なる変化とも関係しないことを示し、標準化発生率比は1.1(95% CI 0.90-1.37; P = 0.31)であったが、これら研究間には有意な異質性(I2 = 94%)を認めた。加えて、広い予測区間値(0.47-2.64)を持つ相当な研究間分散も認めた。データは男性と女性の両方で一貫していた。
    <結論>
     疫学研究からの最新のエビデンスは、統合失調症診断と肺癌発生率の関連に関する確実性の欠如を示す。

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統合失調症は乳癌のリスクファクターか?―遺伝データからの証拠
    Byrne EM et al. Schizophr Bull 2019; 45(6): 1251-1256.
    Is Schizophrenia a Risk Factor for Breast Cancer?-Evidence From Genetic Data.

    論文要旨:
     観察的疫学研究は統合失調症と乳癌の関連を見出したが、その関係が因果的であるかは不明である。我々は「その関連が部分的には共通の遺伝的リスクファクターによるのか、因果関係の証拠はあるのか」を調べるために、非常に規模の大きい統合失調症(症例:n = 122,977、対照:n = 105,974)と乳癌(症例:n = 122,977、対照:n = 105,974)の全ゲノム関連研究からの要約統計量を用いた。
     LDスコア回帰を用いて、我々は2つの障害の間に小さいが有意な遺伝相関(rG)を見出し(rG = 0.14, SE = 0.03, P = 4.75 × 10-8)、それは共通の遺伝的リスクファクターを示唆した。統合失調症と関連する142の遺伝的バリアント(統合失調症を持つことの代用物)を操作変数に用いて、我々は統合失調症の乳癌に対する因果的影響を、観測尺度上にbxy = 0.032(SE = 0.009, P = 2.3 × 10-4)として推定した。統合失調症への易罹患性が1標準偏差増すと、乳癌のリスクは1.09倍に増加する。対照的に、191の測定から推定された乳癌の統合失調症に対する因果的影響は無し(zero)と有意差なかった(bxy = -0.005, SE = 0.012, P = .67)。多面発現性(pleiotropy)の証拠はなく、喫煙または出産回数の効果を調整しても結果は変わらなかった。
     この結果は、以前に観察された関連は乳癌リスクを因果的に増加させる統合失調症による証拠を提供する。遺伝的バリアントは、この関係性の背後にあるメカニズムを解明する手段を提供するかもしれない。

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統合失調症患者では肝癌のリスクがより低い:コホート研究の系統的レビューとメタ解析
    Xu D et al. Oncotarget 2017; 8(60): 102328-102335.
    Lower risk of liver cancer in patients with schizophrenia: a systematic review and meta-analysis of cohort studies.

    論文要旨:
     統合失調症とその後の肝癌発生リスクの関連についての先行研究の結果は一貫性に乏しい。我々は、統合失調症と肝癌発生の関連を評価する系統的レビューとメタ解析を行うことを目的とした。統合失調症を持つ患者における一般人口と比較した肝癌リスクの標準化発生率比(standardized incidence ratio、SIR)を報告するコホート研究について、PubMedとEmbase電子データベースを系統的に検索した。データ解析にはランダム効果モデルが使われた。患者の性別に従って層別解析が行われた。
     統合失調症を持つ312,834人の患者から構成される7つの研究が含められた。経過観察中に581の肝癌症例が確認された。メタ解析の結果は、有意な異質性をもって(I2 = 81%)、統合失調症は肝癌発生率のより低い傾向と関連することを示した(SIR: 0.83, 95% confidence interval [CI]: 0.66-1.04, p = 0.10)。統合失調症と診断される前に癌を発症した患者の5つのコホート研究の感度分析は、統合失調症が有意に低い肝癌発生率と関連することを示唆した(SIR: 0.76, 95% CI: 0.61-0.96, p = 0.02; I2 = 84%)。後の肝癌発生の低下は統合失調症を持つ男性患者において有意であり(SIR: 0.71, p = 0.005)、肝癌リスクの低下傾向は女性患者においても同定された(SIR: 0.83, p = 0.12)。
     有意な公表バイアスが同定された。しかし、その原因とされる未発表の研究を含める(訳注:公表バイアスを補正するために漏斗プロットを整え埋める)trim and fill分析は同様の結果を示した。まとめると、統合失調症は肝癌の発生に対して保護的かもしれない。

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統合失調症を持つ患者と持たない患者の癌ステージ、治療、および院内死亡率の差異:後向きマッチドペア・コホート研究
    Ishikawa H et al. Br J Psychiatry 2016; 208(3): 239-44.
    Differences in cancer stage, treatment and in-hospital mortality between patients with and without schizophrenia: retrospective matched-pair cohort study.

    論文要旨:
    <背景>
     統合失調症を持つがん患者における医療アクセスと転帰は不明である。
    <目的>
     統合失調症を持つがん患者における早期診断と治療の尤度、およびその予後を調べること。
    <方法>
     日本の全国入院患者データベースを用いて、消化器系の癌患者の後向きマッチドペア・コホートが同定された。入院時の癌ステージ、侵襲的治療、院内死亡率を、統合失調症を持つ患者(n = 2,495)と精神疾患を持たない患者(n = 9,980)で比較するために、多変量・順序/二値ロジスティック回帰がモデル化された。
    <結果>
     ケース群はステージIVの割合がより高く(33.9% v. 18.1%)、侵襲的治療の割合がより低く(56.5% v. 70.2%, odds ratio (OR) = 0.77, 95% CI 0.69-0.85)、院内死亡率がより高かった(4.2% v. 1.8%, OR = 1.35, 95% CI 1.04-1.75)。
    <結論>
     消化器系の癌を持つ統合失調症患者は、精神疾患を持たない患者よりも進行した癌を持ち、侵襲的治療を受けることが少なく、院内死亡率が高い。

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統合失調症を持つ外来患者のがん検診受診と受診率に対する機能障害の影響:日本の横断研究
    Fujiwara M et al. Psychiatry Clin Neurosci 2017; 71(12): 813-825.
    Cancer screening participation in schizophrenic outpatients and the influence of their functional disability on the screening rate: A cross-sectional study in Japan.

    論文要旨:
    <目的>
     がん検診の受診に対する統合失調症患者の機能障害の影響は世界的に不明である。アジアにおける統合失調症患者のがん検診プログラムへの参加格差に関する知見はほとんど無い。この研究の目的は、統合失調症を持つ患者の検診受診率、および検診受診と重症度/機能障害の関連を調べることであった。
    <方法>
     この横断研究は日本の精神科病院の外来部門で実施された。我々は、大腸癌、胃癌、肺癌、乳癌、および子宮頚癌のがん検診についての国家プログラム基準を満たす統合失調症患者を募集した(順にn = 224, 223, 224, 110, 175)。がん検診の受診が自己報告質問表を用いて評価された。機能の全体的評定の修正版(modified Global Assessment of Functioning、mGAF)上のスコアが、参加者の主治医によって評価された。
    <結果>
     がん検診の受診率は次の通りであった:大腸癌(24.1%)、胃癌(21.5%)、肺癌(30.8%)、乳癌(25.5%)、子宮頚癌(19.4%)。多変量ロジスティック分析は、重症度/機能障害(=100-mGAF)の1ポイントの増加が、乳癌を除くがん検診受診より低いオッヅ比(odds ratios、OR)と有意に関連することを示した(大腸癌OR, 0.95, 95% confidence interval [CI], 0.93-0.98; 胃癌OR, 0.96, 95%CI, 0.93-0.98; 肺癌OR, 0.95, 95%CI, 0.93-0.97; 乳癌OR, 0.97, 95%CI, 0.94-1.00; 子宮頚癌OR, 0.95, 95%CI, 0.92-0.98)。
    <結論>
     本結果から、日本において統合失調症を持つ患者のがん検診受診率は低いことが分かった。我々の研究は、特に重度の症状/機能障害を持つ統合失調症患者において、がん検診への参加を促す必要性を示す。

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統合失調症を持つ日本人のがん検診受診率は低い:横断研究
    Inagaki M et al. Tohoku J Exp Med 2018; 244(3): 209-218.
    Low Cancer Screening Rates among Japanese People with Schizophrenia: A Cross-Sectional Study.

    論文要旨:
     統合失調症を持つ人における医療格差は世界中の懸念である。我々の以前の研究は、統合失調症を持つ日本人のがん検診の受診率が、一般人口のおよそ40%以下であることを明らかにした。しかし、研究は不正確なこともある自己報告に基づいており、受診率はがん検診の提供元の種類(すなわち地方自治体による検診、職場の任意検診、および個人の任意検診)を区別しなかった。この研究は、記録に基づくがん検診の受診率を地方自治体によるがん検診プログラムの対象である統合失調症を持つ人の受診率に焦点を当てて調べることを目的とした。
     2016年9月から11月に、我々は1つの精神科病院の外来部門で横断研究を実施した。680人の適格患者から無作為に420人の潜在的受診者を抽出し、がん検診受診の有無を尋ねた。それから、国民健康保険または公的扶助制度下にある岡山市の住民で、岡山市が提供する大腸癌、胃癌、肺癌、乳癌、または子宮頸癌の対象である受診者サブグループを選択した(順にn = 97, 96, 97, 42, 64)。がん検診の受診は地方自治体の記録に基づいて評価された。
     地方自治体が実施する癌検診受診率は次の通りであった:大腸癌13.4% (95% confidence interval: 6.6%-20.2%)、胃癌7.3% (2.1%-12.5%)、肺癌16.5% (9.1%-23.9%)、乳癌21.4% (9.0%-33.8%)、子宮頸癌14.1% (5.6%-22.6%)。本結果から、日本における地方自治体が実施するがん検診の対象である統合失調症を持つ人の検診受診率は極めて低いことが分かった。 統合失調症を持つ人において地方自治体によるがん検診を促進する方略が必要である。

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交代勤務(Shift Work)と不良な精神的健康:縦断研究のメタ解析
    Torquati L et al. Am J Public Health 2019; 109(11): e13-e20.
    Shift Work and Poor Mental Health: A Meta-Analysis of Longitudinal Studies.

    論文要旨:
    <背景>
     交代勤務(Shift Work)は、午前7時から午後6時という標準的時間外で働く雇用者によって特徴付けられる。交代勤務は夜間勤務を含むため、通常の睡眠覚醒サイクル(概日リズム)が乱れて、交代勤務者の身体的精神的健康に重大な結果を招き得る。
    <目的>
     交代勤務の精神的健康に対する統合効果とその性差を評価すること。
    <検索方法>
     2018年9月までに公表された査読論文または政府報告書について、PubMed、Scopus、およびWeb of Scienceのデータベースを検索した。
    <選択基準>
     含まれるべき研究は、有害な精神健康転帰と関連する交代勤務への曝露の縦断的または症例対照研究である必要があった。サブ解析については、これら転帰を不安症状、抑うつ症状、または不良な精神健康の全般症状にグループ化した。
    <データ収集と解析>
     『疫学グループ観察研究メタ解析ガイドライン』(Meta-Analysis of Observational Studies in Epidemiology Group guidelines)に従った。ランダム効果モデルと異質性の原因を探索するメタ回帰分析を用いて統合効果量(ESs)を計算するために、個々の研究の調整済リスク推定量を抽出した。
    <主な結果>
     重複のない28,431人の参加者からなる7つの縦断研究を含めた。交代勤務は、結合された有害な精神健康転帰の全体的リスクの上昇(ES = 1.28; 95% 信頼区間 [CI] = 1.02, 1.62; I2 = 70.6%)、特に抑うつ症状(ES = 1.33; 95% CI = 1.02, 1.74; I2 = 31.5%)と関連した。性差が異質性の90%以上を説明し、女性の交代勤務者は女性の非交代勤務者よりも抑うつ症状を体験しやすかった(オッズ比 = 1.73; 95% CI = 1.39, 2.14)。
    <著者らの結論>
     我々の知る限り、これは不良な精神的健康の種類と性別によるサブ解析を含む、交代勤務の不良な精神的健康リスクに対する統合効果を調べた最初のメタ解析である。交代勤務者、特に女性では、不良な精神的健康、特に抑うつ症状のリスクが上昇している。
    <公衆衛生的意義>
     うつ病は世界疾病負担の4.3%を説明し、世界の精神疾患発症によるコストは2030年までに1,630万米ドルに上ると予想される。欧米では交代勤務をしている5人に1人が交代勤務者の不良な精神健康リスクが上昇していることから、交代勤務業界はこの負担の軽減のための優先事項となる。交代勤務者の不良な精神的健康を最小化するために、職場における健康増進計画と方策が必要である。

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精神病の臨床的高リスクにある人における不良なアウトカムと、情動処理およびその神経基盤の関連
    Gemma Modinos et al. JAMA Psychiatry. Published online November 13, 2019.
    Association of Adverse Outcomes With Emotion Processing and Its Neural Substrate in Individuals at Clinical High Risk for Psychosis.

    キーポイント:
    <疑問>
     精神病の高リスクにある人において、情動認知の変化は不良な臨床的および機能的アウトカムと関連するか。
    <結果>
     この213人の精神病の高リスクにある人と52人の健常参加者のケースコントロール研究において、ベースラインにおける否定的情動の認知の異常は、内側前頭前皮質と海馬における神経解剖学的変化、および12カ月の経過観察時における低水準の機能と関連した。
    <意義>
     この研究は、精神病発症の高リスクを持つ人において機能的アウトカムはその情動処理の変化の程度に関連することを見出した。

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米国における娯楽目的のマリファナ合法化と、2008~2016年のマリファナ使用および大麻使用障害の変化
    Magdalena Cerdá et al. JAMA Psychiatry. Published online November 13, 2019.
    Association Between Recreational Marijuana Legalization in the United States and Changes in Marijuana Use and Cannabis Use Disorder From 2008 to 2016

    キーポイント:
    <疑問>
     米国において娯楽目的のマリファナが合法化された後、2008~2016年の間にマリファナ使用と大麻使用障害はどのように変化したか。
    <疑問>
     この米国における娯楽目的のマリファナ合法化前後のマリファナ使用を比較する回答者50万5,796人のマルチレベル、差分の差分(difference-in-difference [DID]、訳注:前後比較デザインにおける自然経過のトレンドを取り除くことでこれを改良したもの)調査研究において、12~17歳の大麻使用障害を報告する回答者の割合は2.18%から2.72%に増加し、26歳以上の頻繁にマリファナを使用する回答者の割合は2.13%から2.62%に、大麻使用障害を持つ回答者の割合は0.90%から1.23%に増加した。
    <意義>
     本研究結果は、娯楽目的のマリファナ使用の合法化後に青年の大麻使用障害が増加し、成人の頻繁なマリファナ使用と大麻使用障害が増加した可能性が、公衆衛生上の懸念を引き起こし研究の継続を正当化し得ることを示す。

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小児期と青年期に診断される全精神疾患の発症率および累積発症率
    Søren Dalsgaard et al. JAMA Psychiatry. Published online November 20, 2019.
    Incidence Rates and Cumulative Incidences of the Full Spectrum of Diagnosed Mental Disorders in Childhood and Adolescence.

    キーポイント:
    <疑問>
     小児期と青年期に診断される全精神疾患の年齢・性別特異的発症率と累積発症率はどのくらいか。
    <結果>
     このデンマークにおける130万人の全国コホートにおいて、18歳以前に精神疾患を診断されるリスク(累積発症率)は女子で14.63%、男子で15.51%であった。小児と青年の精神疾患を通して、明確な年齢・性別特異的発症パターンが見出された。
    <意義>
     これらの結果は、小児期と青年期におけるすべての精神疾患の発症率とリスクの正確な推定値は、サービスとケアの将来計画、および原因研究にとって必須であることを示す。

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母親の摂食障害と妊娠および新生児転帰の関連
    Ängla Mantel et al. JAMA Psychiatry. Published online November 20, 2019.
    Association of Maternal Eating Disorders With Pregnancy and Neonatal Outcomes

    キーポイント:
    <疑問>
     母親の摂食障害は不良な妊娠および新生児転帰のリスクの上昇と関連するか。
    <結果>
     この2003年から2014年のスウェーデンにおける全ての個別の出産から構成されるコホート研究において、母親の摂食障害は分娩前出血といった不良な妊娠転帰、および早産、妊娠期間に比して小さい、小頭症といった不良な新生児転帰と関連した。これら転帰の大部分のリスクは、摂食障害を現在持っている女性において最も顕著であったが、摂食障害をかつて持っていた女性でも高かった。
    <意義>
     摂食障害は不良な妊娠および新生児転帰と関連するようである。これらの結果は、妊婦の摂食障害を認識して母親と新生児の健康との潜在的関連を考慮する重要性を強調する。

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非定型うつ病の特徴、併存症、および相関物:英国バイオバンク精神健康調査からの証拠
    Brailean A et al. Psychol Med. 2019 May 2:1-10.
    Characteristics, comorbidities, and correlates of atypical depression: evidence from the UK Biobank Mental Health Survey.

    論文要旨:
    <背景>
     うつ病は複数の因果経路と複数の治療標的を持つ不均一な障害である。この研究は逆転した自律神経症状によって特徴付けられる非定型うつ病(atypical depression、AD)が、非定型でないうつ病(nonatypical depression、nonAD)より不良な経過と、異なる社会人口、生活スタイル、および併存プロフィールと関連するか否かを確認することを目的とする。
    <方法>
     英国バイオバンク精神健康質問表に回答した成人157,366人のうち37,434人(24%)が、CIDI短縮版に基づいて、確実な生涯うつ病(probable lifetime major depressive disorder、MDD)のDSM-5基準を満たした。睡眠過剰と体重増加の両方を報告した参加者はAD症例(N = 2,305)に、それ以外はnonAD症例(N = 35,129)に分類された。ADとnonADの間で、うつ病の特徴、社会人口統計、生活スタイル、生涯の逆境、精神疾患と身体疾患の併存の違いを調べるためにロジスティック回帰分析が行われた。
    <結果>
     ADを持つ人は、nonADを持つ人よりも早くうつ病を発症し、より長くより重症で反復性のエピソードを持ち、援助希求率がより高かった。ADは女性、非健康的行動(喫煙、社会からの孤立、低い身体活動)、より多い生涯の貧困と逆境、より高率な併存精神疾患、肥満症、心血管疾患、およびメタボリック症候群と関連した。定型的な自律神経症状(睡眠過少と体重減少)を持つ非定型うつ病の人と比較する感度分析は、同様の結果を示した。
    <結論>
     これらの結果は、高い併存症および生涯の逆境と関連するうつ病の慢性型としてのADの臨床的公衆衛生的意義を強調する。我々の結果は、うつ病の経過と併存症を予測し、病因メカニズムについての研究を導き、サービス利用を計画し、治療方法に関する情報を伝える上で意味を持つ。

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非定型うつ病と非定型ではないうつ病:HPA軸機能はバイオマーカーか:系統的レビュー
    Juruena MF et al. J Affect Disord 2018; 233: 45-67.
    Atypical depression and non-atypical depression: Is HPA axis function a biomarker? A systematic review.

    <ハイライト>
    • うつ病サブタイプの分類基準の違いは、重症度と治療に影響し得る。
    • うつ病サブタイプは、視床下部-下垂体-副腎(Hypothalamus-Pituitary-Adrenal、HPA)軸の活動に影響する重要な因子である。
    • メランコリーの特徴を持つ患者は、非定型うつ病を持つ患者よりも負荷後のコルチゾールレベルが上昇していた。
    • 逆転した自律神経症状に焦点を当てた研究は、対照と比較した場合の非定型うつ病のHPA軸活動の減少を示したが、大多数は健常対照から非定型うつ病を鑑別しなかった。
    • さらなる研究は、自律神経症状と標準化された方法論に重きを置きつつ、両方のサブタイプと関連するHPA軸のエピジェネティック研究を検討すべきである。

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単極性うつ病と診断された91,587人における双極性障害への移行パターンと予測因子
    Musliner KL et al. Acta Psychiatr Scand 2018; 137(5): 422-432.
    Patterns and predictors of conversion to bipolar disorder in 91 587 individuals diagnosed with unipolar depression.

    論文要旨:
    <目的>
     単極性うつ病から双極性障害への移行は、治療の修正に通じる臨床的に重要な事象であるが、この移行の認識は残念ながらしばしば遅れる。ゆえにこの研究は、単極性うつ病から双極性障害への診断移行の予測因子を特定することを目的とした。
    <方法>
     1995年から2016年にデンマークの精神科病院で単極性うつ病と診断された91,587人に基づく歴史的前向きコホート研究(historical prospective cohort study)である。一連の可能性のある予測因子と、経過観察期間(702,710人年)における単極性うつ病から双極性障害への移行との関連が、死亡を競合するリスク(competing risk)としてCox回帰を用いて推定された。
    <結果>
     経過観察期間中、単極性うつ病を持つ3,920人が双極性障害を発症した。累積移行発生率は、男性(7.7%, 95% CI: 7.0-8.4)と比べて女性(8.7%, 95% CI: 8.2-9.3)でやや高かった。単極性うつ病から双極性障害への移行の最も強い予測因子は、親の双極性障害の既往歴であった(調整済ハザード比 [adjusted hazard ratio、aHR] = 2.60, 95% CI: 2.20-3.07)。他の予測因子は指標の単極性うつ病エピソードにおける精神病性うつ病(aHR = 1.73, 95% CI: 1.48-2.02)、先行する/混在する非感情病性精神病(aHR = 1.73, 95% CI: 1.51-1.99)、指標のエピソードにおける入院治療(aHR = 1.76, 95% CI: 1.63-1.91)であった。
    <結論>
     単極性うつ病から双極性障害への診断移行は、入院治療を必要とする重度のうつ病、精神病性の症候、および親の双極性障害の既往歴によって予測される。

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米国における成人DSM-5うつ病(Major Depressive Disorder)の疫学とその特定用語
    Deborah S. Hasin et al. JAMA Psychiatry 2018; 75(4): 336-346.
    Epidemiology of Adult DSM-5 Major Depressive Disorder and Its Specifiers in the United States.

    キーポイント:
    <疑問>
     DSM-5うつ病(Major Depressive Disorder)の米国における有病率はどの程度か、DSM-5の不安性の苦痛と混合性の特徴の特定用語、それらの臨床相関はどうか。
    <結果>
     米国の成人36,309名の全国調査において、うつ病の12か月および生涯有病率はそれぞれ10.4%と20.6%であった。大抵は中等度(6~7症状)または重度(8~9症状)であり、併存症および機能障害と関連した。不安性の苦痛の特定用語はうつ病症例の74.6%、混合性の特徴は15.5%を特徴付け、生涯うつ病の約70%はある種の治療を受けていた。
    <意義>
     米国においてうつ病は現在でも深刻な健康問題であり、その特定用語について学ぶべきことは多い。

    コメント:
     DSM-5特定用語「不安性の苦痛を伴う」の5症状:2つ以上が必要
    1. 張りつめた,または緊張した感覚
    2. 異常に落ち着かないという感覚
    3. 心配のための集中困難
    4. 何か恐ろしいことが起こるかもしれないという恐怖
    5. 自分をコントロールできなくなるかもしれないという感覚

     DSM-5特定用語「混合性の特徴を伴う」の7症状:3つ以上が必要
    1. 高揚した、開放的な気分
    2. 自尊心の肥大、または誇大
    3. 普段より多弁であるか、しゃべり続けようとする心迫
    4. 観念奔逸、またはいくつもの考えが競い合っているという主観的体験
    5. 気力または目標指向性の活動の増加
    6. 困った結果につながる可能性が高い活動に熱中すること
    7. 睡眠欲求の減少

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DSM-5減弱精神病症候群の臨床的妥当性:診断の進歩、予後、および治療
    Gonzalo Salazar de Pablo et al. JAMA Psychiatry. Published online November 20, 2019.
    Clinical Validity of DSM-5 Attenuated Psychosis Syndrome: Advances in Diagnosis, Prognosis, and Treatment.

    キーポイント:
    <疑問>
     DSM-5における減弱精神病症候群(DSM-5 attenuated psychosis syndrome、DSM-5–APS)の臨床的妥当性は如何なるものか。
    <結果>
     この56の論文と23のコホート研究を含むメタ解析の系統的レビューにおいて、DSM-5–APSの臨床的妥当性が、エビデンスの基づく先例的、併存的、予測的妥当性因子に対して検証された。結果、DSM-5–APSはかなりの併存的・予測的妥当性評価を受け、大抵は精神病の臨床的リスク状態の領域における心理測定学的研究からであるが、一方で先行する、素因となる疫学的因子、神経生物学的研究、および治療については現在まで十分調べられていない。
    <意義>
     現在のエビデンスはDSM-5–APSの臨床的妥当性がある可能性を支持するが、さらなる研究はこの診断カテゴリーの疫学的プロフィールと、リスクファクター、神経生物的相関物、および治療の有効性に取り組むべきである。

    コメント:
     DSM-5今後の研究のための病態「減弱精神病症候群(Attenuated Psychosis Syndrome)」

    A. 以下の症状のうち少なくとも1つが弱い形で存在するが、現実検討は比較的保たれており、臨床的関与に値する程度の重症度または頻度を有している。
    (1)妄想、(2)幻覚、(3)まとまりのない発語
    B. 上記の(1つまたは複数の)症状は、過去1カ月の間に少なくとも週1回は存在した。
    C. 上記の(1つまたは複数の)症状は、過去1年の間に始まったか、あるいはその間に増悪した。
    D. 上記の(1つまたは複数の)症状は、臨床的関与に値するほど苦痛を与え、能力を低下させている。
    E. F. 除外基準(省略)

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うつ病サブタイプの同定のための潜在クラス分析の利用:系統的レビュー
    Ulbricht CM et al. Psychiatry Res 2018; 266: 228-246.
    The use of latent class analysis for identifying subtypes of depression: A systematic review.

    論文要旨:
     うつ病は重大な公衆衛生上の問題であるが、症状の寛解を予測することは難しい。これは障害の背景にある本質的な異質性によるのかもしれない。潜在クラス分析(Latent class analysis、LCA)は、臨床的意義を有するうつ病サブタイプを明らかにするためにしばしば用いられるが、一貫したサブタイプが現れるか否かは不明である。抑うつ症状を持つ成人サンプルにおいてうつ病のサブタイプを探索するためのLCAの使用を詳述している論文を特定するために系統的レビューを行うことで、我々はLCAの導入と報告を批判的に調べることにした。
     2016年1月より前に索引に掲載された適格論文を特定するために、PubMed、PsycINFO、CINAHL、Scopus、およびGoogle Scholarを検索した。結果、24論文が包含するのに適格とされたがサンプル特性は広く異なっていた。論文の大部分がうつ病症状を潜在的うつ病サブタイプの観察指標として使用していた。モデルの適合および選択についての詳細はしばしば欠落していた。研究間にわたって一貫して同定されたうつ病サブタイプ群はなかった。モデル構成の相違が矛盾する結果を一部説明した。
     LCAモデルの利用、解釈、そして報告の標準が、LCAの結果に対する我々の理解を改善するかもしれない。機能のような症状以外のうつ病次元の導入が、うつ病サブタイプを決定する上で役立つ可能性がある。

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成人の単極性および双極性うつ病に対する非侵襲的脳刺激の有効性と忍容性:ランダム化シャム比較試験の系統的レビューとメタ解析
    Mutz J et al. Neurosci Biobehav Rev 2018; 92: 291-303.
    Efficacy and acceptability of non-invasive brain stimulation for the treatment of adult unipolar and bipolar depression: A systematic review and meta-analysis of randomised sham-controlled trials.

    論文要旨(抜粋):
     我々は反応率、寛解率、あらゆる理由による中止、およびうつ病重症度の継続的測定を分析した。結果、56研究が包含基準(N = 3058, 平均年齢 = 44.96歳, 女性=61.73%)を満たした。
     反応率は左背外側前頭皮質(DLPFC)への高頻度反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)(OR = 3.75, 95% CI [2.44; 5.75])、右側低頻度rTMS(OR = 7.44, 95%CI [2.06; 26.83])、両側rTMS(OR = 3.68,95%CI [1.66; 8.13])、深部TMS(OR = 1.69, 95%CI [1.003; 2.85])、間欠的θバースト刺激(TBS)(OR = 4.70, 95%CI [1.14; 19.38])、および経頭蓋直流電気刺激(tDCS)(OR = 4.17, 95% CI [2.25; 7.74])の有効性を示したが、持続的TBSまたは同期化TMSについてはその限りでなかった。あらゆる理由による中止率に違いはなかった。
     左DLPFCへの高頻度rTMSに最も強いエビデンスを認めた。間欠的TBSは治療期間の短縮の点で前進である。tDCSは非治療抵抗性うつ病に対して可能かもしれない治療である。現在までのところ、TBSとsTMSの有効性と忍容性に関しては確かな結論を引き出せるほど十分な公表データはない。

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成人における抑うつエピソードの急性期治療のための非外科的脳刺激の比較有効性と忍容性:系統的レビューとネットワークメタ解析
    Mutz J et al. BMJ 2019; 364: 11079.
    Comparative efficacy and acceptability of non-surgical brain stimulation for the acute treatment of major depressive episodes in adults: systematic review and network meta-analysis.

    論文要旨:
    <目的>
     成人における抑うつエピソードの急性期治療のための非外科的脳刺激の比較臨床有効性と忍容性を推定する。
    <デザイン>
     系統的レビューと一対およびネットワークメタ解析。
    <データソース>
     2009年から2018年に公表されたレビュー中の引用文献の手動検索で補完された2018年5月8日までのEmbase、PubMed/Medline、およびPsycINFOの電子検索、および選択された臨床試験。
    <研究選択のための適格基準>
     電気けいれん療法(electroconvulsive therapy、ECT)、経頭蓋磁気刺激(transcranial magnetic stimulation;反復[rTMS]、加速[accelerated]、プライミング[priming]、深部[deep]、および同期化[synchronized]), θバースト刺激(theta burst stimulation)、磁気けいれん療法(magnetic seizure therapy)、経頭蓋直流電気刺激(transcranial direct current stimulation、tDCS)、またはシャム療法(sham therapy)へ無作為割付された臨床試験。
    <主要評価項目>
     主要アウトカムは反応(有効性)とあらゆる理由による中止(忍容性)で、オッズ比と95%信頼区間で表された。治療後の寛解と継続的なうつ病重症度スコアも測定された。
    <結果>
     うつ病、または双極性うつ病を持つ6,750人の患者(平均年齢47.9歳;59%が女性)を無作為割付した113試験(262治療群)が包含基準を満たした。最も多く研究された治療比較は高頻度左側rTMSおよびtDCS対シャム療法であり、最新の治療についての研究はまだ少なかった。エビデンスの質は大抵がバイアスリスクが低いか不明であり(113のうち94試験、83%)、治療効果の要約推定量の正確性はかなり変動した。
     ネットワークメタ解析において、18のうち10の治療法がシャム療法より高い反応と関連した:両側 ECT (要約オッヅ比 8.91, 95% 信頼区間 2.57 to 30.91)、高用量右片側ECT (7.27, 1.90 to 27.78)、プライミングTMS (6.02, 2.21 to 16.38)、磁気けいれん療法 (5.55, 1.06 to 28.99)、両側rTMS (4.92, 2.93 to 8.25)、両側θバースト刺激 (4.44, 1.47 to 13.41)、低頻度右側rTMS (3.65, 2.13 to 6.24)、間欠的θバースト刺激 (3.20, 1.45 to 7.08)、高頻度左側rTMS (3.17, 2.29 to 4.37)、およびtDCS (2.65, 1.55 to 4.55)。
     他の実治療を対照とした実介入のネットワークメタ解析推定量は、両側ECTと高用量右片側ECTが反応増加と関連することを示した。すべての治療法は少なくともシャム治療と同程度に許容可能であった。
    <結論>
     これらの結果は、うつ病を持つ成人のための選択肢または追加治療として非外科的脳刺激法を検討することを支持するエビデンスを提供する。また、新しい治療を比較するもっと良く設計されたランダム化比較試験や、磁気けいれん療法を研究するシャム比較試験といった脳刺激専門分野における重要な研究優先事項を強調する。

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重症の月経前症候群と月経前不快気分障害を評価する症状日記(symptom diary)
    Janda C et al. Women Health 2017; 57(7): 837-854.
    A symptom diary to assess severe premenstrual syndrome and premenstrual dysphoric disorder.

    論文要旨:
     月経前症候群(premenstrual syndrome、PMS)と月経前不快気分障害(premenstrual dysphoric disorder、PMDD)の区別については、これまで広く議論されてきた。PMDDは精神疾患としてDSM-5に掲載されているが、一方でPMSはどの診断マニュアルにおいても精神疾患とはみなされていない。結果、PMSは異なるやり方で操作化されている。症状日記(symptom diary)を続けることがPMDDの診断には必須であるが、PMSについても推奨される。したがって、本研究の目的はDSM-5に基づく症状日記の中にPMSとPMDDを操作化することであった。
     我々は症状日記を評価するための症状強度スコア(SI-score)と生活支障スコア(INT-score)を開発した。98人の女性(20~45歳)が2回の月経周期にわたる症状日記と月経前症状の後方視的スクリーニングを記載し、加えて2013年8月から2015年8月までの機能障害に関する質問票に回答した。スコアは「程々から良好(moderate to good)」の信頼性を示した(Cronbach's α = 0.83-0.96)。収束的妥当性(convergent validity)は後方視的スクリーニング、疼痛障害インデックス(Pain Disability Index)、およびドイツ語版PMS影響度質問票(German PMS-Impact Questionnaire)との有意な相関によって示された。弁別的妥当性(discriminant validity)はBig Five Inventory-10との低い相関によって示された。
     これらのスコアは、研究および臨床診療における前方視的症状採点による評価を促進するかもしれない。さらなる研究は、スコアの検証の継続(例:外来設定における評価)に焦点を当てるべきである。

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月経前不快気分障害(PMDD)を持つ女性における月経前症状クラスター:表出、安定性、および機能障害との関連
    Kaiser G et al. J Psychosom Res 2018; 115: 38-43.
    Clusters of premenstrual symptoms in women with PMDD: Appearance, stability and association with impairment.

    論文要旨:
     月経前不快気分障害(premenstrual dysphoric disorder、PMDD)は均一な診断単位であると仮定されているが、非常に多彩な臨床症状が特徴である。この研究で、我々は重度の月経前症候群(premenstrual syndrome、PMS)、またはPMDDを持つと前方視的に診断された女性において症状クラスターを調べた。
     全部で174の前方視的症状日記が主因子法を用いて分析され、①感情的不快(affective dysphoria)、②身体的不快(somatic dysphoria)、③苛立ち(irritability)、④胸/体の過敏性(breast/body sensitivity)、⑤痛み(pain)、⑥摂食行動(eating behavior)と命名された6つのクラスターを明らかにした。Cronbachのα係数は、痛みのクラスター(0.69)を除く全てのクラスターで良好であった。痛みと摂食行動を除く症状クラスターは、連続する2回の月経周期間、および8週間の待ち期間で隔てられた2回の月経周期間で安定しているようであった。
     重回帰分析はクラスターと機能障害の間の様々な関連を示したが、身体的不快が最も強く機能障害と関連するクラスターであった。結果は、重度のPMS/PMDDにおいては様々な症状パターンを考慮すべきであることを示す。障害のリスクは症状クラスター間で違うので、研究と治療の中で個別の治療選択肢が検討され、もっと研究されるべきである。

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不安関連疾患に対する認知行動療法の長期転帰:系統的レビューとメタ解析
    Eva A. M. van Dis et al. JAMA Psychiatry. Published online November 23, 2019.
    Long-term Outcomes of Cognitive Behavioral Therapy for Anxiety-Related Disorders: A Systematic Review and Meta-analysis.

    キーポイント:
    <疑問>
     不安障害群、心的外傷後ストレス障害、および強迫症/強迫性障害に対する認知行動療法の長期転帰はどうか。
    <結果>
     この4,118人の患者を含む69のランダム化臨床試験の系統的レビューとメタ解析において、不安症状を持つ患者では治療終了後12ヶ月の間に、認知行動療法は対照条件より良好な転帰と関連した。長期経過観察において、有意な関連は全般性不安症、社会不安症、そして心的外傷後ストレス障害についてのみ認められ、再発率(大部分は広場恐怖を持つ/持たないパニック症)は3ヶ月後で0%、12カ月後で14%であった。
    <意義>
     対照条件と比較して認知行動療法は、治療終了後12ヶ月の間のより低い不安症状と全般的に関連することを結果は示すが、より長期のアウトカムを調べた研究はほとんどない。

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自殺リスクのある米国陸軍人のための短期認知行動療法と従来の治療の経済的評価
    Bernecker SN et al. JAMA Psychiatry. Published online November 27, 2019.
    Economic Evaluation of Brief Cognitive Behavioral Therapy vs Treatment as Usual for Suicidal US Army Soldiers.

    キーポイント:
    <疑問>
     米国陸軍人における自殺行動を防ぐための短期認知行動療法は、従来の治療と比較して費用対効果が高いか。
    <結果>
     従来の治療と比較して短期認知行動療法が費用の節約になるかを推定するために、この経済的評価では公表済の臨床試験データと複数の疫学データセットが利用された。短期認知行動療法は、代替シナリオを探索する感度分析でも費用対効果は高かった。
    <意義>
     リスクのある軍人のための短期認知行動療法は費用対効果が高い介入と考えられ、広範な実施について検討されるべきである。

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双極Ⅰ型/Ⅱ型障害を持つ人と対照参加者の睡眠特性の遺伝的易罹患性についての比較
    Katie J. S. Lewis et al. JAMA Psychiatry. Published online November 21, 2019.
    Comparison of Genetic Liability for Sleep Traits Among Individuals With Bipolar Disorder I or II and Control Participants.

    キーポイント:
    <疑問>
     不眠、過眠、クロノタイプの遺伝的易罹患性は双極性障害のサブタイプを弁別するか。
    <結果>
     この4,672人の双極性障害を持つ参加者と5,714人の対照参加者の症例対照研究において、双極Ⅰ型障害を持つ人は有意に大きなより長い睡眠時間の遺伝的易罹患性を持ち、一方で双極Ⅱ型障害を持つ人は有意に大きな不眠の遺伝的易罹患性を有し、これらの結果は独立サンプルで再現された。双極性サブタイプを持つ人は、朝型または夜型のクロノタイプの遺伝的易罹患性に違いはなかった。
    <意義>
     不眠と過眠の多遺伝子易罹患性と双極性障害内の臨床的階層の関係が、我々の知る限りこの研究において初めて示された。

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PHQ-2を用いたうつ病の同定:診断メタ解析
    Manea L et al. J Affect Disord 2016; 203: 382-395.
    Identifying depression with the PHQ-2: A diagnostic meta-analysis.

    論文要旨:
    <背景>
     多忙な臨床場面での有益性から、うつ病を同定するための非常に短い尺度の使用に関心が寄せられている。PHQ-2はそのような尺度の1つであり、うつ病の中核症状(抑うつ気分と興味・喜びの喪失)に関係する2つの質問から構成される。
    <方法>
     大うつ病を発見するPHQ-2の診断能力を評価した研究を特定するために系統的レビューが行われた。Embase、MEDLINE、PsychINFO、および灰色文献(grey literature)のデータベースが探索され、選択された研究の文献リストと以前の関連レビューも調べられた。PHQ-2の標準的採点法を用いて、最終判断基準である診断面接に対するその能力を評価し、推奨(3点以上)または代替(2点以上)のカットオフポイントにおける能力についてのデータを報告した研究が含められた。異質性を評価した後に適当である場合には、感度、特異度、尤度比、および診断オッズ比を導くために二変数・診断メタ解析を用いて諸研究からのデータが統合された。
    <結果>
     21の研究が選択基準を満たし、全11,175人のうち最終判断基準に基づいて1,529人がうつ病と診断された。選択された21研究のうち19研究が、3以上のカットオフポイントについてデータを報告していた。統合感度は0.76 (95% CI =0.68-0.82)、統合特異度は0.87 (95% CI =0.82-0.90)であった。しかし、このカットオフでは相当な異質性を認めた(I(2)=81.8%)。17研究が2以上のカットオフポイントにおける測定能力についてのデータを報告していた。このカットオフポイントにおける異質性I(2)は43.2%、統合感度は0.91 (95% CI =0.85-0.94)、統合特異度は0.70 (95% CI =0.64-0.76)であった。
    <結論>
     原版の妥当性研究より全般的に低い3以上のカットオフポイントにおけるPHQ-2の感度は、うつ病症例のほとんどを見逃さないことを臨床医が確保したいならば、カットオフポイントは2以上が望ましい可能性を示す。しかし、うつ病の有病率が低い状況では、これは関連する低い特異度のために許容できないほどに高い偽陽性率を生じるかもしれない。とはいえ、選択的に報告されたカットオフである可能性を考えれば、これらの結果は注意して解釈される必要がある。

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最適テスト作成法による自己報告式精神健康症状尺度の短縮化:PHQ-Dep-4の開発と検証
    Ishihara M et al. Depress Anxiety 2019; 36(1): 82-92.
    Shortening self-report mental health symptom measures through optimal test assembly methods: Development and validation of the Patient Health Questionnaire-Depression-4.

    論文要旨:
    <背景>
     この研究の目的は客観的基準を用いて、抑うつ症状群を評価する自己報告式質問票であるPatient Health Questionnaire-9 (PHQ-9)の短縮版を開発し検証することであった。
    <方法>
     20の主診断テストの正確性研究に参加した英語を話す参加者7,850人からPHQ-9への回答を得た。PHQの一次元性が確認的因子分析で確認され、項目反応理論モデルが適合された。最適テスト作成(Optimal test assembly、OTA)法は、1~8項目の間の可能性のある個々の長さについて最大限に正確な短縮版を特定した。事前に定義された妥当性、信頼性、診断正確性基準に基づいて最終短縮版が選ばれた。
    <結果>
     4項目のPHQ短縮版(PHQ-Dep-4)が選ばれた。PHQ-Dep-4のCronbachのα係数は0.805であった。PHQ-Dep-4の感度および特異度はそれぞれ0.788、0.837であり、PHQ-9と統計的に等価であった(感度 = 0.761, 特異度 = 0.866)。元のPHQ-9合計スコアとの相関は高かった(r = 0.919)。
    <結論>
     原版のPHQ-9と比較してPHQ-Dep-4は、スコアの情報損失が最小である妥当な短縮版である。事前に定義された客観的基準に基づく患者報告のアウトカム測定を短縮化するためにOTA法は利用されてきたが、この一般手順を健康研究における広範な使用に対して正当化するには、今後の研究が必要である。加えて、異質性が調べられていないために、異なる患者母集団においてこの研究結果を追試する必要がある。

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アルツハイマー病を持つ高齢成人におけるビタミンD補充の認知機能と血中アミロイドβ関連バイオマーカーに対する効果:ランダム化・二重盲検・プラセボ比較試験
    Jia J et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry 2019; 90(12): 1347-1352.
    Effects of vitamin D supplementation on cognitive function and blood Aβ-related biomarkers in older adults with Alzheimer's disease: a randomised, double-blind, placebo-controlled trial.

    論文要旨:
    <目的>
     我々の研究は、アルツハイマー病(Alzheimer's disease、AD)を持つ被験者における認知機能とアミロイド・ベータ(Aβ)関連バイオマーカーに対する12ヶ月間のビタミンD補充の効果を評価することを目的とした。
    <方法>
     これはランダム化・二重盲検・プラセボ比較試験であった。210名のAD患者が介入群と対照群にランダム化された。参加者は12ヶ月間、800 IU/日のビタミンD、またはプラセボとしてのでんぷん粒を摂取した。認知能力とAβ関連バイオマーカーの検査がベースライン、6ヶ月、12ヶ月に実施された。
    <結果>
     反復測定の分散分析は、血漿Aβ42、APP、BACE1、APPmRNA、BACE1mRNAレベル、および知識、計算、数唱、語彙、積木模様、絵画配列スコアの、対照群と比較した介入群における有意な改善を示した(p<0.001)。混合モデル分析によれば、ビタミンD群では経過観察期間における全検査IQの有意な増加を認めた(p<0.001)。
    <結論>
     ADを持つ高齢患者において12ヶ月にわたる毎日の経口ビタミンD補充(800 IU/day)は、認知機能を改善してAβ関連バイオマーカーを低下させるかもしれない。ビタミンDのより大規模で長期間のランダム化試験が必要である。
    <試験登録番号>
     ChiCTR-IIR-16009549.

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統合失調症を持つ女性における乳癌健診:系統的レビューとメタ解析
    Hwong A et al. Psychiatr Serv. Published Online: 14 Nov 2019.
    Breast Cancer Screening in Women With Schizophrenia: A Systematic Review and Meta-Analysis.

    論文要旨:
    <目的>
     統合失調症を持つ女性は一般人口よりも遅い疾患ステージで乳癌診断を受けるようだ。この格差を調べるために、本報告は統合失調症および他の精神病性障害を持つ女性におけるマンモグラフィによる乳癌検診の受診率の一般人口との差をレビューして定量化した。
    <方法>
     系統的文献検索が、PubMed、Embase、Web of Science、およびPsycINFOデータベースにおいて行われた。各々のデータベースが、その開始から2018年9月14日まで検索された。検索方略には、乳癌(breast cancer)、マンモグラフィ(mammography)、統合失調症(schizophrenia)、精神病(psychosis)の検索語が含まれた。2名の査読者が独立にスクリーニングして、適格な研究を評価した。主要評価項目は、統合失調症および精神病性障害を持つ女性とこれらの疾患を持たない比較可能な女性集団におけるマンモグラフィによる乳癌検診の受診率であった。系統的レビューおよびメタ解析のための優先的報告項目(Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses、PRISMA)ガイドラインがデータの要約に、ニューキャッスル・オタワ・スケール(Newcastle-Ottawa Scale、NOS)がデータの質の評価に用いられた。メタ解析は変量効果モデルを用いて実施された。
    <結果>
     レビューされた全部で304の抄録から、統合失調症または精神病の診断を持つ25,447人の女性を含む4ヶ国にわたる11の研究が選択基準を満たした。メタ解析は、統合失調症を持つ女性は統合失調症を持たない女性よりマンモグラフィによる乳癌検診を受診しないことを示した(統合OR=0.50, 95% 信頼区間=0.38-0.64, p<0.001)。サブグループ解析において、この関連は研究の質に有意な影響を受けなかった。
    <結論>
     統合失調症および他の精神病性障害を持つ女性のマンモグラフィによる乳癌検診の受診率は、一般人口のおよそ半分であった。この格差の原因を調べるために、さらなる研究が必要である。

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概説:統合失調症
    Robert A. McCutcheon et al. JAMA Psychiatry. Published online October 30, 2019.
    Schizophrenia—An Overview.

    レビュー論文の要旨:
    <重要性>
     統合失調症は大抵の臨床医がしばしば日常診療で出会う一般的な重度精神疾患である。本障害とその治療を理解する基礎を提供するために、この報告は統合失調症の臨床特徴、疫学、遺伝学、神経科学、および精神薬理学を展望する。最近の研究結果がどのように臨床上の理解に情報を提供するかを強調するために、この教育的レビューは臨床症例を一緒に示す。
    <主題>
     検討すべき最初の主題は、統合失調症の易罹患性を与える神経発達の軌跡の変化と、前駆症状の発症の促進における人生早期の環境的遺伝的リスク因子の役割である。2番目の主題は、統合失調症の認知症状と陰性症状の発現における皮質興奮と抑制の不均衡の役割である。3番目の主題は、統合失調症の陽性症状の発生における心理社会的ストレス、心理的因子、および皮質下ドーパミン機能不全の役割の検討である。最後の主題は、統合失調症の治療とよくある治療の有害作用の背景にあるメカニズムの検討である。
    <結論と関連性>
     統合失調症は複数の原因の複雑な表出である。とは言え神経科学の進歩は、陽性、陰性、そして認知症状の発症における、特に前頭・側頭・中脳線条体脳領域を含む主要回路の役割を見出した。現在の薬理学的治療は同じメカニズム、つまりドーパミンD2受容体の阻害を用いて作動するが、それは有害作用にも関係する。しかし、ここで議論された回路メカニズムは、既存の薬剤では十分良くならない症状領域において特に有用かもしれない新規の見込みのある治療標的を特定する。

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非自発的精神科入院のリスク上昇と関連する臨床的・社会的因子:系統的レビュー、メタ解析、およびナラティブ統合
    Walker S et al. Lancet Psychiatry 2019; 6(12): 1039-1053.
    Clinical and social factors associated with increased risk for involuntary psychiatric hospitalisation: a systematic review, meta-analysis, and narrative synthesis.

    論文要旨:
    <背景>
     非自発的精神科入院の適用は同じ国の中でも国によっても広く異なる。個人および集団において非自発的入院のリスクを上昇させる因子は不明であり、これらの格差を理解して、非自発的入院を減少させる介入の開発に情報を提供するにはエビデンスが必要である。成人の非自発的精神科入院と関連する患者・サービス・地域レベルのリスク因子を統合するために、我々は系統的レビュー、メタ解析、およびナラティブ統合を行った。
    <方法>
     自発的精神科入院患者と非自発的精神科入院患者の特徴を比較した研究と、一般人口サンプルにおいて非自発的に入院した患者の特徴を調査した研究について、我々は1983年1月1日から2019年9月14日まで、MEDLINE、PsycINFO、Embase、Cochrane Controlled Clinical Register of Trialsを検索した。結果は変量効果モデルメタ解析とナラティブ統合を用いて統合された。本レビューはPRISMA(系統的レビューおよびメタ解析のための優先的報告項目)ガイドラインに準拠し、PROSPERO(番号:CRD42018095103)に登録されている。
    <結果>
     22ヶ国からの77研究が含まれた。自発的入院と比べて非自発的入院は、男性(odds ratio 1.23, 95% CI 1.14-1.32; p<0.0001)、独身(1.47, 1.18-1.83; p<0.0001)、失業(1.43, 1.07-1.90; p=0.020)、生活保護受給(1.71, 1.28-2.27; p<0.0001)、精神病性障害の診断(2.18, 1.95-2.44; p<0.0001)、または双極性障害の診断(1.48, 1.24-1.76; p<0.0001)、および非自発的入院の既往(2.17, 1.62-2.91; p<0.0001)と関連した。
    我々はナラティブ統合を用いて、他者の危険の自覚、陽性精神病症状、病識の低さ、入院前の治療アドヒアランスの低さ、および警察の入院への関与と非自発的精神科入院の関連を見出した。集団レベルでは、地域の剥奪(貧困)と非自発性入院の間の正の用量反応関係を示すある程度のエビデンスを認めた。
    <解釈>
     非自発的入院の既往と精神病性障害の診断は、非自発的精神科入院の最大のリスクと関連する因子であった。これらのリスク因子を持つ人は、危機計画といった予防的介入にとって重要な標的グループである。個人レベルと集団レベルの経済的剥奪は、非自発的入院のリスク上昇と関連した。利用可能なエビデンスを用いて、リスク因子の背景にあるメカニズムを特定することはできなかった。したがって、臨床的・社会的・構造的因子を調べる統合的アプローチによるさらなる研究が、臨床的意思決定の過程、および拘留過程の患者体験の質的研究と並行して必要である。

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抗うつ薬の単独または認知行動療法の併用によるうつ病からの回復後の再発予防:第2相試験
    Robert J. DeRubeis et al. JAMA Psychiatry. Published online December 4, 2019.
    Prevention of Recurrence After Recovery From a Major Depressive Episode With Antidepressant Medication Alone or in Combination With Cognitive Behavioral Therapy: A Phase 2 Randomized Clinical Trial.

    キーポイント:
    <疑問>
     うつ病を持つ患者において、回復後に抗うつ薬治療が中止されるか維持される場合のうつ病の再発予防に対する認知行動療法と抗うつ薬の併用効果はあるか。
    <結果>
     この慢性または再発の抑うつエピソードから回復したうつ病を持つ292人の成人患者の第2相ランダム化臨床試験において、患者が急性期の認知行動療法を用いて回復したか否かに関わりなく、抗うつ薬治療の中止は抗うつ薬治療の維持と比較してより高い再発率と関連した。
    <意義>
     抗うつ薬治療の維持は抑うつエピソードのリスク減少に関連したが、認知行動療法を用いた以前の治療はそれとは関連しなかった。認知行動療法が同様の保護効果を持つのか、あるいは抗うつ薬を認知行動療法に加えることがそのような保護効果を妨げるのかは不明である。

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統合失調症を持つ患者における部位別の癌死亡率:系統的レビューとメタ解析
    Ni L et al. BMC Psychiatry 2019; 19(1): 323.
    Mortality of site-specific cancer in patients with schizophrenia: a systematic review and meta-analysis.

    論文要旨:
    <背景>
     癌死亡率と統合失調症の関係について多くの研究が一貫性のない結果を報告してきた。我々の目的は、統合失調症を持つ患者において、よくある癌について部位別の死亡率を定量して、利用可能な研究エビデンスを統合することである。
    <方法>
     我々はPubMed、EMBASE、およびWeb of Scienceデータベースの系統的検索を行い、統合失調症を持つ患者における様々な癌の死亡率を報告する研究を含めた。統合相対リスク(pooled relative risk、RR)と95%信頼区間(95% confidence interval、95%CI)を計算するために、変動効果モデルが適用された。
    <結果>
     統合失調症を持つ116万2,971人の参加者から構成される7つの研究が、このメタ解析に含められた。統合失調症を持つ患者における乳癌、結腸癌、肺癌、および前立腺癌の死亡リスクに関するデータが定量解析された。
     統合された結果は、統合失調症を持つ患者の乳癌(RR = 1.97, 95%CI 1.38-2.83)、肺癌(RR = 1.93, 95%CI 1.46-2.54)、および結腸癌(RR = 1.69, 95%CI 1.60-1.80)の死亡リスクは、一般人口または対照群のそれと比較して有意に高いことを示した。男性患者における前立腺癌の死亡リスクが上昇していたが、有意な差は見出せなかった(RR = 1.58, 95% CI 0.79-3.15)。
     女性患者では肺癌(RR = 2.49, 95%CI 2.40-2.59)と結腸癌(RR = 2.42, 95%CI 1.39-4.22)の、男性患者では肺癌(RR = 2.40, 95%CI 2.30-2.50)と結腸癌(RR = 1.90, 95%CI 1.71-2.11)の死亡リスクの上昇が観察された。
    <結論>
     統合失調症を持つ人は乳癌、結腸癌、および肺癌の有意に高い死亡リスクを持つ。

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青年の自殺念慮は連続的または範疇的か(Continuous or Categorical?):分類分析
    Liu RT et al. J Abnorm Child Psychol 2015; 43(8): 1459-1466.
    Is Adolescent Suicidal Ideation Continuous or Categorical? A Taxometric Analysis.

    論文要旨:
     自殺念慮と自殺行動の強い関連にも関わらず、自殺念慮を持つ人のうち自殺を試みる者は比較的少数である。自殺念慮の潜在構造を明らかにすることは、自殺リスクの評価と予防の努力だけではなく、理論にとっても直接的な意味を持つ。分類分析(taxometric analysis)は、ある潜在概念(latent construct)が本来、タクソン(分類単位/分類群taxon、または範疇的categorical)であるか、それとも連続的(次元的dimensional)であるか、を評価するために特別にデザインされた統計的手法である。この統計的手法は様々な種類の精神病理、および関連するリスク因子を解明するために過去10年間で使用が増えたが、自殺念慮についての分類分析研究はこれまでない。
     本プロジェクトの目的は、臨床的にうつ病と診断され治療を求めた青年のサンプル(n = 334)に分類分析の手法を適用することであった。現在の自殺念慮が自殺念慮質問票(Suicidal Ideation Questionnaire-Jr.[SIQ-Jr]、訳注:青年の自殺念慮に関して広く使用される尺度で、15項目の質問から構成される)を用いて評価された。2つの数学的に冗長でない分類分析手法(MAXEIGとL-Mode)の結果は、自殺念慮の連続的な潜在構造に合致した。今回の結果はうつ状態の青年の自殺念慮は次元的(dimensional)であることを示す。これら結果の研究、理論、自殺リスクの評価方略への含意が考察された。

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精神疾患を持つ人における原因別損失生存年数:全国登録に基づくコホート研究
    Erlangsen A et al. Lancet Psychiatry 2017; 4(12): 937-945.
    Cause-specific life-years lost in people with mental disorders: a nationwide, register-based cohort study.

    論文要旨:
    <背景>
     精神疾患を持つ人の死亡率は一般人口のそれより高く、この公衆衛生上の健康問題に対処するためにはより詳細な死亡率差の推定値が必要である。我々は、精神疾患を持つ人と持たない人の間の原因別死亡率差が1995年から2014年の間に変化したか否かを評価するために、損失生存年数(life-years lost、訳注:Years of Life Lost: YLLとも言われ、早死にすることによって失われた年数のこと)を定量して、差の経時変化を評価した。
    <方法>
     コホートデザインを用いて、我々はデンマーク市民登録システム(the Danish Civil Registration System)からの全国民データを、精神医学中央研究登録(the Psychiatric Central Research Register)からの病院受診情報、およびデンマーク死因登録(the Danish Cause of Death register)からの死亡情報に連結させた。全ての連結データソースは、1995~2014年にデンマークで生活した15~94歳の全員を含む縦断的情報を持っていた。死亡率比と平均損失生存年数を用いて、我々は原因別の死亡率差を評価した。
    <結果>
     1995~2014年に15~94歳の610万7,234人(男性:3,026,132人、女性:3,081,102人)がデンマークで生活した。研究母集団が8,921万6,177人年(男性:43,914,948人年;女性:45,301,229人年)にわたって観察された。
     原因別の死亡率は、精神疾患を持つ人のほうが持たない人より高かった(1,000人年あたり総死亡率は、順に男性では27·1 vs 11·4、女性では21·2 vs 11·0)。
     精神疾患を持たない人と比較して精神疾患を持つ男女は、順に10·20年と7·34年の過剰な損失生存年数を認めた。過剰な損失生存年数に関して、精神疾患を持つ人と持たない人の間で最大の原因別差異は呼吸器疾患(男性: 0·9; 女性: 1·4)およびアルコールの不適切な使用(男性: 2·8; 女性: 1·2)であった。1995年から2014年の間に過剰な損失生存年数は、新生物[腫瘍](男性: 0·7; 女性: 0·4)、心疾患(男性: 1·2; 女性: 0·3)、および呼吸器疾患(男性: 0·3; 女性: 0·2)については増加、自殺(男性: -0·7; 女性: -0·5)と事故(男性: -0·9; 女性: -0·5)については減少した。
    <解釈>
     新しい方法を適用することで、損失生存年数のより正確な推定値を得ることができた。精神疾患を持つ人における医学的疾患と病気による過剰な死亡の増加は、このような側面に対処する将来の介入の必要性と、アルコールの不適切な使用、自殺、および事故による過剰な死亡の引き続き高い割合を強調する。
    <資金>
     The Lundbeck Foundation Initiative for Integrative Psychiatric Research (iPSYCH).

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精神疾患に関連する死亡関連健康指数の包括的分析:全国登録に基づくコホート研究
    Plana-Ripoll O et al. Lancet 2019; 394(10211): 1827-1835.
    A comprehensive analysis of mortality-related health metrics associated with mental disorders: a nationwide, register-based cohort study.

    論文要旨:
    <背景>
     精神疾患を持つ人は早期死亡リスクが高いことを、系統的レビューは一貫して示してきた。従来、このエビデンスは平均余命減少の相対リスクまたは粗推定値に基づいていた。この研究の目的は、障害の発症年齢を考慮する測定としての男女・年齢別の死亡率比(mortality rate ratios、MRRs)と損失生存年数(life-years lost、LYLs)を含む、精神疾患に関連する死亡関連健康指数の包括的分析を行うことであった。
    <方法>
     この住民ベースのコホート研究に、我々は1995年1月1日から2015年12月31日の間のある時点においてデンマークに居住した95歳より若い人全員を含めた。精神疾患に関する情報は精神医学中央研究登録(the Psychiatric Central Research Register)から、死亡の日付と原因はデンマーク死因登録(the Danish Cause of Death register)から得た。我々は精神疾患を10のグループ、死因を11のグループに分類し、死因はさらに自然死(病気と疾患による死亡)と外因死(自殺、他殺、および事故)に区分した。各々特定の精神疾患について、我々は性別、年齢、およびカレンダー時刻で調整したポアソン回帰モデルを用いてMRRsを、あらゆる理由による死亡と各々特定の死因についての過剰なLYLs(言い換えれば、精神疾患を持つ人と一般人口の間のLYLsの差)を推定した。
    <結果>
     7,369,926人が我々の分析に含まれた。我々は精神疾患の診断を持つ人の死亡率がデンマーク一般人口のそれより高いことを見出した(1,000人年あたり28·70 死亡 [95% CI 28·57-28·82] vs 12·95 死亡 [12·93-12·98])。加えて、あらゆる種類の障害がより高い死亡率と関連し、MRRsは気分障害の1·92 (95% CI 1·91-1·94) から物質使用障害の3·91 (3·87-3·94) に及んだ。あらゆる種類の障害がより短い平均余命と関連し、過剰なLYLsは女性の器質的障害の5·42年(95% CI 5·36-5·48)から男性の物質使用障害の14·84年 (14·70-14·99)に及んだ。特定の死因を調べた場合、どの種類でも精神疾患を持つ男性のがん死亡率が一般人口のそれより高かったにも関わらず、新生物関連の死亡による損失生存年数はより少なかった。
    <解釈>
     精神疾患は早期死亡と関連する。様々な種類の障害を用いてMRRsとLYLsに基づく早期死亡を示し、年齢、性別、死因ごとに提示することで死亡率の包括的分析を提供した。早期死亡の正確な推定値を提供することで、これまで十分理解されてこなかった競合リスクと特定の死因に関する特徴を明らかにした。
    <資金>
     Danish National Research Foundation.

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男性と性交渉を持つシスジェンダーの男性とトランスジェンダーの女性におけるメタアンフェタミン使用障害に対するミルタザピンの効果:プラセボ比較ランダム化臨床試験
    Phillip O. Coffin et al. JAMA Psychiatry. Published online December 11, 2019.
    Effects of Mirtazapine for Methamphetamine Use Disorder Among Cisgender Men and Transgender Women Who Have Sex With Men: A Placebo-Controlled Randomized Clinical Trial.

    キーポイント:
    <疑問>
     ミルタザピンを用いた治療は、男性と性交渉を持つシスジェンダー(Cisgender)*の男性とトランスジェンダー(Transgender)#の女性におけるメタアンフェタミン使用と、性的なヒト免疫不全ウイルス(HIV)リスク行動を減少させるか。
    <結果>
     この分析において、ミルタザピンは24週間の治療期間と治療後12週間の追跡期間にわたって、メタアンフェタミン使用を減少させた。ミルタザピンはまた、いくつかの性的なHIVリスク行動を減少させ、両結果は先行研究と一致した。
    <意義>
     ミルタザピンは、2つの独立したランダム化臨床試験においてメタアンフェタミン使用障害に対する治療効果を示した最初の薬剤である。

    訳注:
     *生まれ持った性別と心の性が一致しており、その性別に従って生きる人
     #生まれ持った性別と心の性が一致しないことから、反対の性で生きようとする人
 
  1. 累積的な小児期の逆境および青年期の暴力犯罪と成人期早期の自殺の関連
  2. 喫煙を併存するアルコール使用障害に対する医学的管理と組み合わせたバレニクリン(varenicline)の効果:ランダム化比較試験
  3. 犯罪行動の損傷ネットワーク局在
  4. 自閉症における小脳結合性の変化とマウスにおける小脳を介した自閉症関連行動の救済
  5. 自閉特性の潜在構造:成人の自閉スペクトラム指数の分類分析、潜在クラス分析、そして潜在プロフィール分析
  6. 看護師健康調査Ⅱ(米国)参加者の子供における自閉スペクトラム症の地理的パターン
  7. 治療抵抗性うつ病における経口抗うつ薬を補助する経鼻エスケタミンの有効性と安全性:ランダム化臨床試験
  8. 母親の妊娠前と妊娠中における葉酸およびマルチビタミン・サプリメントの使用と、子の自閉スペクトラム症(ASD)のリスクの関連
  9. 双極うつ病への追加療法としての経頭蓋直流刺激(tDCS)の有効性と安全性:ランダム化臨床試験
  10. 米国における小児および青年の自閉スペクトラム症(ASD)の有病率: 2014年~2016年
  11. 閉経移行期の抑うつ症状予防における経皮的エストラジオールと微細化プロゲステロンの有効性:ランダム化臨床試験
  12. 緑色葉野菜の栄養素および生物活性体と認知機能低下:前向き研究
  13. アルコール使用障害を持つ患者の薬物療法に関する米国精神医学会(APA)の診療指針
  14. 精神疾患における解離:解離体験尺度を用いた研究のメタ解析
  15. 結婚と認知症のリスク:観察研究の系統的レビューとメタ解析
  16. 非精神疾患で入院した人における抗精神病薬と誤嚥性肺炎のリスク:コホート研究
  17. 双極性障害に対する補助的光療法:ランダム化・二重盲検・プラセボ対照試験
  18. 心的外傷後ストレス障害に対する短期の曝露に基づく治療と認知処理療法:ランダム化・非劣性臨床試験
  19. 精神病体験を持つ青年におけるタバコと大麻使用の結合パターン連関
  20. エスシタロプラムへの曝露と治療の失敗に対するCYP2C19遺伝子型の影響:患者2,087人に基づく前向き研究
  21. 再活性化前のプロプラノロール療法によるPTSD症状の軽減:ランダム化比較試験
  22. 加齢性聴力低下と認知機能、認知障害、および認知症の関連:系統的レビューとメタ解析
  23. 飲酒は伝染するか:飲酒行動の集合性理論のマルチレベル・フレームワークにおける分析
  24. 戦争の10年:派兵米国軍人のPTSD症状の前方視的軌跡と戦闘への曝露の影響
  25. 母の妊娠中のカフェイン摂取と子の11歳時の行動障害:オランダ国民出生コホート研究
  26. 小児と青年における遺伝性の認知能力および精神病理と脳白質特性の関連
  27. 認知的に正常な高齢成人におけるアミロイドβと不安・抑うつ症状の経時的関連
  28. ホルモンによる避妊とうつ病の関連
  29. ホルモンによる避妊と自殺企図および自殺の関連
  30. 注意欠如・多動症(ADHD)の症状次元の因子構造
  31. 青年の反社会的行動の治療における多重システム療法と従来の管理法(START):実践的ランダム化比較・優越性試験
  32. 持続性かつ重度の産後うつ病と子供のアウトカムの関連
  33. うつ病を治療して養育を改善する介入を通して、持続する産後うつ病の子供のアウトカムに対する影響を軽減する
  34. 英国のプライマリー・ケアにおいて重篤な精神疾患を持つ人のコレステロールと心血管系リスクを軽減する介入の臨床的有効性と費用対効果:クラスターランダム化比較試験
  35. 青年および若年成人における精神病性障害の初回診断後の死亡率
  36. 精神病スペクトラムの幼年期から成人前期の認知発達経過
  37. アルツハイマー病のための高性能血漿アミロイドβバイオマーカー
  38. 可溶性γセクレターゼ修飾薬は、アルツハイマー病のβアミロイド病理を減弱させ、プレセニリン1の立体構造変化を誘導する
  39. イングランドにおける青年の自殺、病院を受診した非致死的自傷、地域社会での非致死的自傷の発生率(自傷の氷山モデル)の後方視的研究
  40. アルコール使用障害について、その配偶者間の類似性の起源
  41. 妊娠中のメチルフェニデートとアンフェタミンの使用と先天性奇形の関連:妊娠と安全性に関する国際研究コンソーシアムからのコホート研究
  42. 卵巣抑制後に起こる月経前不快気分障害の症状は、卵巣ステロイドの持続的定常レベルでなく、そのレベルの変化で誘発される
  43. 統合失調症を持つ人における精神病理変数、個人的資質、状況関連因子、日常生活機能の間の相互作用:ネットワーク解析
  44. 米国における成人のDSM-5うつ病とその特定用語の疫学
  45. スウェーデン男性における小児期の感染症と知能指数および成人の非感情病性精神病の関連:住民ベースの縦断的コホートおよび相関研究
  46. 初回エピソード精神病に対する初期抗精神病薬治療中の、海馬萎縮と精神病未治療期間および分子バイオマーカーの関連
  47. 胎児超音波検査と自閉スペクトラム症の関連
  48. 米国、オンタリオ、オーストラリアにおける高齢成人のベンゾジアゼピン使用:2010-2016年
  49. 認知症症状に対する抗精神病薬および他の薬剤に関するプライマリ・ケア医の見解
  50. 非認知症成人における生体利用可能なクルクミンの記憶と脳アミロイドおよびタウへの効果:18カ月の二重盲検プラセボ比較試験
  51. 精神病性障害を持つ患者の妄想様観念と社会的回避に対する待機リスト対照と比較した仮想現実ベースの認知行動療法:単盲検ランダム化比較試験
  52. 自傷後の若者に対する系統的家族療法の従来の治療と比較した有効性:実際的な第3相・多施設共同・ランダム化比較試験
  53. 過渡的就労と比較したエビデンスに基づく援助付き雇用の心的外傷後ストレス障害を持つ退役軍人の定職獲得に対する効果:ランダム化臨床試験
  54. フィンランド全国双極性障害患者コホートにおける再入院の予防に対する薬物治療の実社会での有効性
  55. 精神病を持つ患者の行動、臨床、および複数様式の画像の表現型間の多変量関連
  56. 若者の苛立ちと不安の神経メカニズムを識別する潜在変数法
  57. 統合失調症における突然死
  58. 中高年成人において座って行う行為は内側側頭葉の厚さの減少と関連する
  59. 統合失調症と乳癌の発症リスクの関連:メタ解析
  60. アルコール性の大脳皮質傷害における加齢・薬物依存・C型肝炎併存の役割
  61. うつ病の家族リスクを持つ青年期女性におけるレジリエンスの神経マーカー
  62. うつ病を持つ患者における脳皮質変化と再発の関連
  63. 小児期の易刺激性および抑うつ/不安気分のプロフィールと青年期の自殺念慮・企図の関連
  64. 精神病への早期介入サービスと、初回エピソード統合失調症スペクトラム障害を持つ患者の自殺率の関連
  65. 早期精神病のための早期介入サービスと従来の治療の比較:系統的レビュー・メタ解析・メタ回帰
  66. 抗コリン薬と認知症のリスク:ケースコントロール研究
  67. ADHD-200 Global Competition:個人の特徴データを用いたADHD診断は、安静時fMRI測定を凌駕し得る
  68. レジスタンス運動トレーニングの有効性と抑うつ症状の関連:ランダム化臨床試験のメタ解析とメタ回帰分析
  69. 米国における治療抵抗性うつ病に対する電気けいれん療法と薬物療法の費用対効果
  70. うつ病または双極性障害を持つ人および健常対照における筋力と認知の関連
  71. 血族結婚と子孫の精神病理:住民全体データの関連研究
  72. MEMO+:軽度認知障害を持つ人の認知訓練と心理社会的介入の有用性・継続性・効果
  73. 臨床的高リスク状態外で精神病を予測することは可能か:精神疾患の非精神病リスク症候群の系統的レビュー
  74. 低中所得国における都市化の程度(urbanicity)と精神病の関連
  75. イングランドにおける個人および地域の社会経済的要因と認知症発症率の関連:イングランド加齢縦断研究における12年の経過観察からのエビデンス
  76. ベトナム戦争時代の双生児における抑うつ症状と心拍変動の関連:縦断的双生児研究
  77. うつ病および不安症と自己免疫性甲状腺炎の関連:系統的レビューとメタ解析
  78. 統合失調型障害から統合失調症への移行と物質使用障害の関連
  79. 精神病への移行期の非組織的な脳回形成ネットワーク特性
  80. うつ病を持つ成人における抗うつ薬とベンゾジアゼピンの新規併用と、その後のベンゾジアゼピンの長期使用:2001~2014年の米国調査
  81. 双極うつ病に対する付加的高照度光療法:ランダム化二重盲検プラセボ比較試験
  82. 認知症の独立したリスク因子としての中年期の不安診断への支持:系統的レビュー
  83. 患者一人の予測のための計算神経画像戦略
  84. 精神医学における優先課題の状況分析、第1部:疾患分類と診断、第2部:発病機序と病因
  85. 精神疾患発症後の凶悪犯罪を含む犯罪被害のリスク:警察データを用いたデンマーク国民登録研究
  86. 成人うつ病の急性期治療に関する21の抗うつ薬の比較有効性と認容性:系統的レビューとネットワークメタ解析
  87. 高齢中国人における日常の知的活動と偶発認知症のリスク低下の関連
  88. 初めての妊娠中絶および出産と抗うつ薬処方の関連調査
  89. 妊娠中および産後期のリチウム内服戦略
  90. うつ病に対する反復経頭蓋磁気刺激試験のプラセボ反応:系統的レビューとメタ解析
  91. 加齢における脳の認知的健康のための運動:量の評価についての系統的レビュー
  92. 精神病性(妄想性)うつ病と自殺企図:系統的レビューとメタ解析
  93. 初回エピソード精神病を持つ若年青年のミスマッチ陰性電位とP3a振幅:ADHDとの比較
  94. 妊娠高血圧と子における神経発達症リスクとの関連:系統的レビューとメタ解析
  95. 世界におけるサルコペニアの有病率:一般人口における研究の系統的レビューとメタ解析
  96. 地域に暮らす高齢者におけるあらゆる理由による死亡の予測因子としてのサルコペニア
  97. サルコペニアと認知障害:系統的レビューとメタ解析
  98. サルコペニアはうつ病と関連するか:観察研究の系統的レビューとメタ解析
  99. サルコペニアと一般精神疾患:脳機能に対する骨格筋の調整的役割の可能性
  100. 統合失調症スペクトラム障害を持つ患者におけるフレイル、およびその個別要素と転倒のリスクの関連
  101. 統合失調症を持つ患者における握力および体格指数と認知機能の関連
  102. 握力は統合失調症および一般人口の認知能力と関連するか: 475,397人の参加者からなる英国バイオバンク研究
  103. トリプタン片頭痛薬と選択的セロトニン再取り込み阻害、または選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害抗うつ薬の同時処方とセロトニン症候群の関連
  104. 自閉特性と小児期から18歳のうつ病との関連
  105. 自閉症の社会的動機付け仮説の評価:系統的レビューとメタ解析
  106. 若者の肥満およびインシュリン感受性に対する抗精神病薬の代謝的影響:ランダム化臨床試験
  107. 超低用量のニコチン含有タバコによる機会的喫煙者の喫煙量変化:ランダム化・二重盲検臨床試験
  108. 統合失調症または双極性障害の家族性の高リスク状態にある7歳児の神経認知機能評価:デンマーク高リスクとレジリエンス研究、VIA 7
  109. 自殺の高リスクにある青年のための弁証法的行動療法の有効性:ランダム化臨床試験
  110. 急性統合失調症におけるプラセボ対照・抗精神病薬試験の60年:系統的レビュー、ベイズ・メタ解析、および有効性予測のメタ回帰
  111. 治療抵抗性統合失調症を持つ人のクロザピン反応率:系統的レビューとメタ解析から
  112. 嗜癖における報酬処理の破綻:画像に基づく機能的MRI研究のメタ解析
  113. 人口密度と統合失調症の遺伝的リスクとの関連
  114. 中年期における心肺の健康と晩年期の偶発うつ病およびうつ病診断後の心血管死との関連
  115. 米国退役軍人の治療抵抗性うつ病への反復経頭蓋磁気刺激の効果:ランダム化臨床試験
  116. 集団的葉酸強化の出生前曝露と若者における大脳皮質成熟の変化との関連
  117. 臨床的に高リスクの若者の将来の精神病に関連する神経解剖学的成熟の逸脱を確定するための機械学習の使用
  118. 救急部で治療された自殺企図患者に対する安全対策介入:経過追跡と従来ケアとの比較
  119. 中年および高齢者における抑うつ症状のDNAメチル化の痕跡:多民族・全エピゲノム研究のメタ解析
  120. よくある脳の病気に共通する遺伝性の解析
  121. 最遅発性の統合失調症様精神病への抗精神病薬投与(ATLAS):ランダム化比較・二重盲検試験
  122. デンマーク住民における22q11.2領域の再編成保有率、および神経精神疾患と発達障害の地域ベースのリスク
  123. 年齢とうつ病の経過との関連:2年間の縦断的コホート研究
  124. 統合失調症の突然死
  125. 統合失調症の突然死:精神科入院患者における剖検所見
  126. 統合失調症を持つ患者における心臓突然死のリスク因子
  127. 薬剤誘発性ブルガダ(Brugada)型心電図:統合失調症を持つ患者の突然死の一要因?
  128. ブルガダ症候群(Brugada syndrome)心電図は統合失調症で高率にみられる
  129. 統合失調症におけるガイドラインに準拠した抗精神病薬の使用と死亡率
  130. アパシーと偶発認知症の関連:系統的レビューとメタ解析
  131. 行動障害型前頭側頭型認知症とうつ病の表情認識能力の違い
  132. 強迫症を持つ中年女性の窃盗症(kleptomania)の画像研究:症例報告
  133. 神経ベーチェット病を有する患者の窃盗症(kleptomania)
  134. プラセボに対するエスシタロプラムを用いたうつ病治療の急性冠症候群患者の心臓転帰に対する効果:ランダム化比較試験
  135. 認知症に先立つ14年間における心臓・代謝リスク因子の軌跡評価
  136. 臨床的に正常な高齢者における血管リスクおよびβアミロイド負荷と認知低下の相方向的関連:ハーバード老齢脳研究からの所見
  137. 精神病の超高リスク状態にある若者における認知機能の経時的変化
  138. 抑うつ問題と睡眠の質の関連を媒介する脳の機能的結合性(functional Connectivity)
  139. うつ病における電気けいれん療法への反応と非反応の予測:メタ解析
  140. クロザピン抵抗性統合失調症における認知行動療法(FOCUS):評価者盲検・ランダム化比較試験
  141. 高所恐怖治療のための実体験のように感じる仮想現実を用いた自動化心理療法:単盲検・並行群・ランダム化比較試験
  142. 妊娠中のリチウム使用に関連する母子転帰:6つのコホート研究の国際共同メタ解析
  143. 第二世代抗精神病薬と短期の死亡率:プラセボ対照ランダム化比較試験の系統的レビューとメタ解析
  144. 同僚との比較文書のプライマリ―ケアにおける高用量クエチアピン処方者に対する効果:ランダム化比較試験
  145. 青年期の精神病様体験の報酬処理中の神経基盤の探究
  146. 統合失調症の脳内グルタミン酸に対する抗精神病薬投与の効果:縦断的プロトンMRS研究の系統的レビュー
  147. 初回エピソード精神病における初回の抗精神病薬治療への反応は、前部帯状回のグルタミン酸レベルと関連する:多施設共同プロトンMRS研究(OPTiMiSE)
  148. 高温は米国とメキシコで自殺率を上昇させる
  149. うつ病を持つ患者におけるアセチル-L-カルニチン(acetyl-l-carnitine)欠乏
  150. 7テスラ磁気共鳴スペクトロスコピーによって示された統合失調症患者と健常同胞におけるGABA、グルタミン酸、およびグルタミンの濃度変化
  151. 初回エピソード統合失調症の前部帯状皮質の7テスラ磁気共鳴スペクトロスコピー
  152. 統合失調症におけるグルタチオンとグルタミン酸:7テスラMRS研究
  153. 高齢の統合失調症患者の高プロラクチン血症に対するドパミンD2/3受容体占拠率の閾値
  154. アルツハイマー病における精神病を治療するためのドパミンD2/3受容体占拠率の治療域
  155. 青年におけるディジタル・メディアの使用とその後の注意欠如・多動症症状との関連
  156. 精神病の臨床的高リスクにある人の減弱陽性精神病症状に対する介入の有効性と認容性:ネットワークメタ解析
  157. 心的外傷後ストレス障害(PTSD)と偶発糖尿病の関連における肥満の役割
  158. 親と子の宗教性と自殺念慮および企図の関連
  159. 小学女子における感情行動症状のネットワーク構造と青年期および成人早期における不安症・うつ病の関連:ネットワーク解析
  160. スウェーデンの若者140万人における生涯を通した住居移動と非感情病性精神病の関連
  161. うつ病治療におけるω3高度不飽和脂肪酸の有効性
  162. うつ病への不飽和多価脂肪酸補充のメタ解析とメタ回帰
  163. 日本人高齢者における地域レベルの健康に関連するソーシャル・キャピタルの尺度開発: JAGESプロジェクト
  164. 脳コンピューター・インターフェース(BCI)に基づく介入は注意欠如・多動症(ADHD)を持つ子供の脳機能ネットワークトポロジ―を再正常化する
  165. 195の国と地域におけるアルコール使用と疾病負担、1990–2016:世界疾病負担研究2016の系統的分析
  166. コクラン・レビュー:認知症を持つ人のための音楽による治療的介入
  167. 精神疾患の既往のない米国陸軍兵士の自殺企図に関連するリスク因子
  168. 精神病の臨床的高リスクにある人の側頭・中脳・線条体機能不全に対するカンナビジオール(Cannabidiol)の効果:ランダム化臨床試験
  169. 2011年から2015年の米国の120万人における身体運動と精神健康の関連:横断研究
  170. 注意欠如・多動症(ADHD)と気管支喘息の関連:系統的レビュー、メタ解析、およびスウェーデンの地域住民を対象とした研究
  171. 小児、青年、および成人の注意欠如・多動症に対する薬剤の比較有効性と認容性:系統的レビューとネットワークメタ解析
  172. 双極性障害のリスクを持つ子における情動処理と制御の神経回路画像計測と双極性障害の症状との関連
  173. 操作変数分析と相関デザインを用いて評価された学業成績と薬物乱用リスク
  174. 統合失調症を持つ患者の自殺傾向に関するリスク因子:96研究の系統的レビュー、メタ解析、およびメタ回帰
  175. 20年間にわたり評価された女性におけるうつ病と偶発SLEのリスクとの関連
  176. 統合失調症における陰性症状の潜在構造(latent structure)
  177. カンナビノイド投与と健常成人における実験的疼痛の関連:系統的レビューとメタ解析
  178. 米国レジデント医師における臨床専門科と燃え尽き症状および職業選択の後悔の関連
  179. ω3多価不飽和脂肪酸の使用と不安症状の重症度変化の関連:系統的レビューとメタ解析
  180. 稀なFBXO18変異と統合失調症のリスク:両親とその子が罹患している2組のトリオの全ゲノムシークエンス、再シークエンスと症例対照研究
  181. 稀なPDCD11変異は日本における統合失調症のリスクとは関連しない
  182. アジア人母集団におけるCMYA5 rs3828611およびrs4704591と統合失調症の最新メタ解析
  183. 身体活動不足の世界的傾向 2001-2016年:190万人の参加者からなる358の地域住民調査の統合解析
  184. クロザピンの薬理遺伝学:有効性、薬物動態学、無顆粒球症のレビュー
  185. 不眠に対するデジタル認知行動療法の健康、心理的well-being、睡眠関連QOLへの効果:ランダム化臨床試験
  186. 精神病の臨床的高リスク状態にあるか最近うつ病を発症した人の機能転帰の予測モデル:多様式多施設機械学習解析
  187. 施設養育歴を持つ子供の全般および特定精神病理に対する里親制度の介入効果:ランダム化臨床試験
  188. 統合失調症を持つ若者における発症年齢と前頭葉機能の縦断的経過の関連
  189. 初回エピソード精神病における皮質グルタミン酸と線条体ドパミンの関連:横断的多様式PET・MRS画像研究
  190. セロトニン欠乏とカテコールアミン欠乏:寛解うつ病における実験的欠乏症の行動および神経への影響
  191. 発症前の閾値下精神病症状と精神病の初回エピソードの治療中の長期転帰の関連
  192. 精神病の予測および特徴化のための状態に依存しない機能的神経信号としての小脳-視床-皮質間高結合性
  193. 初回エピソード精神病における皮質グルタミン酸と線条体ドパミンの関連:横断的多様式PET・MRS画像研究
  194. STAR*D研究に組み入れられたうつ病患者においてシタロプラムは気分に対する生活環境の影響を増幅する
  195. 標準モデルを用いた統合失調症と双極性障害の不均一な表現型のマッピング
  196. 早発性うつ病における発達軌跡の特徴化と神経精神医学的遺伝リスク変異の役割
  197. 特性不安を持つ人における前頭前皮質刺激の脅威に対する扁桃体反応の制御効果:ランダム化臨床試験
  198. 地域在住の高齢日本人女性の体組成と身体機能に対する運動とアミノ酸補充の効果
  199. メキシコシティーの6~12歳の子供におけるフッ化物への出産前曝露と注意欠如・多動症(ADHD)症状
  200. 摂食障害を持つ患者のための強化型認知行動療法(CBT-E):系統的レビュー
  201. 統合失調症を持つ患者における心筋梗塞後の二次予防的心血管治療と死亡率の関連
  202. 自閉スペクトラム症と神経伝達系に影響する薬物への出生前曝露との関連
  203. 小児と青年における急性の不安症/不安障害に対する心理療法の種類の違いと認容性:ネットワークメタ解析
  204. 統合失調症を持つ中国人患者の短期抗精神病薬治療への反応性に対するシナプス関連遺伝子セットにおける稀な損傷変異の影響:ランダム化臨床試験
  205. 低および中所得国に住む高齢成人におけるうつ病の予防に対する非専門家カウンセラーの介入効果:ランダム化臨床試験
  206. 過体重または肥満の患者におけるlorcaserinの心血管安全性
  207. 国民健康栄養調査(NHANES)2011-2014から60歳以上の米国成人におけるうつ病と握力
  208. 精神疾患を持つ患者における最良の心血管健康と座って行う行為、およびフィットネスとの関連:PsychiActiveプロジェクト
  209. γ-アミノ酪酸(GABA)A受容体の利用率は自閉スペクトラム症を持つ成人とマウスモデルで変化していない
  210. プライマリ―ケアにおけるインターネットを使った認知行動的人間中心・対人関係トレーニングとインターネットを使った一般健康教育の青年期うつ病に対する効果:ランダム化臨床試験
  211. 大うつ病性障害/うつ病を持つ患者における腹側線条体の機能的結合性と臨床症状に対するKCNQチャンネル開口薬エゾガビン(ezogabine)の効果
  212. プライマリ―ケアにおけるインターネットを使った認知行動的人間中心・対人関係トレーニングとインターネットを使った一般健康教育の青年期うつ病に対する効果:ランダム化臨床試験
  213. 気分安定薬への補助としてのベンラファキシン、セルトラリン、ブプロピオンの急性および継続試験における双極うつ病患者の軽躁病または躁病への気分極性交代のリスク
  214. 男性におけるテストステロン治療と抑うつ症状の軽減の関連:系統的レビューとメタ解析
  215. 精神病の臨床的高リスクにある人における海馬グルタミン酸レベルと有害転帰の関連
  216. 台湾の全国調査(2000-2011年)において注意欠如・多動症と診断され投薬を受けた若者の有病率
  217. 日本におけるADHD治療薬の年間処方率、新規処方率、および継続率
  218. ヒトの気分変化を符号化する扁桃体-海馬サブネットワーク
  219. 機能的コネクトーム編成はSHARPプログラムにおける臨床的高リスクを持つ若者の精神病への移行を予測する
  220. 小児期・青年期におけるトラウマの種類、曝露年齢、および頻度と成人早期における精神病体験の関連
  221. イングランドにおける癌診断後の自殺リスク
  222. 精神病体験とその後の自殺念慮、自殺企図、および自殺既遂の関連:縦断的集団研究の系統的レビューとメタ解析
  223. 神経デコーディングにより明らかにされた発達性相貌失認を持つ患者の右紡錘状回顔領域における顔の形状処理障害
  224. 初期視覚野から後部後頭側頭顔領域へのeffective connectivityは顔選択性を支持して発達性相貌失認を予測する
  225. 発達性相貌失認はカテゴリー選択的視覚皮質にわたる広範な選択性減少を示す
  226. 20項目相貌失認目録(PI20):発達性相貌失認を同定するための自己報告用紙
  227. 20項目相貌失認目録(PI20):グラスゴー顔マッチングテストとの関係
  228. 一般人口における20項目相貌失認目録とケンブリッジ顔記憶テストの強固な関連
  229. どのくらい多くの顔を人は知っているのか
  230. 心的外傷後ストレス障害を持つ戦闘経験者における持続エクスポージャー療法、セルトラリン塩酸塩、およびその併用の効果:ランダム化臨床試験
  231. 小児と青年における治療を必要とした感染症とその後の治療を必要とした精神疾患のリスクとの関連:デンマークにおける全国調査
  232. 抗精神病薬を用いた治療と小児および青年における予期しない死亡の関連
  233. 双極性障害を持つ成人における自発運動量、活力、気分、および睡眠間の動的関連のリアルタイム携帯モニタリング
  234. せん妄重症度の評価尺度の評価:系統的レビュー
  235. 精神障害の遺伝リスク因子とスウェーデン住民双生児サンプルにおけるこれら障害特性の関連
  236. 前向きコホート研究における抗うつ薬の累積的使用と認知症のリスク
  237. 外側眼窩前頭皮質への直接電気刺激は抑うつ症状を持つ人の気分を急速に改善する
  238. 出生後期間における父母のうつ病と18歳時の子のうつ病の関連
  239. うつ病を持つ人と持たない人の一等親血縁者における認知能力:メタ解析
 

累積的な小児期の逆境および青年期の暴力犯罪と成人期早期の自殺の関連
    Björkenstam E et al. JAMA Psychiatry. Published online December 13, 2017.
    Association of Cumulative Childhood Adversity and Adolescent Violent Offending With Suicide in Early Adulthood.

    論文要約:
    <重要性>
     小児期の逆境(childhood adversity、CA)は成人期早期の自殺リスクの増加と関連するが、それは青年期の不適応的軌跡によって説明されるかもしれない。青年期の暴力的犯罪(violent offending)は自殺と関係するものの、小児期の逆境と自殺の関連における役割についてはほとんど分かっていない。
    <目的>
     青年期の暴力的犯罪が、小児期の逆境と成人期早期の自殺の関連を媒介するか否かを調べること。
    <設計・設定・参加者>
     この5から9年に及ぶ追跡期間を持つ住民ベースの縦断コホート研究には、1984年から1988年にスウェーデンで生まれた476万1,103人が含まれた。自殺に関して研究母集団が、20歳時から2013年12月31日まで前向きに追跡された。データ分析は1984年1月1日から2013年12月31日に実施された。
    <曝露>
     登録に基づく小児期の逆境には、親の死亡、親の物質乱用と精神疾患、親の犯罪、親の別離、公的扶助の受容、児童福祉の介入および居住地不定が含まれた。青年期の暴力的犯罪(violent offending)は、15歳から19歳の年齢において暴力犯罪(violent crime)の有罪判決を受けることとして定義された。
    <主要評価項目>
     2013年末までの20歳以降(1984年に生まれた場合は2004年から、1988年に生まれた場合は2008年から)の自殺リスクの推定値が、発生率(incidence rate ratios、IRRs)および95%信頼区間としてポアソン回帰分析(Poisson regression analysis)を用いて計算された。調整は人口統計学データおよび精神疾患についてなされた。加えてロジスティック回帰を用いた2値媒介分析が用いられた。
    <結果>
     全部で47万6,103人(23万1,699人 [48.7%] が女性)が研究に含まれた。暴力的犯罪の有罪判決を受けなかった人と比べて受けた人は、全ての小児期の逆境により多く曝露された。累積的な小児期の逆境は、有罪判決を受けなかった若者(調整済IRR, 2.4; 95%信頼区間, 1.5-3.9)、および受けた若者の自殺リスクと関連し、有罪判決を受けた若者のそれはより高かった(調整済IRR, 8.5; 95%信頼区間, 4.6-15.7)。青年期の暴力的犯罪は、小児期の逆境と自殺の間の関連を一部媒介した。
    <結論と関連性>
     小児期の逆境の既往があり青年期に暴力的犯罪を行う人は、より高い自殺リスクを持つ。小児期の外在化行動を予防して非行的行動を持つ若者を支援する介入は、小児期の逆境に関連する自殺を防ぐ潜在力があるかもしれない。

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喫煙を併存するアルコール使用障害に対する医学的管理と組み合わせたバレニクリン(varenicline)の効果:ランダム化比較試験
    O’Malley SS et al. JAMA Psychiatry. Published online December 20, 2017.
    Effect of Varenicline Combined With Medical Management on Alcohol Use Disorder With Comorbid Cigarette Smoking: A Randomized Clinical Trial.

    <重要性>
     アルコール使用障害を持つ人の喫煙率は高い。禁煙に対する認可された治療法であるバレニクリン酒石酸塩(varenicline tartrate)は飲酒と喫煙の両方を減少させるかもしれない。
    <目的>
     アルコール治療を求めるアルコール使用障害と喫煙を併せ持つ患者のための医学的管理付きのバレニクリンの有効性を検証して、禁煙に対する二次的効果を評価すること。
    <設計・設定・参加者>
     この第2相・無作為化・二重盲検・並行群・プラセボ対照試験は、2012年9月19日から2015年8月31日に2つの外来クリニックで実施された。適格とされた参加者はアルコール依存の基準を満たし、かつ週に2回かそれ以上の大量飲酒(男性については5杯以上、女性については4杯以上)を報告した人であった。
     131人の参加者が、性別と場所によって層別化されてバレニクリンまたはプラセボに無作為に割り付けられた。すべての分析はintention-to-treat形式でなされた。データ分析は2016年2月5日から2017年9月29日に実施された。
    <介入>
     バレニクリン酒石酸塩1㎎を1日2回、およびマッチさせたプラセボ錠を16週続けた。医学的管理は服薬アドヒアランスを強化し、続いて飲酒を変えるための4週間の支援が行われた。
    <主要評価項目>
     9週と16週の多量飲酒日の百分率(percentage of heavy drinking days、PHDD)、9週と16週の非多量飲酒日(no heavy drinking days、NHDD)、および13週と16週の禁煙延長(prolonged smoking abstinence)。
    <結果>
     131人の参加者のうち39人(29.8%)が女性で92人(70.2%)が男性、平均(標準偏差)年齢は42.7(11.7)歳、最も多く(69人 [52.7%])の回答者が自身の人種/民族を黒人と認識していた。64人の参加者がバレニクリンに、67人の参加者がプラセボに無作為割り付けされた。
     バレニクリン-プラセボ間、性別間、および場所間でPHDDの平均変化に有意な差を認めなかった。しかし、PHDDについて性別-時間の有意な治療交互作用があり(F1,106 = 4.66; P = .03)、それはプラセボと比較してバレニクリンが、男性において対数変換後PHDDをより大きく減少させたことを示していた(ベースラインからの変化の最少二乗平均差, 0.54; 95% CI, −0.09 to 1.18; P = .09; Cohen d = 0.45)が、女性ではより少ない減少にとどまった(ベースラインからの変化の最少二乗平均差, −0.69; 95% CI, −1.63 to 0.25; P = .15; Cohen d = −0.53)。
     男性について、NHDDはプラセボでは47人のうち3人であったのに対して、バレニクリンでは45人のうち13人(29%)であった(Cohen h = 0.64; 95% CI, 0.22-1.03)。一方、女性については、NHDDはプラセボでは20人のうち5人(25%)であったのに対して、バレニクリンでは19人のうち1人(5%)であった(Cohen h = −0.60; 95% CI, −1.21 to 0.04)。
     バレニクリンを使用した場合は64人の参加者のうち8人(13%)が禁煙の延長を成し遂げたが、プラセボを使用した場合は禁煙した人はいなかった(P = .003; Cohen h = 0.72; 95% CI, 0.38-1.07)。
    <結論と関連性>
     医学的管理を伴うバレニクリンは男性の大量飲酒を減少させ、全サンプルにおいて禁煙を増加させた。バレニクリンはこれら二重の行動上の健康リスクを持つ男性において改善を促進すると考えられるかもしれない。
    <試験登録>
     clinicaltrials.gov Identifier: NCT01553136

    コメント:バレニクリン (varenicline) はα4β2ニコチン受容体の部分作動薬で、ニコチンよりも弱いニコチン受容体への刺激作用を持ち(ウィキペディア)、日本でも禁煙補助薬として処方されます。

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犯罪行動の損傷ネットワーク局在
    Darbya RR et al. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS). Published online December 18, 2017.
    Lesion network localization of criminal behavior.

    論文要約:
     脳損傷の後、かつて正常であった患者が時に犯罪行動を起こす。稀とはいえ、これらの症例が犯罪性の神経生物学的基盤に比類なき洞察を与えることがある。この点で我々は、犯罪行動と時間的関連が知られている損傷の系統的マッピングを提示する。損傷部位は空間的に異質であって、内側前頭前皮質、眼窩前頭皮質、および両側側頭葉内の異なる位置が含まれた。単一の脳領域が損傷されている症例はなかった。損傷誘発症状は損傷位置と結合している単に損傷位置そのものではない部位から起こり得るので、我々は各々損傷位置に機能的に結合している脳領域も同定した。この損傷ネットワークマッピングと呼ばれる技術は、最近、様々な損傷誘発性障害において症状形成に関わる領域を同定している。
     全ての損傷が同じ脳領域ネットワークに機能的に結合していた。この犯罪性関連の結合パターンは、他の4つの神経精神症状を引き起こす損傷とは全く異なっていた。このネットワークには、道徳性、価値に基づく意思決定、および心の理論に関わる領域が含まれたが、認知制御と共感性に関わる領域は含まれなかった。最後に我々は、自身の結果を脳損傷と犯罪行動の時間的関係が示唆されるが確定的ではない23症例からなる別のコホートで再現した。我々の結果は「犯罪者の損傷は異なる脳の位置に発生するが、特定の安静状態ネットワークに局在する」ことを示し、これは犯罪行動の神経生物学へ洞察を与える。

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自閉症における小脳結合性の変化とマウスにおける小脳を介した自閉症関連行動の救済
    Stoodley CJ et al. Nature Neuroscience 2017; 20: 1744-1751.
    Altered cerebellar connectivity in autism and cerebellar-mediated rescue of autism-related behaviors in mice.

    論文要約:
     小脳、特に半球部の右第1脚(Right Crus I、以下‘RCrusI’)の異常が、自閉スペクトラム症(autism spectrum disorders、ASD)において一貫して報告されている。RCrusIはASDに関与する回路と機能的に結合しているものの、RCrusI機能不全のASDへの寄与はいまだ不明である。
     この点において、神経学的機能が正常なヒトにおけるRCrusIのニューロモデュレーションは下頭頂小葉との機能的結合性の変化をもたらし、ASDを持つ子供はこの回路の非定型的な機能的結合性を示した。非定型的なRCrusIと下頭頂小葉との構造的結合性もまた、プルキンエ細胞TscI ASDマウスモデルで明らかであった。
     加えて、マウスにおける化学遺伝学的に媒介されたRCrusIプルキンエ細胞の活動抑制は、ASD関連の社会的・反復的・限定的行動を生成するのに十分であり、一方でRCrusIプルキンエ細胞の刺激は、プルキンエ細胞TscI ASDマウスモデルにおける社会性の障害を救済した。
     まとめると、これらの研究はASD関連行動におけるRCrusIの重要な役割示している。さらに、ASDマウスモデルにおける社会的行動の救済は、ASDにおける小脳ニューロモデュレーションの治療上の潜在能力を調べる価値があることを示唆する。

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自閉特性の潜在構造:成人の自閉スペクトラム指数の分類分析、潜在クラス分析、そして潜在プロフィール分析
    James RJ et al. J Autism Dev Disord 2016; 46: 3712-3728.
    The Latent Structure of Autistic Traits: A Taxometric, Latent Class and Latent Profile Analysis of the Adult Autism Spectrum Quotient.

    論文要約:
     自閉特性は連続体に沿って作動すると広く考えられている。この仮定を検証するために、成人の自閉スペクトラム指数(Autism Spectrum Quotient)データの分類分析(taxometric analysis)が実施されが、結果はそれを支持せず、高い重症度を持つタクソン(taxon)が特定された。
     これをより理解するために、6つの明確なサブタイプの存在を示す潜在クラスと潜在プロフィールのモデルが推定された:1つはいかなる自閉特性も見込まれる可能性が無いもの、1つはいわゆるシステム化(syetemising)の行動に関係するもの、WingとGouldによる自閉症の三つ組み(autistic triad)の複数要素を支持する3つのグループ、そしてサイズおよびプロフィールにおいて以前に特定されたタクソンと類似する1つのグループである。これらの分析はAQ(拡張が許されるなら自閉特性)がカテゴリー的構造を持つことを示唆する。本結果はAQデータの分析と解釈にとって重要な意味を有する。

    コメント:‘システム化’は、『共感する女脳、システム化する男脳(サイモン・バロン=コーエン 著,‎ 三宅真砂子 翻訳、NHK出版 2005年』 にある共感としばしば対比される思考パターンの特徴です。

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看護師健康調査Ⅱ(米国)参加者の子供における自閉スペクトラム症の地理的パターン
    Hoffman K et al. Am J Epidemiol 2017; 186: 834-842.
    Geographic Patterns of Autism Spectrum Disorder Among Children of Participants in Nurses' Health Study II.

    論文要約:
     自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder、ASD)の有病率が上昇している可能性と、それが地理的に異なることを示すデータがある。我々は原因または診断に関係する社会的環境的要因についての仮説を構築するために、看護師健康調査Ⅱ(米国)参加者の子供において居住場所とASDの関連を調査した。分析には1989年から1999年に生まれた13,507人の子供(ASDを持つ子供は486人)に関するデータが含まれた。我々はASDと誕生時および(診断時の平均年齢により近い)6歳時の居住場所の関係を探索した。米国各地のASDオッズを予測するために、一般化加法モデル(generalized additive models)が使われた。
     ニューイングランド地方に生まれた子供は、米国の他の地域で生まれた子供と比べて50%多くASDと診断される傾向があった。このパターンは母親の年齢、誕生年、子供の性別、自治体収入、または有害大気汚染への出生前曝露の地理的変動によって説明されなかった。6歳時の居住地住所を使用しても結果は同じであったが、有意に少ないASDオッズを持つ地域は南東部に観察され、そこではASDを持つ可能性のある子供の数は半分であった。これらの結果は、診断的要因が空間パターンを生成している可能性を示すが、他の環境的要因が分布に影響している可能性を除外することはできなかった。

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治療抵抗性うつ病における経口抗うつ薬を補助する経鼻エスケタミンの有効性と安全性:ランダム化臨床試験
    Daly EJ et al. JAMA Psychiatry. Published online December 27, 2017.
    Efficacy and Safety of Intranasal Esketamine Adjunctive to Oral Antidepressant Therapy in Treatment-Resistant Depression: A Randomized Clinical Trial.

    <重要性>
     うつ病(major depressive disorder、MDD)患者のおよそ3分の1は市販の抗うつ薬に反応しない。
    <目的>
     治療抵抗性うつ病(treatment-resistant depression、TRD)患者における経鼻エスケタミン塩酸塩(intranasal esketamine hydrochloride)の有効性、安全性、および用量反応を評価すること。
    <設計・設定・参加者>
     この第2相・二重盲検・二重ランダム化・遅延開始・プラセボ比較の研究は、2014年1月28日から2015年9月25日に複数の外来患者照会センターで実施された。研究は4段階から構成された:1)スクリーニング、2)各々1週間の2つの期間からなる二重盲検期(第1日~第15日)、3)任意の非盲検治療(第15日~第74日)、4)治療後追跡調査(8週)。
    うつ病のDSM-IV-TR診断と2種類かそれ以上の抗うつ薬に対する反応が不十分であった病歴(つまりTRD)を持つ126人の成人がスクリーニングされた。そのうち67人が無作為化され、60人が2つの二重盲検期を終了した。結果の評価にはintent-to-treat分析が使われた。
    <介入>
     二重盲検第1期では、参加者は3:1:1:1に、週2回のプラセボ(n = 33)、エスケタミン28㎎(n = 11)、エスケタミン56㎎(n = 11)、エスケタミン84㎎(n = 12)に無作為化された。二重盲検第2期では、中等度から重度の症状を持つ28人のプラセボ治療を受けた参加者は1:1:1:1に4つの治療機関の一つに無作為化された。軽度の症状を持つ人は継続してプラセボを受けた。研究の間、参加者は既存の抗うつ治療を継続した。非盲検期では、投与回数が週2回から週1回に、その後は2週に1回に減らされた。
     主要有効性エンドポイント(the primary efficacy end point)は、Montgomery-Åsberg Depression Rating Scale(MADRS)総得点のベースラインから第8日(各々期間)の間の変化であった。
    <結果>
     67人の参加者(38人が女性、平均[標準偏差]年齢は44.7 [10.0] 歳)が有効性分析と安全性分析に含まれた。3つ全てのエスケタミン群におけるMADRS総得点の変化(プラセボとの最小二乗平均[標準誤差]差)は、有意な(P < .001)上行性用量反応関係(ascending dose-response relationship)をもってプラセボより優れていた(エスケタミン28 mg: −4.2 [2.09], P = .02; 56 mg: −6.3 [2.07], P = .001; 84 mg: −9.0 [2.13], P < .001)。非盲検期間に投与回数を減らしたとしても、抑うつ症状の改善は持続するようであった(−7.2 [1.84])。
     二重盲検期間にエスケタミンの治療を受けた56人の参加者のうち3人(5%)とプラセボを受けた参加者の0人が、非盲検期間に57人の参加者のうち1人(2%)が研究の中止につながった有害事象を経験した(失神、頭痛、解離症候群、および子宮外妊娠が各々1事象)。
    <結論と関連性>
     この今まで初めてのTRDに対する経鼻エスケタミンの臨床研究において、抗うつ効果の発現は迅速かつ用量依存的であった。より低頻度の投与回数でも、反応は2か月間持続するようであった。結果はより大規模な試験での追加調査を支持する。
    <試験登録>
     clinicaltrials.gov identifier: NCT01998958

    コメント:以前に『うつ病の自殺念慮の急速軽減のためのケタミン:ミダゾラム対照ランダム化臨床試験』(Michael F et al. Am J Psychiatry, Published online: December 05, 2017.Ketamine for Rapid Reduction of Suicidal Thoughts in Major Depression: A Midazolam-Controlled Randomized Clinical Trial.)を紹介しました。今回は経鼻投与されたエスケタミン(esketamine)です。これはS型(左旋性)の光学異性体で、非競合的NMDA受容体アンタゴニストとして働くそうです(in Esketamine by Wikipedia)。

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母親の妊娠前と妊娠中における葉酸およびマルチビタミン・サプリメントの使用と、子の自閉スペクトラム症(ASD)のリスクの関連
    Levine SZ et al. JAMA Psychiatry. Published online January 3, 2018.
    Association of Maternal Use of Folic Acid and Multivitamin Supplements in the Periods Before and During Pregnancy With the Risk of Autism Spectrum Disorder in Offspring.

    キーポイント:
    <疑問>
     母親の妊娠前および妊娠中における葉酸および/またはマルチビタミン・サプリメントの使用は、子の自閉スペクトラム症(ASD)のリスクを上昇させるか?
    <結果>
     この45,300人の子から構成される症例対照コホート研究において、母親の妊娠前および/または妊娠中のビタミン・サプリメントの使用と子のASDリスクの減少の間に、統計学的に有意な関連が見出された。
    <意義>
     妊娠前と妊娠中に特定されたビタミン・サプリメントを使用した女性に生まれた子供におけるASDリスクの減少は、重要な公衆衛生上の意義を持ち、あり得るメカニズムとしてはエピジェネティクな(後成的)修飾がある。

    論文要約:
    <重要性>
     妊娠前および妊娠中の母親の葉酸およびマルチビタミン・サプリメント使用と、子の自閉スペクトラム症(ASD)のリスクとの関連は不明である。
    <目的>
     妊娠前および妊娠中の母親の葉酸およびマルチビタミン・サプリメント使用と、子のASDリスクの関連を調べること。
    <設計・設定・参加者>
     ASDのリスクについて、2003年1月1日から2007年12月31日の間に生まれた45,300人のイスラエル人の子供が、その誕生から2015年1月26日まで追跡された。症例はASDと診断されたすべての子供、対照は全生産児の33%を構成する無作為標本であった。
    <曝露>
     母親のビタミン・サプリメントは葉酸(vitamin B9)、マルチビタミン・サプリメント(Anatomical Therapeutic Chemical A11 codes vitamins A, B, C, and D)、および妊娠前と妊娠中の期間の曝露に関するあらゆる混用に分類された
    <主要評価項目>
     母親のビタミン・サプリメントと子のASDリスクの関連が、交絡因子について調整を行ったCox比例ハザードモデルに適合させることで、相対リスク(RR)と95%信頼区間(CI)を用いて定量化された。結果の頑強性を検証するために感度分析が実施された。
    <結果>
     研究中の45,300人の子供(22,090人が女子、23,210人が男子;経過観察終了時における平均[標準偏差]年齢は 10.0 [1.4] 歳)のうち、572人(1.3%)がASD診断を受けた。
     母親の妊娠前の葉酸および/またはマルチビタミン・サプリメントへの曝露は、妊娠前に曝露されなかった場合と比較して、子におけるより低いASDの可能性と統計学的に有意に関連した(RR, 0.39; 95% CI, 0.30-0.50; P < .001)。
     母親の妊娠中の葉酸および/またはマルチビタミン・サプリメントへの曝露は、妊娠中に曝露されなかった場合と比較して、子におけるより低いASDの可能性と統計学的に有意に関連した(RR, 0.27; 95% CI, 0.22-0.33; P < .001)。
     対応するRRの推定値は以下の通りであった:母親の妊娠前の葉酸への曝露(RR, 0.56; 95% CI, 0.42-0.74; P = .001)、母親の妊娠中の葉酸への曝露(RR, 0.32; 95% CI, 0.26-0.41; P < .001)、母親の妊娠前のマルチビタミン・サプリメントへの曝露(RR, 0.32; 95% CI, 0.26-0.41; P < .001)、母親の妊娠中のマルチビタミン・サプリメントへの曝露(RR, 0.32; 95% CI, 0.26-0.41; P < .001)。どの感度分析も結果は概ね統計学的有意のままであった。
    <結論と関連性>
     葉酸とマルチビタミンのサプリメントへの妊娠前と妊娠中の曝露は、それに曝露されなかった母親の子との比較において、子のASDリスクの減少と関連した。

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双極うつ病への追加療法としての経頭蓋直流刺激(tDCS)の有効性と安全性:ランダム化臨床試験
    Bernardo Sampaio-Junior et al. JAMA Psychiatry. Published online Dec 27, 2017.
    Efficacy and Safety of Transcranial Direct Current Stimulation as an Add-on Treatment for Bipolar Depression: A Randomized Clinical Trial.

    <重要性>
     双極うつ病に対するより有効で認容性のある介入が必要であり、経頭蓋直流刺激(Transcranial direct current stimulation、tDCS)は単極うつ病に対して重大な有害事象なく期待できる結果を示した新規の治療法である。
    <目的>
     双極うつ病の追加療法(add-on treatment)としてtDCSの有効性と安全性を確認する。
    <設計・設定・参加者>
     無作為化・シャム(sham)比較・二重盲検の試験(the Bipolar Depression Electrical Treatment Trial [BETTER])が、2014年7月1日から2016年3月30日まで、外来サービスを行う単独のセンターにおける研究目的に実施された。
     参加者には、安定した薬理学的治療を受けていて、17項目のハミルトンうつ病評価尺度(HDRS-17)スコアが17点以上である抑うつエピソードの双極Ⅰ型またはⅡ型障害の成人59名が含まれた。データ分析はintention-to-treatサンプルで行われた。
    <介入>
     平日に毎日30分、2ミリアンペア、陽極-左前頭前部、陰極-右前頭前部の実(active)またはシャム(sham)tDCSセッションを10回。その後、6週までは2週間ごとに1セッション。
    <主要評価項目>
     6週におけるHDRS-17スコアの変化。
    <結果>
     研究に参加した59人の患者(40人[68%]が女性)の平均(標準偏差)年齢は45.9(12)歳であった。双極Ⅰ型障害の36人(61%)と双極Ⅱ型障害の23人(39%)が無作為化され、52人が試験を終えた。
     Intention-to-treat分析において、実tDCS条件の患者はシャムを受けた患者より有意に優れた改善を示した(βint = −1.68; 治療必要数, 5.8; 95% CI, 3.3-25.8; P = .01)。累積反応率はシャム群より実tDCS群のほうが高かったが(67.6% vs 30.4%; 治療必要数, 2.69; 95% CI, 1.84-4.99; P = .01)、寛解率に違いはなかった(37.4% vs 19.1%; 治療必要数, 5.46; 95% CI, 3.38-14.2; P = .18)。
     実治療群でより高かった(54% vs 19%; P = .01)皮膚の局所的発赤を除いて、治療により発生した感情の反転を含む有害事象は両群で似ていた。
    <結論と関連性>
     この試験において経頭蓋直流刺激(transcranial direct current stimulation、tDCS)は、小規模の双極うつ病サンプルについて、有効かつ安全で、認容性のある追加介入であった。次の試験はtDCSの有効性をより大規模なサンプルで調べるべきである。
    <試験登録>
     clinicaltrials.gov Identifier: NCT02152878

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米国における小児および青年の自閉スペクトラム症(ASD)の有病率: 2014年~2016年
    Guifeng Xu, et al. JAMA 2018; 319: 81-82.
    Prevalence of Autism Spectrum Disorder Among US Children and Adolescents, 2014-2016.

    論文要約:
     自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder、ASD)は重大な神経発達症であり、当事者、家族、そして社会に相当の負担を与える。以前の調査は、過去20年間に米国の小児および青年のASD有病率が着実に増加していることを報告してきた。しかしながら、自閉症と発達障害のモニタリング(the Autism and Developmental Disabilities Monitoring、ADDM)ネットワークによる最も新しい推定値は、2000年の0.67%から2010年の1.47%までの一貫した増加を記録した後に、2012年に初めてASD有病率の頭打ち(1.46%)を報告した。この研究で我々は、2014年から2016年の米国における小児および青年の現在のASD有病率を推定するために、国民代表データを分析した。
     適格とされた3歳から17歳の国民健康面接調査(National Health Interview Survey、NHIS)2014-2016の全参加者のうち、28人(0.09%)はASD診断に関する情報の欠損のため除外された。包含された30,502人の小児と青年の中で、711人がASD診断を有すると報告された。ASDの重み付け有病率は2.47%(95%信頼区間、2.20%-2.73%)であった。
     男子の有病率は3.63%(95%信頼区間、3.19%-4.08%)、女子はそれは1.25%(95%信頼区間、0.99%-1.51%)、ヒスパニック系の小児・青年は1.82%(95%信頼区間、1.42%-2.22%)、非ヒスパニック系白人の小児・青年は2.76%(95%信頼区間、2.39%-3.13%)、非ヒスパニック系黒人の小児・青年は2.49%(95%信頼区間、1.69%-3.29%)であった。3年の報告期間を通した有病率は、2014年は2.24%(95%信頼区間、1.89%-2.59%)、2015年は2.41%(95%信頼区間、1.98%-2.84%)、2016年は2.76%(95%信頼区間、2.20%-3.31%)であった(P for trend = .11)。

    コメント:この報告によると米国における最近のASD推定有病率は安定化の傾向が見てとれますが、3年間という短期の観察ですので、「傾向性が統計学的に有意ではなかった」としても結果は予備的と考えるべきでしょう。より長期のモニターが必要です。

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閉経移行期の抑うつ症状予防における経皮的エストラジオールと微細化プロゲステロンの有効性:ランダム化臨床試験
    Gordon JL et al. JAMA Psychiatry, published online: January 10, 2018.
    Efficacy of Transdermal Estradiol and Micronized Progesterone in the Prevention of Depressive Symptoms in the Menopause Transition: A Randomized Clinical Trial.

    キーポイント:
    <疑問>
     12カ月の経皮的エストラジオールと間欠的微細化プロゲステロンは、閉経移行期および閉経後早期における抑うつ症状の発症を予防する点においてプラセボより有効か。
    <結果>
     172人の閉経前後期および閉経後早期にある女性を含むこのランダム化臨床試験において、プラセボを用いた女性の32.3%が臨床的に意味のある抑うつ症状を発症したが、経皮的エストラジオールと間欠的微細化プロゲステロンを用いた女性で抑うつ症状を発症したのは17.3%であった。
    <意義>
     更なる研究で確認されれば、閉経移行期および閉経後早期に生じる臨床的に意味のある抑うつ症状のリスク増加を軽減するホルモン療法を、臨床家は考慮するかもしれない。

    論文要約:
    <重要性>
     閉経移行期および閉経後早期は、臨床的に意味のある抑うつ症状のリスクが2から4倍高い。ホルモン療法がこの時期の抑うつを有効に管理する可能性を2,3の研究が示唆しているものの、我々の知る限り、ホルモン療法が閉経前後期および閉経後早期の抑うつ症状の発症を予防し得るか否かを検証する研究は行われていない。
    <目的>
     経皮的エストラジオール(transdermal estradiol、TE)と間欠的微細化プロゲステロン(intermittent micronized progesterone、IMP)の併用(TE+IMP)の、当初は正常気分であった閉経前後期および閉経後早期の女性における抑うつ症状の発症予防に対する有効性を調べること。第二の目的は、TE+IMPの有益な気分効果を予測するベースライン特性を特定すること。
    <設計・設定・参加者>
     ノースカロライナ大学・チャペルヒル校において2010年10月から2016年2月に行われた二重盲検・プラセボ比較ランダム化試験。参加者は正常気分にある閉経前後期および閉経後早期の一般住民女性で、年齢は45歳から60歳。
    <介入>
     12カ月間の経皮的エストラジオール(一日0.1 mg)または経皮的プラセボ。加えて3か月ごとに、実薬TEを受ける女性には経口微細化プロゲステロン(一日200㎎を12日間)が、プラセボを受ける女性にはそっくりのプラセボ錠が投与された。
    <主要評価項目>
     Center for Epidemiological Studies–Depression Scale (CES-D)スコアが、ベースライン、無作為化後の1カ月、2カ月、4か月、6カ月、8か月、および12カ月に評価された。臨床的に意味のある抑うつ症状は、CES-Dスコアで少なくとも16点と定義された。
    <結果>
     172人の参加者のうち、130人(76%)が白人で70人(19%)がアフリカ系米国人、平均家計所得は$50,000から$79,999であった。平均年齢は51歳、43人が臨床的に意味のある抑うつ症状を呈した。プラセボに割り付けられた女性は、TE+IMPに割り付けられた女性よりも多く、介入期において少なくとも一度は16点以上のCES-Dスコアを示し(32.3% vs 17.3%; odds ratio [OR], 2.5; 95% CI, 1.1-5.7; P = .03)、介入期を通して平均CES-Dスコアが高かった(P = .03)。
     ベースラインの生殖期は治療効果を減弱させた(β, −1.97; SEM, 0.80; P for the interaction = .03)。これはプラセボに対するTE+IMPの気分利得が、閉経移行早期(β, −4.2; SEM, 1.2; P < .001)の女性では明確であったが、閉経移行後期(β, −0.3; SEM, 1.1; P = .92)または閉経後(β, −0.3; SEM, 1.1; P = .92)の女性ではそうではなかったことによる。試験参加に先立つ6カ月間におけるストレスとなるライフイベントも、平均CES-Dスコアに対する治療効果を減弱させたが、これはTE+IMPの気分利得がライフイベントの数が多くなるほど増加したことによる(β, 1.22; SEM, 0.40; P = .003)。
     ベースラインのエストラジオール水準、ベースラインの血管運動症状、うつ病の既往、および虐待の既往は、治療効果を弱めることはなかった。
    <結論>
     当初は正常気分であった閉経前後期および閉経後早期の女性における抑うつ症状の発症を予防する点において、12カ月のTE+IMPはプラセボより有効であった。
    <試験登録>
     clinicaltrials.gov(識別子: NCT01308814)

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緑色葉野菜の栄養素および生物活性体と認知機能低下:前向き研究
    Morris MC et al. Neurology, published online: December 20, 2017.
    Nutrients and bioactives in green leafy vegetables and cognitive decline: Prospective study.

    論文要約:
    <目的>
     関連性の背後にある生物学的メカニズムの理解を深めるために、我々はビタミンK(フィロキノン、phylloquinone)、ルテイン(lutein)、βカロテン(β-carotene)、硝酸塩(nitrate)、葉酸(folate)、ケンペロール(kaempferol)、そしてαトコフェロール(α-tocopherol)を含む緑色葉野菜の主要な栄養素および生物活性体と認知機能低下の個別的関係を調べた。
    <方法>
     これは、食物摂取頻度質問紙に回答して平均4.7年にわたって2つ以上の認知機能評価を受けた、記憶と加齢プロジェクト(the Memory and Aging Project)の参加者960人(年齢:58~99歳)に関する前向き研究である。
    <結果>
     年齢、性別、教育、認知的活動への参加、身体的活動、喫煙、シーフードとアルコールの消費を調整した線型混合モデルにおいて、緑色葉野菜の摂取はより遅い認知機能低下と関連した。摂取が最高四分範囲(中央値:1日1.3回)にある人の低下率はより遅いか(標準化単位β = 0.05, p = 0.0001)、11歳若い年齢のそれと同等であった。
     個々の栄養素および生物活性体の頻回の摂取は、βカロテンを除いて、より遅い認知機能低下と個別に関連した。調整済モデルにおいて、最低に対する最高四分範囲の摂取の低下率は以下であった:フィロキノン(β = 0.02, p = 0.002)、ルテイン(β = 0.04, p = 0.002)、葉酸(β = 0.05, p < 0.001)、αトコフェロール(β = 0.03, p = 0.02)、硝酸塩(β = 0.04, p = 0.002)、ケンペロール(β = 0.04, p = 0.003)、βカロテン(β = 0.02, p = 0.08)。
    <結論>
     およそ1日に1度、フィロキノン、ルテイン、硝酸塩、葉酸、αトコフェロール、そしてケンペロールを豊富に含む緑色葉野菜と食物を摂取すれば、加齢に伴う認知機能低下を遅らせることができるかもしれない。

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アルコール使用障害を持つ患者の薬物療法に関する米国精神医学会(APA)の診療指針
    Reus VI et al. Am J Psychiatry, published online: January 05, 2018.
    The American Psychiatric Association Practice Guideline for the Pharmacological Treatment of Patients With Alcohol Use Disorder.

    ガイドラインによる推奨:
    <治療目標>
    • アルコール使用障害(Alcohol Use Disorder、AUD)を持つことが疑われる患者の精神医学的初期評価において、タバコ、アルコール、および処方薬と市販薬を含む他の物質の現在および過去の使用を評価する。(1C)
    • 精神医学的初期評価において、アルコール乱用の存在と重症度を同定するために定量的な行動評価(例、CAGEまたはAUDIT-C)を含める。(1C)
    • 初期評価と実施中の治療において、持続的に上昇するアルコール摂取水準を特定するために生理学的バイオマーカーを用いる。(2C)
    • 患者の併存疾患(例、物質使用、身体および精神障害)を評価する。(1C)
    • 患者とAUD治療(例、禁酒、減量、またはアルコール使用を控えること)の初期目標を確定し、患者の診療録に目標を記録する。(2C)
    • 治療目標の初期設定に、患者の法的義務についての議論を含めて記録する。(2C)
    • 最初の議論に持続的なアルコール使用の自己および他者へのリスクに対する影響を含め、その議論を記録する。(2C)
    • AUDを持つ患者は、エビデンスに基づく非薬理学的および薬理学的介入を含む実証的で包括的な患者中心の治療計画を持つべきである。(1C)

    <薬物療法の選択>
    中等度から重度のAUDを持つ次の患者には、ナルトレキソン(naltrexone)またはアカンプロセート(acamprosate)を提供する。
    • アルコール摂取の減量、または禁酒達成の目標を持っている。
    • 薬物療法を望む、または単独の非薬理学的治療に反応しない。
    • これら薬剤の使用について禁忌ではない。(1B)
    中等度から重度のAUDを持つ次の患者には、ジスルフィラム(disulfiram)を提供する。
    • 禁酒達成の目標を持っている。
    • ジスルフィラムを望む、あるいはナルトレキソンとアカンプロセートに不耐または反応しない。
    • ジスルフィラムの内服中にアルコールを摂取するリスクを理解することができる。
    • この薬剤の使用について禁忌ではない。(2C)
    中等度から重度のAUDを持つ次の患者には、トピラマート(topiramate)またはガバペンチン(gabapentin)を提供する。
    • アルコール摂取の減量、または禁酒達成の目標を持っている。
    • これら薬剤を望む、あるいはナルトレキソンとアカンプロセートに不耐または反応しない。
    • これら薬剤の使用について禁忌ではない。(2C)

    <特定の薬剤を使用しない推奨>
    • 抗うつ薬が適用の併存疾患があるのでなければ、AUDに対して抗うつ薬を使用しない。(1B)
    • 「急性のアルコール離脱の治療をしている、あるいはベンゾジアゼピンが適応の併存疾患がある」のでなければ、ベンゾジアゼピンを使用しない。(1C)
    • 「ベンゾジアゼピンを用いて急性のアルコール離脱を治療している、あるいは薬物療法を正当化する併存疾患がある」のでなければ、AUDを持つ妊娠中または授乳中の女性には薬理学的治療を用いない。(1C)
    • 重度の腎機能障害を持つ患者には、アカンプロセートを使用しない。(1C)
    • 軽度から中等度の腎機能障害を持つ患者の第1段階の治療として、アカンプロセートを使用しない。(1C)
    • 肝炎または肝不全を持つ患者には、ナルトレキソンを使用しない。(1C)
    • オピオイドを使用している人、またはオピオイドに対する要求が予期される症例には、ナルトレキソンを使用しない。(1C)

    <AUDの治療と併存するオピオイド使用障害>
    次の人にはナルトレキソンを処方する。
    • オピオイド使用を止めて、アルコール使用を止めたいか減らしたいと望む。
    • ナルトレキソンの開始に先立つ臨床的に適切な時期に、オピオイド使用を止めることができる。(1C)

    *各薬剤の簡便な説明
    ナルトレキソン(naltrexone):オピオイドμ受容体拮抗薬で、飲酒の“報酬効果”を阻害。
    アカンプロセート(acamprosate、商標名レグテクト):中枢神経系に作用し飲酒欲求を抑制。
    ジスルフィラム(disulfiram、商標名ノックビン):アルコールの代謝途中で生じるアセトアルデヒドが蓄積することによる不快から飲酒を抑止(嫌酒薬)。
    トピラマート(topiramate)、ガバペンチン(gabapentin):いずれも抗てんかん薬。

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精神疾患における解離:解離体験尺度を用いた研究のメタ解析
    Lyssenko L et al. Am J Psychiatry 2018; 175: 37-46.
    Dissociation in Psychiatric Disorders: A Meta-Analysis of Studies Using the Dissociative Experiences Scale.

    論文要約:
    <目的>
     解離(dissociation)は複雑かつ精神病理に遍在する構成概念である。解離症状は様々な精神疾患に存在し、高水準の解離を持つ障害に限らず重い疾病負担と低い治療反応性に結び付けられてきた。このメタ解析は、様々な種類の精神疾患において解離体験尺度(Dissociative Experiences Scale)を用いて評価された解離の有病率と分布について系統的なエビデンスに基づく研究を提供し、初期のメタ解析を更新する。
    <方法>
     1,900を超える原著論文がスクリーニングされ、19診断カテゴリーの15,219人から構成される216論文がメタ解析に含まれた。
    <結果>
     最も高い平均解離スコアを示したのは解離性障害(平均スコア>35)で、心的外傷後ストレス障害・境界性パーソナリティ障害・変換症/転換性障害(平均スコア>25)が続いた。身体症状症、物質関連障害および嗜癖性障害群、食行動障害および摂食障害群、統合失調症、不安症/不安障害、強迫症/強迫性障害、および大抵の感情障害も15を超える平均解離スコアを示した。双極性障害は最も低い解離スコアを示した(平均スコア=14.8)。
    <結論>
     本結果は、全範囲の精神疾患における解離症状の注意深い精神病理学的評価の重要性を明確に示している。

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結婚と認知症のリスク:観察研究の系統的レビューとメタ解析
    Sommerlad A et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry, published online: 28 Nov 2017.
    Marriage and risk of dementia: systematic review and meta-analysis of observational studies.

    論文要約:
    <背景>
     結婚していることはより健康的な生活習慣行動とより低い死亡率と関連し、生涯経過に関連する要因を介して認知症のリスクを低下させるかもしれない。婚姻状態と認知症の発症リスクの関連研究の系統的レビューとメタ解析を行った。
    <方法>
     婚姻状態と認知症の関係を報告する当該研究について、医学データベースを検索してその分野の専門家と連絡を取った。方法論上の質を評点し、結婚していることと比較した死別、離婚、または生涯独身であることの相対リスクを要約するために変量効果メタ解析(random-effects meta-analyses)を実施した。メタ回帰を用いた副次層別解析で、結果に対する臨床的・社会的背景と研究方法の影響を調べた。
    <結果>
     我々は812,047人の参加者からなる15の研究を含めた。結婚していることと比較して、生涯独身の人(相対リスク=1.42 :95% CI 1.07~1.90)と死別した人(相対リスク=1.20:95% CI 1.02~1.41)は認知症のリスクが上昇していた。離婚した人との関連はなかった。さらなる分析によると、低い教育は死別した人においてリスクと一部交絡し、不良な身体健康は生涯独身の人においてリスクを上昇させた。認知症診断を確定するために臨床登録を用いた研究と比較して、すべての参加者を臨床的に調べた研究では、未婚であるとリスクがより高かった。
    <結論>
     結婚していることは、死別した人や生涯独身の人より認知症の低いリスクと関連し、それはまた日常臨床診療において過小診断されている。未婚の人における認知症予防は教育と身体健康に焦点が当てられるべきであり、修正可能なリスク因子としての社会参加の見込まれる効果を検討すべきである。

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非精神疾患で入院した人における抗精神病薬と誤嚥性肺炎のリスク:コホート研究
    Herzig SJ et al. J Am Geriatr Soc 2017; 65: 2580-2586.
    Antipsychotics and the Risk of Aspiration Pneumonia in Individuals Hospitalized for Nonpsychiatric Conditions: A Cohort Study.

    論文要約:
    <背景と目的>
     抗精神病薬の承認適応外使用(Off-label use)は病院では一般的であり、せん妄の管理に最も頻繁に行われる。抗精神病薬は地域住民と老人ホームにおける誤嚥性肺炎と関連付けられてきたが、入院者における関連は調査されていない。我々は入院中の抗精神病薬への曝露と誤嚥性肺炎の関連を調べた。
    <設計・設定>
     前向きコホート研究・大規模な大学医療センター
    <参加者>
     2007年1月から2013年7月の成人の全入院。我々は外の病院への移送、48時間より短い入院、および精神科入院を除外した。
    <測定>
     抗精神病薬使用は、抗精神病薬の投与に対する調剤料として定義された。誤嚥性肺炎は入院時には存在しない誤嚥性肺炎の退院時診断コードに基づいて定義され、診療録を閲覧することで妥当性が確認された。一般化推定方程式(generalized estimating equation、GEE)が43の潜在的交絡因子を制御するために用いられた。
    <結果>
     本コホートには146,552入院(年齢中央値は56歳、39%が男性)が含まれた。抗精神病薬は10,377入院(7.1%)に使われた(80%が非定型、35%が定型、15%が両方)。誤嚥性肺炎は557入院(0.4%)で生じた。誤嚥性肺炎の発症率は曝露されなかった人では0.3%、抗精神病薬に曝露された人では1.2%であった(オッズ比 = 3.9, 95%信頼区間 = 3.2-4.8)。
     調整後も抗精神病薬への曝露は誤嚥性肺炎と有意に関連した(調整済オッズ比 = 1.5, 95%信頼区間 = 1.2-1.9)。似たような結果が、傾向スコアを用いた分析とせん妄または認知症を持つ人に限った分析で示された。関連の大きさは定型(調整済オッズ比= 1.4, 95%信頼区間= 0.94-2.2)および非定型(調整済オッズ比= 1.5, 95%信頼区間= 1.1-2.0)抗精神病薬で類似していた。
    <結論>
     参加者特性の広範な調整をしても、抗精神病薬はより高い誤嚥性肺炎のリスクと関連した。病院で抗精神病薬を処方する際には、このリスクを考慮すべきである。

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双極性障害に対する補助的光療法:ランダム化・二重盲検・プラセボ対照試験
    Sit DK et al. Am J Psychiatry, published online: October 03, 2017.
    Adjunctive Bright Light Therapy for Bipolar Depression: A Randomized Double-Blind Placebo-Controlled Trial.

    論文要約:
    <目的>
     双極性障害を持つ患者には、反復性うつ病、気分症状の残遺、および治療選択肢の制約がある。有望な予備的データを構築するために、著者らは双極性障害に対する真昼の補助的光療法の有効性を調べる6週間のランダム化・二重盲検・プラセボ対照試験を実施した。その目的は寛解率、抑うつ症状のレベル、気分極性の切換を確定し、睡眠の質を調査することである。
    <方法>
     本研究には、安定した用量の抗躁薬を受けている双極Ⅰ型またはⅡ型障害を持つ抑うつ状態の患者が含まれた。軽躁病または躁病、混合症状、または急速交代を持つ患者は除外された。患者は7,000ルクスの明白光(N=23)、または50ルクスの暗赤プラセボ光(N=23)を用いた治療に無作為に割り付けられた。症状は非定型うつ病の付録つきHAM-D(ハミルトンうつ病評価尺度)のための構造化面接ガイド(the Structured Interview Guide for the Hamilton Depression Scale With Atypical Depression Supplement、SIGH-ADS)、躁病評価尺度(the Mania Rating Scale)、およびピッツバーグ睡眠質問表(the Pittsburgh Sleep Quality Index)を用いて毎週評価された。寛解はSIGH-ADSスコアが8点以下と定義された。
    <結果>
     ベースラインにおいて両グループは中等度の抑うつ症状を呈したが、軽躁病または躁病の症状は認めなかった。プラセボ光グループと比べて明白光で治療したグループは、4から6週において有意に高い寛解率を達成し(22.2% 対 68.2%; 調整済オッズ比= 12.6)、エンドポイントにおいて有意に低い抑うつスコアを示した(14.9 [標準偏差= 9.2] 対 9.2 [標準偏差= 6.6]; 調整済β= -5.91)。気分極性の切換は観察されなかった。睡眠の質は両グループで改善し、有意な群間差はなかった。
    <結論>
     この研究データは、双極性障害に対する真昼の光療法の有効性を支持する強固なエビデンスを提供する。

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心的外傷後ストレス障害に対する短期の曝露に基づく治療と認知処理療法:ランダム化・非劣性臨床試験
    Sloan DM et al. JAMA Psychiatry, published online: January 17, 2018.
    A Brief Exposure-Based Treatment vs Cognitive Processing Therapy for Posttraumatic Stress Disorder: A Randomized Noninferiority Clinical Trial.

    キーポイント:
    <疑問>
     心的外傷後ストレス障害の治療において、短期の曝露に基づく治療(Brief Exposure-Based Treatment)は時間集約的な認知処理療法(cognitive processing therapy)に劣らないか。
    <結果>
     心的外傷後ストレス障害の診断を受けた126人からなるこのランダム化・非劣性臨床試験において、筆記による(written)5回の曝露療法で治療された人と認知処理療法で治療された人は、大きな効果量をもって有意に改善した。かなりの用量差にも関わらず、筆記による曝露療法は認知処理療法に劣らなかった。
    <意義>
     本結果は、筆記による曝露療法と認知処理療法は心的外傷後ストレス障害の治療に有効であり、心的外傷後ストレス障害は5回の心理療法で効率的に治療できるエビデンスを提供する。

    論文要約:
    <重要性>
     筆記による曝露療法(written exposure therapy、WET)は5回のセッションからなる介入法で、心的外傷後ストレス障害(posttraumatic stress disorder、PTSD)を効率的に治療することが示されてきた。しかし、この治療は認知処理療法(cognitive processing therapy、CPT)といったPTSDの第1選択の治療と直接比較されたことはない。
    <目的>
     PTSDを持つ患者においてWETがCPTに非劣性であるか否かを確定すること。
    <設計・設定・参加者>
     2013年の2月28日から2016年11月6日に退役軍人医療施設で行われたこのランダム化臨床試験では、退役軍人と非退役軍人の成人126人がWETまたはCPTに無作為に割り付けられた。包含基準はPTSDの主診断と安定した薬物療法、除外基準はPTSDの心理療法を実施中、自殺の高リスク、精神病の診断、および不安定な双極性障害であった。分析はintent-to-treatを基本として行われた。
    <介入>
     CPTに割り付けられた参加者(n = 63)は12セッションの治療を受け、WETに割り付けられた参加者(n = 63)は5セッションの治療を受けた。書面の説明を含むCPTプロトコールは、週1回60分のセッションにおいて個別に配布された。最初のWETセッションは60分、残りの4セッションは40分を要した。
    <主要評価項目>
     主要評価項目はPTSD臨床診断面接尺度 DSM-5版(the Clinician-Administered PTSD Scale for DSM-5)の総スコアで、非劣性は10ポイントと定義された。盲検化された評価が、ベースラインと最初の治療セッション後の6週、12週、24週、36週に行われた。治療からの脱落も調べられた。
    <結果>
     126人の参加者(66人が男性で60人が女性;平均[標準偏差]年齢は43.9 [14.6]歳)について、各々の評価期間において、WET条件のPTSD症状の改善はCPT条件の改善に劣ることはなかった。最大の治療間差は24週の評価で観察された(平均差, 4.31ポイント; 95%信頼区間, –1.37 to 9.99)。WET条件はCPT条件より脱落が有意に少なかった(4 [6.4%] vs 25 [39.7%]; χ21 = 12.84, Cramer V = 0.40)。
    <結論と関連性>
     WETはよりセッション数が少ないにも関わらず、PTSD症状を軽減する点においてCPTに劣ることはなかった。本結果はWETがPTSDに対して効果的、かつ患者と治療提供者の負担を軽減してこれまで言われてきたPTSD治療への障壁を乗り越える効率的なPTSD治療であることを示す。
    <試験登録>
     clinicaltrials.gov(識別子: NCT01800773)

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精神病体験を持つ青年におけるタバコと大麻使用の結合パターン連関
    Jones HJ, et al. JAMA Psychiatry, published online: January 17, 2018.
    Association of Combined Patterns of Tobacco and Cannabis Use in Adolescence With Psychotic Experiences

    キーポイント:
    <疑問>
     青年のタバコと大麻使用のパターンは後の精神病体験の発症と異なる形で関連するか。
    <結果>
     この3,328人の青年から構成される縦断的コホート研究で、交絡因子の調整前は、大麻使用とタバコ使用の両方が後の精神病体験に関連するエビデンスが見いだされた。しかし、調整後は、タバコのみの使用については関連がかなり低下したものの、大麻との関連は依然一貫していた。
    <意義>
     青年期に大麻またはタバコを用いると後の精神病体験のリスクが上昇するが、精神病体験との関連はタバコより大麻の喫煙でリスクがより大きい。

    論文要約:
    <重要性>
     タバコ使用の精神病に対する潜在的因果効果の懸念があるが、疫学研究では大麻使用と比べて交絡因子の影響を最小化する試みが十分なされてこなかった。
    <目的>
     タバコと大麻使用のパターンとそれに前後する精神病体験の関連を調べて、これらのパターン間で交絡因子の影響を比較すること。
    <設計・設定・参加者>
     このコホート研究は、追跡開始時に14,062人の子供が含まれたエイボン(英国Avon州)親と子の縦断研究(the Avon Longitudinal Study of Parents and Children)からのデータを用いた。データは収集開始時の1990年9月6日から定期的に収集され、2016年8月8日から2017年6月14日に分析された。タバコと大麻使用のデータは、物質使用の縦断的クラスを特定する縦断的潜在クラス分析(longitudinal latent class analysis)を用いて要約された。クラスと18歳時の精神病体験の関連が評価された。
    <曝露>
     分析モデルによって、曝露は物質使用の縦断的クラス、または12歳時の精神病体験であった。
    <主要評価項目>
     ロジスティック回帰が、物質使用の縦断的クラスと後の精神病体験の発症の関連を調べるために使用された。
    <結論>
     14歳から19歳までのタバコと大麻の使用について少なくとも3回の評価を受けた5,300人の参加者(56.1%が女性)から、縦断的クラスが生成された。広範な潜在的交絡因子を調整する前は、未使用者(65.9%)と比べて、早期発症・タバコ単独使用(4.3%)、早期発症・大麻使用(3.2%)、および後期発症・大麻使用(11.9%)が後の精神病体験の増加と関連する強いエビデンスを認めたが(omnibus P < .001)、後期発症・タバコ単独使用(14.8%)は関連がなかった。
     交絡因子の調整後は、関連は早期発症・タバコ単独使用との関連がかなり低下したものの(未調整オッズ比 [OR], 3.03; 95% CI, 1.13-8.14; 調整済OR, 1.78; 95% CI, 0.54-5.88)、早期発症・大麻使用(調整済OR, 3.70; 95% CI, 1.66-8.25)と後期発症・大麻使用(調整済OR, 2.97; 95% CI, 1.63-5.40)との関連は依然一貫していた。
    <結論と関連性>
     この研究における我々の結果は、青年期に大麻またはタバコを用いると後の精神病体験のリスクが上昇するが、タバコ使用より大麻使用について相当に強固な疫学的エビデンスが存在することを示す。

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エスシタロプラムへの曝露と治療の失敗に対するCYP2C19遺伝子型の影響:患者2,087人に基づく前向き研究
    Jukić MM et al. Am J Psychiatry, published online: January 12, 2018.
    Impact of CYP2C19 Genotype on Escitalopram Exposure and Therapeutic Failure: A Retrospective Study Based on 2,087 Patients.

    論文要約:
    <目的>
     抗うつ薬のエスシタロプラムは、多様な性質を持つCYP2C19酵素によって主に代謝される。著者らは大規模な患者集団において、エスシタロプラムの曝露と治療の失敗に対するCYP2C19遺伝子型の効果を調べた。
    <方法>
     CYP2C19の遺伝子型が確定された2,087人患者から得た全部で4,228の薬剤服用後10から30時間のエスシタロプラム血清濃度測定が、オスロ(ノルウェー)のDiakonhjemmet病院にある薬剤監視データベースデータから後方視的に収集された。患者はCYP2C19の遺伝子型に基づき、不活化をもたらす遺伝子型(CYP2C19Null)と機能獲得変異アレル(CYP2C19*17)に群分けされた。エスシタロプラムへの曝露(エンドポイント:用量に見合う血清濃度)と治療の失敗(エンドポイント:エスシタロプラムの最終測定後1年以内の他の抗うつ薬への切換)の群間差が、多変量混合モデルとカイ二乗分析で評価された。
    <結果>
     CYP2C19*1/*1群と比べて、エスシタロプラム血清濃度はCYP2C19Null/Nullでは3.3倍、CYP2C19*Null/*1群では1.6倍、そしてCYP2C19Null/*17群では1.4倍有意に高かった。一方、エスシタロプラム血清濃度はCYP2C19*1/*17群では10%、CYP1C19*17/*17群では20%有意に低かった。
     CYP2C19*1/*1群と比べて、エスシタロプラムから他の抗うつ薬への1年以内の切換は、CYP2C19Null/Null群、CYP2C19*1/*17群、そしてCYP1C19*17/*17群ではそれぞれ3.3倍、1.6倍、そして3.0倍多かった。
    <結論>
     抗うつ薬治療の切換で評価した場合、CYP2C19遺伝子型はエスシタロプラムへの曝露と治療の失敗に対して相当な影響を持つ。結果は、エスシタロプラム療法の個別化に対するCYP2C19遺伝子型判定の潜在的な臨床的有用性を支持する。

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再活性化前のプロプラノロール療法によるPTSD症状の軽減:ランダム化比較試験
    Brunet A et al. Am J Psychiatry, published online: January 12, 2018.
    Reduction of PTSD Symptoms With Pre-Reactivation Propranolol Therapy: A Randomized Controlled Trial.

    論文要約:
    <目的>
     著者らは心的外傷後ストレス障害(posttraumatic stress disorder、PTSD)の症状軽減において、想定される再固定阻害法としてのノルアドレナリンβ受容体阻害薬プロプラノロールの影響下で実施されたトラウマ記憶の再活性化の有効性を評価した。
    <方法>
     これは長期持続性のPTSDと診断された60人の成人における6週間の二重盲検・プラセボ比較・ランダム化臨床試験である。6週連続で週に1回行われた短期の記憶再活性化セッションの90分前に、プロプラノロールまたはプラセボが投与された。臨床家評価PTSD尺度(the Clinician-Administered PTSD Scale、CAPS)と患者評価のPTSDチェックリスト-ストレス因特定版(the patient-rated PTSD Checklist-Specific、PCL-S)の両方のPTSD症状を軽減させる点において、プラセボを用いたトラウマ再活性化と比べてプロプラノロールを用いたトラウマ再活性化に有意な治療効果を示すと予測した。
    <結果>
     治療前の値で調整(分散分析)した治療後CAPSスコアの推定群間差は、統計学的に有意な11.50であった。群内の治療前後の効果量(コーエンのd値)はプロプラノロールで1.76、プラセボで1.25であった。PCL-Sについては、混合線型モデルで推定される時間と群の交互作用は週に平均2.43ポイントの減少を示し、プラセボより全部で14.58ポイントの有意差を認めた。治療前後の効果量はプロプラノロールで2.74、プラセボで0.55であった。両評価項目ごとのプロトコル分析は類似の有意な結果を示した。
    <結論>
     再固定化仮説によって示唆された治療プロトコルである再賦活化前のプロプラノロールは、PTSDに対する新規の有効な治療のようである。様々なトラウマ母集団において長期間追跡する再現研究が必要である。

    コメント:プロプラノロールは既存の効果が実証されている心理療法との併用下で検証されました。βブロッカーは不安に対してしばしば使われたものでしたが、精神医学・医療では昔の知見のリバイバルが時々ありますね。

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加齢性聴力低下と認知機能、認知障害、および認知症の関連:系統的レビューとメタ解析
    Loughrey DG et al. JAMA Otolaryngol Head Neck Surg, published online: Dec 7, 2017.
    Association of Age-Related Hearing Loss With Cognitive Function, Cognitive Impairment, and Dementia: A Systematic Review and Meta-analysis.

    論文要約:
    <重要性>
     加齢性聴力低下(age-related hearing loss、ARHL)と認知低下および認知症との関連についての疫学研究は、これまで一貫性を欠く結果を導き出してきた。ARHLが臨床的認知症アウトカムのリスク因子である可能性があることから、この関連を明確にすることには意義がある。
    <目的>
     ARHLと認知機能、認知障害、および認知症の関連を、系統的レビューとメタ解析を通して調査し推定すること。
    <データ源と研究選択>
     データベースの開始から2016年4月15日までのPubMed、Cochrane Library、EMBASE、および SCOPUSの検索が、潜在的な適格研究について収集した研究と個人ファイルの相互参照をしながら行われた。キーワードには聴力、認知、認知症、およびアルツハイマー病が含まれた。論文査読のある学術専門誌に発表され、客観的評価項目が用いられているコホート研究と横断研究が含まれた。症例対照研究は除外された。
    <データ抽出と統合>
     1人の査読者がデータを抽出し、もう一人がデータを確認した。両査読者は独立に研究の質を評価した。推定値は変量効果(random-effects)メタ解析を用いて集約(pool)された。研究レベルの特性について、サブグループ分析とメタ回帰(meta-regression)分析が行われた。
    <主要評価項目>
     純音聴力検査(pure-tone audiometry)だけで測定された聴力低下、および認知機能、認知障害、および認知症の客観的評価結果。認知機能アウトカムは相関係数(r値)に、認知障害と認知症はオッズ比(OR)に変換された。
    <結果>
     12か国からの40の研究が我々の包含基準を満たした。このうち、推定20,264人の新規参加者を含む36の新規研究がメタ解析に導入された。変量効果モデルを用いて最大限に調整された集約効果量によれば、すべての認知機能領域においてARHLとの小さいながら有意な関連が見いだされた。
     横断研究では、認知障害(OR, 2.00; 95% CI, 1.39-2.89)と認知症(OR, 2.42; 95% CI, 1.24-4.72)について有意な関連が見出された。前向きコホート研究では、認知障害(OR, 1.22; 95% CI, 1.09-1.36)と認知症(OR, 1.28; 95% CI, 1.02-1.59)について有意な関連があったが、アルツハイマー病ではなかった(OR, 1.69; 95% CI, 0.72-4.00)。追加分析では、研究・人口統計、・音響測定・分析に関する因子が認知機能と関連した。
     血管性の機能障害と言語的コミュニケーションの障害が、聴力低下と認知低下の関連に寄与するのかもしれない。
    <結論と関連性>
     加齢性聴力低下は、認知低下、認知障害、および認知症の有望なバイオマーカーであり、修正可能なリスク因子である。認知に対する治療との関係を調べ、この関連性の背後にある可能な因果メカニズムを探求する更なる研究とランダム化臨床試験が必要である。

    コメント:アイルランドはTrinity College Dublinの医学研究者らの研究です。加齢性聴力低下とアルツハイマー病および血管性認知症との個別の関連は認められなかったことがむしろ興味深いです。

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飲酒は伝染するか:飲酒行動の集合性理論のマルチレベル・フレームワークにおける分析
    Bräker AB and Soellner R. Alcohol Alcohol 2017; 52: 692-698.
    Is Drinking Contagious? An Analysis of the Collectivity of Drinking Behavior Theory Within a Multilevel Framework.

    論文要約:
    <目的>
     問題飲酒の様々な有病率を持つ国々において、問題となる青年のアルコール使用に関する行動伝染の効果を分析すること。
    <方法>
     25の欧州諸国の12から16歳、7から9学年の48,215人からのネストされたデータ(48.5%が男性、平均13.83歳)が、階層一般線型モデル化シーケンス(hierarchical general linear modeling sequences)を用いて研究された。最後に、主仮説を検証するためにアウトカムとしての切片モデル(intercept-as-outcome model)が構築された。
    <結果>
     マルチレベル分析(multilevel analyses)は、問題のあるアルコール使用者になることに対する個人のリスク因子:年長(OR = 2.02)、男性(OR = 1.41)、現地生まれ(OR = 1.32)の有意な効果を立証した。国レベルの予測因子「アルコール使用者の割合」に関しても、行動伝染の効果が確認された(OR = 1.05)。
    <結論>
     アルコール使用行動に関する伝染効果は、環境予防対策への関心を求める。(青年の)アルコール使用に対する公衆の許容度を低下させることで、欧州諸国における問題のある青年のアルコール使用者の平均割合が減るかもしれない。

    コメント:マルチレベル分析とは、階層構造をもつデータもしくはネストされたデータを適切に分析するための統計手法のことです(『保健医療従事者のためのマルチレベル分析活用ナビ』、診断と治療者 2013年)。階層構造というのは、本論文でいえば1次レベルは青年個人、2次レベルは個人が属する国となります。最下位と最上位の間の中間レベルの数次第では、3レベル、4レベル・・・になることもあります。

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戦争の10年:派兵米国軍人のPTSD症状の前方視的軌跡と戦闘への曝露の影響
    Donoho CJ et al. Am J Epidemiol 2017; 186: 1310-1318.
    A Decade of War: Prospective Trajectories of Posttraumatic Stress Disorder Symptoms Among Deployed US Military Personnel and the Influence of Combat Exposure.

    論文要約:
     心的外傷後ストレス障害(posttraumatic stress disorder、PTSD)は、軍人と退役軍人によくある精神疾患である。PTSDの臨床経過は個人により様々であり、症状発展のパターンはいまだ明確に記述されていない。先行研究は、便宜サンプル、短期の追跡期間、および戦闘関連のトラウマを説明できないことから限界を有する。
     戦闘への曝露がある派兵軍人と、曝露がない派兵軍人におけるPTSD症状の軌跡を調べるために、我々は2001年から2011年のミレニアムコホート研究(the Millennium Cohort Study)に参加した8,178人の米国軍人から成る住民ベースの代表サンプルからのデータを用いた。潜在成長混合モデル(latent growth mixture modeling)を用いて、PTSD症状の軌跡が全サンプル、および戦闘に曝露された人と曝露されなかった人の各群において決定された。
     全般的に見れば、回復力に富む(resilient)、前から存在(pre-existing)、新規の発症(new-onset)、ほどほど安定(moderate stable)の4つのPTSDの軌跡が特徴付けられた。すべての軌跡を通して、戦闘に派遣された軍人は1回の派遣の後でさえ、戦闘に派遣されなかった軍人から分岐した。前者はまた全般的により高いPTSD症状を持っていた。モデルに基づけば、10年の期間で戦闘への曝露がない人の90%弱が回復力に富む軌跡を示したのに対して、戦闘への曝露がある人では80%であった。
     結果は「PTSD症状の臨床経過は画一的でない発展パターンをとり、戦闘への曝露は不良な精神健康と一様に関連する」ことを明示している。

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母の妊娠中のカフェイン摂取と子の11歳時の行動障害:オランダ国民出生コホート研究
    Hvolgaard Mikkelsen S et al. J Pediatr 2017; 189: 120-127.
    Maternal Caffeine Consumption during Pregnancy and Behavioral Disorders in 11-Year-Old Offspring: A Danish National Birth Cohort Study.

    論文要約:
    <目的>
     母親の妊娠中のコーヒーと茶からのカフェイン摂取と子供の行動障害の関連を調べる。
    <研究デザイン>
     我々は、1996年から2002年のオランダ国民出生コホートに登録された47,491人の子供を研究した。母親のコーヒーと茶の摂取に関するデータが、妊娠15週と30週に収集された。子供が11歳の時に、子供、両親、および先生が子どもの強さと困難さアンケ-ト(the Strength and Difficulties Questionnaire)に回答した。我々は子の行動障害のリスク比(RR)を推定した。
    <結果>
     妊娠15週に妊婦の3%および4%が、1日8カップ以上のコーヒーまたは茶を摂取した。妊娠15週における母親の1日8カップ以上のコーヒーの摂取は、多動-不注意症(RR 1.47; 95% CI 1.18-1.83)、素行-反抗挑発症(RR 1.22; 95% CI 1.01-1.48)、およびあらゆる精神疾患(RR 1.23; 95% CI 1.08-1.40)のリスク増加と関連した。妊娠15週における母親の1日8カップ以上の茶の摂取は、不安-抑うつ障害(RR 1.28; 95% CI 1.09-1.52)と、あらゆる精神疾患(RR 1.24; 95% CI 1.11-1.40)のリスク増加と関連した。15週における1日のコーヒー摂取が増えるほど、多動-不注意症のリスクが高くなった。
    <結論>
     妊娠15週における母親のコーヒーと茶からの高いカフェイン摂取は、子の11歳児の行動障害と関連した。我々は「カフェインへの曝露が胎児脳に影響を与えて、以降の人生における行動障害をプログラムする」可能性を考えている。胎児脳は妊娠30週より15週において、カフェイン曝露に対してより感受性が高いようだ。

    コメント:欧州10カ国におけるコーヒー消費と死亡率を調べて、多様な原因による死亡リスクの低下を報告した研究(Gunter MJ, et al. Ann Intern Med 2017; 167: 236-247)がありましたが、妊娠中はコーヒーや茶の飲み過ぎに注意すべきかもしれません。

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小児と青年における遺伝性の認知能力および精神病理と脳白質特性の関連
    Dag Alnæs, et al. JAMA Psychiatry, published online January 24, 2018.
    Association of Heritable Cognitive Ability and Psychopathology With White Matter Properties in Children and Adolescents

    キーポイント:
    <疑問>
     脳の構造的結合性は、若者の精神症状の予測に感受性のある診断横断的表現型か。
    <結果>
     748人の子供、青年、および若年成人から成るこの横断研究で、一般的で連続的な症状スコアは脳白質パターンと関連し、一般精神病理が若者における遺伝的特性であることが分かった。
    <意義>
     この結果は、精神疾患への罹患脆弱性が亢進した人の人生早期において同定可能かもしれない診断横断的表現型としての脳の結合不全を意味する。

    論文要約:
    <重要性>
     多くの精神疾患は青年期に現れるが、それはこの時期に付与される脳の可塑性(brain plasticity)の潜在力に対する代償を反映しているのかもしれない脳の結合不全(brain dysconnectivity)は、診断カテゴリーにわたる共通因子として提案されてきた。
    <目的>
     脳の結合不全は亢進した罹患感受性と精神疾患の症状を持つ青年における診断横断的表現型である、とする仮説を究明すること。
    <設計・設定・参加者>
     我々は2009年11月1日から2011年11月30日に、フィラデルフィア神経発達コホート(the Philadelphia Neurodevelopmental Cohort)における8歳から21歳の6487人における臨床症状と認知機能を調べ、その参加者の748人からの脳拡散MRIを解析した。
    <主要評価項目>
     次元的精神病理スコアを発生させるために独立成分分析(independent component analysis)が、その遺伝性を推定するために全ゲノム複雑特性分析(genome-wide complex trait analysis)が用いられた。複数様式の融合(multimodal fusion)がfractional anisotropy、mean diffusivity、radial diffusivity、L1 (拡散テンソル画像の第1固有値)、mode of anisotropy、および線維束方向、構造的結合密度といった拡散MRI計量値と、それらの一般精神病理および認知との関連を同時にモデル化した。
    <結果>
     729人(8歳から22歳、平均[標準偏差]年齢は15.1[3.3]歳、343人[46%]が女性)での10倍の相互検証(cross-validation)と並べかえ検定(permutation testing)を用いた機械学習は、一般精神病理レベル(r = 0.24, P < .001)と認知(r = 0.39, P < .001)の有意な関連を示した。前頭-側頭結合性と鉤状束の交差線維を反映する脳白質パターンが、両特性と最も関連する特徴であった。
     広範囲の臨床領域と認知テスト得点を通した単変量解析は、その診断横断的重要性を確認した。一般精神病理(16%; SE, 0.095; P = .05)と認知因子(18%; SE, 0.09; P = .01)の両方が遺伝性であり、負の遺伝相関を示した。
    <結論と関連性>
     次元的で遺伝性の認知と精神病理の一般因子が特定の脳白質特性と関連することは、「結合不全が亢進した罹患感受性と精神疾患の症状を持つ人における診断横断的で脳に基盤を有する表現型である」ことを示唆する。

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認知的に正常な高齢成人におけるアミロイドβと不安・抑うつ症状の経時的関連
    Longitudinal Association of Amyloid Beta and Anxious-Depressive Symptoms in Cognitively Normal Older Adults
    Donovan NJ et al. Am J Psychiatry, published online: January 12, 2018.

    論文要約:
    <目的>
     前臨床的アルツハイマー病における抑うつ症状の役割を理解するためには、認知的に正常な高齢成人におけるアルツハイマー病の蛋白病理と抑うつ症状の時間的関係を明確にすることが重要である。本研究の目的は、認知的に正常な高齢成人サンプルにおける脳アミロイドβとうつ病および抑うつ症状クラスターの縦断的測定の関連を調べることである。
    <方法>
     全部で270人の地域社会に暮らす認知的に正常な高齢者が、皮質アミロイドβの蓄積を測定するピッツバーグ化合物B(Pittsburgh compound B、PiB)を用いた陽電子断層撮影(positron emission tomography、PET)をベースライン時に、30項目の高齢者用うつ尺度(30-item Geriatric Depression Scale、GDS)による評価を毎年受けた。
     著者らは個別の変数減少・混合効果モデル(separate mixed-effects models with backward elimination)において経時的(1から5年、平均3.8年)に、GDS総得点およびアパシー・快感消失(apathy-anhedonia)、不快気分(dysphoria)、不安・集中困難(anxiety-concentration)の3つのGDS項目クラスターの平均スコアで計算されるGDSスコアまたはGDSクラスターを予測因子として、連続的にPiB結合を評価した。
     事前の予測因子には、PiB結合、年齢、性別、Hollingshead得点(訳注:社会経済的地位の評価)、American National Adult Reading Test得点(AMNART、訳注:単語の読みを介した病前知的機能の評価)、アポリポプロテインEのε4の保有状況、うつ病の既往、およびそれらの時間との交互作用が含まれた。
    <結果>
     うつ病の既往を調整すると、より高いPiB結合は経時的なGDSスコアのより高い増加率を予測した。うつ病の既往とAMNARTスコアと時間の交互作用を調整すると、より高いPiB結合はまた、不安・集中困難スコアのより急峻な増加率を予測した。集中困難の項目を除いた不安スコアを推定する事後モデルにおいて、PiB結合と時間の交互作用は依然として有意であった。
    <結論>
     より高いアミロイドβ負荷は、認知的に正常な高齢者の経時的な不安・抑うつ症状の増加と関連する。先立つうつ病の既往は、より高い症状評点と関係するが経時的悪化とは関係しない。これらの結果は、上昇したアミロイドβレベルと不安・抑うつ症状の悪化の直接的および間接的関連を示唆し、発現している神経精神症状が前臨床的アルツハイマー病の早期徴候を表しているとする仮説を支持する。

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ホルモンによる避妊とうつ病の関連
    Skovlund CW et al. JAMA Psychiatry 2016; 73: 1154-1162.
    Association of Hormonal Contraception With Depression.

    キーポイント:
    <疑問>
     ホルモン避妊の利用はうつ病の治療と関連するか?
    <結果>
     デンマークに住む100万人を超える女性の全国前向きコホート研究において、抗うつ薬の初めての使用とうつ病の初めての診断のリスクの増加が、様々なタイプのホルモン避妊の利用者に見出され、その率は青年で最も高かった。
    <意義>
     健康管理の専門家は、これまで比較的知られていなかったこのホルモンによる避妊の有害作用に注意すべきである

    論文要約:
    <重要性>
     世界中の数百万人の女性がホルモンによる避妊を利用している。一部の女性の気分に対するホルモン避妊の影響の臨床的証拠があるにも関わらず、ホルモン避妊の使用と気分変調の関連は不適切に取り組まれたままである。
    <目的>
     ホルモン避妊の利用が、後の抗うつ薬使用と精神科病院におけるうつ病診断と正の関連を持つか否かを調べること。
    <設計・設定・参加者>
     この全国前向きコホート研究では、デンマークにおける国民処方登録(the National Prescription Register)と精神疾患中央研究登録(the Psychiatric Central Research Register)のデータを結合した。デンマークに住む15歳から34歳のすべての成人と青年の女性が、うつ病の既往、抗うつ薬処方への支払い、他の主要な精神科診断、癌、静脈血栓、または不妊治療の有無について、2000年1月1日から2013年12月まで追跡された。データは1995年1月1日から2013年12月31日に収集され、2015年1月1日から2016年4月1日まで分析された。
    <曝露>
     ホルモンによる様々な様式の避妊法の使用
    <主要評価項目>
     時間的に変化する共変量を用いて調整された発生率比(incidence rate ratios、RRs)が、初めての抗うつ薬使用と精神科病院における初めてのうつ病診断について計算された。
    <結果>
     全部で106万1,997人の女性(平均 [標準偏差] 年齢、24.4 [0.001] 歳; 平均 [標準偏差] 追跡期間, 6.4 [0.004] 年)が分析に含まれた。未使用者との比較において、すべてを含めた経口避妊薬の使用者の初めての抗うつ薬使用のRRは1.23(95% 信頼区間, 1.22-1.25)であった。プロゲステロンのみを含む経口避妊薬の使用者の初めての抗うつ薬使用のRRは1.34(95% 信頼区間, 1.27-1.40)、ノルエルゲストロミン(norgestrolmin)避妊パッチの使用者では2.0(95% 信頼区間, 1.76-2.18)、膣リングの使用者では1.6(95% 信頼区間, 1.55-1.69)、そしてレボルエルゲストロミン(levonorgestrolmin)子宮内避妊システムの使用者では1.4(95% 信頼区間, 1.31-1.42)であった。うつ病診断についてはほぼ同じか若干低い推定値が見いだされた。相対リスクは年齢が高くなるに従い概ね低下した。
     すべてを含めた経口避妊薬を用いた青年(年齢範囲:15から19歳)の初めての抗うつ薬使用のRRは1.8(95% 信頼区間, 1.75-1.84)、プロゲステロンのみを含む経口避妊薬を用いた青年では2.2(95% 信頼区間, 1.99-2.52)であった。
     ホルモン避妊の使用開始後6カ月に、初めての抗うつ薬使用のRRは最高1.4(95% 信頼区間, 1.34-1.46)となった。対照群をホルモン避妊未経験者に変更した場合、すべてを含めた経口避妊薬使用者の推定RRは1.7(95% 信頼区間, 1.66-1.71)に上昇した。
    <結論と関連性>
     特に青年におけるホルモン避妊の利用は後の抗うつ薬の使用と初めてのうつ病診断に関連し、これはホルモン避妊利用の潜在的有害作用としてのうつ病を示唆する。

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ホルモンによる避妊と自殺企図および自殺の関連
    Skovlund CW et al. Am J Psychiatry, published online: November 17, 2017.
    Association of Hormonal Contraception With Suicide Attempts and Suicides.

    論文要約:
    <目的>
     この研究の目的は、ホルモン避妊の利用者における自殺企図と自殺の相対リスクを評価することであった。
    <方法>
     著者らは、15歳前に精神疾患の診断、抗うつ薬の使用、またはホルモン避妊の使用がなく、1996年から2013年にわたる研究期間中に15歳になったデンマークのすべての女性の全国前向きコホート研究において、ホルモン避妊の利用と自殺企図および自殺の関連を評価した。全国登録から、ホルモン避妊の利用、自殺企図、自殺、および潜在的交絡変数について個別に更新された情報が提供された。研究期間中の精神疾患の診断または抗うつ薬使用は、ホルモン避妊の利用と自殺企図の間の潜在的介在因子であると考えられた。ホルモン避妊未経験者と比較した場合の、ホルモン避妊使用者の自殺企図と自殺の調整済ハザード比が推定された。
    <結果>
     50万人に及ぶ女性(平均年齢21歳)が平均8.3年追跡され(390万人年)、6,999件の初めての自殺企図と71件の自殺が特定された。ホルモン避妊の利用経験がない女性と比較した場合、現在および最近の使用者の相対リスクは自殺企図については1.97(95% 信頼区間=1.85–2.10)、自殺については3.08(95% 信頼区間=1.34–7.08)であった。
     自殺企図の推定リスクは、すべてを含めた経口避妊薬については1.91(95% 信頼区間=1.79–2.03)、プロゲステロンのみを含む経口避妊薬については2.29(95% 信頼区間=1.77–2.95)、膣リングについては2.58(95% 信頼区間=2.06–3.22)、避妊パッチについては3.28(95% 信頼区間=2.08–5.16)であった。ホルモン避妊薬の使用と初めての自殺企図の関連は、使用2カ月で最高となった。
    <結論>
     ホルモン避妊の利用は後の自殺企図および自殺と正の関連を持ち、青年期の女性は最も高い相対リスクを有する。

    コメント:2016年に同じ著者らは「ホルモンによる避妊とうつ病の関連」(Skovlund CW et al. JAMA Psychiatry 2016; 73: 1154-1162)を報告しています。

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注意欠如・多動症(ADHD)の症状次元の因子構造
    Parke EM et al. Psychol Assess 2015; 27: 1427-37.
    Factor structure of symptom dimensions in attention-deficit/hyperactivity disorder (ADHD).

    論文要約:
     注意欠如・多動症(attention-deficit/hyperactivity disorder、ADHD)症状が、不注意と多動性/衝動性の2次元と、多動性と衝動性が分離した3次元のどちらで最もうまく特徴付けられるかについては合意がない。この問題に対処するために、本研究はADHDを持つ400人の子供および青年においてADHD症状評価の2因子モデルと3因子モデルを調べることで、背景にあるADHDの症状次元を解明した。
     18項目から成るDSM-IVの基準Aの各々に対する ADHD症状評価が、標準化された症状評価尺度を用いて母親から得られた。2つまたは3つの潜在構造のどちらが18症状を最もうまく説明するかを調べるために、確認的因子分析(confirmatory factor analysis、CFA)が使用された。
     CFAの結果は、2因子モデルより3因子モデルが優れていることを示し、不注意、多動性、衝動性の固有の臨床表現型を表す以前の研究と一致する明確な3症状次元を支持する。これら3領域を識別することは、ADHDを持つ子供の行動アウトカムの予測に役立つかもしれない。

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青年の反社会的行動の治療における多重システム療法と従来の管理法(START):実践的ランダム化比較・優越性試験
    Peter Fonagy et al. Lancet Psychiatry 2018; 5: 119–133.
    Multisystemic therapy versus management as usual in the treatment of adolescent antisocial behaviour (START): a pragmatic, randomised controlled, superiority trial

    論文要約:
    <背景>
     青年の反社会的行動(antisocial behaviour)は重大な健康および社会問題である。米国における研究は、多重システム療法(multisystemic therapy)がそのような行動とこのグループによる刑事犯罪数を減らすことが示された。しかし、米国以外での結果は曖昧である。我々は、青年の反社会的行動の治療における多重システム療法と従来の管理法(management as usual)の有効性と費用対効果を評価することを目的とした。
    <方法>
     我々はイングランドで18カ月の多施設共同・実践的ランダム化比較・優越性試験を行った。適格とされた中等度から重度の反社会的行動を示す11歳から17歳の参加者は、複数の状況における過去の困難を示す少なくとも3つの重症度基準と、反社会的行動に関する5つの全般的選択基準の一つを満たした。治療施設、性別、研究登録時の年齢、および反社会的行動が出現した年齢で層別化して、家族を従来の管理法(management as usual、MAU)または3から5カ月の多重システム療法+その後のMAUのいずれかに、確率的最小化法(stochastic minimisation)を用いて均等(1:1)に無作為割り付けした。研究助手と研究者は治療割り付けについて隠蔽されたが、参加者に隠蔽することはできなかった。主要評価項目は18カ月時点のout-of-home placement(訳注:法律用語で家庭外での生活とケア)であった。一次解析には、そのデータが利用可能な無作為割り付けされた全参加者が含まれた。この試験は登録済で(ISRCTN77132214)、試験の追跡は今も進行中である。
    <結果>
     2010年2月4日から2012年9月1日に1,076家族が9つの複数機関の委員会に照会され、そのうち684家族がMAU(n=342)または多重システム療法+その後のMAU(n=342)に割り付けられた。18カ月の時点で、out-of-home placementにある参加者の割合はグループ間で有意な差はなかった(多重システム療法群、13% [43/340];MAU群、11% [36/335];オッズ比 1.25、95% 信頼区間 0.77–2.05;p=0.37)。
    <解釈>
     結果は、多重システム療法が従来の管理法に勝る、中等度から重度の反社会的行動を示す青年に最適な介入法として使用されることを支持しない。
    <資金>
     Department for Children, Schools and Families, Department of Health.

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持続性かつ重度の産後うつ病と子供のアウトカムの関連
    Elena Netsi et al. JAMA Psychiatry, published online January 31, 2018.
    Association of Persistent and Severe Postnatal Depression With Child Outcomes

    キーポイント:
    <疑問>
     持続性と重症度のレベルが異なる産後うつ病と、長期的な子供のアウトカムとの関連はどのようなものか?
    <結果>
     この様々なレベルの産後うつ病を持つ9,848人の女性と8,287人の子供の観察研究において、持続性ではないが強度が中等度または高度である産後うつ病に罹患した女性の子供と比較して、持続性で重度の産後うつ病に罹患した女性の子供は、3歳半までの行動上の問題、および青年期における数学の成績不良とうつ病のリスクが高かった。さらに、持続性の産後うつ病に罹患した女性は、少なくとも出産後11年までに、重大な抑うつ症状を体験しやすかった。
    <意義>
     高レベルの抑うつ症状を体験し続ける傾向があること、子供の発達が不良となるリスクが高いことから、持続性で重度の産後うつ病を持つ女性の治療が優先されるべきである。
    論文要約:
    <重要性>
     母親の産後うつ病(postnatal depression、PND)はよくある疾患で、有害な子供のアウトカムと関連する。これらの効果は不可避であるが、最も高リスクな人を特定することが重要である。先行研究は有害なアウトカムはPNDが重度で持続性である場合に増加することを示唆しているが、これを体系的に調べた研究はない。
    <目的>
     持続性と重症度のレベルが異なるPNDと、長期的な子供のアウトカムの関連を調べること。
    <設計・設定・参加者>
     この観察研究のサンプルは、英国におけるエイボン州(Avon)親子の縦断研究(the Avon Longitudinal Study of Parents and Children)の参加者から構成された。PNDの重症度の3つの閾値―中等度(moderate)・高度(marked)・重度(severe)は、自己評価式のエジンバラ産後うつ病評価票(Edinburgh Postnatal Depression Scale、EPDS)を用いて定義された。EPDSスコアが出生後の2カ月および8か月において閾値を超えている場合に、うつ病は持続性(persistent)であると定義された。
     これら重症度と持続性の各分類について、次のことが調べられた:1)その後のEPDSスコアの推移(出産後21カ月から11年の間の6時点)、2)子供のアウトカム―3.5歳時の行動上の問題、16歳時(卒業時)の数学の成績、および18歳時のうつ病。データ解析は2016年7月12日から2017年2月8日に行われた。
    <主要評価項目>
     ラター総合的問題尺度(the Rutter total problems scale)を用いて評価された3.5歳時の子供の行動上の問題、校外の全国公開試験の記録から抽出された16歳時(卒業時)の数学の成績、および臨床面接スケジュール改訂版(the Clinical Interview Schedule–Revised)を用いて診断された18歳時の子供のうつ病。
    <結果>
     サンプル中の9,848人の母親について、出産時の平均(標準偏差)年齢は28.5(4.7)歳であった。8,287人の子供のうち4,227人(51%)が男子、4,060人(49%)が女子であった。
     3つのすべての重症度レベルについて、持続性でないPNDを持つ女性、およびEPDS閾値を超えるスコアを持たない女性と比較して、持続性PNDを持つ女性は出産後11年まで抑うつ症状の上昇を示した。持続性の有無に関係なく、PNDは子供の行動障害のリスクを倍にした。子供の行動障害のオッズ比(OR)は、中等度のPNDでは2.22(95% CI, 1.74-2.83)、高度のPNDでは1.91(95% CI, 1.36-2.68)、重度のPNDでは2.39(95% CI, 1.78-3.22)であった。重度のPNDの持続が子供の発達にとって特に重要であり、3.5歳時の行動上の問題(OR, 4.84; 95% CI, 2.94-7.98)、16歳時の数学の低成績(OR, 2.65; 95% CI, 1.26-5.57)、および18歳時のうつ病の高い有病率(OR, 7.44; 95% CI, 2.89-19.11)のリスクを相当増加させた。
    <結論と関連性>
     持続性かつ重度のPNDは子供のすべての測定に関して、有害なアウトカムのリスクを上昇させる。出産後早期と後期の両方でうつ病の基準を満たすことは、特に気分障害が重度である場合、持続する傾向がある複数の有害な子供のアウトカムのリスク上昇と関連するうつ病に対するヘルス・ケア専門家への警告となる。このグループに対する治療を優先すべきである。

    コメント:このような持続する産後うつ病に対しては、次の介入研究が最近発表されています:『うつ病を治療して養育を改善する介入を通して、持続する産後うつ病の子供のアウトカムに対する影響を軽減する』(Alan Stein et al. Lancet Psychiatry 2018; 5: 134–144)。

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うつ病を治療して養育を改善する介入を通して、持続する産後うつ病の子供のアウトカムに対する影響を軽減する
    Alan Stein et al. Lancet Psychiatry 2018; 5: 134–144.
    Mitigating the effect of persistent postnatal depression on child outcomes through an intervention to treat depression and improve parenting: a randomised controlled trial.

    論文要約:
    <背景>
     母親の産後うつ病は出産の10から15%に引き続いて起こり、子供の広範囲な否定的アウトカムと関連する。子供のリスクは産後うつ病が持続する場合に特に増加する。我々は、養育についてのビデオ・フィードバック療法(video-feedback therapy、VFT)+産後うつ病に対する認知行動療法(cognitive behavioural therapy、CBT)による介入と、対照治療としての漸進的筋弛緩法(rogressive muscle relaxation、PMR)+同じCBTが、2歳時の子供のアウトカムを改善するかどうか調べることを目的とした。
    <方法>
     この2並行群デザインの個別にランダム化された比較試験において、我々はオックスフォード(英国)から50マイル以内に住む産後4.5から9カ月の18歳以上の女性から構成される地域住民サンプルを募集した参加者は全員、現在まで少なくとも3か月間は続いているうつ病の診断基準を満たし、妊娠35週以降に生まれた重大な新生児合併症のない出生体重2,000グラム以上の新生児を持っていた。中央サービスを通して、女性はVFTまたはPMRのいずれかに、子供の性別、気質、年齢、社会経済的地位、およびうつ病の重症度のバランスを取りつつ、最小化アルゴリズムを使って無作為に割り付けられた。両群ともうつ病に対するCBTを受けた。
     主要評価項目は、2歳時における子供の認知発達、言語発達、行動上の問題、およびアタッチメント形成であった。子供が1歳に満たない時期には11回の在宅治療セッションがあり、2年目には2回の追加セッションが加わった。評価者は治療の群分けに対して隠蔽され、全ての解析はintention-to-treat(ITT)の原則に従って行われた。この試験はISRCTN registry(ISRCTN07336477)に登録されている。
    <結果>
     2011年3月18日から2013年12月9日に、我々は144人の女性を無作為に各群72人に割り付けた。主要評価項目データは、62から64人(86から89%)のVFT参加者、および67から68(93から94%)のPMR参加者について利用可能であった。
     子供のアウトカムに群間差はなく(認知発達、調整後の差 −1.01 [95% CI −5.11 to 3.09]、p=0.63;言語発達、1.33 [–4.16 to 6.82]、p=0.63;行動上の問題、−1.77 [–4.39 to 0.85]、p=0.19;アタッチメント形成、0.02 [–0.06 to 0.10]、p=0.58)、両群とも全評価項目について非臨床的標準値に近い得点を達成した。6つの重大な有害事象、すなわちVFT群で5つ(2名の参加者において)、PMR群で1つ発生したが、治療とは無関係であった。
    <解釈>
     持続する産後うつ病の子に対する影響は重大な公衆衛生上の問題であるが、両方の治療群についてうつ病からの継続的寛解を認め、子供の発達アウトカムは正常範囲にあった。観察された子供への肯定的アウトカムを説明する正確な機序を、この研究から確定することはできない。
    <資金>
     Wellcome Trust

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英国のプライマリー・ケアにおいて重篤な精神疾患を持つ人のコレステロールと心血管系リスクを軽減する介入の臨床的有効性と費用対効果:クラスターランダム化比較試験
    David Osborn et al. Lancet Psychiatry 2018; 5: 145–154.
    Clinical and cost-effectiveness of an intervention for reducing cholesterol and cardiovascular risk for people with severe mental illness in English primary care: a cluster randomised controlled trial.

    論文要約:
    <背景>
     精神病を含む重篤な精神疾患を持つ人は、心血管疾患のリスクが高い。我々は重篤な精神疾患を持つ人々において、総コレステロール濃度と心血管疾患リスクの低下に対するプライマリー・ケアでの介入の効果を評価することを目的とした。
    <方法>
     我々はこのクラスターランダム化試験を、一般診療をクラスター単位として、イングランドの一般診療において行った。我々は4つのブロックサイズを持つコンピュータ生成のランダム系列を用いて、一般診療に重篤な精神疾患を持つ40人以上の患者を、1:1の比で無作為に割り付けた。治療割り付けは研究者に対しては隠蔽されたが、患者と一般診療スタッフには隠蔽されなかった。コレステロール(CHO)値が高い(5.0 mmol/L)、または総CHO/HDLコレステロール比が4.0 mmol/Lである、あるいは1つ以上の修正可能な心血管疾患のリスク因子を有する重篤な精神疾患(統合失調症、双極性障害、または精神病)をもつ30歳から75歳の参加者を含めた。適格な参加者は、無作為化前に各診療所で募集された。
     Primrose介入は訓練を受けたプライマリー・ケアの専門家による、心血管疾患予防についてのマニュアル化された介入(言い換えれば、スタチンの継続、食事または身体活動レベルの改善、節酒、または禁煙)を含む(12回以下の)受診から構成された。従来の治療(treatment as usual、TAU)には、スクリーニング結果のフィードバックのみを含めた。主要評価項目を12カ月時の総コレステロール値、主要経済分析項目を医療費として、intention-to-treat解析を用いた。試験はCurrent Controlled Trialsに登録されている(ISRCTN13762819)。
    <結果>
     我々は2013年12月10日から2015年9月30日に一般診療所を募集し、2014年5月9日から2016年2月10日に参加者を募集して、76の一般診療所と327人の参加者をPrimrose介入(一般診療所、38;患者、155)または従来の治療(treatment as usual、TAU;一般診療所、38;患者、172)に無作為に割り付けた。12カ月時の総コレステロール値データは、Primrose介入群においては参加者137人(88%)、TAU群においては参加者152人(88%)について利用可能であった。12カ月時の平均総コレステロール値は両群で違いがなかった(Primrose介入群、5.4 mmol/L [SD 1.1];TAU群、5.5 mmol/L [1.1];平均差、0.03 [95% CI −0.22 to 0.29];p=0.788)。この結果は事前に決められた支持分析(pre-agreed supportive analyses)で変わらなかった。
     平均コレステロール値は12か月間で減少し(Primrose群、−0.22 mmol/L [1.1];TAU群、−0.36 mmol/L [1.1])、全医療費(Primrose群、£1286 [SE 178];TAU群、£2182 [328];平均差、−£895 [95% CI −1631 to −160];p=0.012)と精神科入院費(Primrose群、£157 [135];TAU群、£956 [313]; 平均差、−£799 [95% CI −1480 to −117];p=0.018)は、TAU群よりPrimrose介入群の方が少なかった。6件の重大な有害事象(病院への入院)と1人の死亡がPrimrose群(n=7)に、3人の死亡を含む23件の重大な有害事象がTAU群(n=18)に発生した。
    <解釈>
     12カ月時の総コレステロール値は、Primrose群とTAU群で違いはなかった。おそらく、クラスターデザイン、TAU群での良いケア、短期の介入、またはスタチン処方の最適化が理由と思われる。Primrose介入とより少ない精神科入院の関連は、潜在的な費用対効果として重要かもしれない。
    <資金>
     National Institute of Health Research Programme Grants for Applied Research.

    コメント:クラスターランダム化比較試験とは無作為割り付けを個人単位ではなく、施設や地域といったより上位の単位で行う試験のことです(cluster randomized controlled trial、cRCT)。

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青年および若年成人における精神病性障害の初回診断後の死亡率
    Simon GE et al. JAMA Psychiatry, published online January 31, 2018.
    Mortality Rates After the First Diagnosis of Psychotic Disorder in Adolescents and Young Adults.

    キーポイント:
    <疑問>
     精神病性障害の初回診断後の死亡リスクはどの程度増加するのか?
    <結果>
     精神病性障害の初回診断を持つ16歳から30歳の人(n=11,713)からなる住民ベースのコホート研究において、全死亡率は10,000人あたり54.6人であったのに対して、保健医療制度の外来患者のそれは10,000人あたり6.7人であった。外傷と中毒が、精神病性障害を持つ患者における全死亡の半分を説明した。
    <意義>
     精神病性障害の初回診断後の3年間は、外傷と中毒による自殺と他の死亡の高リスク期間である可能性がある。

    論文要旨:
    <重要性>
     精神病性障害を持つ人は死亡率が高く、最近の研究は診断直後の著明な増加を示唆する。
    <目的>
     精神病性障害の初回診断後の全死亡率と原因別死亡率を調べるために、住民ベースのデータを利用する。
    <設計・設定・参加者>
     このコホート研究は、5つの州の800万人以上を担当する5つの統括保健医療制度からの記録を利用した。2009年9月30日から2015年9月30日に精神病性障害の初回生涯診断を受けた16歳から30歳の人と、年齢、性別、健康保険制度、および診断年を一致させた2つの対照群は、外来受診をした全員(一般外来群)と、単極うつ病の初回診断を受けた全員(単極うつ病群)から選ばれた。
    <曝露>
     外来患者、救急部、入院設定のいずれでも良い統合失調症、統合失調感情障害、精神病症状を持つ気分障害、または他の精神病性障害の初回記録診断。
    <主要評価項目>
     インデックス診断または受診日から3年以内の死亡(健康保険制度の電子健康記録によって確認済)、保険金請求、および州の死亡率記録。
    <結果>
     精神病性障害の初回診断を受けた全11,713人(男性、6,976人 [59.6%];女性、4,737人 [40.4%];16-17歳、2,368人 [20.2%]、18-30歳、9,345人 [79.8%])は、35,576人の外来診療利用者、および単極うつ病の初回診断を受けた23,415人とマッチされた。
     初回診断後の年の間、あらゆる理由による死亡率は精神病性障害群では1万人あたり54.6(95% CI, 41.3-68.0)であったのに対して、単極うつ病群では1万人あたり20.5人(95% CI, 14.7-26.3)、一般外来群では1万人あたり6.7人(95% CI, 4.0-9.4)であった。人種、民族、および慢性身体疾患の既往で調整後、一般外来群と比較した精神病性障害群の死亡の相対ハザードは、自傷行為による外傷または中毒については34.93(95% CI, 8.19-149.10)、他の型の外傷または中毒については4.67(95% CI, 2.01-10.86)であった。心疾患または糖尿病による死亡のリスクは、精神病性障害と一般外来群で有意差なかつた(ハザード比、0.78;95% CI、0.15-3.96)。
     診断後1年目と3年目の間に、精神病性障害群のあらゆる理由による死亡率は1万人あたり54.6から27.1に、外傷と中毒による死亡率は1万人あたり30.6人から15.1人に減少した。しかし、どちらの率も一般外来群(あらゆる理由については1万人あたり9.0人、外傷と中毒については1万人あたり4.8人)より3倍高い状態を維持した。
    <結論と関連性>
     早期死亡率の増加は、初発精神病を体験している若者への系統的介入の重要性を強調する。臨床医は精神病性障害の初回診断後の自殺リスクの上昇に注意すべきである。

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精神病スペクトラムの幼年期から成人前期の認知発達経過
    Josephine Mollon et al. JAMA Psychiatry, published online January 31, 2018.
    Course of Cognitive Development From Infancy to Early Adulthood in the Psychosis Spectrum.

    キーポイント:
    <疑問>
     精神病性障害、精神病体験、およびうつ病を持つ人の幼児期から成人前期の認知機能の経過はどのようなものか?
    <結果>
     4,322人の参加者を含む、18カ月、4歳、8歳、15歳、20歳の時の認知機能に関するこの縦断的出生コホートにおいて、精神病性障害を持つ人はIQの低下が大きく進行性であり、作業記憶といった特定の認知機能における発達上の成長が遅延していることが示された。
    <意義>
     精神病性障害の起源には力動的発達過程が関与する。それは広範な認知機能に影響を及ぼし、生涯の最初の20年間に絶え間なく増加する機能不全を引き起こす。

    論文要旨:
    <重要性>
     精神病性障害を持つ大抵の患者は重度の認知障害を経験するが、この生涯の発症と経過は依然として不明確である。さらに、他の精神疾患における認知機能の経過のほとんどは調べられていない。
    <目的>
     精神病性障害、精神病体験、およびうつ病を有する人における全般的および特定の認知機能の経過を追跡し記録すること。
    <設計・設定・参加者>
     エイボン親と子の縦断研究(the Avon Longitudinal Study of Parents and Children、ALSPAC)は、イングランドのエイボン州における1991年4月1日から1992年12月31日までの全生児出生から構成される前向きコホート研究である。解析は2015年9月から2016年7月に行われた。18カ月、4歳、8歳、15歳、20歳時の認知検査、および18歳時の精神医学的評価を受けた参加者が含まれた。
    <主要評価項目>
     精神病性障害、うつ病を伴う精神病、精神病体験、およびうつ病を有する人が対照と比較された。評価項目は18カ月、4歳、8歳、15歳、20歳時の全検査IQ、言語性IQ、非言語性IQ、および8歳と20歳時の処理速度、作業記憶、言語、視空間能力、注意の測定であった。
    <結果>
     次に述べる人数が、この縦断的出生コホート研究の分析に利用可能であった:511人 (男性238人 [46.6%])、18カ月時 (平均 [標準偏差] 年齢, 1.53 [0.03] 歳);483人 (男性229人 [47.4%]) 、4歳時 (平均 [標準偏差] 年齢, 4.07 [0.03] 歳);3,930人 (男性1679人 [42.7%])、8歳時 (平均 [標準偏差] 年齢, 8.65 [0.29] 歳);3,783人 (男性1686人 [44.6%])、15歳時 (平均 [標準偏差] 年齢, 15.45 [0.27] 歳);257人 (男性90人 [35.0%])、20歳時 (平均 [標準偏差] 年齢, 20.06 [0.55] 歳)。
     精神病性障害を持つ人は、幼児期(18カ月)から成人期(20歳)の間に継続的に増加する全検査IQ(変化の効果量 [ESΔ] = −1.09, P = .02)、および非言語性IQ(ESΔ = −0.94, P = .008)の欠陥を示した。うつ病群は、幼児期から成人期の間に小さいながら増加する非言語性IQ(ESΔ = −0.29, P = .04)の欠陥を示した。
     精神病性障害群は、8歳と20歳の間に処理速度(ESΔ = −0.68, P = .001)、作業記憶(ESΔ = −0.59, P = .004)、および注意(ESΔ = −0.44, P = .001)の測定の発達遅延(より遅い成長)を示し、言語(ES = −0.87, P = .005)と視空間能力(ES = −0.90, P = .001)の測定の遅延は大きく固定的であった。一方、うつ病を伴う精神病、および精神病体験群における認知欠損については、弱いエビデンスしかなかった。
    <結論と関連性>
     この点において結果は、「精神病性障害の起源には力動的発達過程が関与し、それは言語的・非言語的能力に影響を及ぼし、生涯の最初の20年間に絶え間なく増加する機能不全を引き起こす」ことを示す。これら発達過程は、うつ病を伴う精神病やうつ病といった他の精神疾患では現れない。

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アルツハイマー病のための高性能血漿アミロイドβバイオマーカー
    Akinori Nakamura et al. Nature, published online: January 31, 2018.
    High performance plasma amyloid-β biomarkers for Alzheimer’s disease.

    論文要約:
     アルツハイマー病の病態修飾療法(disease-modifying therapies)は、疾患の最も早期かつ軽症な段階において最大の有効性が期待されることから、その臨床試験を促進するためには補助となるバイオマーカーの情報が必要である。アルツハイマー病の最初期の病理学的特徴である脳内アミロイドβの蓄積を同定するための唯一妥当性が確認された方法は、アミロイドβの陽電子放出断層撮影法(amyloid-β positron-emission tomography、PET)、または脳脊髄液中のアミロイドβの測定である。したがって、侵襲性が最小で費用対効果が高い血液を用いるバイオマーカーが望まれる。多大な努力にも関わらず、我々の知る限り血液を用いるアミロイドβマーカーの臨床的有用性の妥当性を検討した研究はない。
     ここに我々は、質量分析法(mass spectroscopy、訳注:その開発により田中耕一氏が2002年のノーベル化学賞を受賞)と免疫沈降法の併用による高性能血漿アミロイドβバイオマーカーの測定を明示する。アミロイドβ前駆タンパク(APP)669–711とアミロイドβ(Aβ)1–42の比、Aβ1–40とAβ1–42の比、およびそれらの合成の、個人における脳アミロイドβの陽性または陰性状態を予測する能力がアミロイドβ-PET画像によって確定され、2つの独立データセット、すなわち発見用データセット(discovery:日本、n = 121)、および妥当性データセット(validation:オーストラリア、n = 252:炭素11でラベルされたピッツバーグ化合物-B (PIB)-PETを用いて診断された111人と、他の放射性リガンドを用いて診断された141人)を用いて検証された。両データセットには、認知的に正常な人、軽度認知障害の人、そしてアルツハイマー病を持つ人が含まれた。
     すべてのテストバイオマーカーは、脳アミロイドβの蓄積を予測する上で高い性能を示した。特に合成バイオマーカーは、両データセットにおいて非常に高い受信者動作特性(Receiver Operating Characteristic、ROC)曲線(Area Under Curve、AUC)を示し(discovery:96.7%、n = 121; validation:94.1%、n = 111)、PIB-PETを真理基準として用いた場合の正確度はほとんど90%に等しかった。さらに、テストバイオマーカーはPETのアミロイドβ蓄積、および脳脊髄液のAβ1–42レベルと相関した。
     この結果は、個人レベルでの脳アミロイドβの蓄積を予測する点で、血漿バイオマーカーの潜在的な臨床的有用性を示す。これら合成バイオマーカーはまた、現行の技術を凌ぐ費用便益と拡張性を有しており、より広範な臨床利用と効率的な集団スクリーニングを実現する可能性を秘めている。

    コメント:テレビ報道され話題になりましたが、血液で診断可能なら本当に素晴らしいです。

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可溶性γセクレターゼ修飾薬は、アルツハイマー病のβアミロイド病理を減弱させ、プレセニリン1の立体構造変化を誘導する
    Raven F et al. EBioMedicine 2017; 24: 93-101.
    Soluble Gamma-secretase Modulators Attenuate Alzheimer's β-amyloid Pathology and Induce Conformational Changes in Presenilin 1.

    論文要約:
     アルツハイマー病(Alzheimer's disease、AD)における中核的病因事象は、アミロイドβ42(Aβ42)ペプチドの蓄積であり、βおよびγセクレターゼによってアミロイドβ前駆タンパク(amyloid-β precursor protein、APP)から切り出されることでそれは生成される。我々はAβ42レベルを優先的に減少させる一種の可溶性2-アミノチアゾールγセクレターゼ修飾薬(2-aminothiazole γ-secretase modulators、SGSMs)を開発したが、家族性AD(familial AD、FAD)変異を発現しているAD動物と細胞におけるSGSMsの効果、およびγセクレターゼ修飾の機序はほとんど不明のままであった。
     この点について、FAD変異を発現している動物と細胞を用いてSGSMの代表的スキャフォールド(scaffold:足場)の一つSGSM-36を調べた。SGSM-36はαおよびβセクレターゼのAPPプロセシングにも、Notchプロセシングにも影響を与えることなく、Aβ42レベルを優先的に減少させた。さらに細胞ベースの蛍光寿命イメージング(Fluorescence Lifetime Imaging)顕微鏡分析を用いることで、γセクレターゼ複合体内にSGSM-36の接近を可能とするアロステリック部位を特定した。まとめると、本研究結果はこの種のSGSMsの機序について洞察を提供して、そのAD治療に対する潜在能力を強化する。

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イングランドにおける青年の自殺、病院を受診した非致死的自傷、地域社会での非致死的自傷の発生率(自傷の氷山モデル)の後方視的研究
    Galit Geulayov et al. Lancet Psychiatry 2018; 5: 167–174.
    Incidence of suicide, hospital-presenting non-fatal self-harm, and community-occurring non-fatal self-harm in adolescents in England (the iceberg model of self-harm): a retrospective study.

    論文要約:
    <背景>
     若者の致死的および非致死的自傷の相対的発生率については、ほとんど知られていない。我々は、イングランドにおける青年の自殺、病院を受診した非致死的自傷、および地域社会での非致死的自傷の発生率を推定した。
    <方法>
     イングランドにおける12~17歳の青年の致死的および非致死的自傷の10万人年あたりの発生率を推定するために、我々は国民死亡統計(2011年1月1日から2013年12月31日)、イングランドにおける自傷の多施設共同研究に由来する5病院の病院監視データ(2011年1月1日から2013年12月31日)、および学校調査からのデータ(2015年)を利用した。また、これら発生率を自傷の氷山モデル(the iceberg model of self-harm)の観点から記述した。
    <結果>
     2011年から2013年に、12~17歳の171人の青年(男性が119人 [70%]、15~17歳が133人 [78%])がイングランドにおいて自殺により死亡し、1320人の青年(女性が1028人[78%]、15~17歳が977人[74%])が非致死的自傷の後に研究病院を受診した。2015年に調査を受けた5,506人の青年のうち、322人(6%)が過去1年の自傷を報告した。 12~14歳においては、自殺によって死亡した全男子について、109人が自傷後に入院し、3,067人が地域社会での自傷を報告した。一方、自殺によって死亡した全女子について、1,255人が自傷後に入院し、21,995人が地域社会での自傷を報告した。
     15~17歳においては、男性の全自殺について、120人の男性が自傷のために病院を受診し、838人が地域社会で自傷した。一方、女性の全自殺について、919人の女性が自傷のために病院を受診し、6,406人が地域社会で自傷した。絞首または窒息が最もよくある自殺の方法で(171のうち125 [73%])、自己服用による中毒(self-poisoning)が自傷後の病院受診の主たる理由であり(1195のうち849 [71%])、自分を切りつけること(self-cutting)が地域社会での自傷の主たる方法であった(322のうち286 [89%])。
    <解釈>
     非致死的自傷に対する致死的自傷の比は、男性と女性の間、および12~14歳の青年と15~17歳の青年の間で異なり、特に地域社会における自傷を報告する女性の数が多かった。我々の結果は、青年について十分な資源を持つ地域社会、病院ベースの精神保健サービス、および学校ベースの予防に対するより多くの投資の必要性を明示している。
    <資金>
     英国保健省

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アルコール使用障害について、その配偶者間の類似性の起源
    Kendler KS et al. JAMA Psychiatry, published online February 7, 2018.
    The Origin of Spousal Resemblance for Alcohol Use Disorder.

    キーポイント:
    <疑問>
     アルコール使用障害について、そのリスクを配偶者間で類似させる要因は何か?
    <結果>
     この住民ベースの登録研究において、既婚者におけるアルコール使用障害の初回発症リスクの増加は、その配偶者のアルコール使用障害の発症後に大きく、かつ急速であった。アルコール使用障害を持つ、または持たない一連の配偶者と結婚した人(その順序は問わない)のアルコール使用障害のリスクは、配偶者にアルコール使用障害の登録がある場合は顕著に増加し、配偶者にアルコール使用障害の登録がない場合は減少した。
    <意義>
     既婚者のアルコール使用障害のリスクは、その配偶者のアルコール使用障害の存在に直接的かつ因果的に影響を受ける傾向がある。

    論文要約:
    <重要性>
     アルコール使用障害(alcohol use disorder、AUD)のリスクについて配偶者は互いによく似るが、この関連の原因はいまだ不明である。
    <目的>
     最初の結婚においては、片方の配偶者における初めてのAUD登録とそのパートナーの登録リスクの関連を縦断的に調査し、複数回の結婚をした人では、AUDを持つ配偶者から持たない配偶者への移行(またはその反対への移行)の際のAUD登録リスクの変化を探索すること。
    <設計・設定・参加者>
     1960年~1990年の間にスウェーデンに生まれ、研究追跡期間の終了までに結婚していた人を特定するために、スウェーデンの全住民登録が使用された。本研究には、最初の結婚前にAUDの登録履歴はないが、結婚中に配偶者の1人にAUDの登録履歴を認める8,562人の既婚ペアと、最初の配偶者にはAUD登録がないが、2人目の配偶者にはAUD登録がある、あるいはその反対の複数回の結婚をした4,891人が含まれた。最終統計解析は2017年8月15日から9月1日に行われた。
    <曝露>
     配偶者のAUD登録の発生、または履歴。
    <主要評価項目>
     国民医療、犯罪、調剤登録制度におけるアルコール使用障害の登録。
    <結果>
     8,562の初婚ペア(5,883人の女性発端者と2,679人の男性発端者; 結婚時の平均 [標準偏差] 年齢, 29.2 [5.7] 歳)において、妻のAUD登録のハザード比は、その夫の最初のAUD登録の直後は13.82であったが、2年後には3.75に低下した。夫のAUD登録のハザード比は、その妻の最初のAUD登録後は9.21であったが、2年後には3.09に低下した。
     複数回の結婚をした4,891人(1,439人の女性と3,452人の男性; 最初の結婚の平均 [標準偏差] 年齢, 25.5 [4.2] 歳)において、AUDを持つ配偶者との最初の結婚からAUDを持たない配偶者との二度目の結婚へ移行した人のAUD登録のハザード比は、女性で0.50(95% CI, 0.42-0.59)、男性で0.51(95% CI, 0.44-0.59)であった。AUDを持たない配偶者との最初の結婚後、AUDを持つ配偶者と二度目の結婚をした場合のAUDのハザード比は、女性で7.02(95% CI, 5.34-9.23)、男性で9.06(95% CI, 7.55-10.86)であった。
     二度目から三度目の結婚に移行した場合は、これらのパターンは若干弱められた。最初の結婚前の、または最初の結婚と二番目の結婚の間のAUD登録で調整すると、リスクの変化は最小となった。
    <結論と関連性>
     配偶者の最初のAUD登録に引き続く結婚相手のAUD登録リスクの上昇は、大きく、かつ迅速であった。AUD登録を持つか持たない一連の配偶者との結婚では、その順番はどうであれ、結婚相手にAUD登録が有るときは相当上昇し、AUD登録が無いときは低下した。これらの結果は、既婚者のAUDのリスクは、その配偶者のAUDの存在に直接的かつ因果的に影響を受けることを示唆する。

    コメント:アルコール使用障害のリスクに関して、夫婦間にこのような現象があるなんて知りませんでした。

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妊娠中のメチルフェニデートとアンフェタミンの使用と先天性奇形の関連:妊娠と安全性に関する国際研究コンソーシアムからのコホート研究
    Huybrechts KF et al. JAMA Psychiatry 2018; 75: 167-175.
    Association Between Methylphenidate and Amphetamine Use in Pregnancy and Risk of Congenital Malformations: A Cohort Study From the International Pregnancy Safety Study Consortium.

    キーポイント:
    <疑問>
     中枢刺激薬による注意欠如・多動症の治療の子宮内曝露に関連する先天性奇形のリスクはどれくらいか?
    <結果>
     US Medicaid Analytic eXtract (2000-2013) にネストされた180万の妊娠を含むこのコホート研究の結果は、Nordic Health registries (2003-2013) における別の250万の妊娠についての初期安全性シグナルを再現する形で、メチルフェニデート使用と関連する心奇形の潜在的リスクのわずかな増加を示唆するが、この種の奇形のリスクは、アンフェタミンについては認めなかった。メチルフェニデートもアンフェタミンも、奇形全般のリスクの上昇とは関連しなかった。
    <意義>
     この研究は生殖年齢および妊娠早期の女性において、注意欠如・多動症についての代替的治療戦略の危険と便益を計りにかける場合に、重要な情報を提供する。

    論文要約:
    <重要性>
     妊娠中および予期せず妊娠するかもしれない生殖年齢の女性の間で急速に増えている中枢刺激薬の使用を考えると、その安全性をもっと理解する必要がある。
    <目的>
     中枢刺激薬の子宮内曝露と関連する先天性奇形のリスクを調べること。
    <設計・設定・参加者>
     2000年から2013年の米国Medicaid Analytic eXtractにネストされた米国Medicaid保険の加入者集団のコホート研究で、Nordic Health registries (2003-2013)(デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、およびスウェーデン)を用いて、Medicaid Analytic eXtract で特定された安全性シグナルの追跡を行ったもの。米国における保険適用が明確な1,813,894の生児出生妊娠と、ノルウェーの5つの地域における別の2,560,069の生児出生妊娠が含まれた。背景にある精神疾患と他の潜在的交絡因子を考慮して、相対リスクが推定された。米国とノルウェーのデータに関する相対リスクの推定値が、固定効果メタ解析法を用いて統合された。本研究は2015年7月1日から2017年3月31日に実施された。
    <曝露>
     妊娠第1期中に調剤されたメチルフェニデートとアンフェタミン。
    <主要評価項目>
     主要な先天性奇形と心奇形の下位群。
    <結果>
     米国のデータでは、評価された1,813,894妊娠のうち、中枢刺激薬に曝露されなかった新生児では1,000当たり35.0の先天性奇形を持つと診断されたのに対して、メチルフェニデートについては新生児1,000当たり45.9、アンフェタミンについては新生児1,000当たり45.4の先天奇形が診断された。心奇形については、リスクはそれぞれ新生児1,000当たり12.7 (95% CI, 12.6-12.9)、18.8 (95% CI, 13.8-25.6)、15.4 (95% CI, 12.5-19.0)であった。
     メチルフェニデートの調整済相対リスクは、任意の奇形については1.11 (95% CI, 0.91-1.35)、心奇形については1.28 (95% CI, 0.94-1.74)であった。アンフェタミンのリスクは、任意の奇形については1.11 (95% CI, 0.91-1.35)、心奇形については1.28 (95% CI, 0.94-1.74)と増加を認めなかった。
     結果は、未測定の交絡因子の代用を考慮に入れ、曝露と評価項目の定義の特異度を高めた感度分析で確認された。2,560,069の妊娠を含むノルウェーのデータを用いたメチルフェニデートについての分析の再現では、心奇形の相対リスクは1.28 (95% CI, 0.83-1.97)、統合推定値は1.28 (95% CI, 1.00-1.64)となった。
    <結論と関連性>
     これらの結果は、メチルフェニデートの子宮内曝露と関連する心奇形のリスクの小さな増加を示唆するが、アンフェタミンについてはそうではなかった。この情報は、生殖年齢および妊娠早期の女性の注意欠如・多動症について代替的治療戦略の危険と便益を計りにかける場合に重要である。

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卵巣抑制後に起こる月経前不快気分障害の症状は、卵巣ステロイドの持続的定常レベルでなく、そのレベルの変化で誘発される
    Schmidt PJ et al. Am J Psychiatry 2017; 174: 980-989.
    Premenstrual Dysphoric Disorder Symptoms Following Ovarian Suppression: Triggered by Change in Ovarian Steroid Levels But Not Continuous Stable Levels.

    論文要約:
    <目的>
     月経前不快気分障害(premenstrual dysphoric disorder、PMDD)の症状は卵巣抑制によって消退し、卵巣ステロイドの投与によって誘発されるが、その症状はPMDDを持たない女性の卵巣ステロイドレベルと区別できない程度のレベルでも起こる。したがって、症状は卵巣ホルモンレベルの急性変化、または背景にある1日1回未満で生じる(infradian)感情“ペースメーカー”の発現を許す役割を持つ臨界域値を超える定常レベルによって引き起こされる可能性がある。著者らはどちらの状態がPMDDを誘発するか確定することを試みた。
    <方法>
     本研究にはPMDDを持つ22人の女性(30歳から50歳)が含まれた。GnRH(訳注:gonadotropin-releasing hormone、性腺刺激ホルモン放出ホルモン)アゴニスト(作動薬)で誘発された卵巣抑制(leuprolide、ロイプロリド)の2~3カ月後に症状の寛解を体験し、その後に1カ月間の(参加者のみの)単盲検のプラセボ投与、その後に3カ月間の混合エストラジオール/プロゲステロンの継続投与(continuous combined estradiol/progesterone、どちらも卵巣ステロイドホルモン)を受けた12人の女性。主要評価項目は、クリニック受診中に2週間毎に回答された月経前緊張尺度・他者評価および自己評価(Rating for Premenstrual Tension observer and self-ratings)であった。混合モデルについて多変量・反復測定の分散分析(multivariate repeated-measure ANOVA)が用いられた。
    <結果>
     月経前緊張尺度の自己評価および他者評価スコアは、ロイプロリド単独、プラセボの1カ月、の最終月、エストラジオール/プロゲステロンの2カ月目、および3カ月目と比べて、混合エストラジオール/プロゲステロンの1カ月目の間は有意に増加した(より症状が強い)。ロイプロリド単独、プラセボの1カ月、エストラジオール/プロゲステロン投与の2カ月目と、3カ月目の間の症状重症度に有意差はなかった。最後に、エストラジオール/プロゲステロン投与の2カ月目と3カ月目の月経前緊張尺度スコアに違いはなかった。
    <結論>
     結果は、エストラジオールとプロゲステロンの定常状態のレベルではなく、低から高へのレベル変化がPMDD症状の発現に関連することを明示している。排卵直前のステロイドレベルの変化を緩和させる治療的工夫を、さらに研究する必要がある。
    <試験登録>
     ClinicalTrials.gov NCT00005011.

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統合失調症を持つ人における精神病理変数、個人的資質、状況関連因子、日常生活機能の間の相互作用:ネットワーク解析
    Galderisi S et al. JAMA Psychiatry, published online February 14, 2018.
    Interplay Among Psychopathologic Variables, Personal Resources, Context-Related Factors, and Real-life Functioning in Individuals With Schizophrenia: A Network Analysis.

    キーポイント
    <疑問>
     統合失調症を持って地域で生活する人において、日常生活機能、精神病理変数、認知、個人的資質、および社会人口学的変数は互いにどのように関係するか。
    <結果>
     この統合失調症を持つ740人のネットワーク解析において、機能容量と日常生活技能が最も中核的相互接続ノードであり、陽性症状は最も疎な相互接続ノードであった。日常生活機能は、異なる領域に属するいくつかの変数と接続していた。
    <意義>
     機能容量と日常生活技能の高い中心性は、日常生活に関連する課題の遂行能力を改善することが、統合失調症に対するあらゆる治療的介入の中核であることを示唆し、ネットワークノードの接続パターンは、統合失調症を持つ人に対する個別的介入の実施を支持する。

    論文要約:
    <重要性>
     症状と機能の回復に関連する要因のより深い理解は、統合失調症を持つ人のための個別化された治療計画の設計に役立つ。これは地域で生活する統合失調症を持つ人の大規模サンプルで認知・精神病理・心理社会的変数間の関連を調べるために、ネットワーク解析を用いた今まで初めての研究である。
    <目的>
     データ駆動型アプローチを用いて、統合失調症を持つ人の精神病理変数、認知機能障害、機能容量、個人的資質、自己認知されたスティグマ、および日常生活機能の間の相互作用を評価すること。
    <設計・設定・参加者>
     この多施設共同横断研究には、26の大学精神科クリニック、および/または精神保健部門が含まれた。2012年3月1日から2013年9月30日の間に施設の外来部門に継続受診した患者から、抗精神病薬治療によって安定している全部で921人の地域に住むDSM-IV統合失調症の診断を持つ人が集められた。統計解析は2017年7月1日から9月30日に行われた。
    <主要評価項目>
     精神病理変数、神経認知、社会認知、機能容量、日常生活機能、レジリエンス、スティグマの自覚、動機付け、サービス利用を含めた測定。
    <結果>
     27の研究測定についての完全データを持つ740人の患者(221人が女性で519人が男性; 平均 [標準偏差] 年齢, 40.0 [10.9] 歳)のうち、163人(22.0%)は寛解(8つの中核症状のスコアが軽度または良好)していた。
     ネットワーク解析は、機能容量と日常生活技能がネットワークにおいて最も中核的かつ密に相互接続するノードであることを示した。精神病理変数は2領域に分かれ、陽性症状は最も辺縁的で疎な接続ノードの一つであった。機能容量は認知と日常生活技能の橋渡しを行い、日常生活技能は解体症候群と表出的欠陥に結びついていた。対人関係と仕事の技量は意欲欠如と結びついていて、対人関係ノードはまた社会的能力と、仕事の技量は社会的動機付けと精神保健サービスの利用と連結していた。
     ケース脱落ブートストラップ法は、元のサンプルと740のうち無作為に確定された最大481(65.0%)のケース脱落サンプルの間で0.75以上の中心性指標相関を示した。男女間でネットワーク構造の違いはなかった。
    <結論と関連性>
     機能容量と日常生活技能の高い中心性は、日常生活に関連する課題の遂行能力を改善することが、統合失調症に対するあらゆる治療的介入に重要であることを示唆する。ネットワークノードの接続パターンは、統合失調症を持つ人に対する個別的介入の実施を支持する。

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米国における成人のDSM-5うつ病とその特定用語の疫学
    Hasin DS et al. JAMA Psychiatry, published online February 14, 2018.
    Epidemiology of Adult DSM-5 Major Depressive Disorder and Its Specifiers in the United States.

    キーポイント:
    <疑問>
     DSM-5うつ病(major depressive disorder)、不安性の苦痛(anxious/distressed)と混合性の特徴(mixed-features)のDSM-5特定用語の全国有病率はどのくらいか、またそれらの臨床的関連はどうか。
    <結果>
     この米国成人36,309人の全国調査において、うつ病の12カ月および生涯有病率は、それぞれ10.4%と20.6%で、大抵は中等度(症状数が6から7)か重度(症状数が8から9)であって併存症および障害性と関連した。うつ病症例の74.6%に不安性の苦痛の特定用語を、15.5%に混合性の特徴の特定用語を認め、うつ病の生涯診断を持つ人のおよそ70%がある種の治療を受けていた。
    <意義>
     うつ病は今も米国における重大な健康問題であり、その特定用語については、多くの学ぶべきものがある。

    論文要旨:
    <重要性>
     DSM-5で定義されるうつ病(major depressive disorder、MDD)、またはDSM-5で定義されるMDDの特定用語(specifiers)の有病率および相関について、利用可能な米国の国民データは存在しない。
    <目的>
     DSM-5うつ病の有病率、相互関係、精神科併存症、機能、および治療に関する現在の国民代表所見と、DSM-5うつ病の重症度、不安性の苦痛および混合性の特徴の特定用語と、DSM-IVでは死別とみなされるであろう症例の有病率、重症度、および治療の最新情報を提示すること。
    <設計・設定・参加者>
     2012年から2013年の第3回アルコールおよび関連疾患の全国疫学調査(the 2012-2013 National Epidemiologic Survey on Alcohol and Related Conditions III、NESARC-III)に参加した施設外に居住する成人の米国市民(18歳以上、n = 36,309)代表サンプルへの対面面接。データは2012年4月から2013年6月に収集され、2016年から2017年に解析された。
    <主要評価項目>
     DSM-5うつ病とDSM-5特定用語の有病率。人口学的特性、および他の精神疾患との関連を示したオッズ比(odds ratios、ORs)、調整済オッズ比(adjusted ORs、aORs)、それらの95%信頼区間(95% CIs)。
    <結果>
     成人のNESARC-III参加者36,309人において、MDDの12カ月および生涯有病率はそれぞれ10.4%と20.6%であった。
     うつ病の12カ月診断のオッズは、男性(OR, 0.5; 95% CI, 0.46-0.55)、アフリカ系米国人(OR, 0.6; 95% CI, 0.54-0.68)、アジア/太平洋の島民(OR, 0.6; 95% CI, 0.45-0.67)、ヒスパニック系OR, 0.7; 95% CI, 0.62-0.78)の成人では白人の成人より低く、より若年の成人(年齢範囲, 18-29 歳; OR, 3.0; 95% CI, 2.48-3.55)および低所得($19,999またはそれ以下; OR, 1.7; 95% CI, 1.49-2.04)の人ではより高かった。
     うつ病と精神疾患との関連は、限局性恐怖症のaOR 2.1(95% CI, 1.84-2.35)から全般性不安症のaOR 5.7(95% CI, 4.98-6.50)に及んだ。うつ病と物質使用障害との関連は、アルコールのaOR 1.8(95% CI, 1.63-2.01)からいずれかの薬剤のaOR 3.0(95% CI, 2.57-3.55)に及んだ。
     うつ病の生涯診断症例の大抵は中等度(39.7%)または重度(49.5%)で、うつ病の生涯診断を持つ人の70%近くがある種の治療を受けていた。重度のうつ病を持つ人の機能は、全国平均よりおよそ1標準偏差低かった。
     MDDの生涯診断を持つ人の12.9%では、誰か親しい人の死の直後にすべてのエピソードが起こり、2カ月を超えて持続することはなかった。
     うつ病症例の74.6%に不安性の苦痛の特定用語を、15.5%に混合性の特徴の特定用語を認めた。重症度を制御すると、両方の特定用語は早期の発症、不良な経過と機能、および自殺傾向と関連した。
    <結論と関連性>
     米国の成人において、DSM-5うつ病は非常に多く、他疾患と併存し、機能は障害される。大抵の症例が治療を受けていた一方で、少数派の多くは治療を受けていなかった。一般人口におけるDSM-5うつ病の特定用語について、多くの学ぶべきものがある。

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スウェーデン男性における小児期の感染症と知能指数および成人の非感情病性精神病の関連:住民ベースの縦断的コホートおよび相関研究
    Khandaker GM, et al. JAMA Psychiatry, published online February 14, 2018.
    Association of Childhood Infection With IQ and Adult Nonaffective Psychosis in Swedish Men: A Population-Based Longitudinal Cohort and Co-relative Study.

    キーポイント:
    <疑問>
     小児期の感染症、IQ、および成人の非感情病性精神病(nonaffective psychosis、NAP)はどのように関係するか。
    <結果>
     このスウェーデン男性についての住民ベースの縦断的コホート研究において、小児期早期の感染症は、後のより低いIQとNAPリスクの上昇と関連した。感染症とNAPの間の関連はIQによって媒介され、かつ弱められ、その関連は一般人口および曝露について不一致の同胞対と同程度となった。
    <意義>
     精神病を持つ人のより低い病前IQは、小児期早期の感染症のような特定の環境因子に由来する可能性があり、一部は神経発達を阻害することで、一部は精神病に対する認知的脆弱性への効果を増悪させることで、小児期早期の感染症がNAPのリスクを上昇させるかもしれない。

    論文要旨:
    <重要性>
     小児期の感染症、IQ、および成人の非感情病性精神病(nonaffective psychosis、NAP)の関連は確立されている。しかし、曝露の感受期、家族性交絡因子の効果、およびIQが小児期感染症と成人期NAPの関連を媒介するか否かを調べることで、精神病の発病機序が解明されるかもしれない。
    <目的>
     小児期感染症とIQおよびNAPの関連を検証すること、感染-NAP関連およびIQ-NAP関連を説明する共有家族性交絡因子を見出すこと、IQが小児期感染症-NAP関連を媒介する、および/または減弱するか否かを調べること。
    <設計・設定・参加者>
     スウェーデン国民登録との連携を利用した住民ベースの縦断的コホート研究。1973年から1992年に生まれ、2010年末までに軍隊に徴兵されたすべてのスウェーデン男子(n = 771,698)を含めたリスク一式。我々は解析に647,515人の参加者を含めた。
    <曝露の測定>
     出生から13歳の間のいずれかの感染症による入院。
    <主要評価項目>
     2011年末までのNAPの国際疾病分類(International Classification of Diseases)診断。18歳前後の徴兵時に全参加者のIQが評価された。
    <結果>
     追跡終了時点の参加者の平均(標準偏差)年齢は30.73 (5.3) 歳であった。特に小児期早期における感染症への曝露が、より低いIQ(出生時から1歳までの感染症の調整済平均差: –1.61; 95% CI, −1.74 to −1.47)、および成人期NAPのリスク増加(出生時から1歳までの感染症の調整済ハザード比: 1.19; 95% CI, 1.06 to 1.33)と関連した。より低い病前IQと成人期NAPの間には線型的関連があり、それは前駆状態の症例を除外した後も認めた。感染症-NAP関連とIQ-NAP関連は、一般人口と曝露について完全不一致の同胞対で類似していた。感染症とNAPの関連はIQによって減弱され(相乗的[multiplicative], β = .006; SE = 0.002; P = .02、かつ相加的[additive], β = .008; SE = 0.002; P = .001)、媒介された(β = .028; SE = 0.002; P < .001)。小児期の感染症はより高いIQの範囲と比べて、より低いIQの範囲においてNAPリスクと強く関連した。
    <結論と関連性>
     小児期早期は感染症がIQとNAPに影響を与える感受期である。成人期のNAPと小児期早期の感染症および青年期のIQの関連は、共有家族性因子で完全に説明できず、よって因果関係を示しているのかもしれない。精神病を有する人のより低い病前IQは、小児期早期の感染症のような固有の環境因子に由来する。小児期早期の感染症が神経発達に影響して、認知的脆弱性と精神病の関連性を増悪させることでNAPのリスクを高めるかもしれない。

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初回エピソード精神病に対する初期抗精神病薬治療中の、海馬萎縮と精神病未治療期間および分子バイオマーカーの関連
    Goff DC et al. JAMA Psychiatry, published online February 21, 2018.
    Association of Hippocampal Atrophy With Duration of Untreated Psychosis and Molecular Biomarkers During Initial Antipsychotic Treatment of First-Episode Psychosis.

    キーポイント:
    <疑問>
     初回の抗精神病薬治療の間に、海馬体積の減少は起こるか。それは精神病未治療期間と関連するか。
    <結果>
     この初回エピソード非感情病性精神病の縦断的ケースコントロール研究において、患者はベースラインにおいて健常対照より海馬萎縮が有意に強かった。さらに、8週間の追跡時点の海馬萎縮は健常対照と比べて患者でより大きく進行し、左海馬萎縮の進行率は精神病未治療期間と有意に相関した。
    <意義>
     早期の海馬体積減少は、統合失調症における精神病未治療期間と不良なアウトカムの関連を媒介する役割を持つのかもしれない。

    論文要約:
    <重要性>
     精神病未治療期間(duration of untreated psychosis、DUP)は、統合失調症の不良なアウトカムと関連付けられてきたが、この関連を説明するメカニズムは知られていない。
    <目的>
     最初の8週間の抗精神病薬治療中に海馬体積の減少が起こるか否か、DUPと関連するか否かを確定し、海馬体積の減少およびDUPと関連する分子バイオマーカーを調べること。
    <設計・設定・参加者>
     マッチさせた健常対照を持つ自然観察縦断研究が上海精神保健センターで行われた。2013年3月5日から2014年10月8日に、非感情病性の初回エピソード精神病(first-episode psychosis、FEP)を持つが薬物療法を受けたことがない71人と、年齢と性別をマッチさせた健常対照者73人が集められた。およそ8週間後、FEPを持つ31人の参加者と32人の対照者が再評価された。
    <曝露>
     FEPを持つ参加者は、第二世代抗精神病薬を用いた標準的臨床診療に基づき治療された。
    <主要評価項目>
     海馬体積の完全性(Hippocampal volumetric integrity、HVI:標準化された海馬関心体積における実質分画の自動推定値)、DUP、13の末梢性分子バイオマーカー、および12の候補遺伝子からの14の一塩基多型。
    <結果>
     全サンプルはFEPを持つ71人(女性39人と男性32人; 平均 [標準偏差] 年齢, 25.2 [7.7] 歳)と健常対照73人(女性40人と男性33人; 平均 [標準偏差] 年齢, 23.9 [6.4] 歳)から構成された。
     ベースラインの左HVIの中央値は、FEP群(n = 57)が対照群(n = 54)より低かった(0.9275 対 0.9512; 点推定値差, −0.020 [95% CI, −0.029 to −0.010]; P = .001)。およそ8週間の抗精神病薬治療の間に、FEPを持つ24人の参加者では左HVIは年率中央値 −.03791(ベースラインから年4.1%の変化)で減少したが、31人の対照者では 0.00115(ベースラインから年0.13%の変化)で増加した(点推定値差, −0.0424 [95% CI, −0.0707 to −0.0164]; P = .001)。左HVIの変化はDUPと逆相関した(r = −0.61; P = .002)。
     類似の結果が右HVIについて見出されたが、右HVIの変化とDUPの間の関連は統計的有意性に達しなかった(r = −0.35; P = .10)。
     左HVIに限定した探索的分析は、左HVIと炎症マーカー、酸化的ストレス、脳由来神経栄養因子、グリア損傷、ドパミンおよびグルタミン酸神経伝達を反映するマーカーとの関連を明らかにした。
    <結論と関連性>
    初回治療の間のDUPの長さと海馬萎縮の強さの関連は、精神病は脳構造に対して持続性のおそらく有害な影響を及ぼすことを示唆する。未治療の精神病が海馬体積に影響を与える分子メカニズムに関するこれらの予備的結果を再現して、より長いDUPと不良なアウトカムの既知の関連をこれらの効果が説明するか否かを確定するためには、さらなる研究が必要である。

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胎児超音波検査と自閉スペクトラム症の関連
    Rosman NP et al. JAMA Pediatrics, published online February 12, 2018.
    Association of Prenatal Ultrasonography and Autism Spectrum Disorder.

    キーポイント:
    <疑問>
     胎児超音波検査の頻度、時期、時間、または強度は、後の自閉スペクトラム症の診断と関連するか。
    <結果>
     この420人の子供の症例対照研究において自閉スペクトラム症を持つ人は、定型発達の子供と比べて妊娠第1期および第2期の、発達の遅れがある子供と比べて妊娠第1期のより深い平均超音波浸透に曝露されていたが、スキャン数または超音波曝露時間と後の自閉スペクトラム症の関連はなかった。
    <意義>
     胎児期の超音波浸透深度の延長は、胎児神経細胞の皮質移動の異常と後の自閉スペクトラム症に関連するのかもしれないので、この関連をさらに研究すべきである。

    論文要約:
    <重要性>
     自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder、ASD)の有病率は急速に増加し、現在の推定値によれば子供の68人に1人が罹患することになる。同時に、胎児超音波検査の利用がかなり増えているが、その安全性と脳発達への影響はよく調べられていない。動物研究では、胎児超音波検査が神経細胞移動に有害な効果をもたらし得ることが示されている。
    <目的>
     後にASD、発達遅延(developmental delay)、および定型発達(typical development)に至った子供において、超音波エコー走査の頻度、時期、時間、および強度によって胎児期超音波曝露を定量すること。
    <設計・設定・参加者>
     この症例対照研究には、ASDを持つ107人の患者、発達遅延を持つ104人の対照者、および定型発達を持つ209人の対照が含まれた。広域の大学付属セーフティー・ネット病院(safety-net medical center、訳注:その人の健康保険の加入状況や医療費支払の能力に関わらず医療を提供する法律上の義務を負う病院)であるボストン医療センターにおける、2006年7月1日から2014年12月31日の間の胎児ケアと分娩(ただし出産時の在胎期間が少なくとも37週であった症例)に基づく医療記録から参加者は特定された。データは2015年5月1日から2017年11月30日に分析された。
    <曝露>
     超音波エコー曝露は、スキャン回数と時期、曝露時間、平均強度(深さ、フレーム率、メカニカルインデックス[Mechanical Index; MI、訳注:超音波による非熱的作用の安全性を評価する指標]およびサーマルインデックス[Thermal Index; TI、訳注:超音波による熱的作用の安全性を評価する指標])、ドップラー画像、および3または4次元画像の時期によって定量された。
    <主要評価項目>
     ASDを持つ参加者と発達遅延および定型発達を持つ対照者において超音波曝露が定量され、新生児の性別、出生時の在胎期間、および母体年齢について調整後、妊娠時期毎および全妊娠期間について比較された。
    <結果>
     全部で420人の参加者(328人が男子 [78.1%]、92人が女子 [21.9%]; 2016年1月1日現在の平均年齢は6.6歳; 95% CI, 6.5-6.8歳)が本研究に含まれた。ASD群は平均5.9回(95% CI, 5.2-6.6)のスキャンを受けたが、発達遅延群の6.1スキャン(95% CI, 5.4-6.8)および定型発達群の6.3スキャン(95% CI, 5.8-6.8)と有意差なかった。
     定型発達群と比較してASG群は、妊娠第1期(290.4秒 [95% CI, 212.8-368.0秒] vs 406.4秒 [95% CI, 349.5-463.3秒])と第2期(1687.6秒 [95% CI, 1493.8-1881.4 秒)の超音波曝露時間がより短かったが、スキャン数に差はなかった。
     ASG群は発達遅延群より妊娠第1期における超音波エコー浸透の平均深度がより深かった(12.5 cm [95% CI, 12.0-13.0 cm] vs 11.6 cm [95% CI, 11.1-12.1 cm])。
     ASG群は定型発達群より妊娠第1期(12.5 cm [95% CI, 12.0-13.0 cm] vs 11.6 cm [95% CI, 11.3-12.0 cm])および第2期(12.9 cm [95% CI, 12.6-13.3 cm] vs 12.5 cm [95% CI, 12.2-12.7 cm])における平均深度がより深かった。
    <結論と関連性>
    この研究では、ASG群は発達遅延群より妊娠第1期において、定型発達群より妊娠第1期および第2期において、超音波エコー浸透の平均深度が有意に深かった。超音波曝露の他の変数がまた発達中の胎児に対して有害作用を持つか否か確定するために、さらなる研究を要する。

    コメント:実際の超音波エコー検査では、特に妊娠中はTI(超音波による熱的作用の安全性を評価する指標)を参考に、出力をできるだけ少なくするように行われるようです。何十年も非侵襲的で安全な検査として超音波エコーは利用されてきたので、上記の予備的結果はさらに研究されるべきですね。

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米国、オンタリオ、オーストラリアにおける高齢成人のベンゾジアゼピン使用:2010-2016年
    Brett J et al. J Am Geriatr Soc, published online 12 February 2018.
    Benzodiazepine Use in Older Adults in the United States, Ontario, and Australia from 2010 to 2016.

    論文要約:
    <目的>
     3カ国における2010年から2016年の高齢成人のベンゾジアゼピン使用の発生率と有病率の年間傾向を詳述すること。
    <設計・設定・参加者>
     統一された研究プロトコルを用いた観察的多国間コホート研究。アメリカ合衆国(退役軍人集団)、オンタリオ州(カナダ)、オーストラリアの65歳以上のすべての人(8,270,000人)。
    <測定>
     年齢グループ(65~74歳, 75~84歳, 85歳以上)と性別で層別化されたベンゾジアゼピン使用の年間発生率と有病率。使用の発生率と有病率に有意な経時的変化があるか否かを評価するために重回帰分析を実施。
    <結果>
     研究期間を通して、オーストラリア(7.0% to 6.7%)を除く米国(2.6% to 1.7%)とオンタリオ(6.0% to 4.4%)で、ベンゾジアゼピンの初回使用が有意に減少していた。また、全ての国で継続使用が有意に減少していた(米国: 9.2% to 7.3%; オンタリオ: 18.2% to 13.4%; オーストラリア: 20.2% to 16.8%)。オンタリオとオーストラリアでは発生率と有病率は年齢とともに増加したが、米国では減少した。発生率と有病率はすべての国で女性がより高かった。
    <結論>
     他の国際研究と同じく、オーストラリアの発生率を除いて、3か国すべてにおいて高齢成人のベンゾジアゼピン使用の発生率と有病率は僅かであるが有意な減少を示した。しかしならが、その使用は特に85歳以上の人では依然として不適切なほど高く、臨床医から政策立案者まで注意喚起すべきである。

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認知症症状に対する抗精神病薬および他の薬剤に関するプライマリ・ケア医の見解
    Kerns JW et al. J Am Board Fam Med 2018; 31: 9-21.
    Primary Care Physician Perspectives about Antipsychotics and Other Medications for Symptoms of Dementia.

    論文要約:
    <背景>
     認知症の行動心理学的症状(behavioral and psychological symptoms of dementia、BPSD)に対する薬剤の使用を減らすために、ガイドライン、医療政策、および警告が適用されてきた。稀ではあるが危険な副作用のために、これらの取り組みの中で抗精神病薬は特別に扱われてきた。しかし、抗精神病薬はいまだに老人ホームおよび地域に居住する非常に多くの高齢者に適応外処方(prescribed "off label")されている。我々の目的は、プライマリ・ケア医がBPSDに対する非薬物的方略および薬剤使用の状況と理由を評価することであった。
    <方法>
     北西バージニアにおいて少なくとも3年間にわたりフルタイムのプライマリ・ケア診療に従事した26人のプライマリ・ケア医(16人が家庭医、10人が一般内科医)への半構造化面接。
    <結果>
     プライマリ・ケア医はBPSDの管理に関する4つの主要な課題を述べた:1)非薬理学的方法にはかなりの障壁がある、2)薬剤の使用はそれら障壁によって制約されず、簡単で有用、かなり安全で適切であると認識されている、3)薬物政策は抗精神病薬を含む標的薬物の使用を減らすが、それはまた代わりの危険な薬剤の使用を増加させるといった予期せぬ結果を生む、4)BPSD管理のあらゆる側面についてPCPは実際的なエビデンスに基づくガイドラインを必要としている。
    <結論>
     プライマリ・ケア医は患者指向の目標を求めて、抗精神病薬および他の代替薬を含む薬剤をエビデンスが示すよりも有効で危険は少ないと認識することで薬の処方を続けている。BPSDの治療を最適化するためには、プライマリ・ケア医を支援する検証を経た処方ガイドラインと、薬剤と同じくらい無理なく扱える実施可能で有用な非薬理学的方法を利用できる必要がある。そのためには、有意義な更なる研究と資金提供者の支援が必要であり行う価値はある。地域のプライマリ・ケア医は、BPSDの医療政策とガイドラインの作成に関与すべきである。

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非認知症成人における生体利用可能なクルクミンの記憶と脳アミロイドおよびタウへの効果:18カ月の二重盲検プラセボ比較試験
    Small GW et al. Am J Geriatr Psychiatry 2018; 26: 266-277.
    Memory and Brain Amyloid and Tau Effects of a Bioavailable Form of Curcumin in Non-Demented Adults: A Double-Blind, Placebo-Controlled 18-Month Trial.

    論文要約:
    <目的>
     クルクミン(curcumin)の抗炎症特性が脳を神経変性から守るかもしれないので、我々は非認知症成人において記憶に対するその効果を調べ、FDDNP-陽電子断層撮影(PET)を用いて脳アミロイドとタウの蓄積に対する影響を探索した。
    <方法>
     40人の対象(年齢:51~84歳)が、生体利用可能なクルクミン(90㎎のクルクミンを含むセラクルミン[Theracurmin®]を1日2回、N = 21)またはプラセボ(N = 19)に無作為に割り付けられた。主要評価項目は言語記憶(Buschke Selective Reminding Test [SRT])と視覚記憶(Brief Visual Memory Test-Revised [BVMT-R])であり、注意(Trail Making A)は副次評価項目であった。
     FDDNP-PET信号(15人がクルクミン、15人がプラセボ)が、扁桃体、視床下部、内側および外側側頭領域、後部帯状領域、頭頂領域、前頭領域、および運動領域(対照)で決定された。年齢と教育歴を調整する一般線型・混合効果モデル(mixed effects general linear models)と効果量(ES:Cohenのd値)が推定された。
    <結果>
     SRTの安定した長期記憶の想起(Consistent Long-Term Retrieval)はクルクミンで改善したが(ES = 0.63, p = 0.002)、プラセボでは改善しなかった(ES = 0.06, p = 0.8; 群間: ES = 0.68, p = 0.05)。プラセボと比較して(ES = 0.28, p = 0.1; 群間: ES = 0.67, p = 0.04)、クルクミンはまた総SRT(ES = 0.53, p = 0.002)、視覚記憶(BVMT-R再生: ES = 0.50, p = 0.01; BVMT-R遅延: ES = 0.51, p = 0.006)、および注意(ES = 0.96, p < 0.0001)を改善した。
     プラセボと比較して(ES = 0.08, p = 0.6; 群間: ES = 0.48, p = 0.07)、扁桃体のFDDNP結合はクルクミンで有意に低下した(ES = -0.41, p = 0.04)。視床下部のFDDNP結合はクルクミンでは不変であったが(ES = -0.30, p = 0.2)、プラセボでは増加した(ES = 0.26, p = 0.05; 群間: ES = 0.55, p = 0.02)。
    <結論>
     毎日のセラクルミンの経口摂取は、非認知症成人において記憶と注意の改善をもたらすかもしれない。FDDNP-PETの所見は、症状プロフィールと、気分および記憶を調整する脳領域におけるアミロイドとタウの蓄積減少の関連を示唆する。

    コメント:クルクミン(curcumin)はウコン(学名Curcuma longa)などに含まれる黄色のポリフェノール化合物(by Wikipedia)で、カレーの黄色はこれに由来するそうです。

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精神病性障害を持つ患者の妄想様観念と社会的回避に対する待機リスト対照と比較した仮想現実ベースの認知行動療法:単盲検ランダム化比較試験
    Roos M C A Pot-Kolder, et al. Lancet Psychiatry 2018; 5: 217–226.
    Virtual-reality-based cognitive behavioural therapy versus waiting list control for paranoid ideation and social avoidance in patients with psychotic disorders: a single-blind randomised controlled trial.

    論文要約:
    <背景>
     精神病性障害を持つ患者の多くが、妄想様観念を持ち続け、猜疑心と不安から社会的状況を避ける。我々は、妄想的思考と社会参加に対する仮想現実ベースの認知行動療法(virtual-reality-based cognitive behavioural therapy、VR-CBT)の効果を調べた。
    <方法>
     このオランダの7つの精神保健センターにおけるランダム化比較試験では、DSM-IVで診断された精神病性障害と妄想様観念を過去1年に持つ18歳から65歳の外来患者が、ブロック無作為化(block randomisation)によって、VR-CBT(+従来の治療)または待機リスト対照群(=従来の治療)に1対1に無作為割り付けされた。VR-CBTは16回の個人セッションから構成された(各々1時間)。評価はベースライン、治療後(ベースラインから3カ月)、6カ月の追跡調査時に行われた。
     主要評価項目は、他人と一緒にいる時間の量として操作的に定義される社会参加(social participation)、瞬時の妄想(momentary paranoia)、知覚された社会的脅威(perceived social threat)、および瞬時の不安(momentary anxiety)であった。分析は包括解析(intention to treat、ITT)でなされ、試験は後からISRCTNに登録された(番号12929657)。
    <結果>
     2014年4月1日から2015年12月31日の間に、精神病性障害を持つ116人の患者が、VR-CBT群に58名、待機リスト対照群に58名、無作為に割り付けられた。対照と比較してVR-CBTは、治療後評価時において他人と一緒にいる時間の量を有意に増加させることはなかった。
     しかし、瞬時の妄想様観念(b=–0.331 [95% CI −0.432 to −0.230], p<0.0001; effect size −1.49)と瞬時の不安(−0.288 [–0.438 to −0.1394]; p=0.0002; −0.75)は、対照群と比べてVR-CBT群において有意に減少し、これらの改善は追跡評価時において維持された。安全行動と社会的認知の問題は、妄想様観念の変化の媒介要因であった。治療または評価に関連する有害事象の報告はなかった。
    <解釈>
     我々の結果は、標準治療へVR-CBTを追加することで、精神病性障害を持つ患者の妄想様観念と瞬時の不安を減らすことができることを示している。

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自傷後の若者に対する系統的家族療法の従来の治療と比較した有効性:実際的な第3相・多施設共同・ランダム化比較試験
    Cottrell DJ et al. Lancet Psychiatry 2018; 5: 203-216.
    Effectiveness of systemic family therapy versus treatment as usual for young people after self-harm: a pragmatic, phase 3, multicentre, randomised controlled trial.

    論文要約:
    <背景>
     青年の自傷は一般的であり、多くの症例がそれを繰り返すが、自傷を減らす介入の効果についてのエビデンスは非常に少ない。
    <方法>
     この従来の治療と比較した家族療法の実際的な多施設共同・ランダム化比較試験は、英国小児と青年の精神保健サービス(UK Child and Adolescent Mental Health Services、CAMHS)の40施設で行われた。我々は少なくとも2回の自傷を行い、自傷後にCAMHSを受診した11歳から17歳の若者を募集した。参加者は、訓練と監督を受けた家族療法家によって提供されるマニュアル化された家族療法、もしくは地元のCAMHSによる従来の治療に、無作為に1対1で割り付けられた。参加者と治療者は治療の割り付けを知っていたが、研究者には隠蔽された。主要評価項目は、群分け後の18カ月間における自傷の反復のための病院受診であった。主要および副次解析は、intention-to-treat集団で行われた。本試験はISRCTNレジストリーに登録されている(登録番号 ISRCTN59793150)。
    <結果>
     2009年11月23日から2013年12月31日の間に、3,554人の若者がスクリーニングされ、適格基準を満たす832人の若者が参加に同意して、家族療法(n=415)または従来の治療(n=417)に無作為割り付けされた。主要評価項目は795人(96%)の参加者について利用可能であった。反復的な自傷事象のための病院受診の数に有意な群間差はなかった(家族療法群118 [28%] 対従来の治療群103 [25%]; ハザード比 1.14 [95% CI 0.87-1.49] p=0.33)。有害事象の数も両群で類似していた(家族療法群787 対 従来の治療群847)。
    <解釈>
     自傷後にCAMHSに照会された過去に少なくとも1度は自傷を行ったことがある青年について、我々の家族療法介入は、その後の自傷のための病院受診を減らす点において従来の治療以上の利益をもたらすことはなかった。したがって、青年の反復する自傷を減らすための明確でエビデンスに基づく介入を、臨床医に推奨することはまだできない。

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過渡的就労と比較したエビデンスに基づく援助付き雇用の心的外傷後ストレス障害を持つ退役軍人の定職獲得に対する効果:ランダム化臨床試験
    Davis LL et al. JAMA Psychiatry, published online February 28, 2018.
    Effect of Evidence-Based Supported Employment vs Transitional Work on Achieving Steady Work Among Veterans With Posttraumatic Stress Disorder: A Randomized Clinical Trial.

    キーポイント:
    <疑問>
     心的外傷後ストレス障害(posttraumatic stress disorder、PTSD)を持つ失業退役軍人を支援するにあたって、個別型援助付き雇用(individual placement and support–supported employment)は、過渡的就労を含む段階的職業リハビリテーションプログラムより優れるか。
    <結果>
     このPTSDを持つ541人の成人のランダム化臨床試験において、個別型援助付き雇用の参加者の38.7%が安定した雇用を達成したのに対して、過渡的就労群の参加者では23.3%であり、その差は有意であった。加えて、個別型援助付き雇用の参加者は、過渡的就労の参加者よりも有意に多い収入を競争的仕事から獲得した。
    <意義>
     個別型援助付き雇用は、PTSDを持つ失業中の退役軍人が競争的雇用を獲得して維持するのを支援する上で、過渡的就労よりも成功に導く可能性が高い。

    論文要約:
    <重要性>
     心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、しばしばその人の雇用を獲得して維持する能力を妨げ、それは労働力からの早期撤退と収入の減少につながる。
    <目的>
     PTSDを持つ退役軍人が安定した競争的雇用を達成するにあたって、個別型援助(IPS)付き雇用は、過渡的な就労割当を含む段階的職業リハビリテーションプログラムより優れるか否かを確定すること。
    <設計・設定・参加者>
     回復促進を目的とした退役軍人への個別型援助研究(the Veterans Individual Placement and Support Toward Advancing Recovery、VIP-STAR)は、12の退役軍人医療センターにおける541人のPTSDを持つ失業退役軍人を含む、前方視的多施設ランダム化臨床試験であった。データは2013年12月23日から2017年5月3日に収集され、包括解析(Intent-to-treat、ITT)が行われた。
    <介入>
     個別型援助(IPS)は、地域社会で雇用を得ることに障害を持つ人が各自の仕事の好みに基づいた雇用を得ること速やかに保障する援助付きの雇用介入である。
     過渡的就労(transitional work)は、地域社会における競争的雇用への準備として、人々に非競争的な仕事を一時的に割り当てる段階的職業リハビリテーション介入である。
    <主要評価項目>
     事前仮説は、過渡的就労の参加者と比較して、IPS群の参加者は安定的労働者(steady workers)となり(主要評価項目)、18カ月間の競争的仕事(competitive jobs)からより多くの収入を得る(副次評価項目)であった。安定的労働者は、18カ月の追跡期間の少なくとも50%において競争的仕事を持っていると定義された。
    <結果>
     全部で541人の参加者(IPSが271人、過渡的就労が270人)が無作為化された。平均(標準偏差)年齢は42.4(11)歳、99人(18.3%)が女性、274人(50.6%)が白人、225人(41.6%)がアフリカ系米国人、そして90人(16.6%)がヒスパニック系、スペイン系、またはラテンアメリカ系の民族であった。
     安定的雇用を達成した参加者はIPS群のほうが過渡的就労群より多かった(105 [38.7%] vs 63 [23.3%]; オッズ比, 2.14; 95% CI, 1.46-3.14)。IPS参加者は、いずれかの競争的仕事を獲得した割合がより高く(186 [68.6%] vs 154 [57.0%]; P = .005)、より高い累積賃金を競争的仕事から得た(中央値 [四分範囲] IPS $7290 [$23 174]、過渡的就労 $1886 [$17 167]; P = .004)。
    <結論と関連性>
     この多施設試験は、慢性PTSDと共に生きる退役軍人について、段階的な過渡的就労の職業リハビリテーションに対するIPS付き雇用の有意に高い有効性を示した。本結果は、PTSDと共に生きる退役軍人のためにIPSの利用機会を増やすことを支持するエビデンスを提供する。
    <試験登録>
     clinicaltrials.gov Identifier: NCT01817712

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フィンランド全国双極性障害患者コホートにおける再入院の予防に対する薬物治療の実社会での有効性
    Markku Lähteenvuo et al. JAMA Psychiatry, published online February 28, 2018.
    Real-World Effectiveness of Pharmacologic Treatments for the Prevention of Rehospitalization in a Finnish Nationwide Cohort of Patients With Bipolar Disorder.

    キーポイント:
    <疑問>
     双極性障害の再入院予防における薬物療法の比較有効性はどの程度か。
    <結果>
     この患者18,018人のフィンランド全国コホート研究において、リチウム使用は精神疾患と身体疾患による再入院の最小リスクと関連した。持続性の注射薬を用いた治療の間の再入院のリスクは、その経口相当薬を用いた治療と比較しておよそ30%低かった。
    <意義>
     双極性障害では依然としてリチウムが治療の第1選択であり、持続性の注射薬はリチウムが適当でない患者のための安全で有効な選択肢となるかもしれない。

    論文要約:
    <重要性>
     気分安定薬と抗精神病薬は双極性障害に対する主要な維持治療法である。リチウムは最も有効な気分安定薬と考えられているが、特定の治療と関連する全体的な健康アウトカム、および再入院予防における特定の向精神薬または投与手段の長期的な比較有効性についてはほとんど知られていない。
    <目的>
     双極性障害を持つ患者の全国コホートにおいて、再入院予防における薬理学的治療の比較有効性を究明すること。
    <設計・設定・参加者>
     このコホート研究は、双極性障害のために入院したフィンランドの全患者18,018人(平均追跡期間は7.2年)において、1987年1月1日から2012年12月31日の間の精神疾患、心血管疾患、そしてあらゆる理由による入院のリスクを、入院と投薬について前方視的に収集された全国データベースを用いて調べた。一次解析は個人内解析(within-individual analysis)であり、選択バイアスを除外するために各個人が対照として使われた。本研究では併用された向精神薬の効果、罹病期間、および曝露および非曝露期間の時間的順序が調整された。統計解析は1996年1月1日から2012年12月31日に実施された。
    <主要評価項目>
     再入院についての調整ハザード比(adjusted hazard ratios、HRs)が計算された。
    <結果>
     本コホート(女性9558人と男性8460人から構成され、平均 [標準偏差] 年齢は46.6 [17.0] 歳)において、9721人(54.0%)の患者が少なくとも1回の精神科への再入院を経験した。
     未調整の統計学的有意性に達する特定の薬剤の使用と未使用の比較のうち、リスペリドンの持続性注射薬(HR, 0.58 [95% CI, 0.34-1.00])、ガバペンチン(HR, 0.58 [95% CI, 0.44-0.77])、ペルフェナジンの持続性注射薬(HR, 0.60 [95% CI, 0.41-0.88])、および炭酸リチウム(HR, 0.67 [95% CI, 0.60-0.73])が、精神科への再入院の最も低いリスクと関連した。あらゆる理由による入院に関しては、リチウム(HR, 0.71 [95% CI, 0.66-0.76])が最も低いリスクと関連した。
     最も頻繁に使用された抗精神病薬であるフマル酸クエチアピンは、僅かな有効性を示したに過ぎなかった(精神科への再入院のリスク: HR, 0.92 [95% CI, 0.85-0.98]; あらゆる理由による入院のリスク: HR, 0.93 [95% CI, 0.88-0.98])。持続性の注射薬は、同等の経口抗精神病薬よりもかなり良いアウトカムと関連した(精神科への再入院のリスク: HR, 0.70 [95% CI, 0.55-0.90]; あらゆる理由による入院のリスク: HR, 0.70 [95% CI, 0.57-0.86])。
     感度分析の結果は、リチウムと持続性の注射薬についてのみ、その経口同等薬に対する一貫した比較有益効果を示した。
    <結論と関連性>
     精神または身体疾患による入院を予防する上で、リチウムが最も有効な気分安定薬であり、持続性の注射薬が最も有効な抗精神病薬であった。

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精神病を持つ患者の行動、臨床、および複数様式の画像の表現型間の多変量関連
    Moser DA et al. JAMA Psychiatry, published online March 7, 2018.
    Multivariate Associations Among Behavioral, Clinical, and Multimodal Imaging Phenotypes in Patients With Psychosis.

    キーポイント:
    <疑問>
     精神病において、画像以外の臨床的・行動的・生活様式および心臓代謝の諸因子の、複数様式の神経画像表現型に対する寄与はいかなるものか?
    <結果>
     この統合失調症を持つ92人の患者、双極性障害を持つ37人の患者、および48人の健常ボランティアの画像研究において、非画像データと画像データはかなりの共変動を示した。一般知能、体格指数、陽性精神病症状、物質使用、および抗精神病薬は、脳の構造と機能における変動の主要な寄与因子であった。
    <意義>
     この研究の結果は、精神病に関連する脳病態のより正確な特徴付けを行うために、これら鍵となる因子を今後の研究に含める重要性を強調する。

    論文要旨:
    <重要性>
     複数の神経画像表現型における変化が精神病性障害において報告されてきた。しかしながら、神経画像測定は精神病と直接関係しない因子に影響を受けることがあり、症例と対照の差異に対する解釈を混乱させるかもしれない。したがって、精神病におけるこれらの因子の神経画像表現型への寄与を詳細に特徴付ける必要がある。
    <目的>
     統合的多変量アプローチを用いて、精神病における神経画像測定と、行動、健康、および人口統計学的変数の関連を定量化すること。
    <設計・設定・参加者>
     この画像研究は2014年6月26日から2017年3月9日の間に、1つの大学研究病院において実施された。高解像度の複数様式の磁気共鳴画像データが、統合失調症を持つ100人の患者、双極性障害を持つ40人の患者、および50人の健常ボランティアから得られた。皮質厚、皮質下体積、白質異方性、(作業記憶と情動再認中の)課題に関連した脳賦活、および安静状態の機能的結合性が算出された。臨床特性、認知、物質使用、心理的トラウマ、身体活動、および体格指数に関係する非画像測定がすべての参加者で確定された。画像測定と非画像測定の間の関連は、頑強な信頼性評価を持つスパース正準相関分析(sparse canonical correlation analysis)を用いてモデル化された。
    <主要評価項目>
     精神病を持つ患者と健常ボランティアにおける、非画像測定と神経画像測定の間の関連の多変量関連パターン。
    <結果>
     解析は統合失調症を持つ92人の患者(女性23人 [25.0%]; 平均 [標準偏差] 年齢, 27.0 [7.6] 歳)、双極性障害を持つ37人の患者(女性12人 [32.4%]; 平均 [標準偏差] 年齢, 27.5 [8.1] 歳)、および48人の健常ボランティア(女性20人 [41.7%]; 平均 [標準偏差] 年齢, 29.8 [8.5] 歳)において行われた。
     画像と非画像データセットは有意な共変動を示し(r = 0.63, P < .001)、それは診断と無関係であった。検討された非画像変数において、年齢(r = −0.53)、IQ(r = 0.36)、体格指数(r = −0.25)は複数の画像表現型と、大麻使用(r = 0.23)、他の物質使用(r = 0.33)は皮質下体積と、アルコール使用は白質完全性(r = −0.15)と関連した。多変量モデルにおいて、陽性症状は依然として全脳画像(r = −0.13)、皮質厚(r = −0.22)、課題に関連した賦活変量(r = −0.18)と関連を持ち、陰性症状の大部分は皮質下体積の測定(r = 0.23)と、抑うつ/不安は白質完全性の測定(r = 0.12)と関連した。
    <結論と関連性>
     多変量解析は、神経画像表現型に影響する他の鍵となる因子のモデル化を可能とするため、脳病態と精神病の間の関連のより正確な特徴付けを提供する。

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若者の苛立ちと不安の神経メカニズムを識別する潜在変数法
    A Latent Variable Approach to Differentiating Neural Mechanisms of Irritability and Anxiety in Youth.
    Kircanski K et al. JAMA Psychiatry. Published online April 6, 2018.

    キーポイント:
    <疑問>
     潜在変数統計法(latent variable statistical methods)は、若者において共起する症状次元の神経メカニズムを識別することができるか。
    <結果>
     この8歳から18歳の若者197人の磁気共鳴画像研究において、bi-factor分析は苛立ちと不安の症状の固有分散と共有分散を分解した。脅威の定位を評価する機能的神経画像課題に関して、これらの表現型は二重解離を示した。すなわち、苛立ちは広範囲のかく乱された神経活動と関連したが、不安は扁桃体のかく乱と関連した。
    <意義>
     子供の精神病理のモデル化に対するbi-factor法は、表現型特異的なメカニズムが、臨床的に意義のある脅威の定位の背景に存在することが見出された点で新規の二重解離を示した(訳注:bi-factorモデルは,すべての観測変数に影響を与える一般因子general factor、および下位領域ごとの影響としてグループ因子group factorを仮定し、またグループ因子同士は直交すると仮定する)。

    論文要約:
    <重要性>
     併存症は精神医学では至る所に存在するが、共起する症状の神経メカニズムを識別する方法は知られていない。子供の苛立ちと不安の症状はよくあり、かつしばしば一緒に生じる。脅威の定位は両表現型に関係し、固有の神経メカニズムと共有する神経メカニズムを調べる上で理想的内容を持つ。
    <目的>
     子供の苛立ちと不安の症状の固有分散と共有分散を分解して、これら識別された表現型の脅威の定位中の神経相関を決定すること。
    <設計・設定・参加者>
     この調査は機能的磁気共鳴画像の横断研究で、設定は国立精神衛生研究所の研究医療機関であった。参加者は複数の診断カテゴリーに及ぶ8歳から18歳の若者であった(重篤気分調節症、不安症、および/または注意欠如・多動症を持つ141人の若者と56人の健常な若者)。この組み合わせにより、苛立ちと不安の症状レベルは広範囲に分布することになった。データは2012年6月30日から2016年6月28日に獲得された。
    <主要評価項目>
     参加者と親が感情反応性質問票(the Affective Reactivity Index)に基づいて若者の苛立ちを、子供の不安関連情緒障害質問票(the Screen for Child Anxiety Related Emotional Disorders)に基づいて不安を評定した。Bi-factor分析により固有分散と共有分散が分解された。機能的磁気共鳴画像のdot-probe課題は、怒り顔(脅威あり)と中性顔(脅威なし)に向けられた注意を評価した。全脳解析ではbi-factor由来の表現型と神経活動、扁桃体の機能的結合性の両方との関連が調べられた。
    <結果>
     最終解析に含められた197人の参加者の平均(標準偏差)年齢は13.1(2.7)歳で、91人(46.2%)が女性であった。最適bi-factorモデル(Comparative Fit Index, 0.959; Root Mean Square Error of Approximation, 0.066)には、親報告の苛立ち、若者評価の苛立ち、および不安の固有因子と、否定的感情の共通因子が含まれた。
     課題が脅威から注意を逸らすことを求める場合は、より高い親報告の苛立ちが島、尾状核、背外側および腹外側前頭前皮質、および下頭頂小葉の活動増加と関連した(t189≥4.15 for all, P < .001 for all)。対照的により高い不安は、扁桃体と帯状回、視床、および中心前回の結合性の減少と関連した(t189≤−4.19 for all, P < .001 for all)。これらの明確な神経相関は診断的方法では見出されなかった。
    <結論と関連性>
     共起する症状次元を説明する潜在変数法は、新規の二重解離を明らかにした。脅威から注意を逸らす間は、苛立ちのみが神経活動と関連し、不安のみが扁桃体の結合性と関連した。臨床神経科学にとって症状の共起は難しい問題ではあるが、データ駆動型の表現型決定が前進を促すかもしれない。

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統合失調症における突然死
    Kevin J. Li et al. Curr Opin Psychiatry 2018; 31: 169-175.
    Sudden Death in Schizophrenia.

    論文要約:
    <レビューの目的>
     統合失調症を持つ患者の突然死に関する最近の文献を調べ、このエビデンスに基づく明確な結論を統合すること。
    <最近の知見>
     心臓突然死は突然の予期せぬ死亡の最大の要因であり、突然死の最高40%が心臓血管系の原因による。突然死は第1および第2世代の抗精神病薬への曝露と関連付けられてきた。突然死のリスクはクロザピン(オッズ比 (OR) 3.67, 95% 信頼区間 (CI) 1.94–6.94)が最高で、リスペリドン(OR 3.04, 95% CI 2.39–3.86)、オランザピン(OR 2.04, 95% CI 1.52–2.74)が続く。
     抗精神病薬の使用と関連しない突然死は、いくつかの修正可能・不可能なリスク因子-肥満、喫煙、脂質異常症、糖尿病、高血圧、年齢、性別、および心血管疾患の既往歴と相関する。他の突然死の要因には、敗血症に至る無顆粒球症、肺塞栓症に至る深部静脈血栓症、敗血症に至る誤嚥性肺炎を含む血液疾患と肺疾患による原因がある。
    <結論>
     統合失調症における突然死に焦点を当てた遺伝学的・薬理遺伝学的データは全く欠落している。今後の研究は、これら道筋の遺伝的側面と背景にある分子メカニズムを重要視すべきであり、突然死の高リスクにある患者の早期発見と予防法の発見も強調されるべきである。

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中高年成人において座って行う行為は内側側頭葉の厚さの減少と関連する
    Siddarth P et al. PLoS ONE 13(4): e0195549.
    Sedentary behavior associated with reduced medial temporal lobe thickness in middle-aged and older adults.

    論文要約:
     内側側頭葉(medial temporal lobe、MTL)の萎縮は加齢と共に起こり、エピソード記憶の低下につながる。有酸素運動は、重点的に研究されてきた記憶に重要なMTL領域である海馬の全体積と正相関する。しかし、座って行う行為と、MTL亜領域の完全性との関連についての研究は限られている。そこで我々は、MTLとその亜領域(CA[アンモン角cornu ammon]1領域、CA2とCA3と歯状回dentate gyrusを合わせた領域[CA23DG]、紡錘状回fusiform gyrus、鉤状回subiculum、海馬傍回parahippocampal cortex、嗅周皮質perirhinal cortex、嗅内皮質entorhinal cortex)の厚さ、身体活動、および座って行う行為の関連を探索した。
     メッツ(METs、訳注:活動・運動を行った時に安静状態の何倍のカロリー消費をしているかを示す指標)で身体活動レベルを定量し、一日当たりの座って過ごす平均時間数を質問する高齢者のための国際身体活動質問表(the International Physical Activity Questionnaire)を用いて、35人の認知症のない中高年の成人を評価した。全参加者がSiemens Allegra 3テスラMRI装置で撮影された高解像度MRIデータを有し、 MTLの詳細な探索が可能であった。
     年齢を制御すると、全MTL厚は一日当たりの座っている時間と逆相関した(r = -0.37, p = 0.03)。MTLの亜領域分析では、海馬傍回厚(r = -0.45, p = 0.007)、嗅内皮質厚(r = -0.33, p = 0.05)、鉤状回厚(r = -0.36, p = .04)が、一日当たりの座っている時間と逆相関した。我々の予備的結果は、「認知症はないが座って過ごすことが多い人はMTL厚がより薄い」ことを示している。今後の研究には、縦断的分析とメカニズムの探索、およびこの関連を逆転させるために座っている行為を減らすことの有効性検証が含まれるべきである。

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統合失調症と乳癌の発症リスクの関連:メタ解析
    Chuanjun Zhuo et al. JAMA Psychiatry, published online March 7, 2018.
    Association of Schizophrenia With the Risk of Breast Cancer Incidence: A Meta-analysis.

    キーポイント:
    <疑問>
     統合失調症を持つ女性は乳癌のリスクがより高いか。
    <結果>
     125,760人の女性を含む12のコホート研究に対して従来のメタ解析の方法で行われた本メタ解析において、女性の統合失調症は一般人口と比較して乳癌発症の増加と関連した。しかし、広い予測区間で示される研究間の相当なばらつきが存在する。
    <意義>
     本結果は、統合失調症を持つ女性の乳癌発生率が一般女性集団のそれより高いことを示しているが、検討された研究間には有意な異質性が存在する。したがって、今後の研究が統合失調症を持つ女性の乳癌リスクが一般人口集団より低いことを示すこともあり得る。

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アルコール性の大脳皮質傷害における加齢・薬物依存・C型肝炎併存の役割
    Sullivan EV et al. JAMA Psychiatry, published online March 14, 2018.
    The Role of Aging, Drug Dependence, and Hepatitis C Comorbidity in Alcoholism Cortical Compromise.

    キーポイント:
    <疑問>
     成人期まで続くアルコール依存を持つ男女において、アルコールに関連する皮質体積の欠損パターンはどのようなものか。それらは加齢で加速されたり、薬物依存やC型肝炎ウイルス感染の併存で増強されたりするか。
    <結果>
     この横断的/縦断的混合研究は、199人の対照者と222人のアルコール依存症を持つ参加者において14年間にわたり収集された磁気共鳴画像データを評価した。結果は、アルコール依存を持つ人の前頭葉に分布する皮質体積の欠損、加速された年齢依存性の欠損、薬物依存またはC型肝炎ウイルス感染の併存で増強される欠損を示した。
    <意義>
     これらの結果は、アルコールの不適切な使用が中年期以降に生じたとしても、アルコール依存に伴う皮質老化が加速されるリスクが高まる懸念を示す。

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うつ病の家族リスクを持つ青年期女性におけるレジリエンスの神経マーカー
    Fischer AS et al. JAMA Psychiatry, published online March 21, 2018.
    Neural Markers of Resilience in Adolescent Females at Familial Risk for Major Depressive Disorder.

    キーポイント:
    <疑問>
     うつ病のリスクを持つ青年期女性におけるレジリエンスの神経マーカーは何か。
    <結果>
     65人の青年期女性の縦断研究において、我々は辺縁系、顕著性、および実行制御のネットワークにおける機能的結合性を調べた。高リスクであるがうつ病に対して回復力がある青年期女性では、高リスクでありうつ病を発症した青年期女性、および低リスクの対照青年と比較して、辺縁系と実行制御のネットワークにおける領域間の結合性がより強かった。さらに、この結合性の強度は、回復力のある青年期女性グループでは陽性の生活上の出来事と相関した。
    <意義>
     我々の結果は、青年期うつ病に対するレジリエンスの機能的神経画像バイオマーカーの重要性を強調し、これはうつ病の予防と治療の標的候補となるかもしれない。

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うつ病を持つ患者における脳皮質変化と再発の関連
    Zaremba D et al. JAMA Psychiatry, published online March 28, 2018.
    Association of Brain Cortical Changes With Relapse in Patients With Major Depressive Disorder.

    キーポイント:
    <疑問>
     うつ病の再発は、脳の形態学的変化と関連するか。
    <結果>
     この縦断的、症例対照、磁気共鳴画像研究において、うつ病を持つ患者は、追跡調査間の再発の有無によって異なる皮質灰白質変化の軌跡を示した。これらの変化は、追跡時の精神科薬物療法やうつ病の重症度とは有意に関連しなかった。
    <意義>
     うつ病の再発は、感情と認知の制御に重要な脳領域の形態学的変化と関連する。

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小児期の易刺激性および抑うつ/不安気分のプロフィールと青年期の自殺念慮・企図の関連
    Orri M et al. JAMA Psychiatry, published online March 28, 2018.
    Association of Childhood Irritability and Depressive/Anxious Mood Profiles With Adolescent Suicidal Ideation and Attempts.

    キーポイント:
    <疑問>
     子供の易刺激性と抑うつ/不安気分のプロフィールが異なれば、青年期の自殺のリスクも異なるのだろうか。
    <結果>
     この地域ベースのコホート研究において、小児期(6から12歳)における強い易怒性と強い抑うつ/不安気分のプロフィールを持つ1,430人の子供は、抑うつ/不安気分だけを持つ子供、または弱い易怒性と弱い抑うつ/不安気分を持つ子供と比べて、青年期(13から17歳)に自殺について考えたり自殺企図を起こしたりすることが2倍多かった。
    <意義>
     小児期の易怒性は特に強い抑うつ/不安気分を呈する子供において、青年期の自殺リスクを評価する場合に考慮すべきである。

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精神病への早期介入サービスと、初回エピソード統合失調症スペクトラム障害を持つ患者の自殺率の関連
    Sherry Kit Wa Chan et al. JAMA Psychiatry, published online April 4, 2018.
    Association of an Early Intervention Service for Psychosis With Suicide Rate Among Patients With First-Episode Schizophrenia-Spectrum Disorders.

    キーポイント:
    <疑問>
     早期介入サービスは、統合失調症スペクトラム障害を持つ患者の長期自殺率の低下と関連するか。
    <結果>
     この初回エピソード統合失調症スペクトラム障害を持つ1,234人の患者(早期介入群=617人、標準的ケア群=617人)の歴史的対照研究(historical control study)において、2年間の早期介入サービスを受けた患者の12年間の自殺率は有意により少なく、その主要な差は最初の3年間に観察された。
    <意義>
     早期介入サービスは、統合失調症スペクトラム障害を持つ患者の最も脆弱な時期の自殺率減少に関連する可能性があり、その恩恵は長期にわたって持続するかもしれない。

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早期精神病のための早期介入サービスと従来の治療の比較:系統的レビュー・メタ解析・メタ回帰
    Correll CU, et al. JAMA Psychiatry, published online May 2, 2018.
    Comparison of Early Intervention Services vs Treatment as Usual for Early-Phase Psychosis: A Systematic Review, Meta-analysis, and Meta-regression.

    キーポイント:
    <疑問>
     早期精神病を持つ患者における症状と疾患に関連した治療アウトカムについて、早期介入サービスは従来の治療より優れているか。
    <結果>
     10のランダム化臨床試験(2176人の患者)についての本メタ解析において、治療終結時のメタ解析可能なすべての評価項目に関して、早期介入サービスは従来の治療よりも良いアウトカムと関連した。これらの評価項目には、あらゆる理由による早期介入サービスまたは従来の治療の中断、および少なくとも1回の精神科入院があった。
    <意義>
     早期精神病において、早期介入サービスは従来の治療と比較してより優れたアウトカムと関連した。これは早期精神病を持つ患者における財政的支援の必要性と早期介入サービスの使用を支持する。

    論文要約:
    <重要性>
     統合失調症スペクトラム障害を持つ人のアウトカムは次善にとどまることから、精神病における早期介入の価値と公的資金の配分については長く議論されてきた。
    <目的>
     早期精神病についての早期介入サービス(early intervention services、EIS)と従来の治療(treatment as usual、TAU)を比較すること。
    <データ源>
     2017年6月6日までのPubMed、PsycINFO、EMBASE、ClinicalTrials.govの系統的文献検索を行ったが、言語については制限を設けなかった。
    <研究の選択>
     初回エピソード精神病、または早期の統合失調症スペクトラム障害においてEISとTAUを比較する無作為化試験。
    <データの抽出と統合>
     この系統的レビューはPRISMAガイドラインに従って実施された。変量効果メタ解析、事前に定められたサブグループおよびメタ回帰分析のために、3人の独立した研究者がデータを抽出した。
    <主要評価項目>
     主要評価項目は、あらゆる理由による治療の中断、および治療期間中の少なくとも1回の精神科入院であった。
    <結果>
     10件のランダム化臨床試験(平均 [標準偏差] 試験期間, 16.2 [7.4] ヶ月; 範囲, 9-24ヶ月)の2,157人の患者(平均 [標準偏差] 年齢, 27.5 [4.6] 歳; 1355 [62.3%] 人が男性)において、メタ解析可能な全13評価指標(治療終了時)において、EISはTAUより優れたアウトカムと関連した。
     これらの評価項目には次のものが含まれた:あらゆる理由による治療の中断(リスク比 [RR], 0.70; 95% CI, 0.61-0.80; P < .001)、少なくとも1回の精神科入院(RR, 0.74; 95% CI, 0.61-0.90; P = .003)、学校または仕事への影響(RR, 1.13; 95% CI, 1.03-1.24; P = .01)、全般症状重症度(標準化平均差 [SMD], −0.32; 95% CI, −0.47 to −0.17; P < .001)、陽性症状重症度(SMD, −0.22; 95% CI, −0.32 to −0.11; P < .001)、および陰性症状重症度(SMD, −0.28; 95% CI, −0.42 to −0.14; P < .001)。
     EISの優越性は全ての評価項目に関して、治療6、9、12、18、24カ月で明らかであった。
    <結論と関連性>
     早期精神病ではメタ解析可能なすべての評価項目にわたって、EISはTAUより優れていた。これらの結果は、財政的支援の必要性と早期精神病を持つ患者におけるEIS使用を支持する。

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抗コリン薬と認知症のリスク:ケースコントロール研究
    Kathryn Richardson et al. BMJ 2018; 361: k1315.
    Anticholinergic drugs and risk of dementia: case-control study.

    論文要約:
    <目的>
     様々な種類の抗コリン薬への曝露期間および曝露水準と、その後の偶発認知症の関連を推定すること。
    <設計・設定>
     ケースコントロール研究。臨床実践研究データリンク(the Clinical Practice Research Datalink)に貢献している英国の一般診療。
    <参加者>
     2006年4月から2015年7月の間に、認知症診断を持つとされた65~99歳の患者40,770人と、認知症を持たない対照283,933人。
    <介入>
     抗コリン性の認知的負荷の尺度(the Anticholinergic Cognitive Burden (ACB) scale)を用いてコードされた抗コリン薬の一日当たり用量で、認知症診断の4から20年前に処方された総量および下位クラス別の量。
    <主要評価項目>
     人口統計および健康に関連した共変量で調整された偶発認知症のオッズ比。
    <結果>
     14,453(35%)症例と86,403(30%)対照が、曝露期間に少なくとも1つのACBスコア3(抗コリン作用の定義)の抗コリン薬を処方された。ACBスコア3の抗コリン薬の調整済オッズ比は、1.11(95% 信頼区間 1.08-1.14)であった。認知症は平均ACBスコアの上昇と関連した。
     薬剤クラスを考慮した場合、ACBスコア3の胃腸薬と認知症の関係は明確ではなかった。認知症のリスクは抗コリン薬、すなわち泌尿器薬と抗パーキンソン薬への曝露が大きいほど増加した。この結果はまた、診断前15~20年の曝露についても観察された。
    <結論>
     いくつかのクラスの抗コリン薬と、将来の認知症の発症との強固な関連が観察された。これは、クラス特異的効果または認知症の最初期症状に使われる薬剤によって引き起こされ得る。さらなる研究は、内因性抗コリン作用とは異なる抗コリン薬のクラスや、抗コリン曝露の総和的な大きさを調べるべきである。
    <試験登録>
     The European Union electronic Register of Post-Authorisation Studies EUPAS8705.

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ADHD-200 Global Competition:個人の特徴データを用いたADHD診断は、安静時fMRI測定を凌駕し得る
    Matthew R. G. Brown et al. Front. Syst. Neurosci., 28 September 2012.
    ADHD-200 Global Competition: diagnosing ADHD using personal characteristic data can outperform resting state fMRI measurements.

    論文要約:
     神経画像に基づく診断法は、臨床家がより正確な診断を下すことを支援する潜在的可能性を有し、結果としてより効率的な治療につながる。我々は注意欠如・多動症(ADHD)と健常対照を含む参加者973人の大規模データセットの分析を含む2011 ADHD-200 Global Competitionに参加した。各々参加者のデータは、安静時fMRI撮影と個人の特徴および診断データを含んだ。その目的は、参加者の安静時fMRI撮影を用いる個人を3つのカテゴリー、すなわち健常対照、ADHD混合型(ADHD-C)、またはADHD不注意型(ADHD-I)の一つに診断(分類)する機械学習分類器を得ることであった。我々は、診断予測を生成する記号論理分類器への入力として、fMRIデータをいっさい含まない参加者個人の特徴データ(データ収集場所、年齢、性別、利き手、動作性IQ、言語性IQ、および全検査IQ)を用いた。
     驚くべくことに、このアプローチは競技会に参加した21チームのうち最も高い診断精度(62.52%)と最も高いスコア(195点中124点)を達成した。これらの結果は、画像診断研究における年齢、性別、その他の個人の特徴の違いを考慮する重要性を示す。これらの結果のfMRIに基づく診断および臨床研究に対する意義についてさらに議論し、画像に基づく様々な診断法を有する我々のテストのうち、個人の特徴データのみを用いる記号論理分類器と同じくらい作動するものはないことを示した。

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レジスタンス運動トレーニングの有効性と抑うつ症状の関連:ランダム化臨床試験のメタ解析とメタ回帰分析
    Brett R. Gordon et al. JAMA Psychiatry, published online May 9, 2018.
    Association of Efficacy of Resistance Exercise Training With Depressive Symptoms
    Meta-analysis and Meta-regression Analysis of Randomized Clinical Trials.

    キーポイント:
    <疑問>
     レジスタンス運動(訳注:スクワットや腕立て伏せ、またはダンベル体操など、自重または器具を用いて標的筋肉に抵抗=レジスタンスをかける動作を反復して行う運動のこと)トレーニングの有効性と抑うつ症状の全般的関連はいかなるものか。どのような論理的・理論的および/または先験的変数が抑うつ症状と関連するか。
    <結果>
     この1,877人の参加者を含む33の臨床試験のメタ解析において、レジスタンス運動トレーニングは、抑うつ症状の有意な減少と中等度の平均効果量をもって関連した。レジスタンス運動トレーニングの総量、健康状態、および強度の改善は抗うつ効果と関連しなかったが、盲検化された割付および/または評価を用いた試験では、抑うつ症状の改善はより小さかった。
    <意義>
     利用可能な経験的エビデンスは、抑うつ症状の代替および/または付加療法としてのレジスタンス運動トレーニングを支持する。

    論文要約:
    <重要性>
     レジスタンス運動トレーニング(resistance exercise training、RET)の身体的な利点は十分に立証されているものの、RETと精神健康アウトカムの関連についてはあまり知られていない。これまでRETの抗うつ効果の定量的統合が実施されたことはなかった。
    <目的>
     RETの有効性と抑うつ症状の関連を推定し、論理的・理論的、および/または先験的変数がどのくらい抑うつ症状と関連しRETの有効性と抑うつ症状の関連が総効果量の変動を説明するか否かを確定すること。
    <データ源>
     2017年8月以前に公表された文献で、Google Scholar、MEDLINE、PsycINFO、PubMed、Web of Scienceを用いて同定されたもの。
    <研究の選択>
     RET(n = 947)または非活動的な対照条件(n = 930)への無作為割付を含むランダム化臨床試験。
    <データの抽出と統合>
     ヘッジのd効果量が計算され、変量効果モデルがすべての分析で使われた。参加者および試験特性の潜在的な媒介効果を定量するために、メタ回帰が実施された。
    <主要評価項目>
     妥当性が検証された抑うつ症状の測定を使用して、ベースラインと介入中点および/または介入後に評価したランダム化臨床試験。
     効果量の変動について焦点を当てた研究仮説を提供するために、4つの主要な媒介変数が前もって選択された:1)RETの総処方量、2)参加者が健康か身体疾患または精神疾患を持っているか、3)割付および/または評価の盲検化の有無、4)RET介入が筋力の有意な改善をもたらしたか否か。
    <結果>
     54の効果が1,877人の参加者を含む33のランダム化臨床試験から見出された。レジスタンス運動トレーニングは、0.66(95% CI, 0.48-0.83; z = 7.35; P < .001)の中等度の効果量をもって抑うつ症状の有意な減少と関連した。
     有意な異質性が示され(total Q = 216.92, df = 53; P < .001; I2 = 76.0% [95% CI, 72.7%-79.0%])、サンプリング誤差は観察分散の32.9%を説明した。治療必要症例数(NNT)は4であった。
     RETの総処方量、参加者の健康状態、および筋力の改善は、RETの抗うつ効果と有意に関連しなかった。しかし、盲検化された割付および/または評価を用いた試験では、抑うつ症状の改善はより小さかった。
    <結論と関連性>
     レジスタンス運動トレーニングは、健康状態、RETの総処方量、または筋力の有意な改善に関わりなく成人の抑うつ症状を有意に減少させた。割付と評価の両方が盲検化され、抑うつ症状について他の経験的に支持されている治療とRETを比較するより質の高いランダム化臨床試験が必要である。

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米国における治療抵抗性うつ病に対する電気けいれん療法と薬物療法の費用対効果
    Eric L. Ross et al. JAMA Psychiatry, published online May 9, 2018.
    Cost-effectiveness of Electroconvulsive Therapy vs Pharmacotherapy/Psychotherapy for Treatment-Resistant Depression in the United States.

    キーポイント:
    <疑問>
     米国における治療抵抗性うつ病に対する電気けいれん療法の、抗うつ薬治療および/または心理療法と比較した場合の費用対効果はいかなるものか。
    <結果>
     この複数の公開情報源からのデータを統合する数学モデル解析において、電気けいれん療法をうつ病の第3段階の治療として提供することは、生活の質で調整した生存年数(quality-adjusted life-year, QALY)1年の獲得のために推定54,000ドルを必要とする。これは4年間で、制御されないうつ病を持つ時間を生存年数にして50から34%減少させる。
    <意義>
     電気けいれん療法は、治療抵抗性うつ病に対して有効性が高く費用対効果の良い治療である可能性があり、第2段階かそれ以上の薬物療法および/または心理療法が失敗した後に考慮すべきである。

    論文要約:
    <重要性>
     電気けいれん療法(electroconvulsive therapy、ECT)は非常に有効なうつ病治療であるが、スティグマ、適用の不確かさ、有害作用、および費用が高いとの認識から使用されることは少ない。
    <目的>
     米国における治療抵抗性うつ病に対する薬物療法/心理療法と比較したECTの費用対効果を評価すること。
    <設計・設定・参加者>
     米国のヘルスケア部門という見地から4年間の範囲のうつ病治療をモデル化するために、薬物療法と心理療法と比較したECTの臨床的有効性、費用、そしてQOL効果に関するデータを統合する決定分析モデルが使われた。モデルへの入力データは、うつ病を持つ患者の複数のメタ解析、ランダム化試験、および観察研究から引き出した。可能な場合はデータ源を、非精神病性のうつ病に関する米国を基盤とする研究に限った。データは2017年6月から2018年1月に分析された。
    <介入>
     うつ病治療にECTを導入する(ゼロから第5段階の薬物療法と心理療法の失敗後の)6つの代替方略が、ECTを導入しない場合と比較された。
    <主要評価項目>
     うつ病の寛解、反応、および非反応、生活の質で調整した生存年数(quality-adjusted life-years、QALY)、2013年の米ドルでの費用、および増分費用対効果比(incremental cost-effectiveness ratios[ICER]、訳注:[新しい薬または治療法の費用-既存の薬または治療法の費用]÷[新しい薬または治療法の効果-既存の薬または治療法の効果]の計算式によって求められる値)。1年のQALYあたり100,000ドル、あるいはそれ以下のICGRを持つ方略は費用効果が高いとみなされた。
    <結果>
     うつ病の検証型治療継続アルゴリズム(Sequenced Treatment Alternatives to Relieve Depression、訳注:米国の公的研究費の助成を受けて2003年から実施されてきたうつ病に対する大規模臨床試験で、STAR*Dと略される)に基づいて、我々は平均年齢(標準偏差)40.7(13.2)歳、女性が62.2%を占める集団をモデル化した。
     4年間でECTは制御されないうつ病を持つ時間を生存年数にして50%から33-37%減少させ、この改善はECTがより早く提供されるほど大きかった。平均健康ケア費用は7,300から12,000ドル増加し、この増加はECTがより早く提供されるほど大きかった。ベースケースにおいて第3段階のECTは費用対効果が良く、ICERはQALYにつき54,000ドルであった。
     第3段階のECTは単変量(univariate)、シナリオ(scenario)、確率的(probabilistic)感度分析において依然として費用対効果が高かった。すべての入力データを組み入れて、我々は少なくとも1つのECT方略が費用効率的となる公算を74~78%、第3段階のECTが最適方略となる公算を56~58%と推定した。
    <結論と関連性>
     治療抵抗性うつ病を持つ米国の患者について、ECTは有効で費用効率の良い治療オプションかもしれない。多くの因子がECTを推し進めるという決定に影響するが、これらデータは健康経済的視点からは、ECTは第2あるいはそれ以降の薬物療法/心理療法が失敗した後に考慮すべきことを示唆している。

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うつ病または双極性障害を持つ人および健常対照における筋力と認知の関連
    Firth J et al. JAMA Psychiatry, published online April 18, 2018.
    Association Between Muscular Strength and Cognition in People With Major Depression or Bipolar Disorder and Healthy Controls.

    キーポイント:
    <疑問>
     握力はうつ病または双極性障害を持つ人と健常対照における認知機能の指標となり得るか。
    <結果>
     この110,067人からなる地域住民データセットの横断分析において、交絡因子とは無関係に、握力はうつ病を持つ人と健常対照の認知5領域すべてと有意に関連した。類似の関連が、より弱い程度ではあるが双極性障害を持つ人で観察された。
    <意義>
     握力はうつ病を持つ人と持たない人の認知全般と関連する。筋肉機能は神経認知障害評価の代替となって、認知改善を目的とする新規の介入アウトカムを提供するかもしれない。

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血族結婚と子孫の精神病理:住民全体データの関連研究
    Maguire A et al. JAMA Psychiatry, published online April 4, 2018.
    Consanguineous Marriage and the Psychopathology of Progeny: A Population-wide Data Linkage Study.

    キーポイント:
    <疑問>
     血縁関係にある両親の子供は、一般気分障害または精神病のリスクが高いか。
    <結果>
     この363,960人の参加者からなる住民全体のコホート研究において、血縁関係にある両親の子供は、成人期における向精神薬の使用可能性の上昇と関連した。近親の血縁関係にある両親の子供は、血縁関係のない親の子供と比べて、一般気分障害に対する投薬を3倍、精神病に対する投薬を2倍多く受ける傾向がある。
    <意義>
     近親血族の親から生まれた子供は、一般気分障害と精神病のリスクが高い。

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MEMO+:軽度認知障害を持つ人の認知訓練と心理社会的介入の有用性・継続性・効果
    Sylvie Belleville et al. J Am Geriatr Soc 2018; 66: 655-663.
    MEMO+: Efficacy, Durability and Effect of Cognitive Training and Psychosocial Intervention in Individuals With Mild Cognitive Impairment.

    論文要旨:
    <背景と目的>
     よく計画されたランダム化比較試験が少ないことから、軽度認知障害(mild cognitive impairment、MCI)を持つ人に対する認知訓練の有用性については同意がない。本研究の目的は、MCIを持つ人の認知機能について記憶訓練の効果とその持続性を評価し、この効果が日常生活に般化するか否か、心理社会的介入から好ましい効果を得ることができるか否かを確認することであった。
    <デザイン>
     単盲検のランダム化比較試験
    <設定>
     Institut Universitaire de Gériatrie de MontréalとInstitut Universitaire en Santé Mentale de Québecの研究センター。
    <参加者>
     健忘型MCIの基準を満たす145人の高齢成人。
    <介入>
     参加者は認知訓練、心理社会的介入、またはコンタクトなしの対照条件に無作為に割り付けられた。介入は8回の2時間のセッションの中で、小規模なグループにおいて提供された。
    <測定>
     評価項目測定は、即時および遅延集成行動記憶スコア(composite performance memory scores)、心理的健康(抑うつ、不安、well–being)、および介入の般化効果(日常生活における方略の活用、日常生活の複雑な活動における困難、記憶に関する悩み)であった。検査は訓練前、訓練直後、訓練3カ月後、および訓練6カ月後に実施された。
    <結果>
     認知訓練条件の参加者は、遅延集成記憶スコアと日常生活における方略の活用に関して改善した。改善は3カ月後および6カ月後の経過観察評価において維持された。心理社会的条件とコンタクトなし条件の参加者は有意な改善を示さなかった。
    <結論>
     認知訓練は健忘型MCIを持つ人の記憶を改善する。効果は6カ月間にわたって持続し、学習された方略は日常生活で活用される。認知訓練はMCIの認知を促進する妥当な方法である。

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臨床的高リスク状態外で精神病を予測することは可能か:精神疾患の非精神病リスク症候群の系統的レビュー
    Tae Young Lee et al. Schizophr Bull 2018; 44: 276-285.
    Can We Predict Psychosis Outside the Clinical High-Risk State? A Systematic Review of Non-Psychotic Risk Syndromes for Mental Disorders.

    論文要約:
     精神病は、最近のエビデンスによれば精神病の臨床的高リスク状態にある(at clinical high risk for psychosis、CHR-P)人々からだけでなく、非精神病性の精神疾患の臨床的リスク症候群からも発症し得ることを示している。他の非精神病性の精神疾患よりむしろ精神病を発症するこれら臨床的リスク症候群を持つ人の割合は未確定である。新規の非精神病性の精神疾患の発症についての臨床的リスク症候群に関して報告する研究を、電子データベースで検索した。
     評価項目はICDまたはDSM上で定義される新規の精神病性および非精神病性の精神疾患の発症で、非精神病性のリスクを有する3,006人に関する全部で9つの研究が含まれた。前向き研究においては(n = 4, sample = 1051)、これら臨床的リスク症候群にわたる新規の精神病性障害の統合発症率は1,000人年あたり12.9(95% CI: 4.3 to 38.6)、非精神病性障害(n = 3, sample = 538)のそれは1,000人年あたり43.5人(95% CI: 30.9 to 61.3)であった。
     CHR-P群よりも低い発症率ではあるが、精神病性障害はCHR-Pの枠組み以外、つまり偶発非精神病性障害についての臨床的リスク症候群から発症することがある。新規の非精神病性の障害についての臨床的リスク症候群は、いくつかの種類の精神疾患を発現させる多能性のリスクを示しているのかもしれない。もし将来の研究によって立証されるのであれば、今回の結果はCHR-Pの基準を満たす人を同定するという現行の戦略を越えることの有益性を示唆する。

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低中所得国における都市化の程度(urbanicity)と精神病の関連
    Jordan E. DeVylder et al. JAMA Psychiatry, published online May 16, 2018.
    Association of Urbanicity With Psychosis in Low- and Middle-Income Countries.

    キーポイント:
    <疑問>
     低中所得国において都会生活は精神病体験または精神病性障害の増加と関連するか。
    <結果>
     この42カ国、215,682人の参加者の横断的疫学研究において、都会に住むことは精神病体験または精神病性障害の増加と関連しなかった。
    <意義>
     都会生活と精神病の関連は高所得国では広く再現されているが、世界人口の80%が居住する低中所得国には一般化されない可能性がある。

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イングランドにおける個人および地域の社会経済的要因と認知症発症率の関連:イングランド加齢縦断研究における12年の経過観察からのエビデンス
    Dorina Cadar et al. JAMA Psychiatry. Published online May 16, 2018.
    Individual and Area-Based Socioeconomic Factors Associated With Dementia Incidence in England: Evidence From a 12-Year Follow-up in the English Longitudinal Study of Ageing.

    キーポイント:
    <疑問>
     多様な社会経済的マーカーと認知症発症率の関連はいかなるものか。
    <結果>
     この縦断的コホート研究は、教育でなく晩年の財産が認知症リスクの上昇と関連することを見出し、金融資産がより少ない人はリスクがより高いことが示唆された。社会経済的に豊かではない地域への居住(neighborhood deprivation)との関連では本質的差異は見出されなかったが、より後年に生まれた人々の間で社会経済的不平等がより大きいことを強調する年齢-コホート効果が観察された。
    <意義>
     高齢成人の同世代コホートにおける社会経済的状態と認知症発症率の関連は、教育よりも財産によってもたらされる可能性がある。

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ベトナム戦争時代の双生児における抑うつ症状と心拍変動の関連:縦断的双生児研究
    Minxuan Huang et al. JAMA Psychiatry, published online May 16, 2018.
    Association of Depressive Symptoms and Heart Rate Variability in Vietnam War–Era Twins: A Longitudinal Twin Difference Study.

    キーポイント:
    <疑問>
     自律神経調節の指標の一つである心拍変動と抑うつ症状の関連の方向は如何なるものか。
    <結果>
     この146人の双生児(73対)を含む縦断的双生児差研究において、ベースライン時のより低い心拍変動は、経過観察時の増加する抑うつ症状と独立に関連した。ベースライン時の抑うつ症状と経過観察時のより低い心拍変動の縦断的関連は強固ではなく、抗うつ薬の使用によって大部分が説明された。
    <意義>
     自律神経調節不全は、結果というよりうつ病のリスク因子と考えられる。

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うつ病および不安症と自己免疫性甲状腺炎の関連:系統的レビューとメタ解析
    Eva-Maria Siegmann et al. JAMA Psychiatry, published online May 2, 2018.
    Association of Depression and Anxiety Disorders With Autoimmune Thyroiditis: A Systematic Review and Meta-analysis.

    キーポイント:
    <疑問>
     メタ解析的に推定した場合、抑うつと不安は自己免疫性甲状腺炎とどの程度関連するか。
    <結果>
     この36,174人の参加者からなる19の研究の系統的レビューとメタ解析において、自己免疫性甲状腺炎を持つ患者は健常対照と比べて、より高い抑うつと不安のスコアを示した。
    <意義>
     自己免疫性甲状腺炎と抑うつおよび不安の明確な関連は、患者の情報にとって重要な意味を持ち、心理療法にとどまらない器質的障害の早期治療の選択につながり得る。

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統合失調型障害から統合失調症への移行と物質使用障害の関連
    Carsten Hjorthøj et al. JAMA Psychiatry, published online April 25, 2018.
    Association of Substance Use Disorders With Conversion From Schizotypal Disorder to Schizophrenia.

    キーポイント:
    <疑問>
     物質使用障害、特に大麻使用障害は統合失調型障害から統合失調症への移行に関連するか。
    <結果>
     この偶発統合失調型障害を持つ2,539人の参加者を同定したオランダの全国登録に基づくコホート研究において、物質使用障害は統合失調症への移行に関連し、大麻使用障害の有病率は33.1%、統合失調症への移行率は58.2%であった。結果は交絡因子の制御後も統計学的に有意であった。
    <意義>
     統合失調型障害を持つ人の統合失調症への移行を減らすためには、広範かつ物質に標的を定めた予防努力が必要である。

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精神病への移行期の非組織的な脳回形成ネットワーク特性
    Tushar Das et al. JAMA Psychiatry, published online April 25, 2018.
    Disorganized Gyrification Network Properties During the Transition to Psychosis.

    キーポイント:
    <疑問>
     精神病の高リスク状態にある患者は、非組織的な脳回形成ネットワーク特性を示すか。脳回形成に基づいて初回エピソード精神病への移行を予測することは可能か。
    <結果>
     この4つの研究群における161人の横断的磁気共鳴画像研究において、後に精神病を発症する患者は、臨床的高リスク状態においてさえ、非組織的な脳回形成ネットワーク特性を示す。脳回形成ネットワーク特性は、将来的な移行転帰を80%以上の正確度をもって予測する。
    <意義>
     構造的磁気共鳴画像からの脳回形成を基盤とするネットワークの構築は、精神病の臨床的高リスク状態にある人における将来の精神病を個別に予測することを促進するかもしれない。

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うつ病を持つ成人における抗うつ薬とベンゾジアゼピンの新規併用と、その後のベンゾジアゼピンの長期使用:2001~2014年の米国調査
    Bushnell GA et al. JAMA Psychiatry 2017; 74: 747-755.
    Simultaneous Antidepressant and Benzodiazepine New Use and Subsequent Long-term Benzodiazepine Use in Adults With Depression, United States, 2001-2014.

    キーポイント:
    <疑問>
     うつ病患者が抗うつ治療を開始する場合に、どれだけ多くがベンゾジアゼピン療法を同時に始めるのか、抗うつ薬とベンゾジアゼピンを新規併用する患者では抗うつ治療の期間は異なるのか、どれだけ多くが薬剤併用を開始して長期のベンゾジアゼピン使用に至るのか。
    <結果>
     この抗うつ薬の内服を開始した成人765,130人のコホート研究において、81,020人がその同じ日にベンゾジアゼピンの内服を開始していた。ベンゾジアゼピンの使用は2001年の6.1%から2012年の12.5%に増加(それから2014年にかけては横ばい状態)していた。抗うつ薬とベンゾジアゼピンを新規併用することで、抗うつ治療の継続に臨床的に意味のある差異は認めなかった。これら両方の薬剤を用いて治療を開始した患者の12.3%が、長期(6カ月)にわたってベンゾジアゼピンの使用を続けた。
    <意義>
     患者が抗うつ治療を開始する際にベンゾジアゼピンを処方するか否かの決定には、潜在的な有益性と有害性の注意深い検討を必要とする。

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双極うつ病に対する付加的高照度光療法:ランダム化二重盲検プラセボ比較試験
    Sit DK et al. Am J Psychiatry 2018; 175: 131-139.
    Adjunctive Bright Light Therapy for Bipolar Depression: A Randomized Double-Blind Placebo-Controlled Trial.

    論文要約:
    <目的>
     双極性障害を持つ患者ではうつ病が反復し、気分症状は残遺することが多く、その治療選択枝は限られる。有望な予備的データに基づいて、双極うつ病に対する日中の高照度光療法の有用性を調べるために、著者らは6週間のランダム化二重盲検プラセボ比較試験を実施した。目的は寛解率、抑うつ症状の水準、そして気分極の反転率を決定すること、および睡眠の質を調査することである。
    <方法>
     本研究には、安定用量の抗躁薬の処方を受けている双極Ⅰ型またはⅡ型障害を持つうつ病相の患者(軽躁病または躁病、混合症状、あるいは急速交代を持つ患者は除く)が組み入れられた。患者は無作為に、7,000ルクスの高照度光または50ルクスの暗赤色プラセボ光(各群23名)に割り付けられた。症状は非定型うつ病が補足されたハミルトンうつ病構造化面接(the Structured Interview Guide for the Hamilton Depression Scale With Atypical Depression Supplement、SIGH-ADS)、躁病評価尺度(the Mania Rating Scale)、およびピッツバーグ睡眠質問票(the Pittsburgh Sleep Quality Index)を用いて毎週評価された。寛解はSIGH-ADSスコアで8点またはそれ以下と定義された。
    <結果>
     ベースラインにおいて両群は中等度のうつ病を持っていたが、軽躁症状や躁症状はなかった。プラセボ光のグループと比べて、高照度光で治療されたグループは4~6週において有意に高い寛解率(22.2%に対して68.2%; 調整済オッズ比=12.6)を、評価項目測定において有意に低いうつ病スコア(14.9 [SD=9.2]に対して9.2 [SD=6.6]; 調整済β=-5.91)を経験した。気分極の反転は観察されなかった。睡眠の質は両群で改善して、両群間で有意な差を認めなかった。
    <結論>
     本研究のデータは、双極うつ病に対する日中の高照度光療法の有効性を支持する強固なエビデンスを提供する。

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認知症の独立したリスク因子としての中年期の不安診断への支持:系統的レビュー
    Amy Gimson1 et al. BMJ Open 2018; 8: e019399.
    Support for midlife anxiety diagnosis as an independent risk factor for dementia: a systematic review.

    論文要約:
    <目的>
     不安は「高齢成人および軽度認知障害を持つ人における認知低下の予測因子である」と益々認識されつつある。しばしば神経変性疾患の前駆徴候であると信じられているが、不安はまた、ここでは「認知症診断に先立つこと10年以上」と操作的に定義される認知症の独立したリスク因子かもしれない。
    <設計>
     不安診断と認知症の長期リスクに関する文献の系統的レビューが、公表済のガイドラインに従って実施された。
    <設定と参加者>
     Medline、PsycINFO、およびEmbaseが、2017年3月8月までの論文審査のある専門誌について検索された。前向きコホート、またはケースコントロール研究から、臨床基準に基づくあらゆる原因による認知症について、ハザード比またはオッズ比を報告している文献が選択された。含められた研究は、臨床的に意味のある不安を単独で、あるいはうつ病症状を調整後に測定し、少なくとも10年間の不安評価と後の認知症診断の平均間隔を報告していた。方法論上の質の評価は、Newcastle-Ottawa尺度を用いて行われた。
    <評価項目>
     あらゆる原因による認知症についてのハザード比またはオッズ比。
    <結果>
     検索は3,510の論文を見出し、うち4つ(0.02%)が適格であった。その研究の複合サンプルサイズは29,819人で、すべての研究は臨床的に意味のある不安と将来の認知症の正の関連を見出した。研究間の異質性のため、メタ解析は実施されなかった。
    <結論>
     中年期の臨床的に意味のある不安は、少なくとも10年の間を経て、認知症リスクの上昇と関連した。この結果は、前駆的な認知低下に関係する不安を除外して、不安が晩年の認知症のリスク因子である可能性を示す。臨床的不安が認知症の前駆症状とは別のリスク因子であることを確かめるために、認知症の修正可能なリスク因子の同定に焦点を当てる、より質の高い前向き研究が必要である。

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患者一人の予測のための計算神経画像戦略
    K.E.Stephan et al. Neuroimage 2017; 145, Part B: 180-199.
    Computational neuroimaging strategies for single patient predictions.

    ハイライト:
    • 患者一人の予測のための計算神経画像戦略の展望。
    • 精神医学と神経学における個人の疾患メカニズムを推定する生成モデル。
    • 推定されたメカニズムとベイズモデル選択および生成的埋込による臨床的予測の関連付け。
    • メカニズム的モデルに基づくアプローチと機械学習による統計学的予測の関連付け。

    論文要約:
     臨床的に意義のある患者一人ひとりに対する予測(single-subject predictions)を成し遂げようとして、神経画像(neuroimaging)は機械学習法(machine learning techniques)を活用することが増えている。機械学習に代わる一つの選択肢は、観察データの特徴と臨床的変数の間の予測的連関を確立しようとするものであり、行動および神経画像反応を生成する(病態)生理的・認知的メカニズムに関する推論についての計算モデル(computational models)の展開である。
     この論文は、神経画像に基づく患者一人ひとりの推測に対する計算論的アプローチの論拠を、個々の対象における疾患メカニズムを特徴付けるその潜在能力に焦点を当て、これら特徴付けを臨床的予測に関連させながら議論する。2つの主たるアプローチ、すなわち計算モデルを個人の予測に結びつけることが可能なベイズモデル選択(Bayesian model selection)と生成的埋込(generative embedding)を概観した後、我々はこれらの方法が精神医学的・神経学的スペクトラム障害における異質性にどのように対処するか展望し、神経画像データの誤解釈を回避することに援用して、メカニズム的モデルに基づくアプローチと機械学習によって与えられる統計学的予測の関連付けを確立する。

    キーワード:
     生成モデル(generative model)、機能的MRI(fMRI)、脳波(EEG)、ベイズの(Bayesian)、モデル選択(model selection)、モデル比較(model comparison)、モデル確証(model evidence)、生成的埋込(generative embedding)、分類(classification)、クラスタリング(clustering)、計算精神医学(computational psychiatry)、トランスレーショナル神経モデリング(translational neuromodeling)

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精神医学における優先課題の状況分析、第1部:疾患分類と診断、第2部:発病機序と病因
    Klaas E Stephan et al. Lancet Psychiatry 2016; 3: 77-83, and 84-90.
    Charting the landscape of priority problems in psychiatry, Part 1: classification and diagnosis, and Part 2: pathogenesis and aetiology.

    第1部:疾患分類と診断
     現在の精神医学は深刻な問題に直面している。その症候群に基づく疾患分類は発病過程に基づくものではなく、治療法の手引きにもならないため、大抵の治療は試行錯誤によって決められる。その治療法の開発は、潜在的な受益患者群を無視することで遅れている。神経科学的・遺伝学的研究は、疾患定義に影響を及ぼしたり臨床判断に貢献したりはしていない。この困難な状況において、精神医学研究は何に重点をおくべきだろうか。この2つの対論文において、我々は将来の精神疾患研究の対象候補として、様々な領域の臨床家および研究者によって指名された問題のリストを提示する。これらの問題は、疾患分類学と診断に関わる問題(この論文のPersonal View)と、発病機序と原因に関する問題(対の論文のPersonal View)に大きくグループ分けされる。他の領域における成功例、特に数学におけるヒルベルトの問題(Hilbert's problems in mathematics、訳注:著名な数学者であるヒルベルトが、今世紀の数学研究の目標となるべき23の問題をあげた)に触発されて、この主観的で多岐にわたる優先課題のリストは、精神医学の研究者が既存の研究に再び焦点を合わせることを助け、将来の精神医学の科学への展望を提供することを目的とする。

    第2部:発病機序と病因
     これは、精神疾患研究についての優先的課題を提案する2つの対論文の2番目である。1番目の論文が、疾患分類学と診断に焦点を当てているのに対して、このPersonal Viewは、精神疾患の発病機序と原因を扱っている。我々は、様々な領域と施設の科学者と臨床家によって指名されたこの(非包括的で主観的な)問題リストが、精神医学の科学の将来的方向を選択する指針と展望を提供することを望む。

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精神疾患発症後の凶悪犯罪を含む犯罪被害のリスク:警察データを用いたデンマーク国民登録研究
    Kimberlie Dean et al. JAMA Psychiatry, published online May 23, 2018.
    Risk of Being Subjected to Crime, Including Violent Crime, After Onset of Mental Illness: A Danish National Registry Study Using Police Data.

    キーポイント:
    <疑問>
     精神疾患発症後の、警察報告による凶悪犯罪を含む犯罪の被害に遭う率はどのくらいか。特定の精神疾患を持つ人が、精神疾患のない人と比較して犯罪に遭うリスクが高いのか。
    <結果>
     この200万人以上の人からなる国民コホートにおいて、全ての犯罪および凶悪犯罪に遭う率は精神疾患を持つ人において高かった。関連性は診断スペクトラムにわたり男女双方で観察され、最も強い関連は物質使用障害およびパーソナリティ障害を持つ人において見出された。
    <意義>
     診断スペクトラムにわたって精神疾患は、警察報告による凶悪犯罪および非凶悪犯罪に遭うリスクの上昇と関連する。

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成人うつ病の急性期治療に関する21の抗うつ薬の比較有効性と認容性:系統的レビューとネットワークメタ解析
    Andrea Cipriani et al. Lancet 2018; 391: 1357–1366.
    Comparative efficacy and acceptability of 21 antidepressant drugs for the acute treatment of adults with major depressive disorder: a systematic review and network meta-analysis.

    論文要約:
    <背景>
     うつ病は成人において世界中で最も多く重荷となって費用がかさむ精神疾患の一つである。薬理学的および非薬理学的治療が利用可能であるが、資源が不十分なことから心理学的介入よりも抗うつ薬がよく使われる。これら薬剤の処方は、利用可能な最良のエビデンスからの情報に基づくべきである。したがって、単極性のうつ病を持つ成人の急性期治療のための抗うつ薬を、比較して順序付ける我々の以前の仕事を改訂して拡張することを目的とした。
    <方法>
     我々は、発表および未発表の二重盲検・ランダム化比較試験について、Cochrane Central Register of Controlled Trials、CINAHL、Embase、LILACS database、MEDLINE、MEDLINE In-Process、PsycINFO、規制機関のウェッブサイト、および国際登録を、その始まりから2016年1月8日まで検索した。標準的な操作基準に従って診断されたうつ病を持つ成人(18歳以上で男女両方)の急性期治療に用いられた21の抗うつ薬のプラセボとの比較、および実薬対実薬の試験を含めた。疑似ランダム化試験、不完全な試験、あるいは双極性障害、精神病性うつ病、または治療抵抗性うつ病を持つ参加者、もしくは重篤な併存身体疾患を持つ患者を20%以上含む試験は除外した。データは事前に決められた順序に従って抽出され、ネットワークメタ解析ではグループ水準のデータが使用された。
     介入の系統的レビューのためのコクランハンドブック(Cochrane Handbook for Systematic Reviews of Interventions、訳注:2018年に第6版が発表予定とのこと)に従って研究が持つバイアスのリスクを、GRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation、訳注:推奨の強さをエビデンスレベルだけではなく、価値観や好み、医療資源などを考慮して判定するといった特徴を有する)システムを用いてエビデンスの確実性を評価した。 主要評価項目は有効性(反応率)と認容性(あらゆる理由による治療中止)であった。変量効果モデルを用いたペアワイズおよびネットワークメタ解析を使って要約オッズ比(OR)を推定した。この研究はPROSPEROに登録されている(番号:CRD42012002291)。
    <結果>
     我々は28,552の論文を同定し、これには116,477人の参加者から構成される552の試験が含まれた。有効性については、アミトリプチリンの2.13 (95% 確信区間 [CrI] 1.89–2.41)からレボキセチンの1.37 (1.16–1.63)にわたるORをもって、すべての抗うつ薬がプラセボより有効であった。認容性については、アゴメラチン(OR 0.84, 95% CrI 0.2–0.97)とフルオキセチン(0.88, 0.80–0.96)だけがプラセボより脱落が少なく、クロミプラミン(1.30, 1.01–1.68)はプラセボより多かった。
     すべての試験を検討した場合、抗うつ薬間のORの差は有効性については1.15~1.55、認容性については0.64~0.83の範囲に及び、比較分析の大半で確信区間は広かった。実薬対実薬の試験では、アゴメラチン、アミトリプチリン、エスシタロプラム、ミルタザピン、パロキセチン、ベンラファキシン、およびボルチオキセチンが他の抗うつ薬より有効性が高かった(ORの範囲:1.19–1.96)。一方、フルオキセチン、フルボキサミン、レボキセチン、およびトラゾドンは有効性が最も小さい薬剤であった(0.51–0.84)。
     認容性については、アゴメラチン、シタロプラム、エスシタロプラム、セルトラリン、およびボルチオキセチンが、他の抗うつ薬より認容性が高かった(ORの範囲:0.43–0.77)。一方、アミトリプチリン、クロミプラミン、デュロキセチン、フルボキサミン、レボキセチン、およびトラゾドンは脱落率が最も高い薬剤であった(1.30–2.32)。
     522の試験のうち46(9%)の試験がバイアスを持つリスクが高い、96(18%)の試験がリスクは低いと評点され、エビデンスの確実性は「ほどほど~非常に低い」であった。
    <解釈>
     うつ病を持つ成人において、すべての抗うつ薬はプラセボより有効であった。プラセボとの比較試験を解析に含めた場合は実薬間の差は僅かであったが、実薬どうしの比較試験では有効性と認容性のばらつきがより大きかった。これらの結果をエビデンスに基づく実践に利用し、患者、臨床医、ガイドライン開発者、および政策立案者に各種抗うつ薬の優劣に関して情報提供すべきである。
    <資金>
     National Institute for Health Research Oxford Health Biomedical Research Centre and the Japan Society for the Promotion of Science

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高齢中国人における日常の知的活動と偶発認知症のリスク低下の関連
    Allen T. C. Lee et al. JAMA Psychiatry, published online May 30, 2018.
    Association of Daily Intellectual Activities With Lower Risk of Incident Dementia Among Older Chinese Adults.

    キーポイント:
    <疑問>
     知的活動への参加は、定期的な身体運動、適切な果物と野菜の摂取、および禁煙といった他の健康的な生活スタイルとは別に、高齢成人における認知症のリスクを下げるか。
    <結果>
     この地域ベースの研究において、65歳以上の地域に住む認知症のない中国人15,582人が、5年間(中央値)経過観察された。知的活動への日常的参加は、他の健康行動、身体的健康の制約、および社会人口学的要因に関係なく、数年後の認知症の有意に低いリスクと関連した。
    <意義>
     知的活動への積極的参加は、晩年においてさえ、高齢成人における認知症の予防に役立つかもしれない。

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初めての妊娠中絶および出産と抗うつ薬処方の関連調査
    Julia R. Steinberg et al. JAMA Psychiatry, published online May 30, 2018.
    Examining the Association of Antidepressant Prescriptions With First Abortion and First Childbirth.

    キーポイント:
    <疑問>
     妊娠第1期における初めての妊娠中絶は、女性の初めての抗うつ薬使用のリスク上昇と関連するか。
    <結果>
     この1980年1月1日から1994年12月31日にデンマークに生まれた女性396,397人のコホート研究において、初めての妊娠中絶をした女性は、中絶しなかった女性と比べて、初めての抗うつ薬使用のリスクがより高かった。しかし、初めての妊娠中絶をした女性について、そのリスクは中絶前後の年で等しく、中絶からの時間が増えるにつれて減少した。
    <意義>
     初めての妊娠中絶は、女性の初めての抗うつ薬使用のリスクの上昇と関連しない。

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妊娠中および産後期のリチウム内服戦略
    Wesseloo R et al. Br J Psychiatry 2017; 211: 31-36.
    Lithium dosing strategies during pregnancy and the postpartum period.

    論文要約:
    <背景>
     妊娠中のリチウム内服は難しい問題である。
    <目的>
     妊娠中のリチウム内服に関する指針を提案すること。
    <方法>
     後向き観察コホート研究。妊娠中および産後期にリチウム治療を受けている女性の113の妊娠から、リチウム濃度レベルの測定(n = 1101)、毎日のリチウム内服量、用量変更/頻度、およびクレアチニンの血中レベルに関するデータを得た。
    <結果>
     リチウムの血中レベルは妊娠第1期で低下し(-24%, 95% CI -15 to -35)、妊娠第2期に最低値となったが(-21%, 95% CI -13 to -30)、産後に軽度上昇した(+9%, 95% CI +2 to +15)。分娩そのものは、リチウムおよびクレアチニン血中濃度レベルの急な変化と関連しなかった。
    <結論>
     我々は、リチウム濃度のレベルを、妊娠34週までは頻回に、その後の分娩までは毎週、分娩後の2週間は週に2回、モニタリングすることを推奨する。クレアチニン血中レベルが、腎クレアランスを監視するために測定されるべきである。

    コメント:妊娠中のリチウムの使用と心臓奇形のリスクに関して昨年発表された論文(Patorno E, et al. N Engl J Med 2017; 376: 2245-2254)では、以下の結果でした:リチウム非曝露群と比較した場合の、リチウム曝露群の心臓奇形の補正リスク比は 1.65(95%信頼区間 [CI] 1.02~2.68);補正リスク比は、1日量が 600 mg 以下で 1.11(95% CI: 0.46~2.64)、601~900 mg で 1.60(95% CI: 0.67~3.80)、900 mg 超で 3.22(95% CI: 1.47~7.02);エプスタイン奇形(右室流出路狭窄)の有病率は、リチウム曝露群で0.60%、非曝露群では 0.18%、補正リスク比は2.66(95% CI: 1.00~7.06);対照としてラモトリギン曝露群を用いた場合も、これらの結果は同じ。

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うつ病に対する反復経頭蓋磁気刺激試験のプラセボ反応:系統的レビューとメタ解析
    Razza LB et al. Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry 2018; 81: 105-113.
    A systematic review and meta-analysis on placebo response to repetitive transcranial magnetic stimulation for depression trials.

    論文要約:
    <背景>
     いくつかの研究が、うつ病(大うつ病性障害、MDD)における抗うつ薬物療法に対するプラセボ反応が大きいことを示しているが、うつ病における反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)に対するプラセボ(シャム)反応を定量した最新のメタ解析はない。
    <目的>
     うつ病を持つ参加者を含むランダム化比較試験(RCT)において、この問題に関する系統的レビューとメタ解析を実施し、潜在的な媒介因子(moderator)を探索すること。
    <方法>
     PubMed/MEDLINE、Embase、PsycINFO、およびWeb of Scienceの電子データベースが、急性の抑うつエピソードを持つ参加者でシャム介入と比べたすべてのrTMSモダリティの有効性を調べたRCTについて、その始まりから2017年3月15日まで探索された。コクランのバイアスリスクの評価法(Cochrane Risk of Bias Tool)が、リスク推定に使われた。我々は、プラセボ群のベースラインとエンドポイントの抑うつ症状スコアを用いて、プラセボ反応の効果量(ヘッジのg値、変量効果モデル)を推定した。反応に対する潜在的媒介因子を探索するために、メタ回帰が利用された。
    <結果>
     61の研究(N=1328; mean age, 47years; 57% females)が適格基準に該当した。プラセボ反応は、介入モダリティに関係なく大きかった(g=0.8, 95% CI=0.65-0.95, p<0.01)。プラセボ反応は、発表年と実治療群のうつ病の改善と直接的に関連し、治療抵抗性うつ病のより高い水準と逆に関連した。性別、年齢、および刺激装置の様式を含む他の媒介因子は、アウトカムに関連しなかった。全体として、24.6%、67.2%、8.2%の研究が、順に低い、不明な、高いバイアスリスクを持つとされた。
    <結論>
     うつ病に対するrTMS試験におけるプラセボ反応は大きく、実治療群のうつ病の改善に関連する。このような結果は、前臨床段階でプラセボ反応者を除くことは、実治療としてのrTMSへの反応もまた減少する可能性があるので有益でないことを示す。加えて、うつ病においてプラセボ反応はrTMSへの治療反応の一要素かもしれないし、プラセボ反応の経時的増加は、より良いシャムrTMSを含む試験デザインの改善を示唆するのかもしれない。

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加齢における脳の認知的健康のための運動:量の評価についての系統的レビュー
    Joyce Gomes-Osman et al. Neurology, published online May 30, 2018.
    Exercise for cognitive brain health in aging: A systematic review for an evaluation of dose.

    論文要約:
    <目的>
     我々は、1)コクランの基準を用いて方法論上の質を評価して、2)多様な運動量の測定を記述してそれと認知能力の改善との関係を評価し、3)報告された認知に対する効果の一貫したパターンを特定するために、運動が高齢成人の認知に影響を与えると主張するランダム化比較試験を系統的に調べた。
    <結果>
     方法論上の質は、検討された98のすべての研究において全般的に良かった。認知の改善と運動量の様々な測定(セッション時間、週当たりの分数、頻度、全週数、全時間)の関係の評価は、全時間と有意な相関を示した。全般的認知、処理速度/注意、そして遂行機能の改善が、最も安定かつ一貫していた。
    <結論>
     我々は、少なくとも52時間の運動が、認知障害の有無に関わらず高齢成人における認知能力の改善と関連することを見出した。エビデンスによって支持される運動様式とは、有酸素運動、レジスタンス(筋力)トレーニング、心身(mind–body)運動、またはこれら介入の組み合わせである。

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精神病性(妄想性)うつ病と自殺企図:系統的レビューとメタ解析
    Gournellis R et al. Acta Psychiatr Scand 2018; 137: 18-29.
    Psychotic (delusional) depression and suicidal attempts: a systematic review and meta-analysis.

    論文要約:
    <目的>
     精神病性の特徴が、自殺企図のリスクを増加させるか否かについては不明である。そこで我々は、系統的レビューとメタ解析を通して、単極精神病性うつ病(unipolar psychotic depression、PMD)は、非単極精神病性うつ病(non-PMD)より自殺企図のレベルが高いか否かを明確にすることを試みた。
    <方法>
     Non-PMDと比べたPMDにおける自殺企図に関するデータを提供するすべての研究について、PubMed、EMBASE、PsycINFO、いわゆる灰色文献の多様なデータベースにおいて系統的検索が行われ、その結果をメタ解析にかけた。
    <結果>
     全部で1,275人のPMD患者を含む20の研究が、我々の包含基準を満たした。Non-PMD患者と比べたPMDの自殺企図リスクの上昇が見出された:合計(生涯)固定効果・統合オッズ比は2.11(95% CI: 1.81-2.47)、急性期の5つの研究の固定効果・統合オッズ比は1.93であった(95% CI: 1.33-2.80)。このPMD患者の自殺企図リスクの上昇は、成人患者のすべての年齢グループにわたって安定していた。
    <結論>
     データの非一貫性と臨床的な異質性にもかかわらず、この系統的レビューとメタ解析は、PMDを持つ患者は生涯と急性期の両方において、non-PMD患者よりも自殺企図を起こすリスクが2倍高いことを示した。

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初回エピソード精神病を持つ若年青年のミスマッチ陰性電位とP3a振幅:ADHDとの比較
    Rydkjær J et al. Psychol Med 2017; 47: 377-388.
    Mismatch negativity and P3a amplitude in young adolescents with first-episode psychosis: a comparison with ADHD.

    論文要約:
    <背景>
     ミスマッチ陰性電位(mismatch negativity、MMN)の欠陥は、これまで統合失調症の候補バイオマーカーに挙げられてきたが、発症間もない精神病(early onset psychosis)の早期発見と介入に潜在的に有用かもしれない。我々はMMNとP3aの振幅で測定される自動定位と定位反応の欠陥が、初回エピソード精神病(first-episode psychosis、FEP)を持つ若年青年に存在するか、注意欠如・多動症(ADHD)を持つ若年青年と比較して、所見が精神病に特異的であるかを調べた。
    <方法>
     MMNとP3aの振幅が、FEP(N = 27)またはADHD(N = 28)を持つ若年青年(12-17歳)、および年齢と性別を一致させた健常成人(N = 43)において評価された。MMNパラダイムは周波数、持続、およびその組み合わせに基づく逸脱刺激を持つ4種の音調の聴覚的オドボール課題から構成される。
    <結果>
     健常成人と比べて精神病を持つ患者では、周波数と持続の逸脱に反応して有意に小さいMMNが見出された。ADHDを持つ患者群のMMN振幅は、精神病を持つ患者または健常対照者と有意に異なることはなかった。P3aの振幅に有意な群間差はなかった。
    <結論>
     FEPを持つ若年青年は健常成人と比べて障害されたMMNを示したが、それと重複する中間レベルのMMNがADHDにおいて観察された。本結果は、若年のFEP患者はすでに統合失調症の特徴である前注意的欠陥を持つが、これは他の神経精神医学的障害と連続的に共有されることを示唆する。

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妊娠高血圧と子における神経発達症リスクとの関連:系統的レビューとメタ解析
    Gillian M et al. JAMA Psychiatry, published online June 6, 2018.
    Association of Hypertensive Disorders of Pregnancy With Risk of Neurodevelopmental Disorders in Offspring: A Systematic Review and Meta-analysis.

    キーポイント:
    <疑問>
     妊娠高血圧と子の神経発達症の関連を調べた既存の文献からの統合推定値はどの程度か。
    <結果>
     61の研究の系統的レビューとメタ解析からの統合推定値によれば、非曝露と比較した場合の妊娠高血圧への曝露は、僅かではあるが統計学的に有意な子の自閉スペクトラム症および注意欠如・多動症のオッズ(odds)増加と関連する。
    <意義>
     妊娠高血圧に曝露された幼児に対する発達スクリーニングを増やすことで、早期介入が可能となり、神経発達的転帰が改善するかもしれない。

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世界におけるサルコペニアの有病率:一般人口における研究の系統的レビューとメタ解析
    Shafiee G et al. J Diabetes Metab Disord 2017; 16: 21.
    Prevalence of sarcopenia in the world: a systematic review and meta- analysis of general population studies.

    論文要約:
    <背景>
     加齢に関連した筋肉の量と機能の低下であるサルコペニアは、高齢者における高率な有害転帰をもたらす最も重要な健康問題の一つである。しかしながら、世界のサルコペニアの有病率を調べたいくつかの研究の結果は一致していない。この系統的レビューとメタ解析は、世界の様々な地域の男女におけるサルコペニアの全体的有病率を推定するために実施された。
    <方法>
     MEDLINE(PubMed経由)、SCOPUS、Web of Scienceを含む電子データベースが、2009年1月から2016年12月まで検索された。European Working Group on Sarcopenia in Older People (EWGSOP)、International Working Group on Sarcopenia (IWGS)、およびAsian Working Group for Sarcopenia (AWGS)の定義を用いて、60歳以上の健常成人におけるサルコペニアの有病率を報告する一般住民に基づく研究が選ばれた。これらの合意に基づく定義に従って、サルコペニアは筋肉量(身長で調整した体肢筋量appendicular skeletal muscleの量)と筋力(握力)、または身体能力(通常の歩行速度)の低下があることと定義された。変量効果モデルがサルコペニアの有病率の推定に使われ、性別に特異的なサルコペニアの有病率および95%信頼区間(CI)はBinomial Exact Methodを用いて算出された。異質性はサブグループ解析で評価された。
    <結果>
     全部で58,404人からなる35の文献がわれわれの包含基準を満たした。有病率の全体的推定値は、男性で10%(95% CI: 8-12%)、女性で10%(95% CI: 8-13%)であった。有病率は男女ともにアジア系より非アジア系の人で高く、特に筋肉量を測定するために生体電気インピーダンス法(Bio-electrical Impedance Analysis、BIA)が使用された場合にそうであった(男性、10% vs 19%;女性、11% vs 20%)。
    <結論>
     筋肉量測定のために使われた診断方法、およびサルコペニアのパラメータ推定のための世界の異なる地域について研究間の違いがあるにもかかわらず、今回の系統的レビューは健常母集団であっても高齢者の相当の割合がサルコペニアを持つことを明らかにした。サルコペニアが老化の進行の結果であるとしても、早期診断はいくつかの有害な転帰を予防し得る。

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地域に暮らす高齢者におけるあらゆる理由による死亡の予測因子としてのサルコペニア
    Liu P et al. Maturitas 2017; 103: 16-22.
    Sarcopenia as a predictor of all-cause mortality among community-dwelling older people: A systematic review and meta-analysis.

    論文要約:
     この系統的レビューとメタ解析の目的は、サルコペニアと地域に暮らす高齢者におけるあらゆる理由による死亡の関連を調べることである。地域に暮らす高齢者におけるあらゆる理由による死亡の予測因子としてのサルコペニアを調べた2009年1月から2017年2月の前向き研究を同定するために、3つの電子データベース(EMBASE、MEDLINE、Cochrane Library)を用いた系統的レビューが行われた。我々は変量効果モデルを用いて、サルコペニアに関連する死亡率の統合解析と、筋肉量と観察期間の長さの測定に基づくサブグループ解析分析を実施した。感度分析は高い異質性の原因を評価するために行われた。加えて、方法の質、異質性、および発表バイアスが評価された。同定された1,703の研究のうち7,367人を組み入れた6つの研究が、あらゆる理由による死亡のメタ解析に含まれた。
     含められた研究の合体によるあらゆる理由による死亡の統合ハザード比(HR)は、サルコペニアを持たない参加者と比べてサルコペニアを持つ参加者における有意に高い死亡率を示した(統合HR 1.60, 95%CI 1.24-2.06, I2=27.8%, p=0.216)。観察期間の長さについてのサブグループ解析では、5年あるいはそれ以上の観察期間を持つ研究と比較して(統合HR 1.52, 95%CI 1.14-2.01)、5年より短い観察期間を持つ研究はあ